↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
道を極めたおっさん冒険者は金が余りすぎたので散財することにしました。  作者: 空戦型


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/459

4-2

「――」

「――」


 言葉もなく二つの武の極みは激突し――魔王城上空で太陽を覆い隠す瘴気が衝突の反動で消し飛んだ。


 余波はそれだけに留まらず地割れを引き起こし、轟音と衝撃波を撒き散らし、そして魔王城の頂上である魔王の部屋から「ヒィィィィィィィ!?」と甲高く情けない悲鳴が響いた。心なしか女性な気がする。


 石破れて天驚く、という諺があるが、それは比喩のようなものであり物理的な意味では決してない。

 しかし、この二人はそれを物理現象としてこの世界に顕現させた。


 これが、世界最強の冒険者たちの所業。

 これが、人間の辿り着いた次元。


「ラァァァァァァッ!!!」

「オォォッッ!!!」


 雷鳴と共にライカゲが残像の見える速度で拳や蹴りを放ち、ハジメが剣でそれを全て正確に武器で切り払う。


 そのたびに、行き場のない雷と衝撃が荒れ狂い、空を幾度となく駆け巡る。


 ハジメが背に舞う武器から槍で刺突を放ち、それをライカゲが神がかり的な見切りで受け流し、ハジメの続く一撃もいなしきる。


 受け流したハジメのスキルの威力はどこまでもどこまでも飛来し、その遠い先に存在した魔王軍幹部の砦に衝突して地盤沈下を引き起こした。


 一度、二度、三度と衝突するたびに地盤が紙のようにめくれがあり、地形が砂を崩すように呆気なく変形していく。


 雷の速度で流麗な連撃を放つライカゲと、それを様々な武器と魔法で迎撃するハジメの殺陣は互いに一切譲る気配を見せない。ただ悪戯に大地は裂かれ、天を雷が貫き、そして魔王城の中から阿鼻叫喚が響き渡る。城の中には一切被害がないが、既に彼らが総力を挙げて二人を襲おうが壊滅する未来しかない。


 やがてその衝突が数十に及び、もはや周辺から魔王城以外全てが消滅するのではという被害規模に拡大した頃――人類頂上決戦に待ったをかける声が響いた。


「ママ~~~!! おじさ~~~ん!!」


 それは、つい最近ハジメが孵化させたエンシェント・ドラゴンの子ども、クオン。くりっとした可愛らしい瞳の彼女はどうやらハジメたちの居場所を何らかの方法で辿ってきたらしい。


「二人ともずるいよ、おシゴトだって言ってたのにこっそりたたかいごっこして!! 私には付き合ってくれなかったくせにー!!」


 不満を露にしたクオンだが、すぐに何かを思いついたようにころりと悪戯っぽい笑みを浮かべる。


「いいもんねー、ランニューしちゃうもんねー!! いっくよー!! すぅぅーーー……」

(あっ)

(これアカンやつや)


 この瞬間、ハジメとライカゲは空を飛ぶクオンの口元に――自分たち二人の魔力を全て注ぎ込んでも発生させられるかどうか怪しい極大の魔力が収束していることに気付き、顔を見合わせると同時にその場から全力で飛び退いた。


「――くおぉぉぉぉーーーーーーーんっ!!」


 直後、この世の全ての闇を灼き尽くすように煌々と輝くブレスが発射された。

 溢れる魔力と神聖な力を内包したそれは、太さだけで既に数個の町が収まる程の範囲であるにもかかわらず更に拡散されて幅を広めていき、そして偶然にも魔王城の障壁に衝突。


 直後、閃光。

 後れて、大爆発の衝撃が大地を灰燼と帰した。


 文字通り魔王城の周辺全てが木っ端微塵に消し飛び、そこにはもはや足場すら失って空中に取り残された魔王城だけをぽつんと残した、巨大な、とても巨大な――国が一つ収まるほどのクレーターが空いていた。

