12話 ぉみまぃ
僕は一旦保健室にて治療を受けた。
「しかし、顔面にクリーンヒットとは、どんなことをしたんだ?」
「ただ質問を無視しただけなのに、こうなりました」
「君は正直者だな、どんな質問だったのか、聞いておこう」
この人はどこか研究者っぽい風格のある人だ。
「カンニングしたかしてないかっていうものですね」
「そうか、カンニングはしてないよな、聞いておこう」
「もちろんしてないですよ、したら大問題ですよ」
「そうだな……っと、来客だ、どうぞー」
保健室のドアが開き、そこにいたのは鈴凛さんだった。
「おっと、かわいいな、誰に会いに来たんだ?」
鈴凛さんは僕に指をさしていた。
「この子か、カンニングしたかしてないかと質問を受けて答えなかったから殴られたとよ、不幸だな」
「だぃじょぶ?」
どうやらお見舞いしに来たらしい。
「保健室の先生、紙ないですか?」
「紙はないがホワイトボードならあるぞ」
僕はホワイトボードに文字を書いて行った。
「だいじょうぶだよ、お見舞い?」
「ぅん、ぉみまぃ」
その時、また人が運ばれてきた、どうやら窓ガラスを突き破った人だ。
「ぐべべ……」
「窓ガラスを突き破ったのか……?」
それを見た鈴凛さんは少しだけ眉間にしわを寄せていた。
「こいつが君をぶん殴った本人か?」
「そうですね……」
「そうなのか?君」
「ああ、質問に答えなかった罰だ」
「なら君は誰の犬だ?」
「それは……」
「答えられないよね……分かるぞ、その気持ち」
「どうしたんですか?」
「僕はね、昔、大好きな人がいたんだ、だけど寝取られてしまってね……今は見ての通り、独身だ」
「今何歳ですか?」
「30代と言っておこうかな……」
「そうなんですね……」
そんな話をしていたら担任が入ってきた。
「吉田、大丈夫か」
「せんせぇ~俺の心配はぁ~」
「お前は後だ、それで、誰に殴られたんだ?」
「横の人です……」
「そうかそうか、どうして殴られたんだ?」
すると後ろで仁王立ちしている保健の先生がこういった。
「質問に答えなかったから、殴ったとよ、どうするよ」
「ちょっとまて、こっちにも話を聞く、どうして殴ったんだ?」
「あいつの言う事に答えなかったからだ」
「あいつって誰なんだ?」
「鏑木風月……俺の彼女」
「へぇ、彼女の言う事を聞かなくて殴ったのか、後で生徒指導室に来なさい、裁くのはこっちだ」
「先生、六車くんは?」
「ああ、一応厳重注意だ、正当防衛が適用されるかがわからないからな……」
そうして隣にいた奴は生徒指導室に連れていかれた。
「帰るか?」
「いいや、痛みはまだありますが授業に出ないと」
「真面目人間だねぇ……じゃいいよ、行っても」
ベッドから降りようとした、すると鈴凛さんは僕の手を握った。
「……ありがとう」
僕は立ち上がり、教室に向かって行った。鈴凛さんの手はすごく暖かかったような気がした。
「行ってらっしゃい…………しかし、昔の自分を重ねてしまったな」
そうして僕は教室に戻った、僕を殴った奴とその恋人の席に誰も座っていなかった。
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