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HUNTER・GIRL  作者: 一理
探索というな名ダラダラ
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魔王の前兆

「喧嘩したんだって?」

 机の上に髑髏の煙の浮く、悪趣味なお茶の入ったコップを置き。目の前に座る仏頂面の客に向かって小さくため息つくと、どこかめんどくさそうな顔でカナタはサキを見た。

「みつこと」

「喧嘩なんかするかよ。あんなやつ、相手になんかしてねーし」

「めんどくせーやつ」

 こいつ、とうとう口に出しやがった。

 サキはカナタを睨んだ。

 こいつもみつこと同じく、ハンターはハンターという思考の持ち主だったことを、今更に思い出す。

「チッ」

 サキは舌打ちして椅子をけ飛ばすように立ち上がり、扉に向かって歩き出した。

 クエストを受けようと思ったが、とてもそんな気分にならなかったのだ。気分を害したままカナタの家を出ると、ライがくうんっと切なげに鳴いた。

「久しぶりに鍛錬でもすっか?」

「わん!」

 鍛錬をするため、森に向かう足取り

 その足が直ぐに止まった。

「?」

 町の中で見たことがある人間がいた。

 確か、招待状を地面に刺した直後拾われることなくみつこに踏みつぶされた変な六年生の男だった。

 手にはたくさんのアイテムがある。

 最近うちの親経営のギロチン社と、やすぃんやカーニャ経営のバンビ社共同開発のアイテム

 『代わりに闘わナイト』だった。

(戦闘力の高い六年生が苦しむ魔物でもいんのか?)

 なんとなく興味を持って六年生の後を追う。

 初級の森の中に迷うことなく入っていく。

(悪さでもすんのかと思ったら、初級の森なんだな……死者の森にでも行くのかと思った)

 予想に反した行動に驚きつつ、気配を消して後を追う。

 戦闘力が高いだけで、敵の察知能力は低いらしい六年生に気づかれぬまま、ログハウスまでたどり着いた。

 少しだけガッガリするサキ

(もう少しこう、なんかカッコいい感じの隠れ家的なん無かったのかよ)

 

「この……を……手で……」

「を、必ず……て……救う……!」

「でなければ! ……に……!!」


 何やら白熱して言い合っているが、みんながみんな喚くため何を言っているのかさっぱり分からない。

 サキはそっと敵の家に近づき、壁に耳を付けた。

 白熱した会話の中、わずかに聞こえてきたのは『打倒・ハンター・ガール』だった。サキは呆れたとため息を吐く。

(カナタを恨むならまだしも、なんでアタシらが恨まれなきゃいけないんだよ……)

 確かにルーキーの中では優秀と太鼓判を押され、初級なのに上級のクエストをこなしたりして、嫉妬やら羨望やらの目を向けられることは多々ある。

 しかし、人のモノを奪うような六年生になど、ほとんどあったことないのに、恨まれる筋合いなどない。

「……んー」

 しばらく身を隠して聞いていたが、何を言ってるのかさっぱりだったうえ、普通に世間話に花を咲かせてしまったため、本当に自分が何でここに居るのか分からなくなってきたサキ。

 めんどくさくなったので、ライを見た。

「武器化」

 建物の中が電気が放電され、一瞬だけどの場所よりも明るく光り輝いた。

 数分後、サキは倒れている六年生の頭をつつく。

(こいつら不意打ちに弱いよな。ほんと、戦闘能力だけって言っても、それも正々堂々真っ向勝負んときだけだよな)

 多分コロシアムばっかりしてたせいなんだろうな。

 と、一人納得していると、机の上に何かの資料が広がっているのが見えた。

 サキは一枚手に取り、六年生を見る。

「……お前ら、これ……本当なのか」

「あぁ、事実だ」

 しびれたと震える六年生の中で、比較的まだ大丈夫だった男が答えた。

 口から煙を吐きながら、座り直すとポケットから煙草を取り出し、吸う。

「我々も冗談だと思っていたんだ。ばかばかしい、そんなことはあり得ない。と」

 回復力が高いのか、ほかのメンバーも起き上がった

「けれど、それは真実なんだと言った我々の同胞が確かめにこの場を去った」

「そして二度と戻ってこなかった」

「捕まってんじゃないのか? 城とかさ」

 まるで先ほどの阿保面とは違う真面目な顔にサキも少し厳しい顔つきで尋ねた。

 六年生たちは首を横に振った。

「我々の情報網を舐めてはいかんなお嬢ちゃん。この国のどこを探しても、ダンジョンを探しても仲間の痕跡はなかった。ある場所を除いては」

「ある場所……?」

 煙草を吸っている男が指さした。

「アタシ?」

「お前さんたちのところだ」

「その同胞ってもしかして……」

「あぁ『鍵をさがすもの』だ」

 レン・ワールゾを倒しに首都へと向かう道に現れた変人組。

 確かアイツラはカナタが相手をしたはずだったが

「死んだのか?」

「あぁ。恐らくな」

 しかしカナタの能力で六年生三人を倒せるとは……いや、できなくもないのか。サキは思い直した。

 鍛錬と称し、ハンター・ガールを相手に無双を見せつけたカナタなら。

 あの卑劣技なら戦闘能力の高い六年生三人なら、どうってことないのかもしれない。

 ただ気になるのは

「それと、これと、アタシらと何の関係あるんだよ」

「正直何の関係があるのか、私たちにも見当がつかないわ。でもね」

 女性が服に着いた炭を払いながら椅子に座った。

 本当回復力が高い。

「鍵が本物だとしたら、それが持っていたものが黒幕ということに間違いないわ。そしてあなたたちの中の一人が持っていた。けれど、鍵の意味を知らずにいた。ということは誰かが意図的に隠していたことになるわね」

「みつこに預けたもの……」

 知らず内にみつこは持っていたらしい、つまりそんなことができるのが昔からそばにいるもの。

 みつこを昔から知る人物といえば、みつこの師匠のハズキぐらいしか思いつかない。

「俺らは、アイツが怪しいと踏んでる。アイツと関わりあるのは全部な」

「? だったらアタシらじゃなくて上級ハンター狙うべきだろ」

「あ?」

「え?」

 煙草をふかしていた男は立ち上がり、机の上にあった資料を乱雑に手で避け、書類に隠れていた写真をサキに向けた。

「黒幕は、こいつだ」

「!」

「こいつがこの世界の真のラスボスだ」

 サキは少し思案したのち、決意した。


「アタシにも、案内してくれよ―――『無限回廊』へ」

 

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