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HUNTER・GIRL  作者: 一理
はじまり編
11/57

クエスト:迷いの墓編

 ここはどこ? 私は誰? いや、ソレは分かるから! 一人突っ込みも虚しいなぁ、しっかしどうやっても帰れない。道は何処だ? とずっと思いながら獣道を進むボク。

「おーい、誰かぁ」

 繋いだ手が離れない。ひんやりと血色の感じられない冷たい手。あぁ、行けども行けども先は見つからない……。お前だけが頼りだよ―――サル吉


――。

 今週は依頼受けてないのに、任務ばかりのみつこは街の中をまったり探索していた。

「ん?」

 くい、くい。フードに違和感を感じ、後ろを振り返る。

 だが誰もいない

「きゃー(棒読み)」

「うきぃ」

「あ、サル吉か。どうした? リィシャと喧嘩でもした?」

 居るのはサル一匹。しかしこの状況はそんなに珍しくもないので、気にしないみつこ。

 疑問なのは、何故この真夏にマフラーをしてるのかってことぐらいだ。

 みつこはしゃがみ、サル吉を抱き上げた。

「うきぃ」

「夏ばて気味やン」

 この真夏にそんなものしていたらバテもするだろう。

 見てるだけでも暑苦しいので、マフラーを取ってあげることにした。

(猿ってもう少し知能のある生き物だと思っていたんだけどな)

 みつこがマフラーを取ってやると、サル吉はお礼にとバナナをこちらに渡してきたが、謹んで遠慮した。

「ん?」

 手の中のマフラーには手紙が仕込まれていた。

 宛名はリィシャで、どうやら相方にもかかわらずサルを当てにしていなかったらしい。

「リィシャにしては賢いじゃん。どれ?」


『ゴメンナサイ助けてマジたのんます』


「しょせんリィシャはリィシャか」

 サル吉の相方なだけあるわ。

 みつこはため息つきながら紙を細かく調べたが、他に詳しいことは何一つ書いていなかった。

 これでは助けに行こうともいけるわけがない。

 頭いいのか悪いのか。ただの要領の悪い友を考え、みつこはため息を思わず漏らした。

「うき!」

「ついてけって? OK行くよロア」

「がぅ!」

 ここで放置してもどうせ後でカナタに個人的に頼まれるだけだしな。

 みつこはロアに跨り、サル吉の示す方角へと向かっていった……。


 ―――


 行き着いた先は俗に言われる『死者の森』だった。

 ひんやりとした森は薄暗く真夏なのに寒い。

(なるほどサル吉が真夏なのにマフラーしていたわけだ……)

 ここは比較的森のモンスターは少ないが、みつこはロアを念のため武器化して森の中を進んでいく。

「うきぃ?」

 ココまで来て、リィシャの行動先は不明になった。手掛かりが最初からないから、仕方ないといえばそうだけども

「狼王のしずくをまかないとね」

 普通の森のモンスターはいないが、こんなところにも居るのか……マヨウサ。

「好きだな~。いや、好きでいるわけじゃないのか?」

 いや~ん、とマヨウサは去っていく。が、去っていったはずなのに戻ってきた。

「!」

 はぁう!? いっやーん

 目が合うともう一度逃げていった。

「マヨウサが迷った?」

 もしかして、マヨウサ無しでも、いやそれ以上に迷うダンジョン? だとしたら狼王のしずく……無駄に使っちゃた。

「無駄に…………畜生! くぅう~」

「あ、みつこ」

「うきゃあああ?! ってリィシャか」

「逃げたほうがええよ? だって敵が」

 後ろを指差す。骸骨とお化けが浮遊しながら追いかけてきていた。

「いやっはぁああああああああ?!」

 吃驚しすぎて変な悲鳴になっちゃった。

 二人同時に走り出す。

「あいつらゴーストタイプだから物理攻撃効かん!」

「あぁ、それで私呼んだと?」

「そぅそう」

 もっと詳しく書こうよ、そしたら『ゴースト仮肉体』ってアイテム持ってきたのにさ。

 バカのように相変わらずの丸腰ですこと。

 口にしたところで無駄なので、心の中で存分に毒を吐いたあと、戦う態勢に入った。

「ロア! 武器化」

 魔法の杖に変わった相方を構え、炎の魔法を食らわせる。攻撃が当たればそんなに強くないのか、一瞬で姿を消した。

 しかし、消滅したわけではない。みつこは再び復活する前に逃げ出しながらリィシャに問う。

「……で? 何があったの?」

「クエストよ」

 また、このノリか……。最近多くないですか? 絶対苦労するんだよね~まぁ、何気後から金貰ってるけどさぁ~。

(あーあ、いい加減諦めてきた。カナタの陰謀か知らんけど)

