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道を極めたおっさん冒険者は金が余りすぎたので散財することにしました。  作者: 空戦型


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断章-3 & 用語辞典Ⅱ

 その日、魔王は自室で震えていた。


「もうマジ無理……疎開しよ……」


 否、魔王は就任直後からよく震えていたが、軍の侵攻が本格化してから余計に震えてベッドにうずくまるようになっていた。


 青い肌、頭から露出した立派な角、尻部から生える先端の尖った尾。

 黒目と白目の逆転した瞳の中心には月のように美しい金色が光る。

 腰まで伸びた髪は赤みがかった紫。

 体躯は大きくないが、何も言わず微笑んでいれば蠱惑的と称されるほどに妖艶な美を匂わせる色香がある。そんな色香が全てへたれた声とぷるぷる震える体で台無しである。


 そもそも、彼女は別になりたくて魔王になった訳ではない。


 彼女は元々転生者だ。

 ちやほやされるお嬢様になりたいという安直極まりない理由で転生したら、たまたま魔界の方でお嬢様になっただけだ。最初はちょっと抵抗はあったが、彼女の容姿は周囲からすれば並外れた物であり、周囲に可愛がられて悪い気はしなかった。


 彼女の今の名前はウルシュミ・リヴィエレイア。

 元は魔界の末端貴族リヴィエレイア家の息女である。


 生まれて十数年くらいは好き勝手かつ、周囲曰く天真爛漫に楽しく暮らしていたウルシュミ。魔界は意外と平和そのもので、人間界と違って魔物との戦いもないので普通に楽しいのである。魔王を掲げる好戦派が十数年に一度行う魔王選定の儀にウルシュミが選ばれさえしなければ、彼女はその後も領地で暮らしていけた筈なのである。


 なのに、いつの間にか「類い希なる魔王適正」とやらのせいで祀り上げられ、気がついたら人間界侵攻の責任者にされていた。

 しかしウルシュミ――親しい者からはウルと呼ばれる――は争いとは無縁の存在。

 当然の如く泣いて嫌がったが、周囲は「名誉なことだから」と取り付く島なし。

 人類侵略の方針など聞かれても、うるうると涙ぐんだ瞳で「無理ぃ……」と言うしかない。


「そりゃ確かに、わたし他のみんなに比べれば強かったかも知れないけどさぁ。けどさぁ!」


 五歳のときには誰も手懐けられないと噂された巨犬オルトロスを引きずり回してぽちと名付けて家に持って帰っていたし、魔法の練習で裏山を粉々にして、慌てて時間退行魔法で戻したことも数知れない。自慢じゃないが同期魔族相手の決闘では魔力を乗せたビンタで一撃KO勝利以外はしたことがないし、それ以上やると相手を消し飛ばしてしまう。


 しかし、断じて、望んで人を傷つけたい訳ではない。

 というか、何故過去数百回は失敗している地上侵攻を魔族が諦めないのか理解出来ない。

 幹部格たちはウルが嫌だといっても帰りたいと言っても生暖かい目で勝手にほっこりした挙げ句「我々が頑張ってこの魔王を勝たせなければ」とか言っちゃうし、かといって戦略に口を出すと「まぁまぁここは私めにお任せを!」ってスルーされるし、その間にいつの間にか幹部が二人死んでるし、魔王軍は軍として機能してるのが不思議なくらいボロボロだった。


 何よりもウルが怖いのが、未だ一度も生で見たことがない人間たちである。


「マジ絶対無理。OJISAN怖い。殺される……」


 一ヶ月ほど前、近所で空前絶後のBASARAバトルを繰り広げた二人のおっさんの戦闘の余波が魔王城を襲ったとき、ウルは失禁した。おっさん二人が本当に人間なのか聞きたくなるほど人外だったからである。あんなのが人間側にいるのでは、たとえ勇者が弱くとも絶対に勝ち目はない。

 挙げ句、謎の第三者による城の直接攻撃によって城が危うく粉々になりかけたときには、ウルはもう幼児退行しかけて「おうどんたべたい」とか言っていた。もう勇者とか関係なく無慈悲にテロで殺されると思ったのである。


 ウルはそのとき、決意した。


「こんな城にいられるか! わたしは戦いと無縁の田舎に疎開させてもらう!」


 魔王軍前代未聞、総軍司令官の脱走計画である。


 まず、ウルは魔界ではなく人間界に逃げる。

 これは魔王軍や魔界勢力から逃れる為である。

 また、人間にバレないよう自分の身も人間そっくりに変化させる。

 変化の魔法はちょっとした拍子に解けてしまうことがあるのだが、そこは裏技を使う。実は魔王に任命された存在は、魔王特権として魔法の効果解除などをレジストする強力な権能を得られる。これを利用すれば誰かに疑われても人間の姿のままで誤魔化し通せるのだ。


