37-10
古来より魔界貴族の間で決闘はトラブルの解決手段だった。
口げんかの勝敗は決闘。
夫婦げんかの勝敗は決闘。
家同士の諍いの勝敗は決闘。
大なり小なり決闘は濫用されまくってきたが、一応決闘にも細かなルールが存在する。
決闘は双方同意の上でなければならない、決闘は命を奪うものであってはならない、決闘に賭けるものは釣りあったものでなくてはならない、等々……。
釣り合いの原則は特に重視されており、相手に対して過大な要求をしたり、持っていないものを賭けたり、歴然とした実力差がある際に実力者側が弱者側に強い要求を突きつけるのも決闘を不成立とする要因になっている。
しかし、原則に則っていれば決闘は有効だ。
そして決闘はそれに挑む者の力のみを持ち込むことが出来る。
ユーギア・マルファハスという男はこの己の力という文言を己の開発した道具の力も含まれると解釈し、決闘に勝利してきた。
決闘に於いて武器を使う事は禁止されていないが、召喚は禁止されている。
ユーギアの持ち込むゼノギアや特殊兵器は召喚か否かで一時は議論を呼んだ。
――あれは召喚とほぼ同じだろう。
――そもそも武器と分類してよいものなのか?
――己の力と言えるものではないのではないか?
様々な意見が出たものの、過半数の貴族が「自力で開発しているし生物でもないのだから本人の力でいいだろう」とユーギアの開発を武器の一種として容認した。ユーギアが貴族としては下級であったが故に勝つ為の努力として受け止められたのもそうだが、決闘に刺激を求める貴族たちの多くは「あいつの決闘おもろっ」と盛り上がっていたいたくらいだった。
よって、ユーギアの決闘は全て有効となっている。
これが面白くないのがユーギアに敗北し、ゼノギアなども認められない少数の貴族たちだ。
一部の貴族達は未だにこの決定を不服として燻っていた。
「クソ! たまたま魔王様の僕が通りかかったとは運のいい奴め!」
「我々はまだゼノギアやら言うものを認めた覚えはないのに、勝ち誇って金儲けし追って!」
数人の貴族達が忌々しげに先日の出来事を思い出して苛立ちを露にする。
彼らは貴族としては下級で、決闘の内容に後から文句を言い続ける行為も貴族内では品のない行為に分類されている。
どんな世界にも上があれば下もある。
彼らは魔界貴族の価値観としては最底辺と言ってもいいくらいにはみっともない連中だった。
そんな彼らの元にまた一人、みっともない貴族が合流する。
「遂にこのときが来たぞ、諸君。あのマルハファスの恥知らずに現実を知らしめる時がな!」
繰り返すが、魔界貴族的には彼らの方が圧倒的に恥知らずだ。
しかし、底辺同士で悪口のために連みエコーチェンバーで価値観が固定化した彼らにはもはや恥の感覚は無い。
合流した若い貴族は、一冊の本を見せつける。
「ここ最近、第一魔界都市で流行する本だ。ここ何年かで急速に流行しつつある」
「なになに……ほう……これが流行なのか! おお、なんかいける気がしてきたぞ!」
「確かに、この本に書いてある通りだ! 素晴らしい!」
「よし、研究所に目に物を見せてやる! これぞ正道、正義は我らの手に!」
「「「おおおおお!」」」
数人で本を覗き込んで盛り上がる姿はまるで河川敷でエロ本を拾った中学生の如し。聞きかじりの知識をすぐ振り翳す様も同じくである。彼らは全員既に成人を迎えていい年をしているが、どうやらいい年の取り方をしていないようだ。
時に、暇な人間には二種類がいる。
暇だ暇だと言いつつ自分では何もしない怠惰な暇人と、弄ぶ暇を消化するためにバカみたいなことを実行し続ける迷惑な暇人である。