「えっとなぁ、依頼主がこのお方で、内容が」

「ちょいまち。今なんつった」

「え?」

 今、「このお方」っていった……?

「このお方」

 リィシャが左手を上げる。

 顔をしたに向けた青白い髪の長い少女の霊。

「――――ッ?!」

 悲鳴あげそうになったが、ソレよりも驚きすぎて声にならなかった。

 って、なんで手を繋ぐ意味あるの?

「何で、手繋いでるのさ?」

「だからクエストだって」

「わかんないから」

 ひやりと空気が下がったような気がした。

【墓を……】

「どう?!」

 イキナリ声が聞こえてきた。

わたくしの墓を探しております。この方にお頼み申しました】

「な、なるほど」

 リィシャに頼むってのも無謀な気がする。

「僕も初めて知ったんだけどさ、この森の深く置くに……町があってさそこの城の中があやしいと思うんだ」

「なんで?」

「勘?」

 なんて根拠のない予測。まぁ獣っ子だし。野生の勘に頼ってみますか。

【こちらです】

 幽霊が道案内してくれた。

「えっと、クライアントはなんて名なの?」

【………………忘れました、もう何年もさまよってます。たぶん墓を見つければ思い出すのですが……】

「そ、そう?」

 見た目年下中身かなり年上、と見た。死者に年齢を考えるのもどうかと思うが。

 ――――しばらく歩くと辿り着いた。

「ほんとだ、町だ」

 王都並に広い。活気盛んな土地だったのだろう家や公園が沢山ある、ただし面影が……ではあるが。

 しかしリィシャと一緒にいるわりには、すんなりとすぐについたことに感動。

 街中を進んでいると、看板が見えた。

(ん? 看板『帝都ルークリスレイ』? 元は帝都だったのか)

【気をつけて、帝都の中にもモンスターは出ます。廃れていますから……】

 寂しそうに彼女が言うと、直後本当に出てきた。それは薄紫のお化けに青いお化けに何故か赤いお化け

「あーもう、うっとしんじゃあ!」

 リィシャが武器化したサル吉を投げるが、貫通してノーダメージ悔しそうに地団駄踏む。本人曰くすっぱぁんってやるのが好きらしい

「炎攻撃!」

 一掃するが次々と出てきてキリがない。

「えぇい! 面倒じゃ走れ!!」

 すでに死んでるやつとか、反則じゃないですか? 

 みつことリィシャは何とか逃げ回って城の中に入り込んだ、が、中はもっと凄かった。

「まるで、モンスターの巣窟」

「ロア! 最大炎攻撃!!」

 ゆらり、何度でも復活する。なんてこったい。どうしろっていうんだ?

 若干飽きてきたみつこがふと横を見ると、リィシャもサル吉を飛ばしまくっていた。

 そんなことしたって、物理攻撃喰らわないのだから無駄なきがする。サル吉がかわいそうだ。

 と

 がしゃぁあん! ―――さぁぁ。

 何かが壊れた音とお化けが消えた音。

「?」

「何した?」

「んーわかんない」

 わかんないのか、手がかりになると思ったんだけどな 

 しかし、リィシャじゃ期待するだけ無駄かと歩いていく。

「お城のダンジョンって僕初めて」

「そりゃ、meも初めてだよ。だから楽しみ」

「楽しみって?」

 心をワクワクとさせながらみつこは期待に胸を躍らせる。

「城=箱=宝!! ってことで見つけたの貰っちゃ駄目?」

 見つけちゃいました。宝箱

 目を輝かせながらそれを指さし、霊に許可をとる。

【ドウゾ、もぅ、私たちには必要ないものでしょうし】

 ということなので遠慮なく貰うことに……。わくわくしながら中を開ける。

[銀色の剣を手に入れた]