 潜伏先はなるだけ人の出入りが少ない場所、かつ多様性をある程度認める場所が望ましい。その方がウルの用意するカバーストーリーが受け入れられやすく、周囲に怪しまれにくい。魔王軍もやってこない場所ならば尚いい。


 逃亡先にはぽち(変身能力で小犬に化ける)と最も信頼する側近を連れて行く。


 そして魔王には、魔王軍裏幹部の一人であるドッペルゲンガーに任せる。

 ドッペルゲンガーは「自分」を持たない、魔物というより現象に近い存在だ。これを変身させ命令を与える権利は、魔王唯一人にしかない。そしてドッペルゲンガーは絶対服従の存在であるため、決してウルの命令に背かず最後まで魔王を演じきるだろう。

 あとは周囲の幹部に悟られないように脱出するのみだ。


 非常に幸運なことに、ウルにはこの事を相談できる心強い味方がいた。

 彼女のプライベート通信水晶に光が灯り、妖艶な悪魔の顔が映る。 


『お待たせ、ウル。丁度いい逃亡先が見つかったわ』

「キャロお姉ちゃん、ホント!?」


 彼女の名前はキャロライン・ターンワルツ。

 悪魔族の名家出身で、幹部級の実力を持ちながら人間界に住まう異例の悪魔である。実はターンワルツ家とリヴィエレイア家は領地が近く、一人っ子のウルはよくキャロラインにかわいがって貰っていたのだ。

 彼女は決して権力に靡かないし、約束を守る。

 身内以外で最も信頼している悪魔ひとだ。


『魔王軍が近寄らず、人里から離れ、余所者にも寛容な場所……候補は二つまで絞れたわ。片方はナロータウン、もう一つはまだ地図にも載ってない村ね』

「ナロータウンに、村……?」

『そ。個人的には村がおすすめかな。私のお店と地理的に近いし、信用出来る知り合いがいるの。どう? 興味出た?』

「俄然! それで、村の名前はなんていうの?」

『ふふ、それはね――フェオの村、ですって』


 そこはある意味最も安全で、ある意味最も危険な村であることをウルは知らない。







 ◇ 用語辞典Ⅱ ◆


 ナマモノ


・ヒューマン

 アイビー……ギャルっぽい受付嬢。意外といい人。

 ピノ……氷魔法が得意な青年。出番が……ない……。

 シオ……プライドの高い魔法使いのしーちゃん。きっと根は優しいよ。根拠ないけど。

 ルシュリア……猫かぶりしててもかわいいならいいんじゃない?

 コトハ……クラミツさん家のコトハさん。もしかして食いしん坊?

