エピローグ BAD END後の世界
全校生徒、教員の前で大失態を演じたアリアは、気丈にも翌日から学園に姿を現した。
だが、彼女を取り巻く環境は、当然ながら一変していた。
集まる視線に羨望や尊敬はなく、侮蔑、憐憫、同情、嘲笑、そして大半の男から向けられる、仄暗い劣情。
それらの視線に晒されながらも、友人達の助けを得て、何とか学園生活を送るアリア。
だが、そんなアリアに、追い討ちの様に更なる苦難が降りかかる。
「あっ、くぅぅっ……! ふぅっ! ふぅっ!」
授業の進む教室の中、微かに響くアリアの苦悶。
衆目に失禁を晒したアリアは、そのショックで心身を壊し、極度の頻尿体質になってしまったのだ。
精神的、肉体的なものに加え、魔術暴発による尿生成も常時発生。
2時間もあれば、900mlを超えるアリアの膀胱が満タンになってしまう有様だ。
これは学園側も把握しており、特例としてアリアだけは、2時間続きの授業でもトイレ休憩が設けられ、トイレの確保が不可能な課外実習は免除されることになった。
だが、今日は折悪く、休み時間中のトイレを逃してしまった。
授業開始から強く感じていた尿意は、あと5分を残してもはや限界。
下着は、既にグッショリと濡れそぼっていた。
(あと、五分……! 300数えたら……トイレ……!)
未だ、アリアに『教師にトイレを申し出る』という選択肢はない。
むしろ、『お漏らし皇女』になってから、より過敏になったようにも思える。
残り5分を死ぬ思いで乗り越え、椅子にも小さくない水溜りを作ったアリア。
最後の礼で太ももと床にも飛沫を飛ばしてしまうも、何とか本格的な決壊に至らぬまま、大急ぎで教室を出る。
廊下に水滴を落としながら、一目散にトイレを目指すアリア。
だが、そんな彼女の前に、女子の一団が立ち塞がった。
「な、なな、何っ!? 私……あぁっ…いい急いでるのっっ!!」
「どうしたの?」
「そんなこと言わないで、私達と話そうよ」
「わ、わかってる癖にっっ!! どいてっ! どいてぇぇっっ!! ああぁあぁっっ!!?」
アリアは既に、両手で出口を抑えている。
誰がどうみても『おしっこが漏れそう』にしか見えない。
叫び声が上がるたびに、床を叩く水流。
「お願いっ……も、もう許してっ……トイレにっ、トイレに行かせてえええええぇぇぇっっっ!!!」
「ふふふっ、だーめ」
廊下は授業終えた生徒達で溢れかえり、その誰もが、アリアの窮状を楽しんでいた。
そして――
「あ゛あ゛あ゛ぁぁああああぁぁああぁあぁぁぁぁああぁぁあぁっっっっっっ!!!!!!」
滝の様な水音が、廊下に響き渡った。
この日を境に、アリアは学園に来なくなり、その後、歴史の表舞台からも姿を消しました。
ただ一つ、学園の生徒達に語り継がれる噂話に、消えない『お漏らし皇女』の名を残して。
『このアリア』のお話は、これでおしまい。
もし機会があれば、『別のアリア』の話で、またお会いしましょう。