68話 ヤンデレ
鈴凛さんは電車に乗っている間、僕の服をぎゅっと掴んでいた。
「……どうしたの?」
「ずっと……放さなぃ」
鈴凛さんの精神が少しだけおかしい事に気が付いた僕はなだめた。
「僕は風月さんに何もされてないししてないんだ」
「でもずっとぃっしょにぃたぃんだ」
少しだけヤンデレ気質になっているかもしれない。
「……ほら、乗り換えだぞ」
「わかった」
鈴凛さんが他の人に送る目線はもはや猛獣を超えていた。
(これ僕がいるから……鈴凛さんが他の人に警戒しているのかな……)
「じゃ、乗ろうか」
どうしてこうなったのかは知らないが、大体の原因は風月さんなのかなと思い込んでいた。
家に帰ったとき、このことを恵さんに話した。
「なるほどね……いったん風月さんの母親に電話かけるね」
恵さんが電話をしている間でも鈴凛さんが物陰からこっそりとみていた。
「風月さんとつながったよ」
恵さんが僕に電話を渡してきた。
「今日の事はごめん、私やりすぎちゃった」
「……どうしてこんなことをしたんだ……答えてよ!」
「私……幸君と鈴凛ちゃんが恋をしてるって……思ってたんだ、そしてその恋敵になろうとしてたんだ、どうしてかは……何ていうか……言うのが恥ずかしいんだけど恋を応援したくってね」
僕はその一言で何かが吹っ切れたような気がした。
「別にこれは冗談で言っているわけじゃなくてね」
「いいや、ありがとう。僕の中に会った霧が晴れたようだ、もう一度言う、ありがとう」
そう言って僕は電話を切った。
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