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道を極めたおっさん冒険者は金が余りすぎたので散財することにしました。  作者: 空戦型


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おまけ 人類最古の――?

 転生者ショージはある問題に悩んでいた。


「草刈りってめっちゃ大変だな……」


 そう、農地を持つ者の永遠の宿命、雑草との戦いである。

 放っておけば勝手に育ち放題。どんなに必死に引き抜いたり刈っても逞しい生命力ですぐに立ち上がる不屈の闘士たち、それが雑な草と書いて雑草である。畑の雑草はまだしも、ちょっと目を離した隙に開拓予定地などを占拠して先住権を主張する厚かましい雑草の集合体との戦いはなかなか面倒なものがあった。


 人力草刈りはとにかく疲れるので論外。

 魔法を用いた草刈りも実験したが、結果的に人力並に疲れることが判明。

 これまでは結局忍者の人海戦術で対応してきた。


 いっそ地面を全て舗装してしまおうという話も出たのだが、それは村長フェオの「森と一体化した町」という構想にそぐわない為に却下された。当然ながら除草剤など論外である。

 また、モンスターテイムの要領で草食獣を手懐けて囓って貰うという案も出たのだが、どうしてもフェオの村の面々のテイム力では雑草以外ももしゃもしゃ囓ってしまう問題が解決出来なかった。


 これについてショージはハジメに助力を求め、彼曰く「あてにしない方が良い」知り合いの、転生者のモンスターテイマーの元を訪ねたのだが……。


「あー? 生物の存在価値の基準なんぞもふもふしてるかしてないかの二択でちよ。してないのは失せなしゃいでち」


 ……と言われて相手にされなかった。


 テイマーの名前はミドリン。

 見た目は幼女だが齢40は楽勝で届いており、中身はハジメ曰くもふもふ狂いの人格破綻者らしい。能力はもふもふ要素のある相手限定ながらほぼ洗脳レベルのテイム力だという。


 余りにも相手にされなさすぎて悔しかったのでババアと呼んだらテイム魔物に殺されかけた。当人は必死に逃げるショージを巨大虎の上から見下ろしてケタケタ笑っていたので、性格の悪さは疑うべくもない。


 ちなみに彼女はもふもふの為に家畜や他人のテイムドモンスターも平気で拉致して能力で洗脳してたらしいが、余りにも調子に乗りすぎてライカゲの目に留まり、転生者同士の戦闘が勃発したこともあったそうだ。


 なお、相手はあのライカゲなので結果はお察し。

 当時従えていた最強の僕、魔王軍幹部以上の力を持つ四凶獣を皆殺しにされたミドリンは悪事を働かない代わりに自分の土地から一切出てこなくなり、人間不信となったそうだ。自業自得な気がする。


「NINJAマジ狂ってるでち。四凶獣のうち三体が同レベルの召喚獣に倒されたのはギリギリ納得出来るとして、その三体の召喚と使役を同時に行いながら残り一匹を蹴りでグチャグチャにしたあのNINJAマジで狂ってるでち……」


