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HUNTER・GIRL  作者: 一理
殺るか殺られるか
25/57

投げられた

 朝からニュースの内容はハンター協会会長レン・ワールゾの投獄報道と、魔物騒動の偽りを騒ぎ立てていた。

 今後のハンター協会のありかたと、王族の権利について評論家が言い合っているのも聞こえる。

 テレビのスイッチを切りながらみつこは自宅のソファーに身をしずめた。

「……」

 王様勅命、ハンター活動自粛。

 やることがない。

「ロア、ノア」

 大きいサイズのロアも平気で入れる家の中を、楽しそうに駆け回るロアとノアを呼ぶ。

「武器化」

 二匹は武器になった。

 かたや赤い宝石が五つ浮いた魔法のロット、かたやなんにでもなる武器(付属効果なし)


「……最強じゃね?」

 遠距離は魔法で、接近されたら武器で追い返して。

「チャージする際の行動が鈍くなるのをどうにかすれば、攻防共に最強じゃない」

 満足げに笑っていると、扉を蹴破られた。

「……」

 みつこは不満げに扉を見た。

 サンタクロースみたいに袋を持った師匠がずかずか入ってきた。

「よう、バカ弟子」

「もしもし、不法侵入者な男が家に―――」

 受話器を奪われた。

「いい度胸だな」

「なんですかー。乙女の家に土足で入り込んでー」

「土産」

 レアアイテムの山。

 みつこはありがたく頂戴しながらハズキを見た。

「ハンター自粛なのにこれどうしたの?」

「自粛にともないアイテム屋が半額セールを始めたんだ。処分するには費用がいるからな」

「あぁ、なるほど。で、師匠はバカだから買ったと」

「誰がバカだ」

「だってそうじゃん」

 机の上に投げ飛ばしていた新聞を師匠に向けて投げた。ここからでも見える一面に書かれた文字

『ハンター職廃止か?! 魔物と共存の道、守りは王国兵』 

「meら、このままだとリストラだよ」

「そうか」

 ハズキはどうでもよさそうに新聞をゴミ箱にシュートした。

「お前は、ハンターやめるのか?」

「……やめないつもりだけど」

「じゃあ問題ないじゃないか」

 相方増えてるといいながらノアを撫でようとして手首まで噛みつかれている師匠。相変わらずパートナと仲が良くなれない性質のようで。


「あるでしょ。金くれるとこないのに、慈善活動でハンターやれないよ」

「金持ってて、ハンター贔屓の権力者が居るじゃないか」

「誰?」

 みつこは考える。

 思いつくのは商人バンビ社の管理者やすぃんや新家ぐらい。しかし、あいつがそんなことに手を出すだろうか

「やすぃんや新家じゃないぞ」

「え? じゃあ誰よ」

「情報屋、カナタだ」

 あぁ、と手を打つ。

 ハンター協会幹部、王族通称賢者、情報屋、元ハンター ロード社の社長

「あの引きこもりに再建頼めるの?」

「できるさ」

 確信のある声で彼は言い切り、立ち上がった。

「今度のハンター協会はお前らで作れ。じゃあな」

「どこいくの?」

「ダンジョン」

 王の勅命すら無視するらしい、さすが我が師匠豪胆だ。 

 師匠もいなくなり、部屋が静かになった。

 

「……」


 サキの言葉を思い出す。

 ――― お前は何者なんだ。

 カナタに向けた言葉。サキがカナタに何を問いたいのかは分からないが……確かにカナタの行動は怪しい気もする。

 合理的に動いているようにも見えるが

(将軍共と闘った意味も分からないし……引きこもりのくせにやけに手を広げているのも、違和感を感じるな)

 ノアがごろごろと喉を鳴らしながらみつこにじゃれる。

「……」

 なでる。

 と

「!!」

 殺気……?

