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HUNTER・GIRL  作者: 一理
探索というな名ダラダラ
35/57

行先決定

「忘れたのか」

 

 と、つぶやくカナタ。

「それとも、馬鹿なのか?」

「あ?」

「冥界での会話を思い出せ」

 みつこは頭をひねったが、カナタを殴った記憶しか思い出せなかった。

「知らん」

 若干威張りながら言えばカナタはため息をついて、手のひらを広げた 

 みんな近寄ってその手のなかを見れば、そこに煙とともにアポロが現れた。お前は忍者か

「あぁ、そういえば、アポロ通じて見てた、っつってたな」

「そうそう」

 アポロが「なんかよう?」と言わんばかりの顔で周りを見るが、誰も取り扱ってくれないので、少し困惑している。

 トゥディはみつこたちをみて首を傾げた。

「なに? 君らも魔物について聞きに来たん?」

「そう」

「じゃあうちに聞くより、ハンターさんたちに聞いたほうが早いよ」

「なんで?」

 サキの言葉にトゥディは穏やかな笑みを浮かべた。

「うちは戦闘員じゃなくて医者だから~」

 つまり、見てないものを説明できないと、そう言いたいらしい。

 それもそうだ。

 納得したサキは頭を掻いた。

「じゃ無駄足だったな」

「そうでもないぞ」

 師匠が言った。みつこは不思議そうに師匠を見ると、彼はニィッと笑った。

「クエスト屋のカナタに是非クエストをもらいたいんだが」

「ん? いまはまだ休業中だぞ」

「王から許可はいただいている」

「ほう」

 ハズキはトゥディのほうをみた。

「我々は今から『魔物暴走原因究明』のクエストを受ける。依頼者は医者だ」

「う、うち?」

 みつこは手を打った。

 そういえばハンターは活動停止中で、誰もクエストを依頼していないのだった。

 勝手に活動してもいいが自粛モードだとそれも気になるという

 さすがみつこの師匠

 みんなが感心している中、トゥディだけは納得していない顔をしていた

「それなら、やすぃんやでもよかったんちゃうんかなあ」

「やすぃんやは商人でも、家のほうでは勇者の血を引く一人。そしてハンター贔屓だからな。あまり効果は期待できない」

「……何の効果や」

「それにくらべ医者せんせいは城専属。これほど都合のいい……げふんげふん、心強い方はいない」

「こいつモテないわー。一生モテないわー」

「まあまあトゥディ」

 みつこがトゥディの肩を叩いた。

「師匠がモテないのはデフォルトだとして」

「……締め上げるぞこら」

「いざ魔物が攻めてきたとき、恩を売っとけば一番に守ってもらえる可能性が一気に上がるよ」

「言うてもなぁー」

 トゥディは腕を組んだ。

「君ら所詮初級ハンターやしなあー」

 みつこと三人のハンターは固まった。

「……じゃあさ」

 みつこはにぃーっこりと微笑んだ。

「meらの実力、とくと味わう???」

 ロアを出現させロットへと姿を変えさせた。赤く光る宝石が煌煌と魔法の力をためていく。

 初級と馬鹿にされた三人も、同じく武器を構えている。

 といってもヤスコは海里本体のままだが。

 トゥディは顔を真っ青にさせて急いで両手を左右にぶんぶん振りながら首をこれでもかっというぐらい振った。

 いくら初級でも一般人からしたらその戦闘力には馬鹿みたいに差がある。

「そう脅すな」

 カナタがそういってベットに腰かけていたのを立ち上がった。

 皺ができたシーツを律儀に直しながら「邪魔したな」とトゥディに言う。

「もう戻るん?」

「うん」

 帽子をかぶりなおすカナタに、サキが詰め寄った。

「お前、どこまで知ってんだ!」

「何を? どこから? どこまで?」

「とぼけんじゃない!! 質問を質問返しすんな!」

「答えようがないね」

 サキは少し黙って、腕を組んで威圧的な態度でカナタを見た。

「この世界について、本に書いてあんだろ?」

「やすぃんや、このおしゃべりが。その口を縫ってやろうか」

「えぇえっ!? 言ったらアカンかったん? ごめん!」

「まあ、今考えたらその情報は悪い大人に狙われそうだしね」

 みつこがそういえば、やすぃんやも今更納得したような顔を見せた。

 カナタはため息をついて、サキのほうを見た。

「私がどこまで知ってるか? 『私が知っているところ』までだ」

「ん?」

 言葉が理解できなかったリィシャの頭にクエスチョンマークが浮かんだが、何か発言する前にみつこは机の上に何故かあったガムテープを手に取って、リィシャの口にバッテンマークで張り付けた。

「察しの通り本はなんでも記されている。『この世界』については」

 手を広げ、真の武器である本を出現させた。

「でも、私の知識としてその情報はあるかと問われれば、『違う』。私にとって知りたい情報しかこの本から引き出していないからだ。知ろうと思えば知れるが、知る必要もない。必要のないものに対して負担をかけたくない」

