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道を極めたおっさん冒険者は金が余りすぎたので散財することにしました。  作者: 空戦型


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34-19

 ヴァイグとトライグ――二匹の巨大な猫は、魔力で形成した空中の足場を用いて三次元的に駆け回りながらハジメとオルセラに猛攻を加える。


『万物を灰燼に帰す業火に灼かれるがよい!!』

『氷雪さえ静止する凛烈りんれつに凍てつくがよい!!』


ヴァイグの爪が灼熱を、トライグの爪が極寒を宿し、交差するように相反する属性の爪が振り抜かれる。軌道自体は複雑ではないが、レベル100クラスの身体能力と猫の瞬発力から繰り出される速度は尋常ではない。


 二人は危機を察知し、同時に爪から一気に距離を取る。

 交差した爪は残像のような魔力を空間に残して空振るが、空間に残った魔力同士が接触した瞬間に大爆発が発生して熱とも冷気とも知れない空気が衝撃を伝播した。

 その現象にハジメは心当たりがあった。


「フレイザードか……」

「エルフは氷爆と呼んでいる」


 それは、本来は相殺し合う筈の火と氷の属性が一定以上の密度かつ完全にエネルギー量が釣りあった状態で接触した際に発生する極めて稀な現象として魔法学で知られるものだった。

 二つの属性は相殺のために近づきながらも濃度の高さ故に混ざり合うことも出来ず、結果として炎、氷、無の三属性に別たれて一気に破裂し、元の魔力量を上回る破壊力を生み出す。


 この現象をスキルとして成立させるのは困難を極め、ハジメの知る限りでは魔法剣及び双剣最上位スキルの『フレイザードディストラクション』、弓術スキル最上位の『蒼紅そうくノ交ワリ』、及び占星術の『ジェミニリアクター』の三種類しかない。このうちハジメが使えるのはジェミニリアクターのみだ。


 この世界の大型魔物の中で、これほどの技を平然と放ってくる相手はそういない。

 もし迷宮にいたら、恐らくアデプトクラス複数人のパーティでも死者を出しかねない。


「この手のものを純血エルフは沢山蓄えているのか?」

「知る限りではこいつらは二番手だが、一番手はダエグでも出せないだろう。尤も、どちらも我らの敵ではないが」


 オルセラは最早ハジメの実力を一切疑っていない。

 ハジメもまた、オルセラなら上手くやれるという信頼が生まれつつあった。

 二人はそれ以上の言葉を交わすことなく、反撃に移る。


 ヴァイグとトライグの機動力を潰すには、足を狙うべき。

 しかし、高速移動する二匹の足を狙うのは容易ではない。

 ならば考え方を転換する。


(……そこだ)

『フニャッ!?』


 トライグが足場にするために空中で結晶化させた魔力の前に、ハジメは盾を滑り混ませた。予想外の違和感にトライグが思わず悲鳴を上げる。ハジメはそのまま盾を滑らせ、トライグの姿勢を崩す。


 一瞬の隙を突いて、オルセラは床が踏み割れんばかりの踏み込みと共に加速し、道路標識を振りかぶる。

 だが、ヴァイグが相方のフォローをしない筈がない。


『行かせるか……ッ!?』


 即座に爪を振り抜いて斬撃を飛ばそうとしたヴァイグだったが、その動きはハジメの盾に妨害される。攻撃そのものを防いだ訳ではない。盾スキルのステークホールドを次々にヴァイグの動きを阻害する場所に放ったのだ。

 ステークホールドはオーラを纏った盾を地面と垂直に構える際に最大の防御力を発揮する。今回、その地面をヴァイグに見立てて放ったことでただ単純にぶつけるより遙かに強い抵抗力となってバランスを崩させた。


『なんだなんだこの戦い方は!? トライグ、避けよ!!』

『グッ、このぉッ!!』


 避けられないと悟ったトライグは強引に身をよじって魔力を尻尾に集中させ、先端に氷塊を作り出してオルセラ目がけて振り抜く。しかし、オルセラの全力を受け止めるには余りにも威力不足の一撃は、道路標識の先端が触れた時点で氷を粉々に吹き飛ばした。


「オラァァッ!!」

『ギャッ!!』


 身のよじりと尾の打撃で直撃こそ辛うじて避けたものの、身を吹き飛ばす衝撃がトライグを強かに揺るがした。


 ハジメの動体視力と気配察知が二匹の軌道を。

 オルセラの感じた魔力の収束をが二匹の足場を。

 それぞれが分担して情報を読み取れば、このように二匹の動きを妨害するには十分な情報が得られる。そうして妨害している間に、オルセラは好き勝手に動いて強烈な一撃を叩き込む。

