表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
HUNTER・GIRL  作者: 一理
探索というな名ダラダラ
53/57

魔王戦

 ロード社からアイテムをせしめたあと、ハンター・ガールたちは街を出て急いで集合地へと走る。

 死者の森を通り抜け、中級者以上しか入れぬ無限草原のダンジョンに入ると、無数もの兵士とハンター、そしてそれをはるかに凌駕するほどの魔物の大群が並列していた。

 両者にらみ合いの状態のまま、一向に動く気配がない。

 みつこは魔法の力でロアに空を飛んでいるようなほどの脚力を与え、一気に兵士たちの頭上を飛び上がり、広々とした一番前まで行く。

 そこには王様と上級者ハンターと将軍クラスが円陣を組み、作戦会議を行っていた。

 その中にミスター・クレアの姿が見えないので、まだジャグラー捕獲に手間取っているのだろう。

(お)

 みつこは王様たちには目もくれず、見慣れた仲間のもとへと駆けつけた。

「おぉ、みつこ! サキはいけたんか」

 リィシャの声にみつこの後ろに乗せてもらっていたサキが「おう、心配かけた」と手をあげた。

 兵士たちのざわつく声が聞こえたと思い、そちらの方向に目を向けると強引に道を開けてもらったらしい海里に、それに乗ったやすことカーニャが到着した。

 兵士たちは氷を見て、何を思ったのか足で割っている。

 ……暇なのか?

「なんや、休戦中かいな」

「そー。僕なんか疲れた」

 ヤスコの言葉に肯定し、ぶーっと文句を垂れるリィシャを無視して、みつこは周りを見渡した。

「師匠は?」 

「せっこう? とっこう? に行くって」

「どっちだよ」

「斥候にいったよー。あまりに向こうの動きが静かだし、なんかおかしいからって」

 リィシャのあやふやな言葉にイラっとしていると、仲村のフォローが入った。

「おかしい?」

「うん、こっちに攻めてくる気配がないんだって」

「?」

 目の前の列なす魔物たちの目は、どいつもこいつもギラギラと血走っており好戦的。魔王の命令からか突っ走ってくるやつはいないらしいが、戦いたくて仕方ないといったふうだ。

「あれのどこが?」

「ま、まあ。うん、見た目はね。そうじゃなくって、ハズキさん曰く『数は向こうのほうが圧倒的に多いのに、痛み分けばかり。まるで時間稼ぎしてるようだ』って」

「してんとちゃう? 魔王ノーワルドの肉体を作ってんやろ」

 ヤスコの言葉に、みつこは首を横に振った。

「わざわざ魔王作って世界滅ぼさなくっても……。つうか、それこそ時間稼ぎするならこっちの戦力全滅させたほうがスマートじゃん」

「じゃあ、何待ち?」

 リィシャの言葉に、肩をすくめて返した。

 カーニャは空を見上げて深いため息をつく。その今にも泣き出しそうな顔に、サキが笑顔で肩を叩く。

「ま! あたしらが来たからには大丈夫だって!」

「そうやろか……」

「大丈夫、大丈夫! だってあたしらはさ! ……」

 言葉が続かなった。

「あたしらは?」

「……?」

 忘れたらしい、首をかしげていた。

「頼んねーな」

 みつこの言葉にむっとしたのか、サキが睨む。

 それすら無視し、みつこは敵の様子を伺った。

「圧倒的に数負けてるね。魔物の中にはなかなかの上級レベルもいるし……。確かに違和感あるかも」

「ずっと小競り合い続ける気やろか」

 ヤスコの言葉にリィシャがうんざりというような顔を見せた。

 誰だって嫌だろう。

 みつこは手を打った。

「じゃ、早く終わらそう」

「「「どうやって?」」」

 みつこはにっこり笑った。

「魔王倒せばいいんだよ」

「アホなん?」

 ヤスコの即答の言葉に、その場にいた全員が同意の意味で頷いた。

「ミーが考えるに、今魔王軍が攻めて来ないのは理由があると思うわけ」

「時間稼ぎ?」

「そー、その理由ってのが、『魔王不在』って可能性あるよ」

「おー。……なんで?」

「統率者がいないから、数が圧倒していても強気で攻めてこないんだと思うよ。あいつら所詮暴れることしか能のない生き物だしね。んで、魔王が不在、もしくは手が離せない状況にあるってのは、魔王スケルトンを精製してっからだと思うんだ」

「ノーワルドな。それだとしても、さっき自分でも言ったように時間稼ぎする意味わからんと違うん?」

 ヤスコの言葉に、みつこはチッチッチッと指を振った

「スケルトンを作るって情報はあるけど、どうやって復活させるとか聞いてねえじゃん? たとえ魔物であっても死者を蘇らせるのはかなりの犠牲と労働と時間がいると思うんだよね」

「と、いうと?」

「守りは今手薄と見た。魔王のところまで行けば、やつは手も足も出ないままでやられると思うよ」

「さすがゲスイ考えはすぐ思いつくな!」

「サキちゃん、それ褒めてないよね!!」

 苦笑いを浮かべたままの仲村がうんうん、言いながらみつこの肩に手を置いた。

「それで、どうやってあの魔物の軍を超えて魔王のところまで行くのかな?」

「殺る気」

「「「無策かよ」」」

 ヤスコとリィシャだけこの小会議に飽きたのか、座り込んで四人を見上げている。

 みつこが何かに反応し、振り返った。

 すると、少し離れた場所からチラチラと花火のような光が浮かんだ。

「なにあれ」

 と、問うカーニャ言葉にみつこが答える前に、それは姿を現した。


「やあ、遅れましたねえ」


 魔法陣が浮かび上がり、そこからミスター・クレアが見えた。

 周りがざわつく。

「勇者のお出ましか」

 サキの言葉に、やすこが「なんちゃってやけどな」と補足する。

「ミスター・クレア! ちょっと聞きたいことあるんだけど、これトゥディか、ら?」

 質問をしているみつこの腕を掴む、ミスター・クレア。

 急な行動に驚いていると、みつこの周りに見慣れた魔法陣が浮かんだ。

 周りを見れば、この場にいる五人にもそれがまとわりついていた。

「ことは急を要すのでねえ。すみませんが説明してる暇がないのですよ」

 掴まれた手が地味に痛い。

 みつこはなんとなくミスター・クレアから目を逸らす

「あ」

 遥か遠くに見えたあの姿形は、なんとなく探していた見慣れたものだった。目が合うこともなく、視界が揺らいだ。

 魔法陣の光が完全に消えたころに、その男は到着する。


「なんだ、あいつら……。また勝手に突撃していったのか。全く」


 そう言って上級ハンター・ハズキは頭を2、3度乱暴に掻いて先ほど歩いてきた道を走って戻り始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