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HUNTER・GIRL  作者: 一理
殺るか殺られるか
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魔王×2

「えーと、こっちか」

 無駄に広い廊下の端を歩きながら、通り過ぎる扉を見ていく。

 確か、剣と王冠のマークが描かれた扉の向こう側が王様のいる部屋だっけ?

 っていうか、無駄に一つ一つ扉でかいんだけど、無意味に。

「めんどいなあ、ロアがいたらな」

 どろん。

「!」

 天井からどす黒い液状のものが床に落ちた。それを見て何故かみつこの心臓が一瞬だけ凄く高鳴った。

 そのどす黒い『何か』は、浮かび上がると円形になり

「あ」

 そこからカナタが出てきた。

「死ね!」

 みつこはカナタにとび蹴りを繰り出すと、まさか味方から攻撃されると思っていなかったカナタは飛んで行った。

 その間にドスグロイ何かは薄くなり消えた。ますます意味わからん。

「何故蹴られた」

 へこんだ帽子を直しながらカナタは立ち上がった。

「偽者かと思って」

「本物だバカ」

「そんなの殺ってみなきゃわかんないじゃん」

「殺ったら御終いじゃん」

 ちゃんとした返し(疑問形)がきたので、あのカナタは本物らしい。

 まぎわらしい登場の仕方をしやがって。

「で、お前はなにしてんの?」

「お前に蹴られたとき凹んだ帽子直してる」

「nowじゃねーよ、進行の話だよ」

 カナタが「ああ」と納得した顔でまだ帽子を直してる。

 そんなんどうだっていいじゃないか。

 遠くで破壊音が聞こえた。

「?」

「あぁ、黒騎士様がこちらに気が付いたようだな」

「無駄にデカイ無駄に爽やかな無駄に戦闘意欲のある無駄に人間形態の、無駄な魔物のことか」

「無駄に無駄が多い無駄な台詞をどうもありがとう」

 槍のさきっちょがみえたなーって思ったら、カナタが全力で走り出していた。

 みつこは10秒ぐらいそれを見ていた後、正気に戻り走り出す。

「一言せめてなんか言えよ!」

「逃げたナウ」

「なんでnowで言うんだよ」

 くそ、突っ込み役がいないと私がつっこまなきゃいけないのか。

 仲間がいないことを悔やみつつ走っていくと、カナタはひときわ大きな扉の前に立った。みつこも一緒に止まり、その扉を見上げると、探していた模様が描かれた扉だった。

 何故こいつは迷わず来れたのか。疑問はあったが、聞いても仕方ないのは分かっているので、何も言わず確認だけする。

「ここ、魔王の部屋?」

「そう」

 みつこはふと新しい疑問が浮かんだ。

「あれ? 私魔王のところ行くって言ったっけ?」

「貴様の後ろを見てみろ」

「言い方」

 と、じゃっかんイラつきながら後ろを見るが、長い廊下しか見えない。

「何?」

 自分の美しい髪の間からアポロが出てきた。

「うわ」

「ちゅ」

 ヤッホーと言わんばかりの気軽さに手を挙げるアポロ。

「いつの間に?」

「寝る前に」

「そうだよ、なんでお前一緒に寝て同じとこいないんだよ」

 ただのストーカーじゃないか。

「パートナーもこっち来れるようにするのを忘れてたからさ……やってるうちに、さっさとお前がねちゃったってわけだ」

 そういってカナタが本をだし、それをひっくり返すと

「にゃあっ」

 どういう法則か全く理解できないが、そこからノアとロアが出てきた。

「ノア! ロア!」

 二匹は嬉しそうに飛んできた。

「よっし、この恨み晴らさずにおくべきか」

「やめえや。今それしてるところと違うだろ」

 扉をカナタは開く。

「無駄騎士とはそのうち戦うことになる。それよりあっちの世界にさっさと帰ったほうがいい。こっちとあっちじゃ時間の流れ違うからな」

 無駄騎士に一矢報いたかったが、たしかに早くしないとヤスコが主に何か怖かったので、そっちを優先することにした。

 中に入ると、主なき王座がそこに一つあるだけで、誰もいないようだ。

「……?」

 みつこは周りを見渡したが、いないものはいない。

「居ないじゃん」

「変なのはいるけどね」

 王座の前に体操座りしている変な薄いやつがいた。

 薄すぎてよく見えないが、みつこはよくよく目を凝らして見れば、ガイゴツの姿をした……、あ。うん、骨がいた。

「誰あいつ?」

「魔王」

 カナタが本を見ながらつぶやいた。

「魔王スケルトン」

「すけてるな……全体的に」

 みつこの言葉に、カナタがそういう意味じゃないと思う。と自信なさ気に突っ込んだ。

 ちなみに、用があるのはこの魔王ではないらしい。

 とりあえずみつこはロアを武器化して構え、スケルトンに対して魔法を放った。

「ソーラービーム(笑)」

 部屋一面光に包まれ、莫大な破壊音が響き渡った。

 ちなみに『魔王何人いるんだよ』という突込みは誰もしなかった。

 遠い目をしながらみつこのほうを見もせず、カナタはつぶやいた。

「何故放ったし」

「なんで? 魔王は死ぬもんだろ」

「死後の世界だけどな」

 冥界というより冥界の不思議な世界?

 みつこは跡形もなくなった部屋を見て、腰に手を当てた。

「まあこれで、鍵を求める城の主のほうの魔王も、出てくるだろうよ」

「それ狙いだったのか……。八つ当たりなんて幼稚なマネ……天才ハンターがするわけないものなあ。いやあ悪かった。無駄騎士の分のいき込んだパワーをこっちで発散させやがったって思って」

 みつこは口をV字型に歪めながら目を逸らした。

「魔王が出てくる前に、問題はあるぞ」

「何?」 

 扉が大きく開いた。

「他のモンスターがこっちに集まるよね」

 わらわらと城にいた魔物たちが武器を携え現れた。

 みつこはW口を作ったまま、カナタのほうを見た。

「どうしよう」

「しらん」

 自分から背水の陣を作ったみつこ。

 カナタはみつこの後ろに隠れた。


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