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HUNTER・GIRL  作者: 一理
はじまり編
10/57

クエスト:甘い蜜編

 嫌やなぁ~、こまったなぁ……。でも、やらないかん。うちも、ハンターやけん。でも、どうしたらいいかな。あ、……そうだ。あの人に頼もう。あの人なら……。大丈夫やろ


 ―――――……。


「みつこ~~~~~~ぉ」

「無駄になげぇ!!」

 探し出すのに意外と苦労した。フードの上に猫を乗せたみつこはきょとんとした顔で彼女―――ヤスコを見つめた。まさか公園の砂場でお城を造っているとは思わなかった。

 何歳児やねん。

「ふぅん? ヤスコから来るなんて珍しいね? なんか用?」

「手伝ってほしんよ」

 その一言でみつこは黙り込んだ。

「……」

「……」

 二人、沈黙に身を投じる。

「OKなにすんの?」

「クエストなんだけどこれなんよ」

『クエスト:大樹の桃源郷から女王の蜂蜜を取りに行く。期限:二日目まで 依頼者:世界的有名天才パティシエ』

「なんだ、普通で簡単そうじゃん?」

 女王の部分が気になるけど、とみつこはにが笑いを浮かべた。

「うち、昨日このクエスト貰って、いったんよ海里と二人で」

 桃源郷の名に恥じない美しさ、魅惑の花々に美味しい空気、眼の保養にも体の保養にもなった……。じつにいいところだった。

 だけど

「虫一杯おったぁ」

「そりゃそうだろね」

 森なんだから。みつこは作った砂の城を足で踏み潰し恍惚の笑みを浮かべてからヤスコをみた。

「うちもちゃんと行ったよ。ちゃんと女王のところまでたどり着いたし」

「おぉーやすこにしては凄いな~えらいえらい。」

「むぅ~」

 馬鹿にされていけ好かなかったので、腕をつかんでひねり回す。

「いてででで!? ごめんごめん」

 あやまったので20秒経ってから許すことにした。解放された腕を震える片手で撫で始めるみつこを無視して……。

「猛毒の使い手『ビィイ』にうちやられたん、そのとき回復魔法アイテムもっとったきん助かったけど死ぬかと思った」

「そうかい、で? 私が盾になれと?」

 首を横にふる。普段なら海里に攻撃任せて適当に流してきたが、今回はそうも行かない。

「うちらの、うちの一人の力で倒さないかんの」

「なんで?」

「一族がうるさい」

 ヤスコの一族は『ジャグラー』が現れる前からいた、魔王を倒した五人の勇者の一人の血族であり、代々のハンター一族なのである。

勇者ハンター一人前にはならんかったら……。みんなから怒られる」

「つってもねぇ」

「言い訳無用の厳しいところでな? 一族の名に泥ぬったら一生でられんの」

「どこに?」

「……。しらん」

 やすこはふるフルと首を振った。知りたくもないとでも言うように。

 偉いところはいろいろあるもんだ。

「聞いた話によると、やすぃんや新屋も一度連れて行かれたらしい、どこにかはしらんけど……。六年制に耐え切れず、やめたきんって」

 しかし、カナタの配慮のもとミスター・クレアとハンター協会に抗議、結果。ハンターをやめてしまったが。ハンターであったということは名目に残った。事実全員やめたが形上五年まで我慢した生徒は卒業扱い。

