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HUNTER・GIRL  作者: 一理
はじまり編
4/57

3 凍り姫 ヤスコ

 ハンターは『真の武器』を持つものがなれる職業であり。それとともに特殊体質をも持つ。力があれば、気も強くなる。まさに、彼らにとってハンターとは天職なのである。

 しかしながら力は『守る』だけでなく『奪う』ものでもある。ハンターともなれば命のやりあいもある。そんなことも気にせずただ戦いを楽しむハンターたち。

 まさしく『愚の骨頂』だ。

「んで、力に驕っているみつこに、このクエスト」

「殺すぞ」

 来たとたんにこの流れ。喧嘩売ってるとしか思えない。青筋浮かべながらみつこはカウンターに用意された椅子に座った。

「金……なかなかだぞ?」

 みつこの耳がピクリと反応する。

「一応聞いておこう……どのぐらい?」

「……このぐらい」

「おおお!」

 中々の金額。みつこは身を乗り出したが、ふと考え止まった。

「なんかあるの?」

 カナタが舌打ちしてみつこの手に依頼の紙を持たせた。そして、紐を引っ張った。

「おいこら!!」

 外に再び頬りだされたみつこは扉をけった。

「舌打ちしたあげに追い出すな!!」

 外でわめいても仕方ない。みつこはロアをもとの姿に戻し、その背に跨った。

 いざゆかん、依頼の地へ……。


「さむぅー……」


 やる気DOWN……。みつこはいつもと同じ服装で氷ダンジョンに来るもんじゃなかったと、とても後悔している最中だった。

 来た場所、極寒の地。クエスト内容、見習いハンター回収。期間、回収するまで。

「えー……と何だっけコレ」

 カナタに参考までに渡された書類を広げる、あぁ、手がかじかむよ全く。

「ハンター適性チェック? わー久しぶり! ハンターになる前のときにやったっけ?」 

   ハンター適性チェックアンケート


○勇気と根性はある。

○冷静な判断はできるほうだ。

○残酷なことも何かのためならやってのけれる。

○戦うことが好きだ

○自分最高だ


「あぁ、そうだ。『ハイ』か『いいえ』だったよね。私は確か『ハイ』四つだったな……ふっ」

 そして回収人物の回答。

○勇気と根性はある。 いいえ

○冷静な判断はできるほうだ いいえ

○残酷なことも何かのためならやってのけれる。 いいえ

○戦うことが好きだ いいえ

○自分最高だ いいえ


「なにこれ、びっくりするほどオール『いいえ』……」

 もう一枚の書類を見る。

 それはカナタからだった。一応クエスト屋兼情報屋だからコイツからの情報はどこから仕入れているか分からないが物凄くたまに役に立つ。しかしたまに有料。

『今回、回収するヤスコはハンター適性チェックから見ても不適応だが、ヤスコの師でもあり、スポンサーでもある『やすぃんや新屋』氏に押され、ハンターとなった。』

「やすぃんや……新屋? ってアイテムショップ・バンビ社の?」

『しかし、ヤスコ氏がハンターをやる気があるかといえば、無く。厳しい新屋氏の指導のもとを家出。今に至る』

「逃げてきたって……こんな極寒の地に一人で、しかもヘタレが生きているとは到底―――ねぇ」

 この白い大地にはテントもどこかの民族も氷の家もかまくらもない。あえて言うならこの寒い極寒の地にいるのは……。ペンギンのむれのみだ。

 もふもふ可愛いね。

「まさか、ヤスコがペンギンってわけじゃあないだろうし……」

「なに~?」

「ヤスコはいったい何処に……」

「なにぃー」

 あっはははは。幻聴が聞こえら(笑)

「よんだぁ?」

「もしかして現実リアル!?」

 しかし、前も後ろも右も左もいるのはペンギンだけで、人間の人影すらない。しかも居たならば気がつくはず。

 「てか、ペンギンさんあつまりすぎっす……さすがにちょっとこわいっす」

 ちょっと心くじけそうになる。

『がぁあああ!!』

 ロアが元の大きさに戻って唸りあげる。

「!!!!」

 するとペンギンは吃驚してぺちぺち、すぃーっとお腹で滑って消えていった。何匹か氷の隙間から落ちていった。馬鹿だ。でも可愛い。

「チョット可愛い」

 一匹だけ、しかも、かなりでっかい一匹だけ残っていた。

「……MASAKA?」

 おそるおそるペンギンに近づく。そのペンギンは微動だにしなかったが、光る眼光が恐ろしい。目を逸らすと、向こうも目を閉じた。

「や、やすこ?」

「うん?」

 ヤスコはハンターじゃなくペンギンでした?!

