32-9
受験者のトップバッターが前に出て、受け取った杖を構えると深呼吸し詠唱を始めた。
次々に詠唱を決めて闇と地のバフフィールドを敷いた魔法使いの地属性魔法を炸裂させた。
「地脈の狂騒、母なる者の逆鱗をその身に浴びろ――グランドバッシャー!!」
大地から噴出した地属性の魔力が岩となって床から噴出する。
グランドバッシャーは中の上ランクの魔法だが、闇と地のバフフィールドによって威力を底上げされ、モノリスはそれなりに濃いオレンジ色に染まった。ハジメから見ても効率の良いバフだ。
ちなみに岩が次々に飛び出したように見えたが、足場に土や岩がない場合は魔力が凝縮されて岩のような性質を一時的に持つだけで会場は砕けていない。
会場からひそひそと声が漏れる。
「堅実だが一番手としてはまずまずだな」
「まだ若いし伸びしろがありそうだ」
順番は次々に巡っていく。
次の魔法使いも属性は違えど似たランクの魔法を使用したが、今度は反応が芳しくない。
「彼はもう四十代だろ? その年齢で中位止まりは少し厳しいな」
「せめてもう一ランク上を目指せなければ長続きしないだろう」
やはり、実技ともなると年齢が足を引っ張るようだ。
男もそれを薄々気付いているのか、力ない足取りでその場を後にした。
その後、四人目の実技で事件が起きた。
「――フェアリィ・シンドローム!!」
女性の受験生が発動させたのは、なんとマリアンが開発した飛行魔法だった。
女性の身体が宙を舞うが、自在に飛んでいるように見えたのは一瞬で、即座にコントロールを失った彼女はデララメに空を飛び始めた。
「くっ、ど、どうして……止まらない!!」
バランスを取ろうとして余計にバランスを崩してを繰り返す彼女はみるみるうちに着地も危うい危険な状態になっていく。ハジメが落下死だけは避ける為に静かに腰を落とした刹那、会場から空に飛び上がる人影があった。
マリアン・ラファルだ。
流麗な動きで飛び上がったマリアンは出鱈目に動く受験生の軌道を見切って瞬時に後ろから羽交い締めすると、エアロバーストで即座に飛行魔法を強制的に打ち消してそのままゆるりと地上に降ろす。
会場からおお、と感嘆の声があがった。
「飛行魔法フェアリィ・シンドロームをあれほど自在に操れるとは!」
「流石は風のマクスミリアン……飛行魔法の祖の実力、感服ものだ」
当のマリアンは称賛の声に興味は無いのか試験官に目配せする。
「安全配慮のための干渉だし、問題ないわよね? 彼女は分不相応な魔法を使用して暴走させた」
「異論ありません。彼女は失格処分です」
直後、女性の参加者バッジが色を失って勝手にローブから外れる。
「ああっ……!!」
「知識、力量、共に足りていない。練習でも何度かまぐれで飛べた程度でしょ? そんなもの試験に持ち込んで上手く行くわけない。過程を全部見直して問題点洗い出すまでソレは使わないことね」
冷たい言葉に女性は悔し涙を流すが、マリアンは容赦なく彼女を風魔法で浮かせて脇に追いやると飛行魔法で自分の席に戻った。
クオンが泣いて蹲る女性に同情的な視線を送る。
「なんか可哀想……」
「厳しい言い方だけど、自分の魔法で自分が死にかけるなんて論外よ。即失格になって当然だわ」
あくまでドライなマリアンに、フェオが疑問を呈する。
「でも、あのフェアリィシンドロームでしたっけ? 飛行魔法自体はきちんと発動してたのに、どうしてバランスを崩したんでしょうか? ふつう一度発動した魔法は暴走したりしませんよね?」
「それは、魔法理論がそれだけ強固だから。フェアリィシンドロームはまだ基礎を叩き上げたばかりだから応用や最適化の過程を経てない荒削りの原石なの。勿論発案者で天才の私なら今くらい自在に使えるけど、魔法はここからが時間がかかる。冒険者たちが当たり前に使ってる魔法達も、そういう経緯を経て完成した術なのよ?」