 しかし、ここまできてハンターやろうという気力を持つものは誰ひとりいなかった。

 ゆえに『六年制の悪夢』と呼ばれるのである。

「なるほど、だから目が死んでたのか。てか、カナタのコネどこまであるんだ?」

「知らんけど。まぁ、そんなこんなでうちとか、うちの一族のハンター育成に協力することででられたらしんよ。いい迷惑やわぁ」

「いや、お前の場合どんな状況でも師匠ついたと思う。」

「なんや」

「別に? で、私は何のためについて行くんだい?」

「こういうの経験してるやろ? うちがつまったらアドバイス欲しい」

「了解」

 珍しくヤル気で謙虚なので、みつこは無償で手伝ってあげることにする。

 ――――そして森につくとヤスコの言うとおり、クイーンのところまで行くのにはたいした苦労はなかった。

 虫が多かったけど。

「麻痺・毒・眠り・行動不能避けのアイテム切れたー。金がぁー」

 多大なアイテムを使ったので、涙が出てくる。みつこちゃん。

「師匠が大量に持たせてもろたアイテムも一瞬だったなぁ」

「海上なら海里のが数段も上なのにな」

 その言葉に海里も口惜しそうに頷く。思いっきり本領発揮できないのが悔しいらしい。みつこも同様で苦々しくなる。

 クイーンの巣までは簡単に辿りついたのに、そのクイーンのところまではいけなかった。

 ふとみつこは気が付いた。

 あれ?

「マヨウサいないなぁ」

 森の中なら何処でも生息しているマヨウサの姿を今日は見えない。

 なんで?

「マヨウサ見えるのなんてみつこぐらいよ」

「……え? 何? その毒のある言い方」

「気のせいよ」

 しらっと言い切った。

「本当? ……いや『~ぐらい』って聞いてるこっちからしたら『~のくせに』のように聞こえたのは、私の耳がおかしんっすか?」

「おかしんよ、みつこの耳が」

「いや、やっぱり毒はいてるって! お前も『ビィイ』になれるぞ」

「勝手にみつこなっときな?」

 びゅうううん

「「!?」」

 突如空から振ってきたものが何かみつこは分からず、わずかに反応が遅れた。

「海里」

 ―――しゅるん

 美しい力強いシッカリとした光沢のある硬そうな立派な防御型たて白銀に薄い藍色がうっすら浮かんでおり海里の誇りが誇示されていた。

「わぁぉ……」

 立派なつくりに見惚れた。……それより

「重くないの? やっちゃん」

「おもないよ?」

 ヤスコの身長をはるかに超えているのに、やすこは軽々と天に向けて持ち上げていた。のんびり鑑賞していると

「みつこもハイりぃ?」

「ん?」

「あれ毒酸性やけん、結界とけるんじゃないかな?」

「うわ! 本当だ」

 結界が焦げる音がする。みつこは急いでやすこの盾の下に行った。盾は絶対的な安心感があるが、攻撃方法がないのが難点だ。

(やれはて、やすこはどうするつもりかね)

「あれが女王『ビィンズ・クイーン』どうやって蜜手に入れようか、なやんみょん」

「なやんみょん?あぁ、悩んでいる、か」

 いま、コイツ何語しゃべってんの? って本気で思ってしまった。

「大丈夫海里の氷で女王を少しの間動けなくすればいいんだよ」

「でも」

 言いたいことはわかる。

 女王の攻撃が止むことなく降り注ぐ。結界はきかない、ヤスコの盾のみ受け止めれる、しかし盾は盾……。攻撃はできない。

「一瞬でも、女王の攻撃とめれんかな?」

「頑張れ」

 私は手出しはしない。

 一族がヤスコ一人の力で倒せといったのなら。私はヤスコがやられそうなときの為の保険だ。

「むぅ~……」

 動くこともままならない。完全ジレンマだ。

「……やってみよ」

 ヤスコはそういうと何気いつも腰に装備していた武器を取り出す。

 漆塗りの弓矢。矢数は10本

「おぉー、いい弓持ってんな」

 ヤスコって実は金持ち? なんていうみつこに盾をパスした。

「……ッ!?」

 ずしん、と重い。シンクロの差なのか? この重さは10トンはいってるって!! いや、そんなん持てないけど。

「お、おお、もい! やす……はやく」

「まってやぁ」

 むしろここまで持てている私はすごいと思うと叫びながらみつこは踏ん張っていた。

 ロアも大きくなり盾を支える。それでも足が地面に埋まっていく。あはは~良く骨折れないな~なはは~涙出てきた。

「ん~」

 ヤスコが構え矢から手を離す。

 びょぉぃん

 矢は曲線を描いて戻ってきた。とんだ距離、0距離。

「……」

「ヤスコ! 真面目にしろぉ」

「真面目やもん! できんだけで!」

 キれなくていいから、早く終わらせてほしい。腕が限界、とにもかくにもヤスコにいったん盾を返す。

「駄目だった」

「知ってるよ、見てたんだから」

 腕と足に力が入らず横に転がる。それまで大人しかったロアが、鼻をひつくかして動き回り始めた。

「あ? 攻撃止んだ」

 見てみると、しーんと静かになっていた。一体何が?

