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HUNTER・GIRL  作者: 一理
探索というな名ダラダラ
51/57

戦い

「みんなまとめてぶっ飛ばしてやらああ!」

「おらおーら! ばっちこーい!」

 みつこはこちらに迷うことなく突っ込んできたサキを、いい笑顔で挑発しながら後方へ下がった。

「ってーこ・と・で? カモン!」

「?!」

 いつも先頭には必ず後方にて待機している、常に海里乗用中のやすこがみつこをかばうように前に突如現れ、サキに体当たりを食らわせようとした。

 が、惜しくも炎の壁に阻まれてしまう。

「海里!」

 名を呼ばれ、海里は燃え盛る炎に向かって氷の魔法を放った。

「!?」

 歪な音と共に現れた煙が視界を遮る。

 これ以上の追跡を警戒したサキは、一旦下がって様子を見ることにした。


「……」


 追尾で来ると思われた攻撃は無く、時しばらくして煙は薄れていった。

 サキは目を細めた。目の前に広がる光景に一計を案ず

「ふふふ。さあ、どれが本物でしょうか!!?」

 無数もの数のみつことやすこがサキに向かって特攻していく。

 サキは無言で炎の如意棒を握り締め、その誠の武器から放たれる業火の炎により敵を一網打尽にする。

 抵抗もなく炎に包まれたたくさんの二人は轟々と燃え上がり、一瞬に炭へと化す。

「!」

 そこで燃え損なったみつこから、白い綿が飛び出ているのが見えた

「……人形?」

「正解」

「っ!」

 背後から聞こえた声に振り返ると、杖に光を貯めたみつこがそこにいた。

「ライ!」

「結界!」

 攻撃が来ると思っていたのに、みつこは防御を選択した。

「な」

 その行為に呆気にとられ、みつこの真意を見破ることができなかったサキは、ふいに後ろから聞こえてくる音に反応できなかった。

「ぐあああ!?」

 硬い嘴が、サキの背骨を粉砕する。

 氷の道を滑る海里がサキをぶっ飛ばしたあと、U字を描いて止まった。

「どや」

「いいタイミングだったよ!」

 巻き込まれないように結界を張っていたみつこは、術を消しながらドヤ顔のやすこに近寄った。

 大地と同じ色したクッションを頭にかぶせ、こっそり隠れていたカーニャはそっと顔を出す。

「今の、この世の音とは思えん音やったけど……平気なんやろか」

「生きてる生きてる」

 吐血して倒れているサキに近寄り、みつこは覗き込んだ。

「これで元に戻ってたら、一先ずは…‥」

「があう!!」

 ライの放電からみつこはサッと飛び避けた。

 震えながらサキは起き上がる。

「どうやら、まだ足りなかったみたいだね」

「元に戻すイコール物理ってどうかと思うんやけど!」

 言いながらカーニャが手に持つ金色に輝く針をひとふりすると、そこから透明な糸が生まれ、糸が分厚い頭巾を作り出した。

 エリザベスの能力は、彼女の見たことあるものを布製で作り出すこと。

「うーん。ミーの魔法で動かして、ぬいぐるみを囮にして、ミーが突っ込むと見せかけてヤスコに特攻。うまくいったのになあ」

 残念そうにみつこは言いながら、やすこの背後に隠れる。

「なんでうちの後ろ来るんねん」

「結界の能力はそっちのが強いっしょ」

 サキの体から、ドロドロと垂れ落ちる黒い『何』か。

「……。シャドーシャドー?」

「あいつらは人に擬態する能力も、寄生する能力もないって聞いたけど」

 怪訝な顔のやすこに、わりと冷静で涼しいカオで答えるみつこ。

 カーニャが震えながら後方に下がる。

「あわわわ……。さ、サキが、や、闇堕ちしとる……」

「『闇堕ち』?」

 確かにさっきまで炯々と赤く染まった瞳は、今や黒と紫に侵されており、焦点が合わない。

 ゆらりと揺れ動くと、黒い炎を体から放出しながら走り出した。

「ヤスコ、海里! 走れ」

 みつこはヤスコから離れロアを本来の白虎に戻し、その背に跨ってその場から離れた。

「うぎゃああああ!」

 悲鳴のような雄叫びをあげながら、サキはそこにいた二人に向かって攻撃を放った。拳から放たれる炎は大地をどろどろに溶かした。

「ひえー」

 とうとう逃げ出したカーニャを、真っ黒に染まったライが追いかける。

「ロア! カーニャを頼む! ノア! 武器化!!」

 みつこはロアから飛び降り、盾剣に姿を変えさせサキに攻撃を仕掛ける。