 二人の連携は、戦うほどに研ぎ澄まされていた。


「まだだ」


 ハジメが吹き飛ぶトライグを盾を使って無理矢理押し止める。

 押し止めた瞬間、オルセラが遠心力を乗せた道路標識のブロック部分を容赦なく叩き付ける。ハジメは叩き付けた瞬間に盾のコントロールを放棄することで敢えて盾を吹き飛ばさせて攻性魂殻を通した負担を減らし、飛んだあとにまた攻性魂殻で操って妨害をしかける。


 盾を吹き飛ばすヴァイグが渋面で吠える。


『くそが!! キリがない!! トライグ、この盾を凍らせろ!!』

『ダメだヴァイグ、こいつ凍らせた側から新しい盾を投入してくる! 全部凍らせた頃には閉じ込めた氷が女に砕かれて、いたちごっこだ!』

『人間共……一体いつのまにこんなに賢しい力を!?』


 ヴァイグもトライグも相手の手段に対して傾向を分析して対応しようとしているし、実際に予測を外される動きをすることもある。しかし、それはハジメのアクションに対してであって、そこに気を取られれば自由に動き回るオルセラに容赦なく殴り飛ばされてしまう。


 二匹は当然、一つの帰結に行き着く。


『あのヒューマンを倒さないことには何も始まらんッ!!』

『痛いのは我慢!! 目標達成が優先!!』


 すなわち、厄介者の後衛であるハジメの始末だ。

 二匹は互いに熱と冷気を纏い、両足8本からそれぞれ5本ずつ、計40にも及ぶ飛斬を放った。それぞれはバラバラの軌道を描きながらもハジメ目がけて殺到し、恐らくは至近距離で大量のフレイザードを浴びせる結果となるだろう。


 ――さて、ハジメが攻撃に転じないのはオルセラの護衛の為だ。

 ならば、相手がオルセラに危害を加えない状況になった場合はどうすればよいか。

 答えは単純明快。

 自衛の為にハジメ自身が戦えば良い。


 ハジメは高速換装で道具袋から巨大なハンマーを両手に握る。


「ゴルディアスッ! ノットッ! クラッシャァァーーーッッ!!!」


 全身の筋肉が躍動し、ただ一撃の破壊力を生み出す為に共鳴する。

 黄金に輝くオーラを纏ったハンマーを振りかぶったハジメは、奥歯を噛み締めて一直線に眼前目がけて振り下ろした。


 直後、激震。

 余りの衝撃に一瞬音が消え、続いて物理エネルギーの爆発がゴウッ!! と、周囲を襲った。破壊力となって爆発したオーラは、ハジメに接近した40の斬撃全てを粉微塵に消し飛ばし、斬撃の直後に更に畳みかけようと疾駆したヴァイグとトライグの足を一瞬浮かせる。


『バッ、馬鹿力がもうひとり――!!』

『こいつ、後衛じゃなかったん――!?』

「それについては我もちょっと驚愕した」


 ヴァイグの脇腹を、情け容赦ないオルセラの道路標識による殴打が襲った。

 吹き飛んだ体は隣のトライグを巻き込み、それでも衰えることのない勢いで二匹は壁に激突する。衝撃に悶絶した瞬間、オルセラがジャイアントスイングで回した道路標識が豪快に投擲され、更にヴァイクとその奥のトライグに叩き込まれる。


「もう一発、受け取れぇッ!!」

『『ギャアアアアアアアアッ!!?』』


 骨が砕け、肉が弾ける激痛に二匹は全身を震わせて絶叫した。

 内蔵の全てがめくれ上がり、血管の一つ一つに針を流し込まれたような痛み。

 二匹はこのような痛みを生まれてこの方味わったことがなかった。


 オルセラは、投擲した道路標識を手元に戻して肩をとんとんと叩きながら、悶絶する二匹に歩み寄っていく。処刑人が死刑囚にゆっくりと近づくように、厳かに。


「いくら再現体でも痛くない訳じゃあない。殴られれば痛いし死ねば死の苦痛はきっかり味わうことになる」

『ヒッ……!!』

『や、やめて! やめ――』

「しかし殺しきってしまうと再生されるからな。死なない程度に殺してから、この迷路の先への行き方を喋りたい気分にしてやろう」


 高々と振りかぶられた道路標識の切っ先が、ヴァイグとトライグの瞳に反射する。

 最早二匹にとって、それは痛みと暴力の象徴。


『『イヤアアアアァァァァホグパバビデブッッ!!?』』


 生々しい打撃音と絶叫が、その後数分に亘って虚しく響き渡った。

 もはやヴァイグもトライグも最初の威勢は完全に消え去り、病院に連れて行かれていることに気付いた飼い猫のような悲痛と絶望に塗れた顔で悲鳴をあげ続けるしかない。

 動物愛護団体がこの光景を見れば激怒不可避だが、多分文句を言えば彼らも二匹のデカ猫と同じ末路を辿ることになるだろう。


(オルセラからすれば毛むくじゃらのケダモノか毛のないケダモノかの違いだろうからな……)