「?」

 ロアと海里が同じ方向に眼を向けた。

 他の木など比べ物にならないぐらい大きく立派な大樹……。そして『ビィンズ・クイーン』の住み着いた城。

 ぶぅぅうううん!!

 ビィイたちが木から出てきた、幼虫を持ったものが多く二列で出てきた。

「大樹に拠点を張る『ビィイ』が巣を捨てるなんて! あと気持ち悪いです!!」

「みつこ!」

「?」

 やすこの示す方向に眼を向ける。大樹の根元に炎。

「火事だぁああ?!」

「うるさい」

「あ、ごめん叫んでみた」

 しかし大樹とて只の木ではない(らしい)。だのに炎が燃え上がるなんて、ロアの眼がソレを捕らえた。

「人?」

 飛行攻撃型アーチャーの武器を持つ女性が燃え上がる炎を前に満足そうに立っている。

「!」

 怒った『ビィンズ・クイーン』が巣から飛び出してきた、大きく美しい金色の体に毒々しい紅の模様……何よりその針は太くて先が細い……

「まるで注射器おぉう、寒気が」

「ふふ……」

 アーチェリーを構えた女性は全くの躊躇なく、むしろ不適に笑ってクイーンに矢を射た。一本だった矢が三本に増えた上に炎に包まれた。

(おい、やすこ)

 みつこは小さい声でヤスコに声をかけた。

(なに?)

(速やかに撤退することをお勧めします)

「なんでぇ?!」

(しぃー!!)

 聞こえてないか確認する、こちらに気がついた様子はない。すこしほっとする。

(あれは多分ハンター狩りだよ)

(?、モンスター狩りよるよ?)

(アレは多分クエストじゃない私利私欲のためだろ、それやるハンターってのは六年制のやつらぐらいだろ?)

(そうなん?)

 つまり、前回のビルメイ同様戦闘能力においては向こうのが上。目をつけられたらめんどくさい。只でさえヤスコは貧弱オーラー出しているのだ、狙われないわけがない。

 女王が押されている。

「おぉそうか、マヨウサいないのあのひとが狼王のしずくをまいたからか、……それだけはありがとう」

 楽にこれました。

「邪魔よ!」

 女王を退けた。ヤッパリその強さはみつこの予想を当てるのには十分な証拠だった。『強いハンターは田舎にとどまらない』この言葉は師匠ハヅキがいった言葉で、カナタも否定しないどころか肯定した。

 強いハンターは上を行く、人のためにハンターになったやつはほとんど居ないらしい。大体が金・力・権力である。

(こう考えるとハンターって……)

 人のことが言えないから苦笑いになってしまう。

「あぁ!」

 ヤスコが声を上げた

 女性は巣にあがりこんだ後、幼虫を巣から落とした。他の白い幼虫と違いクイーンの幼虫は薄いオレンジの色をしていた。

「危ない!!」

 ヤスコが海里に乗って幼虫まで滑り出した。

 ぽす

 なんとか幼虫の地面衝突は避けられた。

「……。うぅう~」

 やすこが泣きそうな顔をしていた。

(あれは「キャッチできて嬉しい」じゃないな「さわちゃったぁ」ぐらいか?)

 嫌そうに幼虫を抱えてはいるが、見捨てない偉いと思う。まぁ幼虫が助かった反面、われわれは危機に陥ったわけだ。

「あら? 幼虫の心臓を取りにきたついでに、弱小ハンターに会うとはね?」

 やっぱりハンター狩りのようだ。最悪だ。

「何で心臓?」

「あら? 知らないの? ジィンズ・クイーンの幼虫の心臓は空気に触れるとソレはそれは美しい虹色に輝く金色の宝石になるのよ?」

「ふーん」

 しかも私利私欲説もあたった。自分探偵になれるかも? なんてみつこは現実逃避を図る。ていうかヤスコ興味ないならきくのやめようぜ?