「あ、もしかしてやすぃんや新屋のパートナーとか」

「師匠のことしっとん? だれなん??」

 にゅっ

「ぎゃわっ!?」

 ペンギンの股の下から女の子が顔出した。……自重しましょうよ。雛じゃないんだから

「あたし、ハンター初級のみつこ」

「うち、ハンター見習ヤスコ……何のようなん?」

「連れ戻しにこいクエスト、一言で言えば回収しに」

「誰を?」

「あんたを」

「なんで?」

 ゑ……なんでって。普通に分からないのだろうか。

 彼女はなおペンギンの股下にいる。温かいのだろうか。少しうらやましい。吹雪の音がより一層強くなってきた。みつこは単刀直入に言った。

「帰るよ」

「どこにいくん?」

「やすぃん屋んとこ」

 なんだか質問攻めばっかだな、と思っているとヤスコが素早く股から這い出ると、今度はペンギンの背中に回った。寒くないのかなとか思ったり

「うち、帰らんきん! 海里!!」

 いままで物動じず静かに目をふつんでいた、ペンギンが目を開く。呪いの銅像か何かか貴様!?

「いっ!?」

 口が大きく開かれる、直感で横に大きくそれる。

 ごぉおおおおおお

 な!? こ、このペンギン口から凍り吐きやがった!! さらに自分の吐いた氷で床をつるっつるに凍らせてお腹ですべっていった。

 なにこれアイススケート代わりになんの?

「って惚けてる場合じゃなかった。ま! 待てぇえええ!! ロア! 武器!」

 ロアの体が武器に早や変わりする……が

 つるっ。

「あ」

 手がかじかんでちゃんとつかめなかった上に、ゴメンねロア……落しちゃった。

「のぁあああ!?」

 ずごぉおお!! 猛スピードで海里が過ぎていく。

 さらにロアと離れ離れになってしまった、武器化したパートナーはもちろん動けない。このままでは丸腰だ。

「ロア! 通常モードに……!!」

 ごぉおお!! 氷の炎が邪魔をする。氷の炎に包まれた目の前でロアが武器のまま凍る。

「ロアぁ――!!」

 ハンター適性チェックオールアウトのヤスコがこれを考えて命令しているわけでは、ない。

 すべて独断で、しかもかなり狡猾な判断を下す。海里自身のLVの高さが憎らしい。

「あん畜生」

 口汚い言葉をはき捨てる。クエスト料金が高いわけだ。あの無表情詐欺師がぁああああああ!!

 かさ

「ん? もう一枚書類が」

 『なお、ヤスコは海里、絶対防御たてを頼り、このパートナーが高い戦闘能力と頭脳を兼ね備えており、プロ級ハンター三人を斥けている』

「強ぇええ!! そんなクエスト初級にまわしてくるなよ! どうすれば……。ん?」

 ものすごーく小さな、本当に小さな存在がちょこんと目の前にいた。

「え? 鼠? なんでこんなところに」

 物凄く寒そうだ。鼻水たらしながらこっちが自分の存在に気がついたのを確認して紙を取り出した。

 カナタからだった。

『相手のステージで勝てると思うな』

 そんなことは分かってる、当たり前のことをいわれてイラッってくる。

「ん? まだあんの? つか、どっからだしてんのあんたら」

『海里は強い、でも、その土俵から出ればロアのが強い』

「知ってるっつってんだろ!! ってうわぁああ!」

 海里が突っ込んできたのを結構無理やりな格好で避ける。

 ぐぎっと腰あたりから聞いてはいけないような音が響いた。

「うがあああ腰がぁぁぁ!! 骨がぁぁぁ!!」

「むぅー……諦め悪いなぁ、帰りなよ」

 帰れ? 帰りたいよ。寒いし、ロアは凍りづけだし、かじかんで痛いし、疲れてきたし。魔女の一撃喰らったみたいに腰は痛いし

 でも、でもな

 

「ここで帰るのはみつこの名に傷がつく! それ以上に……」


 ここまできて、やらっれっぱなしでかえれるかぁあああああああ!!!!

 鼠が紙を見せる。

「!、でもこんなにハイスピードじゃぁ」

『5秒だけ、止める』

「分かった。行くよ!!」

「なにするか分からんけど、うちは帰らん!!」

「悪いけど、強制退場してもらう!」


 海里が突っ込んでくる。



「調子に、のんなよぉおおお!!」


 今はカナタの策に乗るしかない、今度は逃げずにどっしり構える。海里は一瞬躊躇したように見えたが、止まることはなくつっこんできた。

 ―――さすがだねその心意気……

 みつこはふと耳に一度聞いたことある音が聞こえた。

 (笛の、音?)