 やすこが「へえ」と言ったあと、「まあ本やしな」といった。

 みつこはヤスコにガムテープで口を張る。分かってないのに適当に言うのはやめましょう。

「じゃあ今知ってる情報でいい。『この世界これから起こる異変』についてなんかわかってんのか」

「まあね」

「じゃあ言えよ」

「その情報はあなたには開示されていません」

「ああ!?」

「なんつって」

 カナタは扉に向かって歩き出した。

「その情報を知りたかったら、金をくれ。私はクエスト屋でもあり、『情報屋』だからな」

 サキは武器を構えた。

「待ておい! 世界の危機だろぉが!!」

 なぜ武器を構えた。と空気的に問えないみつこは真顔でサキを見つめる。

「お前はバカなのか?」

 ドアノブに手をかけながらカナタは笑った。

「世界の危機なら、さっさと協力仰いでるって」

 それもそうだ。

 納得しているとそのまま何も言わず去って行った。

 あいつ、団体行動嫌いなのか、それとも個人行動が好きなのか

 いつも背中しか見てない気がする。

「まあ、聞きたいこと聞けたしいいっしょ」

 サキの言葉に頷く三人。

 師匠がみつこの頭をなでた。

「じゃあ俺もそろそろ行く。お前ら無茶はするなよ」

「おう、師匠も気を付けてって一応言っておく」

「一応って何だ。俺はとりあえず死者の森にある旧都心へ向かう」

「じゃ、こっちはホーンドラゴーンについて調べてみるわ」

「あぁ」

 手を振って別れた。

 みつこもロットを取り出し、自分の家へ帰るため簡易的な魔方陣を描こうとした。

 が、突き刺さる視線が気になり手を止めた。

「なんだい」

 ガムテープをはがし、やすこが海里の上に乗ったままみつこを見下ろしながら「で?」と言った。

 天井に頭つきそうだなと思いながら、みつこは見上げながら「で?」と返す。

「うちらはどないしたらいいん?」

「好きにすればいいと思うよ」

 私指揮官じゃないし。と、言えばサキが頭を掻いて歩き出した。

「まあ、やることハッキリしてねえしな」

「そうそう、魔物について調べるっつったって、従来の行動と何か変わるわけじゃないし」

 もともと、ハンターの仕事内容にはそれも含まれているのだ。

 倒すことだけは仕事ではない。

「じゃ、あたしは取り合えずダンジョンめぐりでもするわ」

「初級のダンジョンだったらタカが知れてるけどね」

「殴るぞお前」

「なあなあ」

 リィシャがガムテープをのけながら片手を振って存在をアピールした。

「『有限の塔』に、一緒にいかん?」

 いきなりの勧誘。サキが珍しく首をひねった。

「どこそこ」

「初級と中級の町の間に山があるだろ。あそこを道それて頂上目指していくと、雲よりも高い塔がそびえてんだ。こっからでも見えるだろ」

「あぁ、煙突かと思ってた」

「ハハッ。ワロスワロス」

「ぷぷ。乙、乙」

「みつこ学習」

 サキは笑ったリィシャとやすぃんやの頭にこぶしを落としながら、みつこのほうをみた。

「そこってさ、たしか天井にはでっけえ鳥がいて、風で吹き飛ばされるって聞いたことあるんだが」

「おう。らしいね」

「行かん?」

 頭をさすりながらも目を輝かせているリィシャ。何が君をそんな風に駆り立てるのか。

 みつこは両手を広げて肩をすくめた。

「リィシャが行くなら、いかない★」

「誘ってるのがそいつなのに!?」

 サキの突っ込みにみつこは笑顔で親指を立てて、リィシャに向けて下に向けた。

「絶対こいつに突き落されて終わるもん、こいつとは行きたくないね」

「投げ飛ばされたのまだ根に持ってんのか」

「持つよ」

 こいつはいつか私を殺す。

 ロアのように威嚇していると、サキがリィシャの肩を組んだ。

「しゃーねえ、あたしが一緒にいってやんよ」

「まじで? やったあ」

「ヤスコは?」

「いくわけないやん」

 ですよね。

「じゃあ、やすこmeと一緒に装備でも買いに行く?」

「うちの店?」

「まあ、そうなるね」

 やすこの隣にいたやすぃんやが微笑んだ。

「割引とか、友情価格とかないんで」

「分かってるわい」

「じゃあ、それぞれ別れよう」

 それぞれ行動始める一向に、カルテを見ながら薄い笑みを浮かべながら、この部屋の主は切なそうな声を最後に出した。


「ここ会議室やないんだけどねえー……」

 謝罪の言葉もなく去って行ったハンターに、ため息しか出ないのであった。

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