噂、噂 竹谷さん
噂は突如と現れ、いつ牙をむくか分かりません……
「ねぇ、こんな噂を知ってる?」
「隣町の連続誘拐事件って、竹谷さんがやってるんだって……」
「起立! 礼、着席」
放課後、ホームルームの前の時間に先生の声が教室に響きます。
「えー、最近行方不明になる不振事件が多発してます。皆さんも不安だと思いますが、安心してください」
先生がそう話を切り出すと――
「犯人って、絶対竹谷さんだよね」
「そうそう、何で捕まらないんだろ?」
「バカ、竹谷さんは化け物だから」
後ろの方からそう話し声がきこえてきました。
「こら、私語は慎みなさい。そこでこの学校では放課後の部活及び、遊びに出歩くのを禁止します」
「先生、遊びに行くのは自由じゃないですか?」
「ダメダメ、危ないから集団下校、自宅待機だ」
「「「えー」」」
私は気にしてませんが、他の生徒達は不満そうに声をだします。
「そういうのいいから、言うことを聞きなさい! 俺だってめんどくさいんだよ!」
先生が本音を洩らし、ため息をつきました。
「めんどくさいなら、自由にさせて下さいよ。どうせ、大丈夫なんですから」
クラス委員の花園さんが立ち上がって、先生にそう言います。
「うーん、お前はいいんだけど、他の特に倉下、宮野、沢がな」
先生は平然と生徒を名指しし、それはダメと言いました。
「ちょっ、ひいきじゃん」
「ありえないんだけど」
「竹谷さんに呪われろ」
三人は各々そう先生に文句を言います。
「よし、帰る準備をしろ」
先生は強引に話を進めて、私達はバタバタと集団下校をさせられました。
・・・・・・・・・・
次の日、花園さんが珍しく学校を休んでいました。
「竹谷さんにやられたね」
「うん、絶対そう」
「てか、先生遅くない?」
昨日怒られた生徒達がまた竹谷さんと口にだしました。
もう、うんざりです。
他のことならともかく、竹谷さんは口にすべきじゃありません。
文句を言おうか考えていると教室のドアが開き、校長先生が入ってきました。
「おはようございます……」
「校長先生? どうしたんですか?」
ドアの近くにいた男子生徒がそう聞きます。
「今からお話があります。どうか、座って下さい――」
そういいながら教卓の前まで歩き、クラスを見渡しました。
「担任の春原先生が突然音信不通になりまして、また花園さんも行方が分からないそうなんです。もし、何か心当たりがある子は、教えてもらえませんか?」
「駆け落ちなんじゃない?」
「いや、竹谷さんだって」
「そうそう、あの二人、絶対認めようとしなかったもんね」
「えっと、竹谷さんって誰ですか?」
校長先生がそう聞きます。
「それは……」
その瞬間、女子生徒は胸を押さえて倒れました。
その顔をのぞき込むと醜く白目をむいて、よだれをたらしています。
教室内が悲鳴が上がりました。
校長先生は慌てて、救急車を呼んでますがもう手遅れです。
そして噂を、竹谷さんの事を知ってしまった私ももうダメかもしれません……
・・・・・・・・・・
「その噂って、話しても聞いてもダメなんだよね?」
「うん、由美がそう言ってた。でも噂があるってことは迷信じゃん」
「ま、そうよね」
「それにしても由美、遅いな~」
面白いって、思っていただけたら嬉しいです!