触れるべきでない
『邪魔者共には消えてもらう』
―――情はいらない……
突然の出現に遅れを取ってしまったが、相手も名乗りあげをしてくれたおかげで多少時間が稼げている。
詠唱破棄可能な3段階魔法を5つの意識でコントロール…3^5=243段階。
それの一気にぶつける。
魔法の発射口がピリ付く。発射のタイミング、打たれる方向、魔法が飛んでくる軌道などが読まれないように、隠密スキルで発射まで隠し通す。
悪魔が自分とは反対方向へ向いた。
『今!』
ゴゴゴ………
ものすごい轟音とともに、視界を遮られるような爆風、閃光などの要素が襲いかかる。
『やったか?』
そう自分の心の中で疑問を持ちつつも、確信した心が中にあった。
しかし、早々とそれは打ち砕かれる。
『っふっふっふ……っあーっははは!!!悪魔にこれが通用すると?バカバカしい。人間も腐ったものよ。悪魔は魔法に精励する種族の一つ。故、魔法に対する抵抗も高いというもの!せめて、攻撃の中に物理攻撃を混ぜるべきであったな!!!』
あの威力の魔法を受けてもなお、耐えて見せている。
しかし、魔法に耐性があるとは言え下級の悪魔は重症を追っている。消滅させれた悪魔は一つもいない。戦いの優劣は相手に傾いたままだ。
弱った悪魔にヴァンパイア3体で余裕でボコせる程度には弱っている。
『なぜ我ら悪魔族が神から背き、神隠れの地にて暮らしているのか?今ここで思い知れ!!!』
―――俺の放った魔法の10倍の威力はある魔法が形成される。
〈何だ!?あの威力の魔法は!!〉
〈奴らは悪魔族。神の誓い(法則)に背き、天と対を成す存在。奴らは既存の法則を破って、天に唯一歯向かえる存在になった。〉
〈つまり、魔法の段階のリミッターが存在しない?〉
〈そうだ。助かる方法はあと一つ。誰も望んじゃいない結果だ。〉
―――『失せろ』
体を小刻みに揺らすほどの低い声がどこからか分からない場所……もしくは全方位から聞こえてくる。
瞬きを許さぬ程の速度で、空の景色が変わる。色が褪せ、モノクロ状態になる。
その言葉でレッド、俺、君主級悪魔以外全員気絶してしまった。
レッドが何かを知っているような形相で、冷や汗を頬を伝って地面へと落ちる。
『そろそろ近いからと言って、契約を結びに来ようとは………それとも俺の役割を奪いに来たのか?』
悪魔に向けたメッセージであるとわかる。しかし、声の主が分からず、意味もわからない。
『契約さ。邪魔者が現れてしまったのだ。仕方のない。』
『邪魔者を消すのにそれほどの力が必要か?愚か者はどちらであろうか?』
『今回は引く。また会おうではないか?』
バリバリと音を立てながら、転移魔法を使用し消える。
―――空の景色が着色されていく。
ソロモンたちが何事もなかったかのように、ただただ戦闘の姿勢を取っている。
「君主悪魔の姿がない……」
そう呟いたのはアイ。あたりを見渡しながら、魔力探知を最大出力で稼働し君主悪魔を探す。
「アイさん…気絶していたのを知ってます?」
「は?冗談言っている場合ではありません!いつ奇襲されてもおかしくない状況ですよ!」
「そ、そうですね……確かに…」
(気絶していたとは言え、流石に何か違和感ぐらい湧いてもおかしくはない……)
「君主悪魔は、転移魔法で消えました。ほらあそこら辺に魔力の残骸が………」
「転移した痕跡があります。しかし、一体いつ……?」
「あなた達が気絶している間です。俺はしっかりこの目で見ました。」
「……他に信じられる可能性はない。ということですね……それよりも何故あなたは気絶しなかったのか?」
「分からない。何かしらの要素が絡んでいるのは確かです。悪魔が『今回は引く。また会おうではないか?』と言っていたので、暫くの間は姿を表さないと思います。」
「仲間を置いて逃げた?」
「そうとしか感じ取れません。」
「話し相手は?」
「分からない。あの瞬間、起きたことはわかります。ですが、そこに絡む要素や、事象については全くわかりません。空の色が褪せたこと、全員気絶したこと……」
「わかりました。奴がもう現れないとわかっただけでも十分な情報です。更に追い打ちをかけましょう。」
俺は戦場に向かい、悪魔狩りを始める。
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「ソロモンさん!ミウから君主悪魔が身を引いたとの報告が上がりました。あとは残党を倒すのみです。」
「………」
「ソロモンさん?」
「済まない。少し考え事をしていた。アイは先に向かってくれ。」
「承知」
(急に悪魔がいなくなったのはそうしてだ?ミウによると、転移魔法で身を引いたと聞く。転移魔法が発動した痕跡があるので、納得がいく。だが、発動したタイミングが全くわからない。気絶していた?気絶後特有の身体の違和感などまったくない。)
「…ソロモンさん。君主悪魔が身を引いたのはお聞きですね?」
「はい。ですが、全く分からず…レッドさん!なにか知っているのですか?」
「……」
顔を背ける
「禁忌……ですか?」
「!?………触れてはいけません。絶対に。」
「でっでは、あなたと、ミウは触れている…または理解者ということですか…?」
「はい、彼ならまだ引き戻せます。完全には理解していませんでした。恐怖するのは最期だけで良いのです……禁忌は恐れられるもの。知ってしまっては意味がない。」
「話はあとにしましょう。今は戦いの最中です。」
「では……」