これが実践魔法がやや研究者に軽んじられがちな理由だ。
既に完成している術の応用より新たな魔法理論の方が可能性に満ちているからだ。
フェオは納得し、はたと気付く。
「ちょっと待ってください。今回のルミナスちゃん、飛行魔法使うって……」
「勿論、ルミも失敗すればああなるわ。ちなみに私の目の届くところであの子が使った飛行魔法はだいたい失敗してたりして~」
「何でそんなに暢気なんですか!!」
「あの子が天才マリアン・ラファルの弟子だからよ」
「なんですかそれ……シオちゃんも何とか言ってあげて――」
助け船を求めたフェオだったが、聞いた相手が悪かった。
「あの子が自分の弟子だから……くぅ~言われてぇ~~!! 師匠に人生で一度は言われてぇぇ~~~~~!!」
「あっダメだわかり合えないモードに入ってる」
自分が言われる様を想像してくねくね悶えるシオに、フェオは彼女に話しかけること自体を諦めた。
彼女がそうこうしている間に、既にルミナス・グアリ・ラファルの実技の番が回ってきた。マリアンはへらへら笑ってフェオの肩をぽんぽん叩く。
「まぁ見てなさいって。元々コントロールは安定してたし、どうやら昨日の晩ハジメとこそこそ夜の特訓して何か掴んだみたいだから」
「何かって、なんですか?」
「それを聞いちゃったら今日の楽しみがないでしょ?」
偉大ではあるのだろうがどこかいい加減な大魔法使いに、フェオはルミナスの苦悩をほんのり察した。この人、面白いからとかそういう理由で事態を悪化させるのに本人は困ってないから悪びれることもないタイプである。
◇ ◆
ルミナスの人生は悪目立ちの連続だった。
グアリ家でたまたま他の兄弟より早熟したからと【アンチフォーゲット】を強引に継承させられ、このアフォゲをコントロール出来ずに悪目立ちを続けた。
それが原因であの弟子を取らない天才で有名なマリアンの目に留まり、今度はリ=ティリを飛び出してあちこちで冒険者の真似事をさせられ、私生活でだらしないマリアンを精力的に支えなければいけなくなった。
冒険者側からしてもマリアンは奇異な存在で、余計にアフォゲが恨めしくなった。
でも、今日は違う。
自ら目立つと分かっていてここに立っている。
「マクスミリアンの一番弟子、か……肩書きは立派でもあの間抜けなグアリ家ではな」
「先祖代々凡人揃い。ラファルの天才は少々お遊びが過ぎる」
「聞けばここ数年は碌にリ=ティリにすらいなかったのだろう? どこで遊びほうけていたのやら……」
「論文と実技、両方で挑むなど愚かにも程がある。半日も時間を無駄にするではないですか。有名な師を持って思い上がりましたかねぇ」
冒険者の真似事をしてから耳が良くなったせいで、周囲の声がよく聞こえた。平常心を保てと言い聞かせるが、その時点で平常心から傾いているのを自覚してしまう。
どこからかシュテルム一門の会話も聞こえてきた。
「出来る筈がないわ。さっきの身の程知らずと同じ目に遭うのがオチに決まってるじゃない。ですよね、師匠?」
「ブリューナクの言う通りだ。フェアリィシンドロームを御せるのはマリアン・ラファルのみ。私にすら困難だったものをあんな小娘程度がものに出来るものか。ラファルもこれで評判を落とすことになるな……くくっ」
「最後にはあの訳の分からない間抜けな刻印魔法をプロペラのように回して飛ぼうとするのかしらね?」
「……もしも」
ふと、弟子のレニスが他の門下と違う言葉を口にした。
「もしも彼女が飛行を成功させたとすれば、師匠はどうなさいますか?」
