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HUNTER・GIRL  作者: 一理
ワンステップアップ
21/57

嵐の目

 あれから一週間が経った。

 学校にくると、アポロに一枚の紙を渡された。黙ってそれを読む

「ハンター……退職しろってこと?」

 それはハンター協会会長レン・ワールゾからの解雇通知だった。

 カナタの問題ないは、問題なくないものだったらしい

「はあ!?」

 みつこは憤りながらもカナタの家に向かうことに決めて、歩き出したらそれを見ていたサキ達もついて行くと立ち上がった。

 途中で一人の男が立った。

「ねえ、君ら今日暇? よかったら俺らとさ―――」

「邪魔、すんな」

 サキが斧を構えたのを見て、男たちは顔を真っ青に笑顔を凍らせたまま後ろへ下がった。

 その様子をみていたみつこが「へたれプギャー」と言いながら先頭を切ってあるくサキを追い越す為走り出した。

 

 そして着いたカナタ邸


「おい鼠娘!」

「齧歯類の何が悪い」

 わけのわからない会話をしながらみつこたちが入ると、包帯ぐるぐる巻きになっているアポロを手に包みこんでいるカナタが神妙な顔でみつこらを見た。

「何」

「あれ、アポロどうしたんだ? ボロボロじゃんか」

 サキが聞くとカナタはアポロを膝の上に置いて、コップに手を伸ばした。

 髑髏の煙が浮くお茶。それを飲み干すと小さくため息を吐く

「先手うたれたんだよ」

 カナタはアポロを帽子の中に入れた。

「……気配がする」

 リィシャがサル吉の頭を掴んだ。

「!」

 外から大きな破壊音と複数人の悲鳴が響いた。

 カナタの邸から出ると高レベルモンスターが大暴れしていた。どいつもこいつも興奮状態

「なんで『狂谷ダンジョン』の合体獣キメラがいるのさ」

「よぉ知ってん。で、それって何?」

 驚愕しているみつこに感心して質問するヤスコ。脱力しながら質問に答えた。

「プロにならないと入れないダンジョンのモンスター。昔、モンスターについて研究した際混じりが発生してそれを谷に捨てたらしい、そしたら谷自体変なダンジョンに変わったんだってさ」

 ハンター協会発行本を見ながら説明して、みつこは分かった? とヤスコを見ると、海里の上にのってみつこらより三歩後ろ下がっていた。

「聞けよ」

「あれ見たことある」

 空を指さすヤスコ。

「なんだあれ!?」

 こんどはサキが叫んだ。

 氷の鎧を身に着けた鳥が群れをつくり町を攻撃していた。

 町は氷漬け。

「寒ッ」

 普段寒いダンジョン行かないサキが肌を摩る。

 ヤスコが引きこもっていたダンジョンのさらに奥に行けば居る『氷鳥』だ。

「キメラが放電しよる。あれ、ライの友達?」

 今のんびりカナタ邸から出てきたリィシャが見当違いなことを言う。

 と、公園に設置されていた大型のテレビに緊急速報とスイッチが勝手に入り、甲高い声が町中を響き渡った。

『こちらなんでも放送局アナウンサー『ヨッシー・ミン』です』

「あいつ超五月蠅いんだよな」

 そして電波を越えて通じる超音波に魔物たちがさらに暴れだした。

 町の人が悲痛の叫びを上げる。

 みつこはロットを構えた。

「範囲結界」

 人間だけに結界を張る。ただし、みつこの見える範囲のみ

「まったく、面倒な」

『今、各地でありえないレベルの高いモンスターが町を襲撃しています!』

「お前が油注いだけどな!」

 サキがテレビに突っ込む。

『ハンター協会がこれは魔王の仕業と発表しました! みなさん注意してください』

「魔王!!?」

 国民がざわつき、恐怖のあまり泣き出すものもいた。

『国王勅命により、ハンターは魔物討伐に動けとのこと、住民の擁護・保護は騎士が向かうとのことです! いやーん、こわーい』

「貴様を倒したろか」

「落ち着けサキ! 今はそれどころじゃないだろ」

 みつこが突込みながら、魔法を放った。

 ワーウルフがみつこに牙をむける。

「そうだよ、言うの忘れてたけどなんでこいつらわんさかいるの!?」

 リィシャが死者の森でも見た気がすると、のんびりいいながらブーメランを振るった。それは砂漠のダンジョンにいた一つ目土人形に片手で弾かれ、それは軌道を変えみつこに直撃した。

