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40 満天姫、燈子姫の訪問を受ける

「燈子姫様がお尋ねになりました。姫様、どうなさいますか?」

 

 燈子姫のお付きの女官那岐から、急遽、満天姫にお会いしたいという話を聞いた雪乃は慌てて満天姫に意向を聞く。

 燈子姫は公家の鷹司家の姫君。この月路の儀では、正室候補として満天姫のライバルにあたる。

 燈子姫は月路の儀の初日のことで満天姫に感謝の歌とお菓子をもってきたことがあったが、その後も料理対決で食材を融通してあげた。

 今日はそのことで燈子姫自身がお礼を言いたいということらしい。


「会う」


 主人の短い返事を聞いた雪乃は、同じ立場の女官那岐にそのことを伝える。

 那岐自身は相当に緊張しているようで、雪乃の返事を聞くときは完全に目が泳いでいた。

 まだ満天姫のことを誤解しているようだ。

 何しろ、前回の人斬り鬼を成敗した話が屋敷中で噂になっており、満天姫を怒らすと大変なことになると女官の間では評判なのだ。

 恐らく、礼を言いたいという主人を諫めたのだろうが、燈子姫はそれを受け付けず、使者として遣わされたのであろう。


「あの満天姫様」


 雪乃は燈子姫が部屋に来る前に満天姫に助言しておこうと考えた。

 燈子姫に対面するのは今回が初めてである。

 無難に行う方法を教えておかないと、何か起きるような嫌な予感がしたのだ。


「よいですか姫様。燈子様にお会いされたら、まずは褒めてください」

「……褒めるじゃと?」

「はい。誰でも褒められればうれしいものです。燈子様は大人しい性格だとのこと。満天姫様から積極的に声掛けをするのです。そうすれば、燈子様も打ち解け、話しができると思います」

「……なるほど……褒めるのじゃな」

「そうです。容姿でもお召し物でも何でもよいので褒めちぎるのです」

「わかった」


 そう満天姫は答えた。

 その答えが自信に満ち溢れていたので雪乃は安心した。褒める言葉ならば、変な誤解は受けないだろう。

 ここで誤解を受け、大人しい燈子姫まで恐怖に陥れては、お手打ちフラグが立たないとは限らない。

 雪乃のゲームでの記憶によれば、燈子姫は主人公お栄のよき理解者で協力者である。

 嫌われることで、お手打ちにつながるフラグ発生につながることは十分に考えられた。

 燈子姫の部屋はさほど遠くない。満天姫がいる北之間から直線距離で二十間ほど離れた場所に部屋を賜っている。

 やがて几帳に囲まれた一団がこちらへやってくるのが見えた。


「満天姫様、燈子姫様がいらっしゃいました」


 廊下で立ち止まった気配で雪乃は襖を開けて確認してから、そう満天姫に告げた。


「入れ」


 これまた短い返事が主人の口から出る。

 几帳から扇で顔を隠した燈子姫が部屋に入ってくる。

 後から三方に恐らく実家の京都から取り寄せた和菓子を乗せた女中が続く。


「この度は満天姫様にご挨拶する機会を与えてくださり、ありがとうございます」


 そう行って燈子姫が頭を下げた。

 顔は扇で覆ったままである。目は出しているが口元が見えない。

 それでも近くなのでちらちらと燈子姫の顔が見える。


(ほう~。かなりの美人ね。痩せているけど、はかない感じがいいわ)


 女の雪乃が見ても美女である。

 ただ、能登守の立場からすると燈子姫はないなと雪乃は思った。

 それは満天姫も同じことを考えているようで、先ほどから燈子姫の胸元と雪乃の胸元をちらちらと見比べている。


(姫様、私の方を見ないでください。そして比べないで!)

「よく来た、燈子」


 雪乃の心の叫びなど一顧だにせず、満天姫は燈子姫を呼び捨てにする。

 これには雪乃も三女中もびっくりする。


(満天姫様、何とかしないといけないとフレンドリーな感じを演出したのでしょうが……)


 友達感覚のつもりが、満天姫が言うと主従関係のようになってしまう。

 一応、満天姫の方が一つ年上だから、おかしくはないのだが。

 燈子姫に従ってきた那岐と女中はブルブルと震えだしたのが分かった。


(こりゃ、やばいは~。一言で場が凍り付く~)


 雪乃は気が気でない。

 燈子姫は話に聞いていたよりも大人しい性格のようで、自ら尋ねて来たにも関わらず、自分からしゃべろうとしない。

 恥ずかしそうに扇で顔を隠し、恐らく顔を赤らめていそうだ。

 そんな燈子姫に自分が主導権を握ろうと思ってしまったであろう。いつも能面のような顔で人をぶった斬る口調の満天姫が、何だか気を遣っている。


(満天姫様、柄にもないことをすると……)


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