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道場訓 九十九   勇者の誤った行動 ㉞

「くくくっ、呑気に寝ている場合じゃねえぜ」


 俺はつかつかと般若面の男に歩を進めていく。


 般若面の男は体内に相当なダメージを負っているのだろう。


 大の字に寝ながらピクリとも動かない。


 もしかすると、あまりの衝撃を受けて気絶したのだろうか。


 だとしても、まったく関係ない。


 般若面(はんにゃめん)の男が気絶していようが狸寝入(たぬきね)りしていようが、俺が今からする行為をやめる理由はまったくない。


「おい、生きてるか?」


 俺は般若面(はんにゃめん)の男のすぐそばまで来ると、顔をニヤけさせながら(たず)ねた。


「…………」


 返事はない。


 本当に気絶したのだろうか。


 まあいい。


「そのまま気を失ってろよ。そうすれば気づかないままあの世にいけるかもしれねえぜ」


 そう言った直後、俺は般若面(はんにゃめん)の男の腹に攻撃を放った。


 靴の(かかと)を使った〝踵落(かかとお)とし〟だ。


 ドンッ!


 俺の靴の(かかと)般若面(はんにゃめん)の男の腹にめり込む。


 ビクン、と般若面(はんにゃめん)の男の身体が跳ねた。


 と同時に、俺の体内にぞわぞわとした言い知れぬ感情が沸き出てきた。


 歓喜(かんき)優越感(ゆうえつかん)だ。


 まるで虫けらを踏み潰すような暗い喜び。


 俺は我慢ができずに般若面(はんにゃめん)の男に馬乗りになった。


 そして――。


 俺は般若面(はんにゃめん)の男に、馬乗りの状態から突きを繰り出す。


 狙った場所は当たり前だが顔面だ。


 仮面越しに俺の突きが般若面(はんにゃめん)の男の顔面に叩き込まれる。


 1発――2発――3発――4発――5発――6発――。


 俺はあらん限りの力で般若面(はんにゃめん)の男の顔面を殴りつける。


 なかなか頑丈な仮面だな。


 10発以上殴ったところで俺は攻撃をやめた。


 信じられないことに、般若面(はんにゃめん)の男が被っている仮面はヒビすら入らない。


 感触的には仮面の素材は金属ではないので、4~5発程度の攻撃で完全に壊せると思っていたのだが……。


 ともあれ、仮面越しに相当なダメージを受けているのは間違いない。


 おそらく、仮面の下は俺の攻撃の衝撃が伝わったことで血まみれだろう。


 下手をすると絶命しているかもしれない。


 だとしたら拍子抜けだった。


 てっきりもっと強いかと思ったものの、これでは俺が少しばかり本気を出したのが馬鹿らしくなる。


 まあ、それはさておき。


 ふん、と俺は鼻で笑った。


「どこのどいつか知らねえが、最後にその(ツラ)(おが)んでやらあ」


 俺は口角を吊り上げると、般若面(はんにゃめん)の男が被っている仮面を両手で掴んだ。


「さあ、一体どんな(ツラ)をしてやがるんだ!」


 直後、俺は般若(はんにゃ)の仮面を強引に()ぎ取った。


「――――ッ!」


 次の瞬間、俺はあまりの驚きに目を見開いた。


 なぜなら――。

 

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