 突如どこからか殺気を感じた。


 みつこは急いで外に出た。


 広がる上空は灰色に染まり、やがて血が滲んだ様に赤黒色に変わって行った。

 町の人も異常に気が付き、空を見上げ不安な声を上げる。

「おねえちゃん」

 あかことあおや、末っ子の三人がやってきた。

「死者の森のほうが光ってる!」

「は?」

 ロアを巨大化し、その背に跨った。

「お前たちは家に戻ってろ」

「……お姉ちゃん」

 末っ子が何かをすっと差し出した。

「クローバー?」

「『幸せの四葉の栞』……ロード社アイテム。奇跡が起きるかもっっていうやつ……」

「こんなレア……いいの?」

 しっかり懐にしまいながら問うと、末っ子は頷いた。

「嫌な……予感がするから……」

 小さくつぶやく末っ子。嫌なフラグだ。

「安心してていーよ」

 みつこは勝気に微笑んだ。

「meが解決してやんよ!」

 走り出した。町中を駆けていくとサキとリィシャが走っているのが見えた。

「やっほー」

 後ろから軽く追い越した距離を保ち、みつこは手を振った。

 余裕な態度にイラつきながら、サキはリィシャと顔を見合わせる。

「お前も気づいたか」

「気づくよ。あんな殺気放たれたらね」

 空を見る。

 昔師匠から聞いたことがある。魔力が強いモノが攻撃的に力を溜めるとき、周りの空気も変わるのだと

「……お、珍しいこともあるもんだ」

 サキの言葉を聞き、前を向くと、海里に乗ったヤスコが見えた。

 二人をロアの背に乗せ、海里のところまで走って行く。

「よう」

「お、三人一緒なんやな」

「どこいってんの?」

「死者の森や」

「まあ奇遇」

 みつこが白々しく言うと、ヤスコはジト目でみつこをみた。

「なんや」

「っていうか珍しいじゃん。『うちは戦いたくないんや』が口癖なのに。引きこもってなくていいのかい?」

「凍る?」

 海里の目がこちらを向いて光っている。

 後ろの乗車員が首を横に全力で振っているのが見なくても分かった。

「で、まじでなんで?」

「うちかて、行くときは行くで。戦わんけど」

 そこはハッキリしてるという。

「ただ、気になるんや。こう胸のあたりがもやもやーしてな」

「やすぃんや新家がよく許したな」

「いや、レストラン仲村んとこ行った。なんかアポロに呼び出されたって」

「ってことはカナタか」

 死者の森付近に到着した。

「すっげ」

 サキの言葉にみつこは同意した。

 死者の森が白くおぼろげな光を放っていた。森から出ては戻る死者の魂。響く魔物の雄たけび。いったい何事

「さすがにあの中に入っていくやつはいないわな」

「つうーかこんだけ凄かったらプロ級がもう動いてんじゃないの?」

「僕聞いた話だけど」

 リィシャがサル吉の首根っこを掴みながら頷いた。

「お城のほうでドラゴンの群れが現れて、みんなそっちいってんやって」

「へえ」

「ホーン・ドラゴーンっていよったかな」

 スカスカの骨のくせにデカイドラゴンっていう、亡霊系のあれか

 みつこは腕を組んで森を見た。

「よし」

「何か策あるのか?」

 みつこは笑顔で「ない」ときっぱり言い放った。

「祈祷師か、エクソシストの仕事だろこれ」

「いやいや、どう見てもモンスターのせいだろ」

 幽霊系の魔物が暴走しているように見える、と指差しているサキ。

「ここから見たって分からんな。みつこどうにかできんの?」

「あのねヤッちゃん。魔法もリーチあるからね、さすがにここからじゃ届かないからね」

 リィシャが手を鳴らした。

「ほなら、リーチ縮めればええんよ」

「あ?」

 リィシャはみつこの躰を掴んだ。

 ああん、嫌な予感

「ほりゃ!」

 みつこの躰が浮いた。

 空に

 飛んでいる

 私の

 体。

「うぎゃあああああああああああああああ」

 みつこは悲鳴を上げて森にぶっ飛ばされていった。(物理)

 サキが叫んだ。

「みつこぉおおお!! おい、なんで投げたんだよ!!!」

「だって、リーチがどうのって」

「近寄れないっていうのは、危ないからってことだろ! 見たらわかるだろうが!!」

 ヤスコとリィシャが手を打った。

「「ああ」」

「みつこぉおおおお!!」

 ロアがサキの叫びと呼応するように走り出した。 

 ぶっ飛ばされた主を救うために

「俺たちも助けに行くぞ」

「何で?」

 サキは武器を構え、リィシャを焦がした。

「行くぞ!」

「「はーい」」


 森に入っていくルーキーズ。それを見守る存在が一匹。

「……ちゅっ」

 アポロは命令に従い、彼女らの後を追い、同じように森に入って行った。

 若干びびりながら……。


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