地下空間の発展のすすめ
―――手伝ってほしいんだ。
そう言ったが、まだ手伝ってもらう準備ができていない。リーナたち、女子軍には力織機を使って布を折ってもらう。
勿論、力織機を知っているのは俺しかいないので、俺がそれを今から作る。
シルクワームについてはアーバスに任せてある。B-の魔物なのでアーバス一人で十分。
豊田佐吉作の汽力織機を参考にスーツで作成する。形を維持するためにレッドサーペントの魔晶石を使用し、溢れてくる魔素を魔力に変える装置とともにセットする。動力源も同様に、魔晶石を利用して動くようにする。しかし、豊田さんの汽力織機は水蒸気を利用したものだが、俺が作っているのは魔力を利用したものなので少し工夫がいり、かなり苦戦する。ここまで20分。
魔力をそのまま回転運動にするアイデアが思いつかない。それか、魔力を電気に変換して利用する手もあるかもしれないが、その方法すらも全くわからない。
―――少し実験することにした。
(そもそも魔力ってなんだ?現実で例えると何だ?)
―――出た結論としては、電子と同じ。つまり魔力=電気ってイメージ。
だから、電気と同じ容量でスーツに魔力を流すと、試作品のモーターが動き出した。
織機もまだ試作品段階だし、これでいいか
「リーナ、アイナ。できたぞ!使い方教えるからちょっと来て。」
「ここを押すと、―――こうやって動くんだ。このシャトルの糸がなくなったら自動的に止まるんだ。そしたら一旦動きを止めて、シャトル内の糸を取り替える作業をしてほしい。やってほしいこととしてはこれだけ。この横糸を巻く装置も作るから、実際あまりやることないから変わり代わりやってね。」
「わかりました!でもかなり音が大きくて周りに迷惑だと思うのですが……」
「地下空間内で動かすから問題ない。転移も入りたい!って念じれば空間内に入れるように設定したから、よろしく」
―――この後横糸を自動で巻く装置も作り、家を建てる準備を進める。
(家を建てるにしても、どう建てるか……)
あたりを見回しても、どこも舗装されていないただの岩が広がっている。
(とりあえず、空間の端っこに百軒くらい建てるか)
ここは異世界。魔法という地球には非現実的なものが存在する。魔法とは理想の体現化。
自分の望むものと素材さえあれば全てが実現する。ただし、多少の技量が必要。
地球の家の良さ、異世界を彷彿とさせる外見、それを混ぜイメージする。
ゆっくりと目を開き、その視界にはイメージ通りの家の設計図が映る。後は簡単。
事前に準備した木材を魔法で操り、設計図通りにおいていく。
並列演算で木材を適当の長さに切る、組み立てる、釘を刺す。これらの動作を同時に行う。おかげで一件を20分程度で完成させる。後は繰り返すだけ。
―――約5時間後…
大体30軒ほど建った。後半になるにつれどんどん効率が上がった。並列演算の質も上がった気がする。
(とりあえず今日はここまでにしよう。地上では夕方だろうし、夕飯の手伝いもしてやらないとな。そろそろ戻るか)
「ただいま〜」
「おかえり!ミウよ!どうだ!」
アーバスが自慢げに3匹のシルクワームを見せつける。檻の中に入っていてそれに生きているのだが、気持ち悪い……おっと、生命に対する侮辱になってしまう……。ちゃんと生きてるんだ。えらいえらい………
「それと巣に繭が20こほどあったから持ち帰ってきたぞ。」
「ナイス、アーバス。じゃあ機械にセットするね。」
繭の大きさはだいたい長径30cmの楕円形。横糸を巻く機械を作ると同時に、製糸機も作っておいた。こちらはとある企業の元を参考にして、魔法による魔改造も施しているので効率は化け物級。実に1分間に10kmほどの糸を作れる。
―――だから物の数分で…
「は?もう繭がなくなったんだが?」
期待していた反応が来て嬉しい限りである。
「これで、もう繭はいらないな。っははは!…なんてな!糸は作る予定ではあるけどね。絶対この品質で売れないわけ無いでしょ?大儲けさ」
リーナが糸を触ったり、観察したりしている。
「……たしかにこの品質は見たことがありません。商人が絶対買いたい物の一つになるかもしれません。それに貴族らの耳に噂が入ればいくらでも金は出してくると思います。」
「そんなにか?」
「はい!そもそもモンスターから糸を取り出すという考えが今まで出たことがないのです。この頑丈さ、その頑丈さに対して加工のしやすさ、どれをとっても、既存の生糸に勝らないです。」
「じゃあ、このシルクワームは地下空間で育てたほうが良さそうだな。管理は……そうだな…」
「ゼノギオンとかはどうだ?」
「俺も思ったが、どう引きずり出す?迷宮から」
「転移魔法はどうだ?」
「とりあえず試さないとわからないな。迷宮にいくか。リーナたちには申し訳ないが、夕飯作っといてくれる?」
「わかりました。気を付けて行ってらっしゃいませ」
「いってらっしゃいませ〜」
迷宮の各階層前にセーブポイントをおいておいたので、すぐにゼノギオンのいる84階層へと迎える。
―――84階層にて
「どうされましたか?主よ。」
「主とかやめてもらえないかな……恥ずかしい。せめてミウさん…」
「では、ミウ殿。此度はどうされましたか?」
(う〜〜…あんま変わってないような……まあいいや、どう言っても変わんなさそうだし…)
「まあ、まずこの迷宮内でなにか変わったことはある?」
「いいえ、特に何も起こっておりません。この先の85階層も生成されておりません」
「そっか、なら大丈夫か。じゃあ、本題へ、君を迷宮から脱出させたいんだけどどうしたらいいかな?」
「そうですね……ここが世界のどこに位置するのかよくわかりませんし、私にはどうにも…。」
「まあ、試したわけではないんだけど本にね、こう書いてあったんだ。―――