「貴様は人間に昇格しているから心配するな」


 ハジメの心を読んだオルセラがくるりと振り返るが、能面のような無表情に猫の返り血がべったり付着した様は普通にホラーだった。

 完全に心の折れたヴァイグとトライグはしとしとと涙を流している。


『なんで我らがこんな目に……門番やれって頼まれただけなのにぃ……』

『グリン様、何故我らは斯様な試練を受けねばならぬのですか……』

「さっきから薄々思ってたんだが、こいつらグリンとガッツリ知り合いなんだな」

「おいハジメ、一応敬称をつけぬか。グリン様はエルフの守り神だった神だぞ……ん? いや、ん? 貴様……」


 オルセラはハジメの感情を読み取って何かに気付いたのか、彼女にしては珍しくあんぐりと口を開ける。


「グリン様と、交友があるのか?」

「交友と呼んで良いかは分からんが、割とよくコモレビ村に来るぞ。飯を奢ったこともそれなりにある」


 答えてから、そういえばグリンはエルフの間では大仰な存在であったのを思い出す。


 そもそも冷静に考えれば神獣が村をウロウロしているのは世間的にも常軌を逸した状況だが、ハジメはもうクオンがエンシェントドラゴンだった時点でその辺の感覚がぶっ壊れているしレヴィアタンの分霊の性格がアレだったので「まぁ言われて見れば大変なことではあるか……」くらいにしか思えない。


 しかし、これにオルセラ以上に反応したのがヴァイグとトライグだった。


『グリン様が動いていらっしゃるだと!?』

『まさか、グリン様は誰か背に乗せていらっしゃらなかったか!?』

「フレイとフレイヤのことか?」


 その名前を聞いた瞬間、二匹の表情は猫でも分かるほどに劇的に変化した。

 迷子の中で親を見つけた子供の無垢さと、長い旅の果てに望む場所に到達した老人の悲願が入り交じった、命の果てに漸く見出すことが出来るような――歓喜だった。


『おお、おおお……おおおおおお……!!』

『そうか。そうなのだな……!!』


 二匹は深くは語らなかったが、少なくとも全身を苛む痛みが吹き飛ぶほどの吉報であったらしい。二匹は両目から大粒の涙を流すと、その体を光と散らせてゆく。自ら敗北を認め、再現を停止させたようだ。


『悲願達せり。もはやこの地のエルフの命令を聞く義理もなし』

『元よりそういう約束であった。今、このとき、我らは枷より放たれる』

『ゆけ、人間達。続く通路は幻覚により巧妙に隠されているだけだ』

『道は指し示してやろう。癪だがな』


 オルセラが無言でスッと道路標識を持ち上げると、なんかいい感じに消えようとしていた二匹はビクっと震えて『嘘じゃなっ、嘘じゃない! ネコ、ウソツカナイ!!』『年上なんだから少しくらいの言葉使いは勘弁してくれい!!』と非難がましい視線を向けてきた。オルセラが道路標識をもう一度動かすと二匹とも怯え竦んだ。

 嘘を言っている可能性もあるからという判断なのだろう。

 ひどいとも思ったが、ハジメも同じシチュエーションなら似たことをする方なので口は挟まなかった。


 トライグが無実を証明するように天井目がけて冷気を飛ばすと、一カ所だけ一切凍らない壁が目についた。ヴァイグがそこに火の玉を飛ばすと、一見して壁に命中して火が散ったように見えるのに魔力の流れが不自然だ。あれが隠されし道なのだろう。


『お前らには感謝しているが、断じて二度と会いたくないからな……!』

『鬼畜! 独裁者! 安易な暴力に走ると暴力から抜け出せなくなるんだぞ!!』

「やかましい」


 道路標識の無造作なスイングが二匹を襲ったが、命中する直前に二匹は光となって散った。心なしか散った粒子から失禁ものの安堵を感じた気がしたが、結局あの二匹は一体なんだったのだろうかとハジメは首を傾げるばかりであった。


 と、消えた二匹の粒子に混ざってハジメの足下にころころと瓶が転がってくる。

 それなりに大きな瓶を拾い上げると、そこには琥珀色の液体が詰まっていた。

 オルセラがそれを見て首を傾げる。


「なんだそれは? 魔力を感じるが」

「鑑定したところ、どうやら蜂蜜酒のようだな。あいつらのドロップ品か……一応取っておこう」

「蜂蜜酒か。いいな。エルフの嗜好品でも貴重な部類だ」

「強敵を倒したときに出てくる酒は美味と冒険者の間では相場が決まっている。仕事が終わったら関係者で飲もう」


 なによりもしもこれが激レアな酒だと資産としての価値が出てしまうので、ハジメとしてはとっとと飲んで処分したい。

 オルセラはというと、金欲と対極にあるハジメのおかげでタダ酒が飲めるため心なしか上機嫌であった。しかし、ふと思い出したように彼女はハジメに手を突き出す。酒を渡して欲しいのかと思ったら「ヒャズニンガヴィーグを貸せ」と強く言うので手渡す。