「おぉーぅ! たっかそぉう」

 ラッキー! と思いながら歩いていく。

 と、こけた。

「いってぇい」

 幸せ度ちょっと下降。

「大丈夫?」

「なんね?」

 足をさすりながら起き上がってソレを見る。立派な服を着た白骨化した死体。

「―――ッ!?」

 リィシャと二人飛び上がった。なんかもうここ心臓に悪いヨォ? そういうダンジョンなんだろうけど。

 深呼吸を繰り返し、顔を見合わせた。霊は驚くことなくソレを無言で眺めている。

「お、お知り合い?」

 ちょっと失礼な質問だったかな? と苦笑いで誤魔化す。

【はい、記憶にございます。ハッキリではありませんが―――】

 何かに気が付いた霊が顔を上げたとき、二人も顔を上げた。

 つられて、では無い。……殺気を感じたからだ。

【ぎゃああああああああああ】

 大きな山羊骨の頭を持つ怪物がでてきた。

「こっちがぎゃーだ! この野郎」

「何あれ?! 怪物?!」

【アレは……、そぅ。魔王です】

 魔王?! 二人は反応する。

【死せる魔物の王……サーガです。昔はもっと知策に溢れていたような】

 今は理性がないのか、イキナリ襲ってきた。

 ―――魔物の先制攻撃

「ぬあああああ?!」

「くそ!死者の王が死んでどーするよ?!」

【もともと、あぁでしたけど……】

 戦闘開始!

 魔王は死者を呼んだ。みつこは一瞬で魔法を唱えて消滅させた。

「やばいやばい!」

 魔王のゴースト吸引、その際相手の体力回復、こちらは精力を奪われる。

「もともと、全回だろうがぁ!!」

 みつこの攻撃しかし、魔王にはきかなかった。

「まじか?!」

「うぉりゃああ」

 リィシャの攻撃、しかしきかない。

「もぉやだぁ」

「飽きるなリィシャ!!」

 魔王の攻撃【冥界オメガへの道】……黒いブラックホールが何もない空間から突如現れる。

 これは見た目にも名前的にも本能的にもやばそうだ。

「やだやだやだやだ!」

「こりゃ、やばいやばいやばいやばい!」

【きゃっ!】

 二人一生懸命ブラックホールに背を向けて走る。リィシャは幽霊の女の子お姫様抱っこで走っていた。そのクライアントを守る精神に敬意。

 五分ぐらい全力疾走したら、敵の技が消えた。こんな変な回避方法でもなんとか、やりすごせたらしい。

「マジで死ぬかと思った!」

「みちこ!」

「みつこだよ!!」

 リィシャにブーメランでぶっ飛ばされた。いたいぞ(怒)

「うぉおお! 動けんー!!」

 骨ばった手(というか骨)に押さえ込まれてリィシャ行動不能になった。みつこのいたところにも骨の手が落ちてきた。

 ―――間一髪

「リィシャ!!」

 親指を立てる。

(許す!)

「いやそんなん、ええきん助けてー」

「うっきぃいい!!」

 サル吉が自ら助走をつけて武器化した。骨にアタックするがダメージ5ぐらい。

「炎攻撃!!」

 ごぉおおお!! 骨を焼き尽くす。

 危うくリィシャまで焦がしそうになちゃったけど、まあ、大丈夫そうだったから問題ない。

 サル吉の粘りのもう一回アタックでリィシャは脱出成功した。

【大丈夫ですか?】

「一応」

 しかしまぁ、へろへろだ。

 自分が動く系なのに、クライアントとずっと手を繋いで、攻撃は物理攻撃がきかないし。あ、涙でできたぽいリィシャちゃん。

「うっきー!!」

 サル吉も同様に悔しいらしい。

 当たりすらしないんじゃ、ないプライドが許さないらしい。

【うがあああああああああああ】

「「うがああああああああああああああああああ!!!」」

(わざわざ敵と同じ雄叫び上げなくてもいいのに)

