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HUNTER・GIRL  作者: 一理
探索というな名ダラダラ
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異変事件大問題1

「さあ、困りましたねえー」

 腕を組んだまま壁にもたれるミスター・クレア。

 無機質なまでに静かな白い病室の中、ベットに横たわるカナタを囲むように座るサキを除く、ハンター・ガール達。

 アポロはカナタの枕元に居て離れようとしない。

 いつも相方と一緒にいるハンターだが、病室はさすがに連れてこれないので、全員外で待機している。

 みつこは足を組んでため息を漏らした。

「サキのご乱心のせいで、話がややこしくなったな」

「何が?」

 いまだ現状を理解してないリィシャに、もう一度深い溜息を吐くみつこ。

「お前は鶏かよ。魔王が世界を壊した魔王を復活させようとしてんだろ? それをどうするか考えるだけでもめんどくさいのに、サキがご乱心したせいであっちもっこちもで……もー滅茶苦茶だわ。だりい」

 とうとう組んでいた足を抱きかかえ、左右に揺れだすみつこ。

 その隣できちんと両手をそろえ座っていたヤスコが、ぽつりとつぶやく。

「これはもう、国レベルの大事やで」

「えぇ。王様のほうにはハズキ君が連絡しに行ってます」

「師匠が?」

「えぇ。そういう約束でハンター業してると聞いたので」

「「「あ」」」

 そういえばそうだった。とつぶやいたのは誰だったか。

 ハンター・ガールは前回のレン・ワールゾのせいで自粛の渦中にあるということを、すっかり忘れていたのであった。

「おや」

 扉が三回ノックされた。

「どうぞ」

 ミスター・クレアが返事すると商人の格好のカーニャと仲村だった。連絡を聞いて急いできたんだと言いながら部屋に入る。

 その後を白衣を着たトゥディが難しい顔で入ってきた。 

「カナタの診察結果を言いに来たよ」

「わざわざここまでどうも」

「いやあ、次いでに診察してこうかなって……で、結果だけど」

「何かあるんでしょうか」

「無い」

 ホッと胸を撫で降ろすカーニャ。

「どうしてか無いんだよね」

「何が?」

 深刻な顔で腕を組んで顔を歪めるトゥディ。

「カナタから、『真の武器』の気配がしないんだよね」

「あのチート本?」

「それから。なんていうのかなー魔力? みたいな、基本人間って少なからず魔力っぽい不思議な力もってんだけどねー。今カナタにはソレが無いんだよねー」

 リィシャとヤスコだけ頭にクエスチョンマークを浮かべている。

 カーニャが真っ青な顔で、トゥディのほうに震える手を伸ばした。

「それって、つまり……カナタはもう目覚めないってこと?」

「え?! そうなの!?」

 リィシャが驚いたような声を上げた。

 生きるための力を『気力』といい、生命の強さを『生命力』という。

 私たちのそれを支えているのは『想い』

 この世界は想いが強ければ強いほど、同じように『魔力』も強くなる。

 ハンターが強いのは、そういった理由もあった。


「魔力がないってことは、感情が無いってこと、『想い』がないってことは私らにとって『死』を表すの」

 仲村は深刻そうな顔でそう説明した。

 納得いかなさそうなリィシャは、足を投げ出し唇を尖らせている。

「じゃあサキみたいなんは、なんで暴走したわけ? あれも『想い』?」

 なんでサキの話になるんだと突っ込もうとしたみつこはハッとした。

 サキのあれはどうみても異常だった。

 感情の暴走というより、もっと別の……

「破壊衝動? ……いや違うな。笑ってたな、力の誇示をしてた。好戦的というか」

「みつこ?」

「あれはそう、まるで」

 ぶつぶつ言うみつこに、ミスター・クレアが結論を出した。

「力の暴走」

 みつこは顔を上げた。

 彼は人差し指をクルクル回しながら歩き出す。

「過度な気分高揚の破壊衝動なら、ただ周りを破壊するなり君たちを襲えばいい。しかし彼女は君たちハンターでなく、逃げる民間人を襲った。あえて」

 みつこは頷いた。

「高笑いをして喋っていたけど、目が合わなかった。意識は完全になかったとみていいね」

「ただ解せないのは」

「「何でそうなったか」」

 みつことクレアの言葉が重なる。

「そして、カナタの力を抜き取ることを……どうやったかってことだね」

「ハンターのパートナーを奪うのは聞いたことあるけど、真の武器を奪うなんて……」

 言葉を失うカーニャ。

「常人ではできませんねえ」

 扉がノックされる。

 誰かが「どうぞ」という前に扉は開かれ、そこに現れたのは城に報告に行ったハズキだった。

「師匠」

「魔王の動きだが、急に慌ただしくなっていったぞ。ダンジョンにいた魔物たちが一斉に『冥界の扉』によって連れ戻されていってる」

「王様はなんと?」

「ちょ、なんで」

「全面的にヤリあうつもりだ。兵士だけじゃなくハンターも出ろってよ。初級から上級はみんなでろってよ」

「なんでこっちくんの!? ちょ狭いっ狭いっての! ぶううう!!」

 みつこの座ってる席に無理やり座り、おしり半分追い出されたみつこはふくれっ面で師匠を睨む。

「カナタに情報の協力をしろという指示がでてた」

「え? じゃ、カナタがこうなったの言ってないの?」

 不思議そうなカーニャにハズキは頷いた。

「つーか言えねーな。レンの時もそうだが、ハンターの不信感が消えてるわけじゃない。それに……」

 言いにくそうに頭を掻いた後、ため息と一緒に吐き出すように言った。


「サキがやったなんて言ったら、おめーらもマークされるにきまってんだろ。ハンター・ガールっていう称号は、城じゃブラックリストに登録されてる。お前らはすでに城でその実力を見せつけてるしな」

「おおおう。詰んでんやん」

 頭を抱えるカーニャ。

「詰んでないよやすぃんや。だってまだなんもしてないもん」

「なんもしてないことないやん!!」

「してないよ」

 向きになるカーニャにみつこは笑った。

「まだ一度も、暴れてねーぜ」

 みつこは師匠を押しのけ立ち上がった。

「あたしたちの戦いはこれからだ!!」

「「「やめろ!!」」」

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