 ビクン!! 海里が止まった。ヤスコが焦る。

「か、海里?!」

「……!」


 止まった。急いでリーチをつめる。


「!!」

 五秒たった。

 海里がこちらが反撃に出たのに気がつき、再び突進してきた。

「おりゃぁあ!」

 カナタが書いた紙では、こういう作戦だった。

『倒せないなら、掴めるほど小さくしてしまえばいい』

 大小魔法を放ち、海里を小さくする。

 ……どすっっ

「ぐふっっっ」

 小さくなっても、突進の余韻は収まらなかった。地面に倒れながらもお腹に海里を抱え込み捕獲する。

「いてて……あれ? ヤスコは……あ、居た」

 乗っていたものが小さくなった上にハイスピ―ドでとんでいったから、落ちたらしい。雪の中に埋まっているのが見えた。

 ……ものすごくお間抜け

「いてて! かむなペンギンやろう」

「海里~かえしてぇええええ」


 こうして、無事(?)ヤスコを回収したのであった……。


「もぉおおお、ヤスコぉぉ!!」

「む~」

 かなり嫌そうにヤスコは顔をそらす。

「もぉおお、ほんと人様に迷惑かけて~ごめんなさいねぇ、ありがとうございますぅ本当」

「おかん」

「ちゃうわ!! まだ、そんな歳じゃありません!!」

 やすぃんや新屋はとっても五月蝿かった。エプロンを脱ぎながらヤスコの首根っこを掴んでお説教を始めた。どう見てもおかん

「新家。店、放置してるぞ」

「あ。きやあああああ! 大変うち帰らなきゃ、それじゃあ」

 急いで扉のところまで走っていく、と止まった。

「そぅそぅ、ヤスコ! 帰ったら店てつだうんよ。じゃなかったらご両親に言いつけるから」

「お前は継母か」

「違うって言よるだろ! それじゃあ失礼します。じゃなカナタ……ロード社の商品安くせな赤字のままやで?」

「くたばれバンビ社」

「酷い!」


 からんころん、店の扉が揺れる。


「……。さて」

 カナタがみつこのほうを振り返る。

「報酬、とコレ。ヤスコも」

「何コレ?」

「うちも?」

「みつこの同期はもういい時期だしね」

「「???」」

 二人は貰った手紙を読む。

『ハンター初級・見習・新人の皆様

今回正式にハンター養成学園に迎え入れることになりました。おめでとうございます。また、これは強制であり、「断る」「逃げる」「サボる」などのことを行った場合は、言い訳の有無は一切聞かず強制適にハンターの職業を剥奪させていただきます。ご注意ください。

 一年間生徒としてハンター基礎を学び存分にお楽しみください。

 ハンター協会 理事長 ミスター・クレア』


「一年だけ? 楽勝じゃん」

「そうだよ、一年だけ。よかったな。一年だけで」

「何、その含みのある言い方」

 カナタの眉が崩れる。なんか、嫌な記憶を思い出している、そういった顔だ。目が死んで遠いものを見るような目になった。どうした、何があった。

「私のときは6年だった。しかも、……。いや、いい。」

「そこ重要だろ。……ん?ってことは、カナタってハンターなの?」

「ハンターか、……元、だけど、6年制のときの生徒は全員卒業することなく、ハンターをやめている。やすぃんやもそうだよ」

「へー? 何で誰も卒業しなかったの? バカなの?」

「知らなくていいことだ。あと、学校辞めてもハンター地位剥奪されるよ」

 突っ込みもないとは。はぁーと溜息をつくカナタを見れば、過去によほど過酷な何かがあったらしい。

「あ、これ個人的なお願いなんだけど」


 カナタが手紙をもう一つみつこに渡した。


「これ、リィシャに渡してくれ。二週間前にクエスト渡して以来あってない。多分、森にいる。」

「……。お駄賃は?」

「は??」

「……え? や、だからお駄賃」

「ん??」

 こ、こいつ。聞こえないフリで白を切りとおすつもりかっ

「まぁ、今回は許そう」

 リィシャとは仲良くなったばっかだし、消えてほしくは無い。ヤスコは悲しそうに手紙を見つめていた。

「だれも死んでないんだから……そんな面すんな」

「だって」

「ヤスコも一緒に行く?」

 小さく首振る。分かってはいたけどそもそも行きたくないのね

「金やるから、コレの世話たのんます」

 カナタが前払い金を払う。分厚い封筒がみつこの手に

「よっしゃ、いくぞヤスコ!!」

「いぃやぁあああああ」


 やすこの悲鳴だけが店の中で木霊した。頑張りましょうよヤスコさん。

 

「いやあああ、あ、そういえばうち初めてカナタみたわ」

「え?」

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