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HUNTER・GIRL  作者: 一理
殺るか殺られるか
33/57

疑問①

「なんで師匠が? お城守ってんじゃないの?」

「知らん。俺はダンジョン帰りだ」

「あぁ」

 みつこは納得した。

 さすがわが師匠。いいタイミングに現れてくれる。

「魔王討伐クエスト、レベルお前らじゃ足りんだろう」

「私の実力ならいけるはずだったんだもん! リィシャのせいだもん!!」

「僕のせい、ちゃうもん!」

「オマエダマッテロ、ボコスゾ」

 サキはあきれてもう何も言わなくなった。

 みつこに殺気を向けられ。リィシャは口をとがらせながらも渋々黙って後ろに下がる。

「まあ、お前も俺と同じくじれったくなったら自分で先にやっちまうタイプだからなぁ」

 師匠は大型の剣を構え、背後にいるみつこに声をかけた。

「だけど、チームプレイするなら自我は殺せ」

「分かってるけどさ」

 みつこは魔法の杖を構え、師匠から離れた。

「魔法系は援護にまわれっていうんでしょ。特攻隊がバカばっかなんだもん」

 特攻系の二人が反応する。

「お前サポートする気すらなかっただろ!」

「あと一人って誰?」

「お前だよ!!」

 見守っているヤスコとカナタの後ろにぼやーっとした存在が現れた。

「なんや?」

 海里が振り返り威嚇するので、にぶいヤスコにも分かったらしい。

 カナタも後ろを振り返ると、あぁと声をだした。

「お前も来たの? 魔王スケルトン」

「私、魔王ノーワルドなんですけどねえ……まあ、勇者に能力をすべて根こそぎ奪われ封印されたので、もうスケルトンでもなんでもいいんですけどねえ」

【貴様も来たのか……】

 みつこたちも振り返った。

 サキが警戒を強めながら、走り出した。

「てめえ、背後からきやがって!!」

 炎で攻撃するも、透けてる相手には当たらない。

 攻撃されたスケルトンは反撃することもなく、ぼんやりといった。

「およびではなかったようですねえ。ですが私も暇ですからねえ」

 ヤスコは黙って海里の上にのって攻撃準備を始めていたが、スケルトンの言葉に目が点になった。

「ノーワルド?」

「そうですねえ」

「うちの家に代々伝わる話。……うちが勇者として立ち上がり、倒した敵の名はノーワルド。そいつは一度世界をぶっ壊したすんごい魔王やっていよった」

「世界ぶっ壊してるなら、勇者どうやって倒したのさ」

 みつこの言葉に、リィシャが手をたたいた。

「たしかな、簡単な話なんだけど、神王コルカッターがもう一度再生させたっていよった。思う」

「軽かった?」

「何が?」

「名前……いや、いいわ」

 魔王は闘う意思が薄れたのか、馬鹿らしいと漏らした。

「戻るのですかねえ」

【鍵は手に入れた。これ以上ここにいる必要はない】

 魔王の背後に鈍色に光る扉が現れた。

 そこから漏れる瘴気に、獣化していたロアが唸る。

「あぁ、そうですか……では私も戻りますかねえ」

 魔王サーガが歩いていく扉へ、とことこ歩いていくスケルトン。

 まるで息子の後を追う年寄りのような……哀愁があるのはなぜだろう

「ところでみつこ」

 師匠がみつこのほうをみて、こぶしを握った。

 嫌な予感

「うぎゃ」

 その勘通り、頭上に師匠のハンマーのごとく重く固い拳が落ちた。

 ロアが威嚇するが、みつこは涙目で片手をあげ、制する。

「分かってるよお、どうせmeは過信がすぎるとかそんなんでしょ」

「そうだ。わかってるならいい」

「殴ったけどな」

「ん?」

「ひゃ」

 みつこはロアの後ろに隠れた。 

 カナタは本を開いて、何かを確認した後

 相変わらずの師弟に何も言わず、歩き出していった。

 その背をアポロが追う。

「……神が戻ったってさ」

「ちゅ?」

「この世界も安泰だな」

 神のいない世界は、人の想いで造られていく。

 世界を総べる神が戻れば、この世界はあるべき姿に戻ることだろう。

「……」

 お城どうなった?

 カナタは足を止め、アポロをつかんだ。

「分裂2」

「ちゅ?」

 ぽん、と音を立てアポロは増えた。

「あー、やっぱもう一匹」

 ぽん、と増えるアポロ。三匹とも同じ動きで不思議そうにカナタを見上げている。

「勇者の末裔である、リィシャとヤスコに勇者の印を借りたい。新ハンター教会設立するには、やつらの許可がいる。今は廃れているが曲がりなりにも古き勇者の血族だからな」

「ちゅ」

 アポロはてててーと走り出した。残った本体アポロとカナタは歩き出した。

 カナタの足元に闇が広がる。

「さあ、移動しようか」

 闇がカナタを飲み込む。

「パンドラ」

 オオカミの遠吠えとともにカナタは消えた。


「ん?」

 みつこは闇の気配を感じ振り返ったが、そこに敵の気配はなかった。

「気のせいか」

「おい、みつこ」

「ん?」

「俺の予想だと、城では結局魔物に対しての有効な対抗手段はハンターしかないと判断するだろう」

「ホーンドラゴーンのおかげで?」

 あれよほどレベル高くないと物理攻撃効かないものなあ。

「それさあ、疑問に思ったんやけど」

 サキが会話に入ってきた。

「何が?」

「タイミングがさ、よすぎるっつうか……救済的っつうか」

「あん?」

 みつこがサキの言いたいことが分からないといえば、珍しくやすこが同意した。

「せやな。魔物が大人しゅうなってきたこのご時世に、魔王が現れたきんいうて、ええ感じお城狙うんやもんな」

 リィシャがあれっと言葉を漏らした。

「そのわりには魔王『死の森』におったしな」

「確かに」

 みつこも頷いた。

 城から遠く初級ハンターしかいない場所に、なぜラスボスがいて

 中級魔物を町でも村でもなく、お城にダイレクトに攻めていったのか

「それに、僕ら襲われたとき魔王一匹だけやったしな」

「雑魚すらいなかったしな」

 師匠は腕を組んで何か思案するような顔つきになった。

 なにか心当たりがあるのだろうか。

「気になるなら……とりあえず、一旦城に向かう?」

「なんで?」

 みつこの言葉にリィシャが尋ねると、めんどくさそうにみつこは答えた。

「安否と状況確認。それに、魔物がどういった様子で攻めてきたか知りたいし。あと……」

「あと?」

「報酬ほしい」

 全員黙ってみつこをみた。

「魔王追い返したんだから、貰ってしかるべきでしょ」

「残念だがみつこ」

 師匠はあきれた顔でみつこを見た。

「クエストでてないし、誰も魔王の姿を確認してないから信憑性がないっつって流されると思うぞ」

「えぇぇええええ。頑張るんじゃなかった」

「「お前そんな理由で魔王つれてきたんじゃないだろうな」」

「え?」

 金の亡者恐るべしと言ったのは誰だったか。

 みつこはロアを大きくして、三人を乗せて走り出した。

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