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HUNTER・GIRL  作者: 一理
ワンステップアップ
12/57

おねだり

 見事レベルを上げ、相方人間型を手に入れたサキ、ヤスコ、リィシャの三人だったが、まだそれは安定しておらず、アポロの様に自由にほいほいとはできないらしい。

 人型化できないどころかロアを武器化できないみつこにとっては、どうでもいいことではあった。

「ねえ鼠先生」

「え、やめて。その呼び方傷つくわー」

「事実じゃん」

 授業を中断してアポロはこちらを向いた。なんでこんなとこで教師やってんだろうこいつ。知能は高いけど、相方から離れて平気なのか?

 いろいろ疑問はつきないが……

 ま、どうでもいいわ。とみつこ別の質問を投げかける。

「相方の人型化って昔っからあるの?」

「ミスター・クレアが最初って聞いたな」

 詳しくは知らないらしい。

「むしろ何故人型化になるかすら分からないんだよな。ぶっちゃけ」

 自分がそうなのに、分からないらしい。

「たぶん、相方の力になりたい。守りたいって感情がそうさせるのかもな」

 珍しく真面目にいいこと言うアポロ。彼の表情はいつものふざけた顔ではなく本気でそう思ってる優しい顔だった。

 みつこは頬杖つきながら、ふーんと興味なさ気に相槌打った。

「ってことはロア私のことそんなに守りたくないんだ?」

 ロアがショックを受けた顔ですごい腕をひっぱったりすりよってきたり、鳴いたり必死に何か訴えていたが、みつこはスルーした。

「ミスター・クレアの相方ってそういえば何?」

 他の人の言葉にみつこはそういえなと思った。

 彼の実力も、素顔も、相方も、今の若人は知らない。

 名前を知らないもぐりもいたぐらいだし

「本人に聞け。じゃ授業始めるぞー」

「じゃあさ、もう一つ質問」

 他の生徒が手を上げる。

「始まりの町のクエスト屋【カナタ】って、どんな人ー?」

 寝ていたサキが起き上がった。

 始まりの町は、みつこたちが拠点にしているルーキーが滞在する町だ。レベルによって行けるところが制限されているので、みんな大体この町からスタートする。


「私も思ったー。いっつも本人いないよねー。クエストの用紙置かれてるだけだし」

「俺なんて鼠に渡されたぜ」

 カナタの店はいつも薄暗く、扉を開けば懺悔室の様な作りがある。さらに奥へ入ると、バーのようなカウンターにカナタはいる。

「そういえば、あたしもみつこと一緒に行くまではあの部屋の奥に行ったことなかったし、カナタに会ったこともなかったな」

「まじで?」

 サキの言葉にリィシャとヤスコの二人は頷いた。

 今でこそ普通に接してるけど、前は他の人と同じような感じだったらしい。

「私の時はね、声かけても返事無くって、パってみたら扉開いてたから入ったら居たみたいな」

 わりとカナタはどうでもいいのかもしれない。会うも会わないも個人の自由。

「はいはい、それは本人に聞けよなー。授業続けていいかなー?」

「先生って変身動物なんだろ? どんな能力なんだー?」

「あーもう」

 アポロは口笛を奏でながら黒板に文字を書いていき、この場にいる全員もノートにそれを黙って書いていく。

(めんどくさくなって能力つかいやがった)

 しかしある意味オートなので楽といえば楽かもしれない。

(この国の首都は希望の町ハーレソレイユ。プロ級にならないと入れない。まあそれ以上に魔物のレベルも高いからなかなか遊びにも行けないんだよね)

 始まりの町からやや遠いところにある。

 海、山、森、川、空、地下、それぞれにダンジョンの入り口があり、中は常に変動する。

 昔の遺跡や、建築物に魔物が住みつきダンジョンになったりするが、たいてい頭のいいやつが多いので初級で挑まないこと。

 など、ノートに書かれていく。

 実に静かな時間だった。


 チャイムが鳴り、体は解放された。


「ふぅいー。楽っちゃ楽だけど、変に肩こったな」

「リィシャそれでも寝よったくせによく言うわ」

 ヤスコの鋭い突っ込みにリィシャは唇を尖らせた。

「そういえばさ」

 サキが懐からチラシを取り出した。

「何? バーゲン?」

「お前は貧乏キャラなのかよ」

 みつこは呆れられながらも、チラシを覗いた。

「王女様お誕生日祭?」

「そう、首都であるんだって。行ってみたいよなー」

 拳を握りながら目を輝かせるサキ。みつこは頷いた。

「だよねー。首都は物価高い分いいもんいっぱいあるらしいし」

 新しい魔法ローブがほしい。

「うちの師匠が、町に仕入れに行くよ」

「やすこの師匠って」

 勇者一族の一人で、アイテム売上NO.1のバンビ社の女社長

「やすぃんや新家カーニャ?」

「そうそう」

 あの人なら押せば行けそうだ。

 そう思ったのはみつこだけではなかったようだ。


「えええええ」

 アイテムショップへやってきた。

 品物の書かれた伝票を片手に嫌そうな顔で即否定された。

「嫌よ、うちは仕事で行くのに、ハンター・ガールの世話なんてできんわ」

「何それカッコいい肩書き」

 みつこが聞くと、あれ? 知らんかったん? と首を傾げられた。

「あんたら四人はね、ある意味世間に注目されたルーキーハンターだから、そううちらの間で呼ばれてるんよ」

「へえ、初耳」

 って、それってmeの能力バレテね?

 みつこはふと疑問に思ったが、誰にも何か言われたわけでもないし、協会から通達もないし、まあいっかと考えることを放棄した。

「おかん。ちゃんと大人しくするから、連れてって~……。おかん」

「ちょ、おかんおかんいわんといて! あんたらとそう変わらん年齢なんじゃきん」

「まじかよ」

「なんで嫌そうなんよ!!」

 いやあ少し突けばすごく騒いで面白いなあ、なんて言ってるうちに心折れたらしく連れて行ってくれることになった。やったね。


「もう、絶対おとなしくしてよ」

「フラグ?」

「回避のために言いよんです!!」

 怒られた。

 ヤスコが、よかったな。と他人ごとに言ったので、肩を組んで笑った。

「お前も行くから」

「え?」

 どこまで引きこもりなんだよ。

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