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HUNTER・GIRL  作者: 一理
探索というな名ダラダラ
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異変事件大問題3

 やすぃんや新家カーニャのパートナー、キリンのエリザベス嬢。

 首が普通のキリンよりも長く、まつ毛が一昔の少女漫画のように濃く長くかつ太い。

「……」

 その大きなつぶらな瞳と目が合わせられず、目をそらす一行。

 なぜか相方であるカーニャまで逸らしている。

「えっと、そのお、エリザベスにちょっと荒事なんやけど、協力して欲しくって。なあ、みつこ」

「話ふらなくていいから。説得はよう」

「えぇぇええ……」

 気まずそうな主とは裏腹に落ち着いた様子のエリザベス嬢。彼女の長い顔が冷や汗をかくカーニャに近づいた。


 ーーー あら、遠慮なんて水臭くってよ……? わたくしたちは良き家族ではないの


 と言ってる感じがする。

 いつも小言うるさくなかなか了承しない主とは違い、相方は心が広いようだ。

 その存在感のすごさからさすがのロアもみつこの後ろで大人しい。

 引きつった笑みを浮かべ、エリザベスの頭を撫でるカーニャ。いろんな意味で彼女に頭が当たらないのだろう。

「了承得たし、じゃあ早速行こっか。の、前に作戦を言っておくね」

 みつこはエリザベスの方を見ないまま話しだした。

 彼女嫌いじゃないが、ここにいる一同はなぜか目を合わせられなかった。多分、雰囲気がなんというか、こう、高貴すぎ?

 ヤスコに至っては真顔でずっとうなづいていたが、多分話を聞いていないと思う。

 みつこはとりあえず作戦を言う前に、半分脳内で眠っているヤスコを起こすことにした。


ーーー


「あはははっ!! もういないの? もういねえの?! もっと倒したい!」


 気分は最高だった。

 とにかく楽しいという感情だけで、ほかは何もなかった。自分の力で他人を捩じ伏せさせその魂ごと支配する。自分が頂点に君臨する。この行為が何者にも代え難い快楽。もうほかは何も目に入らない。

 もっと、もっと楽しみたい。

 現実だろうが夢だろうが一切関係ない。あぁ、楽しい楽しい楽しい。もっと力が欲しい。

 もっと壊したい。相手を屈服させ自分自身の強さを認めさせたい。己の弱さを悔み自分に憧憬と畏怖の目を向けてもらいたい。

 もっと、もっと!!


「あはっはあははは!!」

「一人で笑ってる……。ちょっとやりすぎたかね」


 すでに血肉となり塵となり、原型を留めてすらいない魔物たちの無意味に流れた、その血の染みの上を気にせず歩いて来る人がいた。

 その手にはこの場の血よりも赤々とし黒い本を手にしていた。

「あぁ?」

 サキは笑いながら雷を放電て威嚇している斧を手にしたまま暗闇から現れた人間に目を向けた。

 その顔はちょうど影になっていてよく見えないが、聞いたことある声だった。その人物が左手で本を開き、黒い手袋をした右手をこちらに向けて歩き出した。

 誰だったか思い出せないが、こいつに触られたくない。こいつに施しは受けたくない。

 なぜだっただろう。

「加減……難しいな。ちょっと止まってて」

「うっせええ!! あたしに指図すんな!! 近寄んな! 気持ちわるいんだよ!!」

 斧に雷を宿し振りかざした。

 それを振り落とす前に目の前の人間から黒い『なにか』が蠢いた。

「やめろ!!」

 目の前の人間から出た命令の言葉を無視し、それはサキの喉を貫いた。

 斧が手から離れ、地面に突き刺さる。

「消えろ!!」

 ヒステリックのように手にしていた本を自分の足元に向かって投げつけると、貫いていた『なにか』がきえた。

 穴が空いたと思った喉はなんの異常もなかったが、酷い疲労感と不快感だけがいまだそこに留まっている。

 冷や汗が流れる、つい先程までの楽しいという感情が、現れた人間のせいで一気に消えてしまった。

「頼むからさあ! 言うこと聞いてくれよ!?」

 何度も本を足で踏みつけながら叫ぶように、訴えるように言う目の前の人間。枷が外れたかのように徐々に記憶がよみがえってきた。

「おま、え……」

 踏みつけていた足を止め、何事もなかったようにさっと本を拾い上げた。

「   」

 そして何かを言って、顔を押さえつけられた。

 あぁ、ダメだろ。これじゃ、こんなんじゃ何も変わらないだろ……?

 大体だってさ……こんなの

「茶番じゃねえか」

 こぼれた言葉に、掴まれた指に力が入った。

 と、同時に力が溢れてきたのがわかった。目の前の人間がなにかしたのかもしれないが、自身の力が強くなるのと同時に記憶が薄れていった。

 先程までのやり取りすら思想の霧の彼方に消え去り、闇に飲まれたように無くなる。


「さあ、サキ。ここでは君は強い。そこらへんの誰もが君には敵わない。ただ、一部を除いては」

「誰だ! お前!! あたしがこの世界で一番強いに決まってんだろ!!」

「さあ、どうかな?」


 少し前までどうやっても開かなかった扉が開いた。

 外に出ると、驚いたような顔をしている女が三人、視界に入れてサキは唇を釣り上げて笑う。

 そうだ、こいつらがいた。だけど問題はない。


「お前ら倒したら、あたしが最強だ」


「え? 何? ヤラレ役のセリフ急に言い出したんだけど」

「やややっや! やめなよ! みつこってば!! そんな挑発した言葉言わんのぉおおお!!」

「ほな、始めよか!」

 やすこのセリフに、二人は頷き走り出した。

 三手に分かれようが、あたしの前では無駄に等しい、最強の攻撃力である炎と、最強の速度を持つ雷を前に

「お前ら如き、敵うわけないだろぉぉがぁぁぁあああ!」


 戦闘の合図を無くして、四人は戦い始めた。

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