試合 三人目
「この流れは次ヤスコか」
「なんでや」
「主人公は最後だろJK」
もめるみつことヤスコの言い合いを聞いていたカナタが、わりとどうでもよさそうにみつこにいった。
「その言葉通りなら、最後戦う予定の私が主人公ということになるな」
「……」
みつこは黙った。
「いや、お前主人公って器じゃないし」
「五月蠅いよ。……とりあえず、次お前」
カナタはみつこの肩を叩いた。
「無理。だってme魔法使えないじゃん。ここで使ったら確実ハンター協会の偉さんにバレるよ。いるんでしょ?」
師匠が居て、ハンター協会幹部のカナタがいて、会長が居ないわけがない。
カナタは頷いた。
「そこはもう問題ない」
「何がどう問題ないっての?」
「ダイジョウブ」
カタコトになったカナタに背中を押され、次の相手と対峙する。
そして、みつこの視線がやや下がっていたものから、上に上がった。
「巨人ですか?」
と、聞きたくなるぐらい相手は大きい。なにこれいじめ?
みつこはヤスコのほうを指差して叫んだ。
「これ確実ヤスコ担当だろ!」
学園襲撃してきたビルメイの四倍はある体躯に驚きながらも、みつこは頭に乗っていたロアを抱っこした。
すぐに武器化できるように
「そんなゴリラにうちが勝てるわけないやろ」
「ゴリラ言うな。彼は我が軍でも一番の怪力と肉体の持ち主、ゴートンだ」
「なるほど」
カナタが頷いた。その手には本が開いてある。
「ううむ、今のところ負けしか見ておらんし、そろそろ期待してもよいかの」
王様はつぶやき、手を挙げた。
「始め!」
男の腕が地面を抉った。
みつこは男の腕が届く前にマントを翻しながら男の頭上を飛んでいた。
(おぃー! 地面えぐれるほどの剛力って何さ)
たまたま先手とるため飛び上がっていてよかったと心の底から思いながらみつこは叫んだ。
「武器化」
赤い宝石が光る。
「攻撃魔法『雷撃』」
雷が男を包む。
激しい音をたてて雷が男の躰を蹂躙するが、男が雄たけびをあげ、両腕に力を入れると雷の効果が打ち消された。
地面に着地しながらみつこはカナタに叫んだ。
「ゴリラゴリラ!!」
訳:こいつ人間じゃない。
「笑えるー」
「ゴリラああああ!!」
腕が伸びてきて掴まれた。
「うっ」
しまった。あまりのショックに油断していた。
「ぐっふっふ。オレ好みの美少女だな……この戦いが終わったら、付き合ってもらおうかなぁ?」
「それ負けフラグだろ」
みつこはロアの武器化を解き、大虎に戻し、腕から逃れた。
その背中に乗り、男の腕の届かないところへと後退する。
(さて)
あの男は魔法が効かないのか。それとも雷に耐性があるのか、それとも
(筋肉が分厚いのか)
だとしたら、次は必ず喰らうだろう。
「チャージ」
魔力を溜める。
サキじゃないけど、適当に攻撃してもいいがこちらのほうが持続力がないだろうし、見苦しい。
ならば、万能魔法で一撃大きい攻撃したほうがスマートだ。
威力はあまり期待できないが、人間相手ならちょうどいいだろう。
「え?」
目の前に迫る拳
「KYT!? ロア!」
簡易結界を張るが、一瞬で粉砕された。
みつこはスカートがめくれないようにバック転しながら避けた。
「……なるほど、師匠から聞いたことある」
男が地面から腕を抜く。
「掴まえたハンター狩りを逃がさないようあらゆる攻撃、防御など、戦い方をその身に叩き込んだ特殊人間がいるって……確か、その職種の名は」
「処刑執行人だ!!」
軍兵関係なくなってないかと突っ込む。
巨躯に似合わず素早い動きに捕まらぬようみつこは冷静に相手の動きを読み避ける。
「肉体攻撃は弱いけど、避けるほうなら得意なんだよね」
軽々と攻撃をかわしながらみつこは笑った。
そしてぎゅうっとロットを握りしめる。
「魔法『蝕む毒粉』」
毒霧が男を襲う。男は手でキリを払おうとしたがそんなことは無意味だ。
「数分後、お前は死ぬ」
ちょっととある漫画風にかっこつけるみつこ。
サキが遠くで突っ込んだ。
「気絶させなきゃ意味ないだろ!!」
「あ」
忘れてた。
「でもほら、ゲームだと味方死んだ場合『キゼツ』扱いじゃん? そんな感じ」
「ダメだろ!!」
「一番最初に殺っちゃった人に言われたくないよ!」
ぷぎゃーとわめいてると。ゴートンが両手を組んで振り下ろした。
みつこは杖をかざした。
「対、物理魔法『カウンター』」
受けた攻撃を倍にして敵に返す。
男の骨が折れる音がした。
「攻撃魔法」
赤い五つの小玉が鈍い光を放ち、中央の球に光をおくる。
「オールマイティー」
中央の大きな赤い玉から気弾が発せられた。
虹色に輝く一筋の光はゴートンに直撃し、爆発した。
その爆発の余波が周りにも喰らう。
「げほげほ」
姫がせき込んだ。
あがる砂煙、誰かがどうなったんだと叫ぶ
「はああっ!」
ハズキが鞘のついたままの剣を地面にたたきつけると、風が巻き起こり砂煙を巻き上げ消し去った。
「さすがみつこの師匠、桁外れやな」
その威力の凄さにリィシャが目を輝かせながら褒める。
と
「勝者みーつこー」
自分で言いながら微笑んだ。
たしかにゴートンは倒れて起き上がらない。
将軍がくっそおおと叫んでいるのが聞こえる。カナタは頷いた。完全なる勝利
「どいてー」
トゥディが動き、ゴートンを見る。
「あれ? 無傷やな」
「オールマイティー魔法で治した」
「倒す技やないん?」
「万能攻撃だから回復魔法もたまに発動するんだよ。ほんとうは味方にむく魔法だけど、毒粉かけてたから解くついでに回復してあげた」
トゥディはへえっと感心した。
担架で運ばれていくゴートンを見送り、カナタはヤスコの背中を押した。
どうあがいても次はヤスコだ。
「闘う意味が分からん」
もっともなことを言いながらヤスコは歩き出した。