「ごふ」

 ワーウルフに集中していたみつこは突如来た攻撃に驚きと怒りを感じつつ、リィシャに殺気を送った。

「貴様……」

「ごめんごめんごめんごめん」

 土下座しそうな勢いで謝罪するリィシャ。

「遊んでんじゃねえよ」

 ライを構え、氷鳥を攻撃するものの、苦虫を噛んだような顔をする。

 キメラ、雷属性。

 一つ目土人形、土属性。

 氷鳥、氷属性 ただし飛行系

「雷落とせばいいんじゃね」

 サキは後ろを振り返った。そこには髑髏茶を手にただ突っ立っているカナタ

「当たらねーんだよ」

「雷に型があるのは魔法と呼べるのか」

「属性だからいいんだよ」

 みつこは光魔法を発生させ、ワーウルフを退けながらカナタのそばに回避した。

「ほら、ワーウルフ」

「知ってるー」

「殴るぞ」

 ヤスコがみつこの間に入り、ワーウルフを結界内に閉じ込めた。

「ナイスヤスコ」

「正しくは海里やけどな」

「たまには自分で判断して動けよ!!」

 からからから、馬車がみつこたちの前で止まった。

「もうっ! ここまでくるの怖かったんやきん」

「師匠?」

 ヤスコが上からのぞく、新家がほっとしたような顔を見せた。

「ああ良かった無事ね。さすがハンター・ガールやな」

「何しにきたん?」

「呼ばれたんよ……うぎゃああ」

 一つ目土人形が馬車に手を伸ばした。新家はそれをみて悲鳴を上げ、銀色の長針をとりだし、叫んだ。

「エリザベス!」

 土人形が馬車を掴んだ。

 が、それは新家の乗っていた馬車ではなかった。

「身代わり能力、ってこれかあ」

 みつこが感心していると、カナタに腕を掴まれ馬車に突っ込まれた。

「お前らも乗れ」

「え、うん」

 他のハンター・ガールも乗る。

「meらいなくなったらダメじゃね?」

「ダイジョウブ、な、新家」

「え?」

 運転席にいた新家を引きずり降ろし、その席に座るカナタ。

「後は任せた」

「親指が下向いてるのは気のせいやろか!?」

「はいっ」

 馬型魔物ポニーテイルを走らせ道を進む。

 道中はやはり魔物が多い。

 だが、小型の割には猛スピードのポニーテイルの速さに近づいたものは轢かれていった。

「なあカナタ。さっきの『先手うたれた』って誰に? どこにいってんの?」

「ハンター協会」

「もの魔物の大量発生はどういうことだ」

「ハンター協会」

「全ての黒幕は?」

「ハンター協会」

「じゃあ」

 サキが聞いた。

「お前は、なにものなんだ」


 みつこはサキを見た。

 こいつ、本当に聞きやがった。


「人間」

「そーいうことじゃねえ!」

「じゃあなんて答えればいいのさ」

 その言葉はごもっともだ。

「俺たちをレベル上げて、どうするつもりだ」

「ハンターがレベル上げて何が不服?」

 しばらく黙った後、カナタは続けた。

「たぶん、魔王が復活する」

「!!」

「あの放送はほんまもんってこと?」

 ヤスコが問うと、カナタはいいやと否定した。

「今回の騒動は欲と権力に目がくらんだ会長が目論んだ悪事。……魔王についてはこの件が終わったら話す。今は」

 この騒動の元凶の討伐が優先。

 みつこは魔物を見ながらふと思った

「ハンター協会が敵なら、これの報酬は誰から貰えばいいの?」

 みんなから冷たい目で見られた。

 なんで?

 

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