彼らは後者であり、そして行動派であった。
それから数時間後、研究所の入り口前には魔法で形作った幻影の横断幕を抱えたまばらな民衆と先頭に立つ貴族の姿があった。
『法律に従え~~!! 魔界は法治国家である~~!!』
『違法建築、不法な乗り物の運用、ユーギア・マルファハスの行動は法に悖る!!』
『不当に得た利益を還元せよ~~~!!』
拡声魔法で喧しいほどに響き渡る抗議の声に対し、研究所はうんともすんとも言わない。貴族達は尚も迷惑行為を続ける。
『決闘による不都合の改変は法治国家としてあるべき形ではない!!』
『そうだ!! 法と秩序による統治があってこそだ!!』
『時代は暴力ではなく理解と平等、保証と責務を求めている!! そうだろ、皆!!』
『『『おー』』』
貴族に連れてこられた面々は召使いからその辺で捕まえてきた人など顔ぶれはバラバラで、いまいち気力に欠ける。主人に駆り出されたりその辺で捕まえられたのがありありと出ており、積極的な人間も暇つぶしであって自分たちの主張には興味がなさそうに欠伸をしている。
そんな彼らを遠目に見て、ハジメは素直にある疑問を抱く。
「何しに来たんだあいつら」
丁度ユーギアから例の品を受け取ってテストしようというタイミングにやってきた闖入者たちに対し、武器を渡しにきたシノノメは感情ゼロの視線を向ける。
「先頭の貴族たちはたまに来訪する。高確率でゼノギア排斥を訴えているが、今日は珍しく多方面に対して挑発を行なっている」
「多方面?」
シノノメの分析はどこまでも冷静だった。
「上位貴族が決闘をせずにその地位を保っていられる確率、0%。上位に成り上がる為に決闘が求められる確率、100%。トラブルの解決に決闘を用いる貴族、全体の80%。彼らの主張は魔界貴族制を否定することと同意義」
「平民になりたいのか、あいつら?」
「貴族の特権的地位を捨てる確率、0%。聞きかじりの知識を叫んでいるだけと推察する」
シノノメは彼らの知性の不存在を信じて疑わないようだ。
ハジメの意見もどちらかというとシノノメ寄りである。
「しかし、魔界にも貴族制に反対する思想があるのは意外だ」
「正確には、貴族であっても決闘という力に依存した決定では無く法に則した決定を優先すべきという主義思想。近年、都心で少しずつ若者の間で広がっていると伝聞で知ったものの、詳細は不明」
魔界の流行り廃れはハジメには分からないが、主張自体はそんなに悪くないと思う。
決闘にもルールがあるとは言え、所詮力ある者が全てを得るルールだ。生まれつき強い魔族が圧倒的に有利で、そうでない魔族に勝ち目はない。そんな暴力的なやり方ではなくルールで理性的に物事を決めるというのはとても理にかなっている。
後はそれに私情を思いっきり挟んでおらず、デモと呼ぶのも躊躇われる団結力の希薄さがなく、なおかつこんな僻地ではなく都市部でやっていればもう少しまともに聞こえたことだろう。
(とはいえ、決闘システムが悪いとは限らないがな……)
結果に疑問を挟む余地が殆ど無いのは分かり易くて揉めにくい。
決闘開始前に双方の主張と要求を明瞭にするのも、後々のトラブル防止になる。
もちろん決闘を悪用する方法は幾らでもあるが、魔界ではそうした悪用の手段が決闘の正当性を疑うものとして共通で認識されている。
国には国の、土地には土地に適したルールがある。
魔界が決闘というトラブル解決手段によって上手く回っていたのは事実だ。
(その辺りのことをどう考え――)
『平等に則り、我が馬鹿であるかどうかの認否を賭けた決闘の結果を無効にする!!』