「ありえん。よって考える必要すら無い」
「そうですか……」
今の会話、もしもマリアンが聞いたら失笑しただろう。
あらゆる可能性を考慮して小さな可能性を知識の海から掬い取るのが研究者の本懐。考える必要が無いというのは思考を停止しているだけのことだ。
レニスは師の問いに、僅かばかりの不安を覗かせた声を零した。
ミーティとリューナが嘲笑うような声でおどけた。
「もし成功したらシュテルム門下を去ってもかまいませんことよ?」
「私もいいよ~。ま、バミンガン師匠の見立てが間違ってるなんて絶対あり得ないと思うけどね」
「……」
意外なことに、レニスは師の言葉を疑っているようだった。
はて、彼女に買われるような真似をした覚えがない。
しかし、面白い言葉を聞けた。
後でマリアン師匠に聞かせてあげよう。
「杖を」
「はい」
ルミナスは試験官から杖を恭しく受け取り、所定の位置へと歩み出す。緊張に胸が高鳴るが、深呼吸で抑える。
吸って、止めて、吐いて。
ルミナスは天才ではない。
だからこそ、基礎に忠実にすればいい。
昨日のハジメとの会話を思い出して、自らのやるべきことを再確認する。
――先日の訓練場でハジメに出会ったのは偶然だったが、声をかけたのは別の理由だった。
七割程度のラインで安定化させた飛行魔法フェアリィシンドロームの制御についてハジメに知恵を借りてはどうかとシオに提案されたのだ。
曰く、魔法を使わなくともハジメは飛べるから何かしらのヒントを持っているとのこと。全然意味が分からないし年上すぎて話しかけるきっかけが掴めなかったルミナスは気付けば盛大に脱線した話をしていたが、そもそもハジメも明日はなにか賭け勝負をすると耳にしていたルミナスは尋ねた。
『ハジメさん、シオちゃんの為にあのアグラニールと競うんですよね?』
『競う必要は無い。効率を考えれば同じ結論に辿り着く』
ハジメは練習用の杖を手にして地面を削って火属性のバフ特性を書くと、ルミナスに見るよう促した。
『火属性の威力を高める属性は同じ火、熱を増幅する光、より激しく火を煽る風、あと魔法の種類によっては地の四種類。魔法攻撃力を増幅するバフもあるがフィールド魔法の倍率には叶わない。さて、使える魔法が三回までなので敷けるフィールドも限られる。君ならどうする?』
『ええと……まぁ単純に――』
ルミナスは自分の魔法知識での常識を語った。
しかし、ハジメの結論は異なった。
『――そういう訳でな。その過程は経る必要がない』
『えええッ!! 嘘でしょ!? じゃあ世のボルカニックレイジ使いはみんな非効率な考え方をしてるってことですか!?』
それは今までの魔法の定説を覆す驚愕の事実だった。
一瞬なにかの間違いではないかと疑ったが、マリアンが仮弟子候補に真っ先に名前を挙げたのはこの男だった。他に仲の良い魔法使いの冒険者は幾らでもいたのにだ。シオも、あれだけ優秀なのにハジメを尊敬していた。
ハジメは「そう驚くことでもない」と諭した。
『身近なところに見落としがあるなんてありがちなことだ。魔法の例外なんて探せばいくらでもあるぞ。例えばグラビトン系の魔法は大地に相手を押しつけるのに地ではなく闇属性だったり、そのグラビトン系に対抗する魔法は相反のフィールドではなかったり……』
『そんなのよくスラスラ出てきますね……グラビトン系の地と闇の差なんて学者くらいしか気にしないのに』
この知識量、記憶力、なにより着眼点。
ルミナスは漸くシオが彼に一目置く理由が分かった気がした。
百の研究で辿り着く経験を、彼は冒険の過程で全て終えているかのようだった。
