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HUNTER・GIRL  作者: 一理
殺るか殺られるか
28/57

逃走、勇気ある撤退だ

「あれ? 人形抱いて寝ればいいんだよね?」

 みつこは寝間着姿で布団に入ろうとしたが、まるで我が家当然の様にくつろいで布団の中に入っているカナタに尋ねた。

「さもありなん」

「じゃねーよ。なんで家主より先に布団はいってスタンバってんだよ」

「サービス」

「いらん。出んかい」

 布団から蹴り飛ばすと、睡眠キャップを被りなおしながらカナタはため息を吐いた。

「一緒に行こうというから、同じスタート地点になるようわざわざ来てやったのに」

「むかつくわーその態度むかつくわー」

「やれやれ」

 カナタはベットの近くにあるソファに横になった。

「これから死にいくのに、一人じゃ寂しかろうときてあげたのに」

「余計なお世話だし。もし死にそうになったらお前を生贄にするし」

「酷ぇ」

「お前に言われたくないね」

 醜い泥仕合をしていたら、気が付けは深い眠りについた。

 身体がまるで闇に包まれるように、視界ごと黒に染まっていく。

 

 みつこは足掻くことなく沈んでいった。

「ん」


 ごとごと

「ん?」

 ごとごと。

 みつこは目を覚ますと馬車に乗っていた。

「え? え?」

 窓の外を見た。

 灰色の世界が広がる。

 ソラは薄い白い雲が広がり、今が朝なのか夜なのか朧だ。風は無風だし、基本背景は灰色一色。建物は黒色だ

 なんとも人を不安にさせる世界

「……ふう」

「!」

 溜息が聞こえそちらを見れば、灰色のメイド服をきちりと着こなした気怠そうな女性が座っていた。

「相席中だったのね」

「……じっとなさってくださいませ、みつこ様」

「!」

 みつこは武器を構えようとして、気づいた。

「ロアッ!?」

 また放置したのか?

「そういきり立たないでくださいませ。この狭い空間で、わたくしが貴女様にたいし、何かしようとでもお思いですか?」

「……あんただれ」

「わたくしの名など知っていかがなさいましょう」

 会話できるようで会話できなさそうだ。

 みつこは諦めて座った。

「……なんで私の名前知ってるの」

「有名でございます。あなた以外の三人も然り」

「ハンター・ガールとして?」

「そうでございます」

「どこにいってんの?」

「着けば分かりましょう」

 やはり教えてくれない。

 このまま逃走してもよいが、武器がない。今はうかつな行動は控えたほうがよさそうだ。

 みつこは静かにつくのを待った。

(しかしまあ、『着く場所一緒のほうがいいだろ』っていってたあほがいないことに腹が立つな)

 やっぱりただの不法侵入じゃねえか。

 窓の外をそっと覗くと、黒いお城が見えた。うちの国の城よりも高く鋭い巨塔も見える。

「……まさか」

「つきましたわ」

 扉が開く。

 城門が開き、中へと入る橋が降りてきた。

「風圧はんぱなーい」

 なんで落とすの? 普通にゆっくりおろせないの?

 中から発せられるまがまがしい気配を感じつつ前に進んでいく。

「物怖じなされないのでございますね」

「フレッシュでもハンターだから」

「……はあ」

 気だるげなメイドは少し進むと、立ち止まった。

 目の前に広がる赤い液体。と、赤黒い何か。そして異様な腐敗臭がとこからともなく漂う


「……メアリ=アン!!」

 メイドがため息つくと、急に大声で叫びだした。急なことに驚いたみつこは耳をふさぐことができず、少しくらりとした。

「メアリ=アン! キッチン以外で調理するなとあれほど言ったでしょう!! メアリ=アン! 返事なさい」

「ん」

「!」

 二回へと続く中央階段のど真ん中を堂々と立っている小さな少女が居た。

 その子の目はどこか虚ろで、その手には赤く濡れた肉切り包丁が握られていた。何を切ったのかは考えないでおこう。

「私を呼ぶ? あなた」

「片づけをしなさい。お客様がいらっしゃったのですよ」

 うつろな瞳がみつこを捉えた。

「食用。食べる為に切る。許可を」

「客だっつってんだろ、なに怖いこと言ってんだよ!」

 みつこは急いで訂正した。

「終わり。食べた。結果」

「それはあなたが決めることではありませんわ」

 今の三つのワードでは彼女の言いたいことは分からない。

 しかし彼女たちには分かるのだろう。

「こちらですわ」

「どこにいくのさ」

「魔王のところさ。なんだ、知らずに来たのかい?」

 後ろの扉のほうをみると、爽やかな笑顔を見せた男が立っていた。

 ただ後ろのオーラがどす黒いのは矛盾してないか?

「ここで君はきっと死ぬんだと思うよ」

「余計なことを言わないでくださいコーネリアン。彼女が死ぬかどうかは王がおキメになること」

「死ぬでしょ~だって、魔王の大事な鍵をもってるんだぜ? 重罪人だ」

「鍵?」

 みつこは思い出そうとしたが、思い出せなかった。

 なんのこといってるんだろう。

「んなもん、もってないし」

「持ってなくても、持っていても、この世界に来た時点で君に生きるという選択肢はないよ」

 彼は天井に着きそうなほど高い槍を取り出した。

「だって、君はハンター・ガールなんだろ? 俺らは君達に狩られる存在」

「まさか」

「仇討ちなんてやってやる気はないけどね?」

 みつこは身を低くして、攻撃をかわした。

 真上には槍が通過した。

 後ろのほうで壁がぶち壊れる音が響く

「俺たちは、君たちの言う『魔物』だよ」

(魔王って言った時点で嫌な予感はしてたんだよな!!)

 笑顔で繰り出す攻撃をかわし、みつこは逃げ出した。

「コーネリアン! 面倒を増やさないで」

 メイドの怒鳴る声。

「肉。切る。逃がさない」

 可愛らしい声からは想像もつかない勢いで、手にあった肉切包丁がみつこの真横を通過した。

「あぶなああ!?」

 攻撃を避けながら適当に細い道を選び扉に逃げ込んだ。

「最近ろくなことないわ!!」

 誰かにぶち切れながら。

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