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救えなかった

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

私はアイナ。とある一家の次女として生まれた。上には兄が一人、姉が一人いる。末っ子として生まれて家族から沢山の愛情を注いでもらった。

だけどとある夜に、誰かが入ってきて私以外全員殺されてしまった。いままで受けていた愛情がピタリと止んだとき、猛烈な喪失感に襲われた。それで、紛らわせるためにいつも丘の上で朝日を眺めていた。

でも、ある日ミウさんと出会った。最初は”レモンを盗むような人なんだなー”って思ってた。だけど、一緒に空を飛んだあのとき、あの愛情がまた注がれた感じがした。


”この感覚久しぶり…”


この久しぶりの”愛情”という感覚に唆られて、今までの自分を取り返したような感じに陥った。


”この人なら…”


自分から抜け落ちた何かを拾ってくれるか、埋めてくれる……そう確信してしまった。

でも、ミウさんの家に行って、からその愛情というものを注いでくれなくなってしまった。…そう感じてしまったかもしれない。

自分よりひどい状態のブランに付きっきり。リーナともずっと話していて、”私の番はまだかな…”そう期待して一日が終わる。仕事を任せられたときも、そこまで嬉しくなかった。ただただ


”都合の良い奴隷”


そんな扱いをされているんだなってそう思ってしまう。

この前のユニオン結成のときだって、ブランが優秀だからって、会計に任命して……


”羨ましいな…”


いつも自分を後回し、無視してまた孤独感を感じ始めた。昨夜の


「アイナもありがとうね」


ミウ様なりに気持ちを込めてくれたのかもしれないけど、私にはもう受け取れなかった。


”……受け取りたくなかった”


この私を見捨てて今更、ありがとう?相手にしてくれなくて見捨てたのならもう相手にしてほしくない…


”……さようなら。”

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


事件は真夜中に起こった。アイナの部屋から異常な魔力を感じ取った。アーバスはすぐに起き上がって、ブランとリーナを叩き起こし、避難させた。

ヴァレンタインも異常を感知し、レッドを連れて来た。


〈ミウよ!何が起こっている!?〉


〈避難命令を出してくれ!相当ヤバい奴かもしれない。出現場所は王国の北西のブルーという八百屋の中だ。〉


〈報告感謝する。討伐隊を……〉


〈たぶん派遣しても全滅だろうな…この世に存在してはいけないような奴だぜ?討伐隊組んでる間にこの王国は滅んじまうだろうな〉


〈今回も、頼ってしまうことになるとは…〉


〈いや、気負うことはないさ。たぶん俺のせいでもあるだろうしさ。別に国王、あなたを嫌がらせしようとしているわけではないんだし、警告をするっていう重大な任務があるだろ?〉


〈…そうであるな。ではそちらは頼んだぞ。〉



「この雰囲気……悪魔であろう…前回とは比にならぬぞ…お主、一体何をしおった?人の感情を超えないと出てこない悪魔を召喚してしまったようじゃ。ここへ召喚されてしまったのが運の尽きじゃ。」


見覚えのある雰囲気ではあったが、あまりにも前回とは違う魔力だったので気付けなかった。

呑気に言っているように見えるかもしれないが、めちゃくちゃ焦っている。常に何かしらに襲われているような圧を感じる。

目の前には何も無いのに襲われていると錯覚し、勝手に身を守る脊髄反射をしてしまう。人によっては殺されたと錯覚して、自殺にまで発展してしまうかもしれない。


これを制御するだけでかなりの労力を消費する。この状態で戦うとなると、負けは必須になる。


どうすればよいのかと聞かれても、答えは出ない。逃げるという選択肢はあるが、認められない選択。


「このままではまずいぞ!このあたりをそのまま遠くへ持っていくのが最適じゃ!」


ヴァレンタインに言われた通り、それが最善だと思う。急いで魔法陣を展開する。


「ヴァレントへ転移しろ!そこなら被害が出ないはずじゃ!」


ヴァレントへ転移するのはありだが、長期戦に持ち込まれると勝ち目がない。魔法が取り柄の俺にとって、悪魔は最悪。魔法が通じない……これが俺の足を引っ張る災害の要因。


悪魔は精神生物。肉体のない精神世界では魔法というこの世の物理法則から外れた力で競い合うしかない。しかし、この世界には肉体という精神を保たせるための器が必要。肉体はこの世界で作られた仮の体。物理攻撃においては最大限に効果的。


剣を使えば渡り合えるが、魔法は近遠両用。間合いを詰めるなどの技術的な部分が多く求められる。それに、俺の本質は魔法と剣を組み合わせた魔剣士独自の攻撃方法。魔力のこもっていない剣は、恐らく通用しないかもしれない。


魔法と物理攻撃が同じエネルギー量で衝突すると魔法と物理攻撃が順応し、この世界の普遍的存在である、物理に順応する。順応という言葉が正しいかどうかも怪しいところではあるが、要するに

物理と魔法が同じエネルギー量でぶつかると、物理が優勢で魔法を打ち消し、物理のみが残る。ただ、物理側にも多少のダメージは入るが、魔法のように完全に消えることはない。