『ユーギアのデクタデバイス達への決闘の申し込みにゼノギアが介入することを認めさせる決闘を無効にする!!』
『研究所外壁破損の修繕費を支払うことを認めさせた決闘を無効にしろ!!』
(――てないなこれ、うん)
ここまで来ると単なる無法者集団である。
始まりの志が立派でも、受け取り手の頭が残念だと野盗と化すとは悲しい話だ。
シノノメにはそんな感慨も湧かないのか、彼らに指を指す。
「提案。彼らで新武器のテストをしましょう」
「だと思った。しかし暴力に依らぬを訴える徒に暴力を振るっていいのか?」
「正当性の主張は多岐に亘って選択可能。ゼノギアや巨大兵器を使用しないという条件ならば彼らは喜々として平等を投げ捨てる。むしろ決闘という形式を無視した襲撃の可能性もあり」
「……何故かな。予想というより未来予知に近い精度を感じるよ」
ハジメはため息を一つ吐き出すと、完成したユーギアによるハジメ戦用武器を肩に担ぐ。
かなり大型だが、大剣としては常識の範囲内に収まる巨大な刃が陽光を反射して煌めく。
長い柄も含めれば2メートルほどあり、腹は盾に出来るほど広く、白を基調に幾つもの左右対称な黒い溝が入った形状は近未来的だ。研ぎ澄まされた白金色の刃は、今回だけは本来の切れ味を発揮することはないだろう、
「俺の愛剣に相応しいかどうか――力を示せよ、『プレアデス』」
日本ではスバルと呼ばれ、遙か昔に船乗りの航海を見守ったことが由来ともされるプレアデス星団の名を冠する刃がその真価を見せる時が来た。
ハジメの剣を見て魔族は喜々として魔力を全身に漲らせる。
「ルール違反に罰を!! これは決闘ではなく誅伐だ!!」
「罪深き者が罰を受けるのは至極当然!!」
「平民にしては少しばかり魔力があるようだが、我らの敵ではないわ!!」
これではまるで私刑だ。
私刑というのは今でこそ悪しき行為とされているが、元を辿ればまだ文明を持たなかった時代の人間が生産性のない人間を排除して群れを存続させるために編み出した生存戦略なのだそうだ。だからいじめは人間の本能なのだと学者は言う。
こちらの世界ではどうなのかをハジメは知らない。
しかし、転生して以降の30年を通した経験で言わせて貰うと、この世界の人間も性根は変わらないような気がしている。
デモ未満の何かをやっていた魔族達のうち、貴族が一斉に突っ込んでくる。
シノノメの予想は的中したな、と内心ごち、肩に担いだ大剣『プレアデス』を構える。
「斬烈破」
峰打ちスキルを乗せた横薙ぎの斬撃は、衝撃波を伴って広範囲を薙ぎ払う。
油断して低空で接近していた貴族達は余裕顔で防壁を張ったが、ハジメの膂力とユーギアが拘り抜いた新装備の相乗効果はたとえ低ランクスキルでも容易には防ぎきれない。
「うわッ!?」
「あがッ!!」
衝撃波は一撃で貴族達の防壁を砕き、吹き飛ばす。
ハジメはそのうち最も衝撃に吹き飛ばされた一人に狙いを定め、切っ先を定める。
「ライトニングレイヴ!」
上位刺突スキルであるライトニングレイヴは剣の上位スキルの中でも大剣では特に使いづらいとされるスキルだ。逆を言えばこの技の使い心地で剣の性質が分かる。地面を蹴り抜いて一瞬のうちに加速した刃は、凄まじい速度で貴族を斬り抜いた。
勿論峰打ちスキルのおかげで切断されはしない。
更に、かなりの手加減をしたつもりでの刃。
結果は――。
「グバァァッ!!?」
凄まじい衝撃に貴族は空中で錐揉みになるが、ハジメの想定の範囲のダメージで済んだ。
(手に馴染む……下限の手加減は問題ない。ならば、次は上限!!)
