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HUNTER・GIRL  作者: 一理
ワンステップアップ
16/57

試合 一人目

「ほらなー?」

 みつこは言いながら逃げようとした三人を引き連れ王の前に現れ、頭を垂れた。

「ハンター・初級みつこと申します」

「初級とな? 此度の誕生会に呼んだ覚えはないが」

「私が招きました」

 カナタが頭を下げた。

「兵士の皆様、並び、貴族王族の皆様が我々に不満をもっていることは知っていましたので、理解を変えていただきたく彼女たちを連れてきました」

「誰の許可を得て行っておる! と、怒鳴りたいとこじゃが、理解を変えるとはどういうことじゃ?」

「闘えばわかりますが」

 カナタ怖いもの知らずやな、と後ろでヤスコがつぶやいた。

 サキの肩に乗っていたアポロは、口から涎垂れ流すほど怯えている。

「わ、てめ、きったねーな」

 サキの肩から叩き落とされたアポロはカナタのもとに駆け寄った。

「よしよし。ところで、武器はいかがなされますか?」

 将軍は腕を組んだ。

「相手は女、それも子どもとあれば対等では不平であろう。我々は練習用の木剣で構わない」

「よくぞ申した将軍! 頼もしいのう」

 王は満足げに言い、他の従者に連れられ木陰のそばに置かれた椅子に座った。

 隣に立つランジェ姫の目は尚もキラキラしている。 

「さてと、最初は誰が行きます?」

「ますじゃねーよ」

 円陣を組んで話をしていると、カナタの帽子をサキはつかんだ。

「やめろ、帽子に触るな。油が付く」

「つくかよこの野郎・・

「女だから野郎じゃなくて、アマだけどな」

 サキはライを呼んで武器化した、のでカナタはそのままサキの後ろに周り、そのお尻を蹴っ飛ばした。

「いってえ」

「最初は貴様か」

「あ?」

 お尻をさすっていると、いつのまにか大勢の人たちが作り出した円の中心に居た。

 どうやら一番手に押し出されたらしい。

「あたしからかよ」

「我は親衛副隊長アクセル」

「え? あ、あぁ。どうも……サキです」

 王様が手をあげた。

「始めよ!」

 アクセルが先に踏み込んできた。

「てやっ!」

 サキは首を目掛け突かれた攻撃を躰を低くし、避けた。

「良い反応だ」

 そのまま転がり相手の背後をとった。

「武器化」

 ライの姿が斧になった。 

 もちろんただの斧ではない。雷属性を持つライは斧の姿のまま放電している。

「うかつに触れれば感電か」

 呟く騎士に、疑問を姫は持つ。

「賢者様、どうして感電しているのに彼女は触れるのですか?」

 姫がカナタに問うと、カナタは少し待っててください、とその場を去った。

 しばらくしてハズキを引き連れてきた。

「彼が説明してくれるそうです」

「そうなの? 少し怖いわ」

 ハズキから少し離れる姫にショックを受けつつハズキは説明した。

「あれは彼女がパートナーとシンクロしているからです。パートナーはハンターにとってかけがえのない武器でもあり、仲間でもあります」

「ぷー。くすくす。自分居ないボッチのくせに説明乙」

 遠くでみつこの笑う声が聞こえた。

「お前バレタら処刑されるんちゃうん」

「この距離で聞こえるわけないだろ?」

 聞こえてます。

 ハズキは笑顔で姫に軽く頭を下げ、この場を離れて行った。

「……チッ。では続けて説明しますと、パートナーにはそれぞれ特殊付加がありまして、彼女のライの場合、ご覧の通り雷を操る能力を持っています」

「へえ、そうなの! 面白いわ。じゃあこの子もできるの?」

 姫に渡したアポロが彼女の手から顔をのぞかせた。

「残念ながら、姫とそれはシンクロできませんので、相性が良くなければパートナーも武器になれないし、扱えないのです」

「そうなの」

 残念そうに言う姫。

 目の前に雷が落ちた。


「雷電!」

 斧を大きくスライスするように振りかぶると、いくつもの白い雷が敵を倒す為雨の様にいくつも発生した。

 アクセルはすべて流れを読んでみごとに避けた。観客から大きな拍手と歓声があがる。

「やあっ!」

 木剣の攻撃をサキは斧で弾き返した。

 粘るアクセルのサキの顔に苛立ちが増す。

 その様子を見ていたカナタは小さくため息を漏らした。


(サキの攻撃は威力や応用があるが、その分無駄に隙が大きいのが難点だな)