 ちなみにそのときライカゲに召喚された三体は、弟子たちがそれぞれ受け継いでいる。当のライカゲは弟子三人がかりでも絶対勝てない高みに昇ったが。


 ともあれ、伝手を頼れなくなったショージはもう一つの伝手を頼った。

 ハジメでさえ迷ったときは彼の元へ行くという知恵者、ホームレス賢者である。

 そしてホームレス賢者に夜の店をハシゴさせられて財布が大分軽くなったことと引き換えに、遂にショージは彼からとんでもない情報を聞かされることになる。


「人類最古の草刈り機!?」

「お前さんなら出来るかもしれんぞ」


 曰く、その草刈り機であれば今までを遙かに超える効率で草を刈れるという。

 ただし、その材料は超高級素材ばかり。当時のショージのビルダーレベルも相まって、なんとレシピを作る段階にも至れないほどの難題だった。


「現実の草刈り機を魔法道具で再現した方が現実的なのかなぁ……でもそれはそれで時間かかりそうだし、せっかくなら後々楽の出来る最高級の品を作るか!」


 ショージは本来コツコツ努力するといったことが苦手だ。

 しかし、実は怠け者こそが人を楽にする発明をする。

 彼はここ最近は特に、己の研鑽をひたすら続けてきた。


 そして遂にショージは人類最古の草刈り機のレシピを完成させた。

 村の草刈りのためということで材料をハジメに用意してもらい、ショージは頑張った。彼はチート能力の関係上簡単な装備品なら鍛冶で作れるが、人類最古の草刈り機はそんな甘っちょろいものではない。トリプルブイの本拠地たるナロータウンにまで赴いて鍛冶というものを学んだショージは、そこで工房を借りて汗水を垂らして自らの熱意をハンマーに籠めて打ち込んだ。


「うおぉぉぉぉぉ!! 無駄に輝け、俺のビルダー魂ぃぃぃ!!」


 実際なぜか全身が輝いていたそうだが原因は不明だ。


 人類最古の草刈り機制作の戦いは長引いた。

 途中からブンゴも手伝ってくれたが、それでも凄まじい激戦だった。

 そして制作開始から三日が経った頃――それは出来上がった。


「これが、人類最古の草刈り機……!!」

「遂にやったな、ショージ。と言いたいんだが……」


 共に頑張った仲間、ブンゴはちょっと微妙な顔をしていた。


「お前、それ本当に草刈り機として使う気なん?」

「あたぼうよ!! これで草刈りの苦労から解放されるなら本望だろうが!!」

「お、おう。なら別にいいんだけどよ……お前ちょっと変わったよな」


 ショージは村に戻り、早速人類最古の草刈り機の性能を解き放った。


 効果は、絶大。


 これまでひいこら言いながら草を刈っていた空間を、人類最古の草刈り機は僅か数分で、しかも予想を遙かに上回る簡単な操作で終えた。ショージは感涙があふれ出た。この日、この瞬間をアフター草刈り元年と名付けてもいいくらいだった。


「ありがとう、ありがとう……人類最古の草刈り機!! お前は最高の草刈り機だ!! 草薙の剣ぃぃぃぃッ!!」


 ――それは、神代三剣が一つ。

 ――それは、日本三種の神器の一角。

 ――彼の他にはトリプルブイにしか為し得ない奇跡の一振り。


 草薙の剣とは、日本神話においてスサノオに殺された八岐大蛇の尾から出てきたとされる神剣である。別名を天叢雲剣あまのむらくものつるぎ、ないし都牟刈大刀つむがりのたちと呼ぶこともある。


 そして、草薙の剣には興味深い伝承が残っている。


 嘗てこの剣の使い手であったヤマトタケルは、敵の放った野火に囲われ絶体絶命の窮地に立たされた。しかしそのとき、草薙の剣がひとりでに宙を舞い燃える草を刈ってヤマトタケルが脱出する道を作ったのだという。


 そう、草を薙いで活路を拓いた剣。

 故にこそ、この剣は草薙の剣と呼ばれるのだと。


 ……言うまでもないが、草薙の剣はその名に恥じない凄まじい性能を誇る武器である。驚くことにその性能はいわゆる「転生特典のチート武器」に片足を突っ込むレベルであり、この剣があればレベル差30程度は容易に覆せるほどの代物だった。

 それを、ショージは草刈り機として求めたのだ。

 そりゃブンゴも微妙な顔をするはずである。


 ちなみにこの剣を作ったせいで同居するマンドラゴラであるプラネアは「刈る気ッ!?」と暫く気が気じゃなかったようだが、草薙の剣も草薙の剣でプラネアが放つ若干の反逆心を気にして暫く斬るべきか迷ったという。


「ふたりとも俺の家族だから、ここは仲良くな!!」

「にゅわー!? だからほっぺをすりつけるなぁ!!」

『……(頬ずりされて困惑する剣)』


 今日もフェオの村は平和である。

「武装? なに言ってんだ。戦いに使って草刈りの切れ味が落ちたらどうしてくれる! 草刈り用だから草刈りにしか使わないの、こいつは!」

「えぇ……そこは効率求めろよ。駄目? 駄目かぁ」

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