ライトニングレイヴの発動が終わると同時、ハジメは踵を返して錐揉みになる貴族に容赦ない連撃を放つ。
「ストリーム……モーメントォッ!!」
ハジメが個人で使える大剣スキルの最上位、四方八方を高速移動しながら敵を切り刻む斬撃の猛襲が貴族を襲う。彼程度の実力に使うには大仰すぎる大技は、最初の一太刀の時点で貴族の意識を刈り取っていた。
一度始まった斬撃は止まらない。
次々に命中する斬撃は貴族を一瞬で死なないギリギリの範囲で痛めつけ尽くし、骨という骨を砕き、皮膚という皮膚を抉り、最早どの口でこれが死んでないと言えるのか聞きたくなる程に悲惨な襤褸雑巾となって地面に転がる。峰打ちがなければ間違いなく血の霧となって砕け散っていただろう。
(大した性能だ。攻性魂殻と併用したが、想定以上に微細に扱える。これならシーゼマルスの晶装機士にもやりようがあったろうな)
柄一つとっても考えて設計されているのか、予想以上の仕上がりだ。
ならば次は、この剣の元となったそれと同じ機能のチェックだ。
「よくも俺の友達をぉ!!」
友人のやられように怒り狂った他の貴族が、空中から雨霰と魔力弾を降り注がせる。不意を突いた先ほどの貴族と違って充分に高度を取った上での攻撃は、一刀の下に斬り伏せるには少々遠い。
ならば――。
「追え、『プレアデス』」
攻性魂殻で念じた瞬間、刀身が芯となる剣から分離して六つの刃となり、それぞれがバラバラの軌道を描いて貴族を襲った。
「なっ、こんな小癪な手数で……うわあああああッ!!?」
最初こそ引き撃ちで撃ち落とそうとした貴族だったが、あっさり弾幕を潜り抜けて迫る大小様々な刃の一つも撃ち落とすことが出来ないまま全身をズタズタに切り裂かれる。これも峰打ちのおかげで死にはしないが、タイミングをずらしながら多角的に襲い来る斬撃は途中で直剣スキル、短剣スキル、双剣スキルを織り交ぜる。
これら分離した刃には全て柄が存在し、それぞれ独立した武器として扱える。
また、ハジメは短剣となった二つの刃に空中で飛び乗り、攻性魂殻・飛天を披露する。怪盗ダンが自我を持って浮遊するナイフを足場に空を飛ぶのと同じ要領だ。
以前の攻性魂殻・飛天は大剣をサーフボードのように乗りこなす必要があったために姿勢に制約があり、動きに限界があった。理論上は二つの刃を足場にすることで更に自在に動けはしたのだが、その分だけコントロールのリソースを割くという新たな問題が生まれるためハジメは実行してこなかった。
しかし、『プレアデス』でやるならば話は変わる。
最初から攻性魂殻との併用を想定して設計された刃は、これまでに扱っていた武器と比較しても格段に操りやすく、割くリソースの量を大きく削減出来るとユーギアの説明書にあった。
これは『プレアデス』が剣であり、マジックアイテムであり、機械であるからこそ出来る破格の削減量。更に言えば、三つの性質があれば万一攻性魂殻を封じる力の持ち主が出てきても他の面でカバーできるなど補助システムとしても機能する。
手に剣を、足に二本の短剣を、他の四つの刃を周囲に従えてハジメは最後に残った数名の貴族に迫る。
残されたのは三名の貴族。
誰もが予想外の強敵――それも魔界の決闘ではとても見たことのない凄惨なやられぶりに狂乱して魔力弾を出鱈目に発射する。ハジメは念のため魔力弾がシノノメや平民のデモメンバーに当たらないよう敢えて大きく動き回りながら肉薄する。
「く、来るな……来るなぁぁぁ~~~!!」
「仕掛けてきたのはそちらだ。仕返しされる覚悟も出来ない意気地無しなら、戦いなど始めるな」
ハジメは空中で分離した『プレアデス』の剣を次々に持ち替え、直剣、双剣、短剣、一部合体による刀スキルと多彩な攻撃を流れるように叩き込み、最後に足下を除く全ての剣を合体させる。
「絶空蒼龍波ッ!」