 二人が初めてダッグを組んだ。

【綺麗】

 光が二人を包む。

 飛行攻撃型ブーメランの進化型(卍型手裏剣)に変わった。

「いっけぇ≪光速の怒り≫疾風朧!!」

 卍型の手裏剣が光に包まれ、数を増やしていく。

【がああああああ】

「切り刻め!!!」

 光り輝きながら動く手裏剣は闇を照らしていった。

 ――― 魔王は、消滅した。



「あぁーつかれたぁ……」

「リィシャ、お疲れ、バナナ食う?」

 ぐいぐい、頬に黄色いものを押し付けられる。

「邪魔! てか誰やお前!!」

 ばしぃ! バナナを地面に叩きつける。と、バナナを持っていた少年が瞳に涙を浮かべる。

「う、ぅ、うぅ」

 悲しそうにうるる~と嫌な顔をしている。

「リィシャの馬鹿ぁぁああああ!!!」

 バナナの雨が降ってきた。それにリィシャが5秒もかからずに見えなくなった。

「はあ」

 みつこはなんともいえなくなった。

「えーん」

【あ、あのぅ? この方は?】

「サル、それ以外でもそれ以上でもないから気にしちゃ駄目だぞう」

【は、はぁ】

 慣れたので、うもれたリィシャをほっといて先に行く。

「……。凄い、立派な中庭」

 魔王がいた先は中庭で、綺麗な庭園だった。その奥に一見彫刻に間違えそうな像が見えた。優しく微笑む銅像。

「コレは……!」

【思い出しました】

 少女はおぼろげな姿からハッキリとした姿になった。長い髪は優しい蜂蜜色の髪で、瞳は癒しをたたえた翡翠の瞳……。

わたくしはこの帝都の第一王女……シェンジェ】

 みつこは王女を称え膝まづいた。

「王女?!」

 獣になったサル吉を連れてきたリィシャがそれを聞いて驚きの声を上げる。

「リィシャ!!」

 傍に来た馬鹿の頭を下げらせる。 

【どうぞ、お立ちになってください。もとは王女だとしても、もう私は亡くなっております。わたくしだけではなく、民も】

 悲しそうに顔をゆがめた。

「いったい、なにがあったのでしょう?」

【神です】

「え?」

 oh神?

【扉を繋げたのです。魔物も魔王も、元はこの世界に存在しません。突如現れた扉が開いたのです。そして、その扉を開けたのが、神様なのです。本を持った無感情な神様】

 そんな、馬鹿な。

 しかし、王女が嘘を言うわけもなく、事実だとしても。ありえない。扉なんて見たことないし。魔物なんて、生まれる前からほいほいいるし。

【帝都は滅びました。このように、魔物の世界の瘴気に当てられたのです。最後の日まで彼は、サーガと戦ってくれていましたが、力尽きたようですね……】


 王女がみつこが足を引っ掛けた骨にそっと手を触れる。しかし、幽体は物に触れることができない。

(……足引っ掛けて、ゴメンナサイ)

 良心が痛いです。

【……ありがとうございました。私はここへ帰ることができました。お礼はさせていただきます】

 王女は儀礼にのっとった形で頭を下げた。

 クエストを完了したわたしたちは森を去った。

 


「ってことがさー、あったのよ」

 日課のようにカナタにいってみる。

「リィシャが帰ってこないのはそうゆうことがあったのか……いつものことだと思ってた」

「え? 僕そんなに遅い?」

「おそいよ?! 自覚ないの?」

 えー、と納得できなさそうに口を尖らせる。

「なんか、あたしの周りで進化しまくってんだけど? あたしのけて」

「あ、そう」

 ムカつくのでカナタの飲んでいたコップを奪う。

「なんで、これいっつも髑髏の煙ういてんの?」

「そーゆう飲み物だから。返せ」

「うまい?」

「中々」

 一口貰おうとしたらカナタが声を漏らした。

「なに?」

「髑髏の煙をふきとばさにゃあ、死ぬ」

「どんな飲み物飲んでんだよ!」

 なんか、飲む気うせたので素直に返した。

 というか、こいつのものでロクなもんないけどな

「お前も早く強くなれよ。じゃなきゃ―」

「? じゃなきゃー?」

「……。えーと、可哀想」

「溜めてから酷いこというな!!」

 みつことカナタがもめている間、リィシャはボーっと考えていた。


 こんどあの墓場に花持っていこ。


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