 ブリット……バレット家のブリットとか紛らわしい。僕さーボクサーなんだよね。

 ベアトリス……姉より優れてない妹。ほんとかなぁ。

 アマリリス……ベアトリスの姉で転生者。カエルによわい。

 エル……カエル好きの少女エル……一体何トリスなんだ……。

 ヨモギ……レンヤの仲間。優しくて芯が強い女の子。出番すくなっ。

 ハマオ……異世界料理人のなれの果て。

 ホームレス賢者……本名センゾー・カメダ。エロジジイ。


・エルフ

 イング……レンヤの仲間で里出身のキザ男。皮肉屋。出番すくなっ。


・ハーフエルフ

 レイザン……くず。頭いいらしいけど頭悪そうな不思議。


・ハーフドワーフ

 リオル……斧を振り回す少女。出番が……ない……。


・リカント……犬耳、犬尻尾、一途。

 ユユ……忠誠心溢れる剣士の少女。しっぽぶんぶん。

 マイル……耳と尻尾が恥ずかしくて隠してるピュアな男。


・ハルピー

 リリアン……噂好きのレイピア使いな少女。噂好き。

 ルクス……リリアンの弟。なまいきなガキ。


・鬼人

 ナツハゼ……やっぱり駄目だったよ。あいつは人の話を聞かないからなぁ。


・コンケツ……いろんなものが混ざったひと。三つ以上混ざるともう分かんない。

 スー……ちび聖騎士。ハルピー、狐人ルナール、ドワーフなどの血が入ってるってさ。



・魔物


 ウッズ・オウル……フクロウの魔物。

 マンティコラ……別名マンイーター。人食いが好き。こわい。

 アーマード・ギガンテス……金属アレルギーのギガンテスにはなれないすがた。

 ライノセラス……角生えとるやないかい。

 アーマジロ……丸まっとるやないかい。

 プラネア……こいつ前にも紹介したのにイメチェンしてます。

 ドッペルゲンガー……まねすんなよー。まねすんなよー。


・マゾク

 ウル……ウルシュミ・リヴィエレイア。最強魔族なのにおもらし。


・カエル……ゲコゲコ。

 フローレンス……元ゲコサブロウ。それでいいのか。ゲコゲコ。



 アイテム


装備品

・師匠のシャツ……くんくん……くっさー! でももう一度嗅いじゃう。

・修験者のリング……ステータスが下がる代わりに熟練度が上がりやすくなる。

・インデックスリング……装備すると頭が良くなるイカリング。外すとパーになる。

・ライフル……弓の最上位に位置する聖遺物。超長距離精密狙撃できる。


その他

・ライアーファインド……ゆれーるー。おもーいー。てんびんにたくしーてー。



スキル


・ジョブスキル

 ・鑑定……いい仕事してますね~。アイテムの名前とか付与属性が分かるかも。

 ・武装解除……シーフスキル。身包み剥がす。成功率低し。


・武器スキル

 ・ハードクラック……地面どどーん。

 ・セントリフィカル……ぐるぐるハンマー。目が回る。

 ・地斬……地面を削って迫る斬撃。

 ・トライピアッサー……槍スキル。三つ同時に刺さる。

 ・デュープリケートザッパー……鎌専用。ずばばばばずばーん。

 ・ディバインエクセキューション……聖騎士用。光が……溢れる……!

 ・シャインストライク……聖騎士用。光が……飛ぶ……!

 ・ブロウスマッシュ……拳、ハンマー、メイス用。ぶっとべ。

 ・ギロチンフォール……拳用。骨か折れて死ぬ。

 ・赫灼一閃……刀専用。熱の刃が駆け抜け、敵をなぎ払う大技。炎の追加効果。


・魔法

 ・ウィンドフィールド……フィールド魔法。空飛んでるやつ降りてこい。

 ・フォトン……パーン、パーン、光がパーン。

 ・ロックハインダー……岩がぬっとせり出してくる。ぬっと。

 ・スラップシーカー……相手を追跡してボカーンする玉を出す。

 ・スクリューバーク……貫通力のある水ビーム。

 ・ヘイルショット……氷礫を飛ばす。あたったらいたい。

 ・グランドバッシャー……大地をかちわる。空を飛んでる敵にはこうかがないみたいだ。

 ・エレクトボルテックス……広域に雷をごろごろどっかんする。

 ・サイレント……お口チャック。効果は短い。

 ・二重魔方陣……合体攻撃みたいな魔法陣。友達は付属されません。

 ・エンヴィーマゴッツ……あなたはもうにげられない。フィールド効果あり。

 ・ナイトボーン・オルタナティブ……いあ、いあ。くとぅるふ、ふたぐん。

・錬金術

 ・ロックゴーレム……ごつごつしすぎて細かい作業できなさそう。

 ・形状変化……錬金術の基礎の基礎。基礎がなってないヤツはなにやってもダメ。


・転生スキル……転生者の持つずっこいスキル。

 ・ニンジャマスター……ニンジャになってニンニンできる。弟子もとれる。

 ・ビルダー……ボディービル以外いろいろできる。弟子もとれる。

 ・超鑑定力……そんなに知ってると逆にきもちわるくない?

 ・不老不死……考えるじかんが多すぎて考えるのめんどくさくなりそう。

 ・コトダマ……言葉には魂が宿る。言葉は真実味を帯びる。言葉には人を殺す力がある。

 ・フィグ・スタジアム……ボクシングリング。その優位性は神級スキルに匹敵するって噂ですわよオクサマ。アフロセコンドは何故かデフォ。

 ・英知……どこにもいかず、すべてを知る。知りすぎてホームレスになる。

 ・シェフ……シェフの才能がフランベする。フランベってなんだ。弟子もとれる。

 ・一度目の人生の記憶……ちょっと詳細の書き込みあまくない?



 チメイ


・ロムラン……盆地ならぬ凡地。

 ・トブロ森林……平凡な森。

・シュベル……王国南方にあるまぁまぁ都会な町。

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