空の蒼のハジメのオーラを吸い込んで輝く刃が巨大な斬撃を形成し、全ての貴族を巻き込んで傲れる――正確には《《だった》》――魔族を地に叩き落とした。
ハジメは落下しながら攻性魂殻・飛天で操って難なく着地すると、意識を失って半死半生の魔族たちに最低限の回復魔法を施すと、纏めて掴んで見物に回っていた平民達に投げ渡す。
「うちにいられても困るんで、町の近くまででいいから連れ帰ってくれ」
「え……は、はい!!」
「それと……って、もういない」
最初からこのデモ以下の何かに対するモチベーションが低かった為か、呆けていた彼らは貴族達を抱えると続く言葉も聞かずに慌ててその場を去った。目の前の戦い自体はちゃっかり楽しんでいたのか口々に感想を言い合いながら。
「……馬鹿貴族の付き添いなんて面倒だと思ってたけど、スゲーもん見れたな! やりすぎだけど」
「ああいうのタツジンって言うんだろ? 魔剣師団のメンバーなのかなぁ。やりすぎだけど」
「ユーギア研究所の武器、あんなこと出来るんならちょっと使ってみたいわ! やりすぎだけど」
ハジメ、満場一致でやりすぎ認定を喰らう。
魔界の半殺し基準は厳しかった。
シノノメが近づいてきて剣の具合を確かめる。
「各部、正常に作動。摩耗率、エネルギーロス共に0.01%以下。使用に際して違和感は?」
「ない。全パーツが要求水準を満たしている。むしろ部分的には期待以上だ」
ユーギアの機械知識――合体、分離、浮遊する機構への造型の深さを余すことなく注がれた『プレアデス』は、六つの剣を攻性魂殻で同時使用してもそれに割かれるリソースは体感で数の半分、つまり三本程度を操る感覚で動かせる。
しかも全ての刃が一級品で、飛行に短剣二本を割いた状態でも5本合体剣で十分すぎる威力を発揮できる。
満足げなハジメを見てそこはかとなく嬉しそうだが表情は変わらないシノノメは「では……」と呟き、ハジメも頷く。
「あとは、トリプルブイが仕上げた大剣の性能と比較して、どちらを受け取るか決定する」
魔界見学ツアー、これにて終了である。
◆ ◇
ツアーの終了と地上への帰還、それは別れを意味しない。
何故なら、ユーギア研究所とコモレビ村は協定を結んでいるので行こうと思えば行けるからだ。むしろ今回の見学ツアーで双方のハードルが下がったとさえ言える。
ただ、クオンがやたらゼノギアに執着してシミュレータだけでも村に持ち帰りたいと駄々をこねたのは予想外だった。流石にあれを持ち込むとなると設備と技術者も必要なので一旦保留にし、代わりにクオンの探索範囲にユーギア研究所を追加したことで一旦事なきを得た。
「それならまぁ、とりあえずはいいか……」
(とりあえずって何だ?)
問い詰めようかとも思ったが、流石に悪巧みしている訳ではないだろうし嘘が下手なクオンは問い詰めたら全部喋ってしまう気がする。今回は空気を読んで敢えてそっとしておくことにしたハジメであった。
ソーンマルスはこの短期間でどれだけメカニックと親しくなったのか、しっかりめに別れを惜しまれていた。
「職にあぶれたらうちに来い」
「ツナギ、大切に扱えよ?」
「大げさだなぁ。でも、また勉強に来ようと思います」
親しくなった魔族達と次々に握手するソーンマルスは、本気なのか情報収集の為の演技なのかいまいち判然としない。ただ、そんなにも隠し事が上手いタイプには見えないので絆が芽生えたのは本当だろう。
ユーギアは……SF映画に出てくる冷凍カプセルに蜘蛛の足が生えたような機械の中で爆睡している。どうしてもこの武器対決の決着を間近で見たいがためにギリギリまで眠りながらも地上に着いてくるつもりらしい。一応は魔導騎士たちも付き添っている。
「では、地上へ向かう。皆、忘れ物はないな?」
「「「はーい!」」」
トリプルブイとユーギア、二人の職人たちの情熱の結晶のどちらが優れたるかがこれより決まろうとしていた。