そもそも俺のネロは魔法でできたもので、魔法と魔法は同じエネルギー量では相殺しあって消えてなくなる。しかし、魔法とは魔力量と魔力密度が重要。

例えば、体積100の魔力、密度1の魔力と体積1の魔力、密度100の魔力では威力としては同じになる。

俺のネロは体積1に対し密度は数億に達しているので相当の魔力量か魔力密度がなければ、負けることはない


〈はぁ…ぶつぶつうるせえな…魔法にも物理特化のものがあるだろう?〉


言われてみればそうだ。

物理攻撃を防ぐための防御魔法や、物理特化の魔法がある。(魔法も同様に)


〈でも、そんな感じの魔法は少ないじゃないか!?〉


〈…この世界に来てもう何年過ごしてんの?それに魔法が得意になりたくて小さい時から学んでいたのに…法則性に気付け〉


しばらく考え込む…

特化系の魔法にはいくつか特徴があることに今気づく

この世界の発音になるが、“phys igno”、”sics igno”と言うのが必ず詠唱の合間、終末にある。(物理無視、魔法無視)


〈そのとおりだ。それならいくらか悪魔相手にも魔法は通用するだろうな〉


これでやつに勝てる道筋が見え始めた。魔法無効を破るために、”sics igno”の発音が必須。

しかし、悪魔退治時ヴァレンタインの活躍で悪魔の戦い方がうまく研究できなかった。それ以上に、研究する隙もないほど一瞬で、ヴァレンタインの魔術に見惚れた。


―――そろそろ完全に顕現しようとしている。


「そろそろ転移しないとまずいぞ!」


「予定通り、ヴァレントへと転移する。」


範囲を、俺とヴァレンタイン、レッド、アイナ、悪魔に設定し、転移する。(アイナと悪魔はすでに契約を果たし、心がつながっていて引き離すとアイナの命が危ないため。)


―――灰燼に帰した地《ヴァレン卜》


「ここは、感情の味が少ない……ここは……はぁ〜なるほど…人の住まなくなった地ということね。インフレートの報告があった場所であるようだけど、報告と違いがありすぎる。」


「どうも、悪魔さん?契約を解除して、その子を返してくれないかな?」


「へぇ?それでどうした?この子と君の隔たりはかなり大きいけど?それに、この子は君が拾ってくれたのに”約束すら果たしてくれなかった”そう言って、僕のもとにやって来たのさ。拾って、見捨ててまた拾うのかよw


―――”すげぇ偽善者じゃねえか!”―――


これから僕はこの子を大事にしていくさ。見捨てられて可愛そうだったからな。それに、自分ばかりおいていかれて寂しかったんだろうさ。そして、仲間との能力差に


―――『嫉妬』―――


したのさ。あとは簡単さ。小さく囁くだけ。


『全部満たして上げる』


って呟くだけさ。そしたら、簡単にこっちを向いてくれたのさ。可能性のない方より、ある方に飛びつくのは通りだろ?君は見捨てて、僕は拾ってあげた。君のような偽善者じゃないからね、僕はw」


「貴様、クソムカつくわ!」


「貴様ってなんだよw?貴様ってw僕にもちゃんと名前があるんだから。


『嫉妬の悪魔を統べる者”ゼラス”』―――


どうぞよろしく。」


「あーあー!長ったらしい説教ありがとうございますぅ!クソムカついたから、魂まで破壊してやるよ!」


「おー怖い怖いwそれに憤怒の感情は僕にとってあまり美味しくないんだ。殺意のむき出しはやめてもらえるかな?反吐がでそうだ。」


「っは!余計むき出しにする要因ができたから、思う存分殺意マシマシs…


急に体が持ち上がる。そのまま、一点に他の物質を巻き込んで集まる。

!?重力魔法か!

てか、なんて重量だ…抜け出せない……このままブラックホールになるのではないか?と思う勢い。


「これだけでいいか…w」


ゼラスの指先に一筋の閃光が灯る。


〈核撃魔法だ!発動したら、この大陸の3割が吹き飛ぶ!〉


「うーん…思ったよりあれだったねwじゃ、さようなら〜」


―――『失せろ』

空がモノクロに染まる。あの時と全く同じだ


「どうした?ずーっとこの星に居候して大人しくしているんじゃないのか?」


『前にも傲慢が来たが、今度は嫉妬か…手間が増える…どうしてここへ来た?』


「来たんじゃない。呼ばれたのさ。いや、来たといったほうだ正しいかもなw誰にも奪われたくないほどの濃厚な嫉妬の感情を感じ取ったのさ。」


『用は、すでに済んでいるのであろう?さっさと帰れ。』


「はいはい。こいつら追ってこれないように頼むよ。」


『どうせ動けないだろう。いや、認識はできているようだ。さっさと行ったほうが良いだろう。』


「え!?まじ?何年ぶり?」


『認識だけなら150年ぶりくらいだろう。動けたのなら2000年ぶりだ。』


「アカシア以来ってことになるね。」


『さっさと行け。こちらにも仕事がある。』


「へぇ〜?仕事あったんだ!それじゃ、また世話になるかもしれないね。」


空が、いつもの色に染まっていく――――――――――――――――――


〈レッド、そろそろ近いやもしれぬ。〉


〈嬢様はこれで何度目でしょうか?〉


〈4度目だ。あれはもう二度と目にしたくない……〉


―――――――――――――――――――――――――――――――――

〈ミウよ!本当に感謝する。〉


〈あぁ…お役に立てて良かったです………〉


ブルーにて―――


「ミウ様おかえりなさい!こっちは全員無事です!」


「ミウさん?大丈夫?」


「あぁ…少しつかれた。一人で休ませてくれ。」

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