 ヒャズニンガヴィーグの奇妙にねじれた刀身に、オルセラは呆れた。


「兄上……ルール無用とはいえよりにもよって婚姻の誓いの剣を男に渡すとは……」

「やっぱそれ、そういう系のアイテムなのか。じゃあ刀身を完全な状態にするというのは」

「お察しの通りだ」


 ギューフがどのような経緯でハジメに剣を渡したのかを察したオルセラは、眉間に皺を寄せて深い懊悩のため息を漏らす。


「もういい。あとで我が契約する」

「え」


 即断即決すぎる判断にハジメが何故そうなる、と言う前にオルセラがずいっと端麗な顔をハジメに近づける。美しいが故に余計に迫力のある目で睨むオルセラはその理由を一気にまくし立てた。


「仮にも血族の長に男色なんしょくの気があるなどと、虚偽であってもそのような醜聞があってはならん。かといって兄上以外でそのような事に協力する可能性があるのはあの小さなスリサズだぞ。関係性がどうあれ弟が周囲に小児同性愛対象にされているなどと見られる可能性があるなど姉として悍ましいにも程がある。ジェラ辺りは事情を話せば頷くかもしれんが、まだ色も知らないジェラにそのようなことをさせて変な勘ぐりをされるなど姉として言語道断。そのような真似をするくらいならわれが契約して刀身を完全なものとする。異論は認めぬ」


 要約すると……お姉ちゃんの目が黒いうちはきょうだいにそんなふしだらな真似は許しませんよ! だからお姉ちゃんがその役目を引き受ければ解決! ……ということらしい。


「それでお前が誤解されたら結局誰かが汚名を被ることに変わりはないのでは……」


 なんでそこで即座に身を差し出すような真似をするのだろうか。

 スリサズがオルセラを心配するのはそういう所があるからな気がしてならないハジメであるが、彼女はそんなことは知ったことではないとばかりに息がかかりそうな程の至近距離で睨んで圧を強める。


「黙れ。兄上は刀身を完全にすることを契約内容に盛り込んだのだからそれを反故にするのは兄上の沽券に関わる。しかし兄上が契約を行なうのでは、後で掟を変更するにしても変更されたこと自体を否定する勢力にとっては隙でしかない。我が契約して反故にする分には問題なかろう。というか貴様、一時的にでもこの我と婚姻を結べるというのになんだその不服げな態度は!? 栄誉を有り難がれと先にも言った筈だが!?」

(こいつの性格めんどくさ……)


 彼女の感情の機微をどうにも読み違えたか、ハジメはまた地雷を踏んでしまったようだ。


 オルセラはプライドの方向性が色々とおかしい。

 普通、プライドの高い人間は感情が優先して約束そのものを阻止する方向性に動くのがハジメの記憶では殆どだったが、オルセラときたら何故か潔すぎる決断を下したと思ったら急に「この高貴な我が譲歩してやっているのに」という性別の絡んだ方にプライドを発揮させてくる。

 しかも、根本的には自分勝手なままなのでこちらの論理が通じないと来たものだ。


「あのな、俺は妻帯者だから浮気と受け取られることを避けたいだけなんだ」

「このわれが決定したことに()()をつけるのであれば悉く格の違いを見せつけて屈服させればよい! 本気の婚姻は別として我の意思決定を害する者には何人なんぴとも容赦せん!」

「それは世間では略奪婚に見られるぞ!? いや、いい! もういい、俺が悪かった! これはあくまで形式的なことであって、古の血族たるオルセラに部分的にでも認められた証として栄誉に思い受け入れる!!」

「それでよい」


 プライドを満たされたのか、どこか満足げに頷くオルセラ。

 垣間見せた微笑は確かに美しく世の多くの男を恋に落とす魅力に溢れているが、ハジメからするとちっとも有り難くない。浮気の罪状ばかり増えていくが、今回限りの関係で終わるのであれば余りぐちぐちと文句を言うべきではないと改めて己を戒める。


 ……そんなハジメの心の中に住んでいるイマジナリーサンドラが「あれ、この展開どっかで見たことが……」と呟いていたが、ハジメは意識的に無視した。

 どうせなら「同じにはならないですよね!」とか言ってくれれば良いのに、イマジナリーサンドラはどっちの味方なのだろうか。心の中でも空気読めないのがまた彼女の愛嬌だなとハジメは脳死で現実逃避した。


 ――タイムリミットは、残り二時間に迫っていた。

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