「しゃああ!!」

 サキと剣がぶつかりあったと思ったら、ノアが悲鳴をあげた。

 びっくりしたみつこは急いで後退し、ノアを元の姿に戻す。

「ノア!?」

 小さく震えるノアの手足部分が黒に染まっていた。

「……?!」

 やすこが氷の魔法で作った檻にサキを閉じ込めた。

 みつこはその檻を魔法によって巨大化させた。幾重にも結界を張り、サキを閉じ込めるヤスコ。

 これでしばらくは出てこれない

「ぎゃあああ!」

 悲鳴が聞こえ、振り返るとライに追い詰められるロアとカーニャがいた。

 なんかライでかくなってない?

「……あの姿、まるで‥…」

 何かを思い出しそうになったのに、ロックがかかったように思い出せない。

 ずきり、と一瞬だけ頭が痛む。

「ぎゃおおう」

「いやあああ!?」

「ロア! 発光!!」

 カッ!!

 目くらまし程度に思っていた光魔法を放つと、ライの体から黒いどろっとしたモヤが消え去った。

「…‥くうん?」

 ライは二、三度首を横にふったあと、不思議そうに首をかしげた。

 いつものライだ。

「……」

 やすこと顔を見合わせる。

 どこ・・・ん

 振り返ると、サキが結界と氷の檻を突貫したらしい。

「ロア!」 

 名を呼ぶと、ロアがみつこのもとへ駆け寄り、武器化した。

「チャージ」

 力を溜める。

 サキがどす黒い炎を炎の如意棒に集め、如意棒だったものが、双刃が加えられ、まるで死神の鎌のように変形した。

 どこから一体そんな力を手に入れたというのだろうか。


「うがあああああ」

 

 叫びながらそれを力いっぱい投げつけてきた。

 それは大地を溶かし、傷つけながらまっすぐみつこを狙ってくる。

「海里、武器化! 結界魔法! 倍増効果アイテム発動!」

 カーニャの店のアイテムを取り出し、武器化した海里に貼り付けたヤスコは、みつこの代わりに攻撃を受けて後方に少しだけ飛ばされたが、踏ん張り跳ね返した。

 みつこは光を貯めたみつこはやすこの横に立ち、武器を構え叫ぶ。

「輝光弾!!」

 光を凝縮したものを一直線に体制を崩しているサキに向けて放つ。

「うぐうう!」

 攻撃を見て、避けようと動くサキだったが、動けないことに気がづき、足元をみる。

「!!!」

 透明な、それでいて頑丈な糸がサキの靴や服を大地に縫い付けていた。

「うぎゃあああ!」

 サキの悲鳴とともに、光に包まれた。

 その場を強い光が支配し、静寂に包まれる。


「……やった?」


 カーニャの言葉に、みつこは目をそっと開けた。

「……」

 横たわるサキに駆け寄るライ。

「う」

 小さくうめき声を上げ、起き上がるサキ。

 彼女からはもうあの禍々しい気配は完全に消え去っていた。

「うまくいったみたいだねえ」

 ふう、と息を吐きながらみつこが言うと、号泣しながらカーニャはサキに近寄っていった。

「さーきーぃー!!!」

「うわ、何!? きもいんだけど」

「酷い」

 みつことヤスコもサキに近寄る。

 光魔法の付属効果である回復により、彼女の体に傷一つない。

「よお、気分はどう? こっちは最低だよ」

「誰かさんのせいでな!」

 やすこが毒を吐く。

 サキはきょとん、と首をかしげた。

「何起こってんだよ」

「は、記憶ないとか言う奴?」

「記憶?」

 イマイチ事を理解していないサキに、今までの経緯を説明すると、ますます複雑そうな顔をした。

「あー、あたし何だっけ。確か、すっげー気分よくてさ、楽しくて、なんでもいいからもっともっと『戦いたい』って思ってた。それしか覚えてねーわ」

「六年制と一緒にカナタを襲ったことは?」

「あ? あんな奴らと一緒に行動するかよ!」

「んー」

 みつこは首をかしげた。

 嘘をついている様子は見られないということは、キャパシティオーバーな力のせいで記憶を失ったと考えるのが妥当だろう。

「過剰なその力、どこで手に入れたのか聞いても、わかんないんだろうね」

「あたしそんな強かった?」

「「しばくぞ」」

 嬉しそうな顔をするサキに、ヤスコと二人で睨む。

「さて、ちょっと休憩してから援護いくか」

「どこの?」



「魔王討伐さ」

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