『シオ曰く、俺のメモは魔法学の基礎を信用してない人間の研究結果だから面白いらしい。そういう訳で……まぁ、力になれるかは分からんが君を手伝おう。君が突然俺に世間話をしたのは何か言い出すきっかけが欲しかったんじゃないか?』
『そ、そうです。ウチ、もしかしてアフォゲに出てました?』
『少しだけ。意味にはすぐに気付けなかったが』
『あうう……』
両手でアフォゲを押さえ込んで羞恥に呻くが、手を退けたら恨めしきアフォゲは平然と立ち上がった。
――ルミナスは飛行魔法が完全に安定化しない理由と自分なりの対抗策について様々なことを話し、バフに使う魔法の選定についてハジメに意見を求めた。
ハジメは顎をさすり考える。
『そうだな……マリアンの飛行を見たことがあるが、あいつの飛行はパワー型というか、飛ぶ為というには戦闘向けすぎる。だから操作がピーキーなんだろう。君の目的はマリアンのように飛ぶことか? それとも飛行魔法の安定か? もしも後者なら、風魔法をバフに使うのでは限界があるように思う』
『……私の論文は、飛行魔法をより実用的に仕上げるための改良です』
ルミナスはマリアンにはなれないが、受け継げるものはある。
それが彼女がマリアンに拾って貰ったせめてもの恩返しだ。
ハジメはルミナスの答えに頷くと、再度思案に耽る。
『飛行の妨げになるもの……クマバチは計算上空を飛べないから気合いで飛んでるなんて古いバカ話は当てにならんし。竜人もハルピーも身体機能として揚力を得られる羽根をもっている。まさか鳥みたいに骨をスカスカにして軽量化を図るなんてのは非現実的すぎるし……』
『軽量化?』
考えたこともなかったが、確かに今から激痩せはちょっと発想が安直すぎる。
しかし、思えばルミナスが研究する魔法理論は全てマリアンが使うことを前提とした魔法だということを先ほどの会話からも思い出す。
今の魔法では体重が重い人は魔法を使えないことになり、魔法の汎用化は到底望めない。ということは目指すべきは風の操作ではなく飛行の妨げになる要因の洗い直し。
重いと飛びづらいのはなぜか?
この星に重力があるからだ。
グラビトン系魔法はその重力を増幅する。
ではグラビトン系の対抗魔法本質は――重力への反発だ。
『ウチ、ものすごい見落としをしてたのかも……ハジメさん、ちょっと検証したいことが!!』
『構わない。よくは分からないが、明日にはもう試験だから急いだ方がいいぞ』
あの日、ささやかな勇気を振り絞ってハジメに声をかけて本当によかった。
ルミナスの飛行魔法理論は過去に比べて安定してはいるが、それは師の魔法運用を模倣したものだ。足りないものを探して独自の改良を加えたが、それでも、どうしても安定性に欠けて師のように操れない。
フェアリィシンドロームを安定化させるには調整する箇所が多すぎる。
今までルミナスは全てに場当たり敵に調整を施していた。
しかしあの時の会話で気付いた。
今のままブラッシュアップを続けてもピーキーな魔法であるというリスクを取り除くことが出来ない。
しかし、新たな術式を擬似的に当てはめて計算し直した今ならば、前提そのものが覆る。
まずは一手目。
「空の翼よ、我が背を押せ――フェザーウインド」
自らの周囲に風のバフを生み出し、簡易的なバリアにもなる魔法。
フェアリーシンドロームを安定させるために誰しもが真っ先に思い浮かぶ補助魔法だ。
そして、殆どの人がその後に同じ魔法を使う。
風のバフをかけるフィールド魔法、ウィンドフィールドだ。
かなり広域に発動できて、身体を浮かす風の推力を増してくれる。
しかし、その魔法は失敗だった。
マリアン以外、飛んだ後のコントロールが出来なかった。
全ての風が増幅されることで微調整が困難になってしまうのだ。
だから、ここに当てはめるべきは出力を上げる魔法ではないのだ。