 空には粉塵がもうもうと立ち昇り、まるできのこのような奇怪な煙が形成されている。


 残された魔王城は障壁に無数の亀裂が入り、あと一つ石ころでも叩きつけられただけで砕け散りそうな惨状に陥っていた。


 思い切りブレスを放出してすっきりしたとばかりにうぅん、と伸びをしたクオンは改めて自らの所業を目視で確認し――。


「あれ? ……やりすぎ?」


 ――可愛らしくこてんと首を傾げた。


 この後滅茶苦茶ハジメに怒られたクオンの情けない鳴き声が霧の森に響き、そしてライカゲは自宅で「また決着が着かなかった」といじけたように呟いたのだった。クエスト失敗である。


 エンシェントドラゴンのクオン――今はハジメの方がレベルは上だが、魔力と破壊力の総量では既に彼女の方が何枚も上手のようである。

 なお、その後一か月間魔王軍の活動が極端に鈍化したのは余談である。




 ◇ ◆




 ――その昔、勇者でもないのに勇者以上の実力を持っていたハジメとライカゲは権力者を含むとある一派に疎まれており、二人とも「魔王軍の裏切り者を討って欲しい」という偽の依頼で衝突させられた。


 二人の戦闘場所は当時遠征をしていた魔王軍の進軍ルートであり、二人を共倒れにさせつつ魔王軍も戦力も削る一石三鳥の作戦の筈だった。


 しかし、予想以上に実力が伯仲していた二人の戦いは決着が着かず、二人がそれほど消耗しない間に魔王遠征軍が現場に到着。二人は自分たちが偽の依頼に引っかけられたことにうすうす気づいていたために戦いを中断し、魔王遠征軍を壊滅させて指揮官の幹部を殺害した。


 なお、偽の依頼を出した者は忍者を裏切った報いを受けたとハジメは聞いている。


 ともあれ、ハジメとライカゲはそれ以来の付き合いだ。

 互いに強くなりすぎて自分の能力把握が難しい者同士、定期的に戦っては自分のレベルを実感し合うのだ。


「ただ、今回はそのあくまで本気ではない部分が裏目に出たようだが……」


 村に戻ってすぐにクオンを一通り叱り、慣れないことをしたとばかりに外の空気を吸うハジメ。その隣で背中から壁に寄りかかるライカゲは「あんなもの予想できるか」と珍しくいじけたような態度を取る。

 一応、あれでもハジメとライカゲは互いに全力の殺し合いなどしていないのだ。


 例えばライカゲは更に強力な分身や大きな術、召喚術、大型手裏剣などの武器、忍術による地形変化や幻術を使用していない。また、体術も更に強力なものを温存していた。

 ハジメもまた杖二刀流、攻撃スキルコンボ、盾の裏の仕込み矢、その他豊富なサブ魔法など使っていなかった技術は多い。また、神器に近い性能を誇る聖遺物級の武具も使用していなかった。


 故に、あれだけの規模に発展してもあくまで手合わせの範疇だったのだ。


「そんな我々を以てして戦慄を覚えるクオンのブレスか……」

「今回ので実感させられた。エンシェント・ドラゴンはたとえ子供であっても俺たちの常識で図れるような力をしていない。より教育に失敗できなくなった」

「弟子共々、手伝いはしよう」

「助かる……」


 少なくとも戦闘技量に関してはないも同然のクオンだが、あの破壊力を遺憾なく発揮出来るのであれば技量差などなんの慰めにもならない。まかり間違って『何か』があれば村どころか『霧の森』そのものが更地になるだろう。

 クオンがうっかり空にブレスを放って神を撃ち落とさないか心配になる転生者たちであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 本当に体力テストが目的だったのか… しかし、実にクオンの存在は爆弾よの…せめてもう少し子供心を抑えられるくらいの落ち着きが身に付く年齢になればよいのだろうけど…竜族がその年齢になるまでには…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。