 そして気が短いのも問題がある。これらをどうにかしないと全く力の無駄もいいところだ。

(これじゃダメだな)

 意味がない。

「……さすが副隊長なだけあって、冷静に相手を分析する能力はすばらしいですね」

「お褒めいただき、感謝する」

 二人の間の空気は冷たい。

(……さすが国と王族を守るための兵士だ。すっげえわ)

 攻撃は当たらず、動きは読めない。

 サキは苛立って攻撃を外してばかりいたが、ふとカナタと目があった。

「っ」

 濃い紫の瞳。冷やかな、なんの感情も灯していない虚ろな目でこの試合を見ていた。何故かとても嫌な気持ちになった。と、同時に冷静になることができた。

(当たらないなら、確実に当てる……そうだ!)

 しばらく打ち合いが続き、サキは動きの読めない木剣に体を打たれ倒れこんだ。

「終わりだ。気絶してもらう」

 サキはにやり、と笑った。

「ッ?!」

「鳳来雷招」

 雷でできた鳳凰がアクセルを襲う。

「ぐあ、ぐあああああっ!!」

 彼は避けきることができず、……なんというか一瞬骨が見えた。

 みつこが若干口元に笑みをつくりながら呟く。

「手加減? ……そんなものはなかったんや」

「お前が言うなよ」

 アクセルは痺れ体を起こすことができず、口から煙を吐いて倒れた。

 というか、生きてますか?


「はい、どいてどいてー」

 医者のトゥディがさして慌てた様子もなくのんびり近寄り、サキをどかしてアクセルを診た。

「あー。なあそいつ大丈夫?」

 罪悪感があるのか、サキがそう聞くと、彼女は親指を立てた。


「血液が沸騰してる」

「大丈夫じゃねえじゃん!!」

「アウトー」

「そっちの親指かよ!!」

 サキがわあわあ喚くのに便乗してみつこも後ろで笑顔で「ひとごろしー」と野次る。

 そして飛び蹴りをされた。

「あ、アクセル……」

 将軍が手をわななかせている。

(負けたことにショックなのか、それとも彼が重症なのにショックなのか)

 カナタはそのことについては一切触れず、王のほうを見た。

「死者が出たのか……?」

「いいえ。まだ生きております」

 アポロがサッと看板を出した。

『身代わりの札を貼っといたのさ! (ギロチン社アイテム)』

「他社のを使うのは吝かではないけどな。まぁたまにはね」

 カナタはアクセルの背中に貼っていたぼろぼろになった札をのけた。

 そして一時行動を停止した後、ミツコのほうを向いて「おいでおいで」をする。みつこは首を傾げながら近寄った。

「みつこ、ロアを小型化できて、魔法放てたよな」

「回りくどい」

「このお方を回復して差し上げてございなさい」

「動揺し過ぎて意味不明な言語になってるぞ」

 アクセルのほうを見る、口から泡吐いて白目向いてる。

 なにこれホラー

「札張ったんじゃないの?」

「張ったから辛うじて生きてんだろ」

 ぴくぴくと震えている。まさしく虫の息

「サキって攻撃力はすごいな」 

 みつこはこっそり魔法で回復させた。

 どんな怪我も魔法で一発回復。

「とりあえず運んでー」

 トゥディは他の医療班に命じながら、カナタのほうを見た。

「うむ。さて、次は誰にしようかな」

「くそっ。調子に乗らせてたまるか……王様」

 将軍は王様の前に跪いた。

「我々にも武器の使用を許可願いたいのですが」

「おやおやおやーん」

 めったに嗤わないカナタが歪んだ笑みを浮かべながら将軍の背後に立った。

「木剣でよいといってませんでしたか?」

「そのような化け物じみた武器を持つもの相手に丸腰で挑めというか!?」

「いいえ、お好きにどうぞ。あぁ、どうせなら盾もお持ちになったほうがいい」

 カナタがリィシャの頭を掴んだ。


「下手したら、首が胴体と別れるかもしれませんからね……」

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