「浮け、レビテイト」
その魔法を聞いた途端、会場の殆どの人間がぽかんとした。
「レビテイト……?」
「あの、風魔法を使っていたらいつの間にか覚えている初歩の?」
彼らには余りにも突拍子のない魔法に見えただろう。
それもその筈、レビテイトは一般的にはたった二つしか用途がないと考えられている。
レビテイトの効果は自らの身体を軽くするというもの。
グラビトン系の魔法が猛威を振るった時期に対抗策として開発されたこの魔法だが、身体が軽くなると重心の取り方や力加減まで狂ってしまうためスピードの補助などの効果が望めないという欠点を秘めていた。
他の使い道と言えば、水に落ちたときに溺れないよう身体を軽くして浮かせるくらいだ。船乗りには大人気だが、科学者にとっては研究のしがいもなく、どうしようもない魔法である。
しかし、ルミナスはこの魔法に光明を見た。
軽くなるということは、重力に反発する力ということだ。
そもそも重さの概念は重力が生み出す。
レビテイトは自分を軽くしているのではなく、自分にかかる重力を軽減することで結果的に体重が軽くなったかのような現象を引き起こしている。
マリアンはこの魔法を自分の魔法に取り入れていない。
だからこれは、天才ではないルミナスなりの方法だ。
「遙か遠けし妖精郷の幻影囁けり。汝、翼あり。汝、既に空にあり。羽ばたけ。揺蕩え。現実とはすなわち星の海に広がる幻想のひとかけ――フェアリィシンドロームッ!!」
魔力が背に集まり、噴出し、二対四翼の幻想的な羽根がしなり、ルミナスは空を舞った。
ただ飛び上がったのではない。
重量への考慮が大幅に減ったことで、これまでの効率化理論が飛躍的に上昇している。
ルミナスは周囲の柱の合間を縫うようにひらりひらりと可憐に、自在に、本物の妖精のように柔らかく飛翔していく。
吹き抜けの訓練場を抜け、塔の背を超し、いつしか町を見下ろすほど高く飛んだルミナスは、ちっぽけになってしまった窮屈なリ=ティリの町並みを見下ろした。
視界に広がる果てない地平線と空の狭間は、羽根のない人間の進歩を祝福しているかのように煌びやかに見えた。
「やっとここまで追いつきましたよ、師匠――」
とてもいい気分だ。
家も周囲も何も関係ない。
ここはまだマリアンとルミナスしか知らない経験の世界。
ルミナス・グアリ・ラファルは自らに課した試練を乗り越えたのだ。
いつかこの幻想的な景色が現実と取って代わり、誰もが見られる時代が来るのかも知れない。ハルピーや竜人にとってはその気になれば当たり前に見られる景色だが、翼のない人間にとっても当たり前になるにはまだまだ時間がかかるだろう。
今頃偉大な師はどんな顔をしているだろう、とルミナスは考える。
とびきり喜んでいるだろうか、それとも相変わらず出来て当然だと後方支援面でドヤってるのだろうか。
「流石の師匠もそこまでひねくれ者じゃないですよね」
飛び上がったことで心まで軽くなった気がしたルミナスは、期待を胸にそのまま自由落下し、地表寸前でふわりと姿勢を立て直して着地した。
ルミナスが空から舞い戻ると、会場は静寂に包まれていた。
誰もが目の前の光景を信じられなかったのだ。
しかし、シオがわざとらしく大きな音をたてて拍手を始めるとマリアンの弟子たちがそれに続き、やがて失敗すると高をくくっていた者も現実に頭が付いていかなかった者もそれに加わり、万雷の拍手が響き渡った。
そんな中。
たった一人だけ。
拍手に参加しないどころか我関せずと瞳を閉じて夢の世界に旅立っている者がひとり。
「すかー……ぴー……」
(ウソでしょ師匠ぉぉぉぉオオオッッ!!)
自分の晴れ姿を魅せたかったマリアン・ラファルその人である。




