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HUNTER・GIRL  作者: 一理
殺るか殺られるか
29/57

無意味なかっこつけ

 みつこはただひたすら逃げて入った部屋で、特にそういった運命的な出会いを求めていたわけではないが

「……」

 驚きを隠せなかった。

「なんで、ここに」

 ここにお前が……ッ!?


「おやじぃいいいいい!!!」

 お前一体何人兄弟なんだよ。キモいわ! キモすぎるわ!!

 牢屋一杯ぎゅうぎゅう鮨詰め状態に閉じ込められた個性もへったくれもない親父の群れ。鉄でできているであろう檻も壊れかけのように見える。

 ここまで来たらある種の呪いだね。

「みつこみつこみつこみつこみつこみつこ、キタコレー!!」

「鍵をぉぉぉ」

「お嬢ちゃんちょっとこっちおいで」

「ちょ、誰か足踏んでんじゃごるあああ」

 カオスとしか言いようがない。

 というか、何故名前知っている?

 

「鍵について言っておかなきゃいけないことがある」


 わらわらわら、たくさんいる親父の中で一人代表的なやつが前に出た。

 みつこはそいつに少し近寄ると、続けて話し出す

「君が持つ鍵は、二つある」

 一つは、魔王のいう大事な魔界への扉の鍵

 もう一つは、この世界のモノではない鍵

「二つ? でも、meは鍵を見たこと一度もないけど?」

「君の中に、閉じこめられたからだ」

「誰に」

 その問いは答えられなかった。親父は黙り、手を伸ばした。

「出してやろう」

「その前に自分で出ようとは思わないの?」

「物理は無理だ」

 みつこは手をそっと手を伸ばした。

「ちょ、ちょっと待って、魔界で閉じ込められてるし、ハンター協会で捕まってるよね、あんたらどんな犯罪者なの?」

 ドラゴン操作してるのは見たけど。

「我々はもとは一つの存在だった」

「え?」

「我々は、もともとはあの世界を統べる神だった」

 みつこが驚いていると、親父はそっと手を伸ばした。親父の手が、自分の手に触れた時まばゆい光が部屋を照らし輝く

「!!」

 みつこの目の前に浮くは、無駄に立派な施しをされた鍵と、ただの懐中時計だった。

「鍵?」

 親父のほうを見ると、あんなにもぎゅうぎゅう詰められていた姿が一切消え

 空っぽのものと化していた。

「な、なんというホラー?」

 空中に浮いている鍵を指でつつくと、カラン、と音をたてて地に落ちた。

 そしてもう一つ、懐中時計に手を伸ばすと影から人の手が生まれ、即座に懐中時計に手を伸ばした。

「!」

 みつこは急いで回避し、距離をとったが……懐中時計は奪われた。

「……」

 地面に落ちた鍵だけをみつめた。

「これねえ……」

 鍵は二つある。

 そういっていたが、どうみても一個。あの時見たのは確かに鍵ではなく、懐中時計でしかなかった。

 あれは、何かの抽象的な表れなのか?

 それとも、そういうことなのか?

「……」

 悩んでいると、扉が粉砕された。

「ほわ!?」

 槍がすごい勢いで、跳んできた。武器がないのはやはり辛い

 壁にめり込んだ槍が、小さな音をたてて微振動しているのが分かった。多少なれば持ち手から離れても動くことができるらしい。

 己の主の元へ、自分の意思で戻っていった。

「あんたもしつこいな」

「ゴキブリ……君もしぶといね! 黒光りの虫みたいに」

「いやもう正体いっちゃってんじゃん」

 みつこは、嫌な汗を流した。

 背後は壁、他に扉はない、いったいどうしたものか

「さあ、おねんねの時間だよ! ……永遠にね」

 武器が黒く鈍く光る。

 やばい、ツンダ。

「ぐるるるぁああああ!!」

 黒騎士の背後に現れた白いトラが、敵を投げつけ、みつこのそばに寄った。

「ロア!」

 頭を撫でて、急いでその背に跨った。

「GO!」

 部屋を飛び出す。

「にゃあ」

 ノアが扉の前で一鳴きした。この部屋に入れというのだろうか

 みつこはロアに命令し、部屋に入るようにつっこんだ。

 扉を破壊しながら飛びこむと、古い埃が空から舞って落ちてきたのが、日の光によって目に見えた。

気がつけば、またロアが消えていた。なんということでしょう。

「もー、わけわかめのすこんぶだよ。んん?」

 そこには大量に背の高い本棚がいくつもあり、ここが図書室なのだとすぐに分かった。

「どこ、ここ」

「来たか」

 高いところから声がした。

 上を向けば、一本の太い支柱の上に何故かあるベットに横たわる、喪服の女が見える。

「誰? おばはん」

「そこから私の姿見えないはずだが」

「声で」

 上から銃声が聞こえた。

 発砲弾をすべて避けて床を見れば、どろどろに溶けているのが見える。

(酸性……?)

「口の利き方には気をつけなさい」

 フワっと空から黒い羽が降ってきたと思ったら、喪服の女が舞い降りてきた。

 こいつもきっと魔物なのだろう。

 先ほど銃を撃ったはずなのに、その手には何もない

「人形を取りに来たのだろう」

「ん?? 人形?」

 みつこは首を傾げた。

 そんなもの取りに来た覚えはない。

「ならいらないのか?」

 と、取り出した人形は仲間に似た姿をしたものだった。

「何故コミカルな姿に」

「理由は簡単だ……人の姿だと、喰われるからな」

 おもにあの肉包丁系メイドにですね、わかります。

 みつこは人形をもらい、異次元ポケットにしまった。

「よし、帰り道を探すか」

「お礼すらないのか人間」

「あー、うん。ありがと、あんたは味方なの?」

 みつこはそう聞くと、「今はね」と意味深なことを言った。

「何故協力するのさ? 今だけ」

「私は温厚派だ。ただ、鍵を返してくれればいいというだけの話だ」

「これ?」

 懐から鍵を見せれば、鋭い目を向けられた。

「そうだ……いいか」

 黒いふわふわの羽のついた袖が鼻にあたって痒い。

「それを大事に、王のところまで運ぶのだ」

「なんでなん?」

「お前から奉還しなければ、お前は盗人扱いのままだぞ」

「解せぬ」

 みつこはとりあえず喪服の女、ドリーはみつこに王の居場所を教えた。

 さっそく大破した扉の向こうへ旅経つ前にみつこは振り返った

「そうそう……その王さま」

「ん?」

「倒してしまっても、構わんのだろう」

「いや、困るんだが」

「……」

「……」


 みつこは歩いて行った。

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