「ふふ……」

 アーチェリーをかまえた。

「死にたくないでしょう? 痛いのは嫌でしょう? 女の子だものか弱いでしょう?」

 優しく諭すように女性は語り掛ける。

「その手に持っているものと、パートナー置いていきなさい? 勿論タイガーを持ったそこの子もね」

「……ぎくり」

 口に出してみる。女性は嬉しそうに微笑む。あぁ、見下してくれてますねぇ

「絶対嫌!」

 ヤスコはきっぱりと断った。

「なんでやらないかんの」

 最もだけど、自分の置かれた状況を確認しようぜ?

「あらそぅ? じゃぁ仕方ないわね? さようなら」

 アーチェアから矢が6本放たれる。

「ロア、結界魔法【拒絶】!!」

 ヤスコにもそのほかの虫たちにも結界を張る。矢の焔が獲物以外の場所に刺さり……次々と森に火をつけていった。

「酷いことするなぁ」

 虫たちも当然騒ぐ。

 すこし、怖いデス。正直ハンター狩りより怖いデス

 虫の羽ばたきの音とが、歯ぎしりの様な音とか、とても怖いデース

「あら? 都会に行けばこんな森いくらでもあるわ? 田舎の森の一つや二つ燃やし尽くしたぐらい、どうってことないわ」

「つまり、あんたは弱い。」

 みつこの言葉に女は手を止めた。ずっと微笑んでいた笑みが消えた。あれ? 思ったよりも短気?

「それは? どういう意味かしら?」

 しまった! と若干思ったがココまできたらもういいかと腹をくくる。

「だって、それなら王都でも都会にでも行けばいいのに、そうじゃないじゃん? つまり自分LVにあわせてるってことなら、あんたのゆうとおり、弱いってことなる」

 でしょお? と満足げに尋ねると女は頬をひくつかせていた。そこまできて自分のおかれていた状況を思い出した。

「そぉおおう、私が弱い……ソレよりも貴方たちはもぉおおおっとよわいことになるわよねぇええ?!」

 武器を構え、躊躇なく炎の矢を無数に放つ。

 大人気ないなぁ真実言われたぐらいで。ヤスコはあわわと吃驚していたが、あることに気がついた。

「森を焼き尽くすなぁああああ!!」

 ヤスコが……敵に立ち向かった。手には盾。

「邪魔よ小娘!!」

 矢が放たれた。

「ヤスコォオ!?」

 海里が盾になった。どんな攻撃も通用しない。

「海里!! いくよ」

 絶対防御型たて進化型つるぎ盾から剣が装備された、氷のようにクレアで美しい。

「≪静かなる怒り≫氷の刃!」

「きゃあああああああ!!!」

 アーチェアが傷つけられ、武器化をといた。どうやら白いリスだったようだ。そんなことより。

「……」

「……」

 ヤスコは呆けた沈黙で、海里のはなんだろう? とにかく、海里も人間化した。

「……」

「なんかコメントしろよ!!」

 あまりの二人の静かさに思わず耐え切れず突っ込む。ぶぅうん。ビィイたちが三人と一匹を取り囲んだ。

 「……。なんだ? やるか」

 あ、海里がしゃべった。海里はヤスコを護るようにして前に立つ。

≪……≫

 がしぃ

 海里の眼を盗んでビィンズ・クイーンはヤスコをさらった。

「あぁーりぇー」

 呆けているやすこの変わりに叫んであげてみた。ロアにどうしたのっていう顔をされてしまった。そんな顔で見ないで?

「……」

 海里が攻撃しようとしたが上からヤスコが降ってきた。

「蜂蜜貰ってきたぁー」

 ビンいっぱいに蜂蜜を積めて戻ってきた。海里もソレを見て納得したのか獣に戻った。結局一言も話さなかった。

「みつこー」

「ん?」

「うち、やったでぇ」

 ヤスコの笑顔にみつこも嬉しくなって笑顔になった。

「よっしゃ、帰るか!」

 数分後。

「帰り道わからーん」

 まよわせーる まよわせーる

「だから! まよわせないでぇええええええ!!!」

 対策アイテム落とすとか、ありえなーい。という二人の叫びは森の中にこだまするのであった。

マヨウサ好きです。個人的に。

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