ワームホールトンネルを抜けると…
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※ この作品はフィクションであり、現実の放射性物質、原子力工学、放射線医学、ワームホール等とは一切関係ありません。
※ そのため、キャラクターが明らかに致死量の放射線を浴びても生きていたり、核分裂炉の挙動が極端に誇張されて描写されたり、実在する可能性が天文学的に低そうな物質、空間等が登場することがあります。
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もちろん、俺は神様なんかじゃない。ごく普通の男子高校生だ。
強いて違うところをあげるとすれば、原子物理に興味があるってことかナ――なんて台詞も動画サイトで覚えたものだ。名前は東浦太郎。
そんな訳で池袋駅の先にある異世界にやってきたのだ……っていくらなんでも冗談だろ?
とはいえ、泣き言を連ねてもどうしようもない。
ここに飛ばされた際、俺はスマホで現在位置を確認しようとしたんだが、そうしたら何故か言葉の通じる現地人が、俺を神様だと言い出し、拝み始めた。
当然位置も分からないし、宮殿の中庭みたいなところに連れていかれる始末だ。
目の前で跪いてる、会議は踊るけど進んでなさそうな時代っぽい格好の連中は、スマホのことを神秘の数秘術石板だと抜かした。
伝説によればその持ち主は神の化身であり、大いなる繁栄と進歩をもたらす……のだそうだ。
お前らな、そのスマホやるから、俺を元の場所に戻せと。
「神様、まずは我々の秘術をご覧ください」
日本語を話すが日本語の通じない、大司教っぽいおっさんが指を鳴らす。
するとKKKだか何とかウェーブだかみたいな白装束集団が、水が入ってるっぽいでかい壺と、長い金属棒が幾つも結びつけられた縄、あと足場台を持ってきた。
壺の左右に足場台を並べ、白装束が乗り、金属棒が壺の上に来るよう縄をピンと張る。
「はじめ!」
大司教っぽいおっさんの号令一下、金属棒がゆっくりと降ろされていく。
その光景はどっかで見た覚えがあって、それが何か思い出そうとしているうちに、猛烈に嫌な予感がした。あれ、まさか……。
昔から言われる通り、悪い予感ほどよく当たる。
壺の水はボコボコと煮え滾り、蒸気がもくもくと上がる。どう見ても一次冷却水です、本当にありがたくございません!
「ヨシッ!」
「おい待て、止めろ!」
俺は秘術とやらを中止させようと怒鳴った。すると白装束の一人がびっくりして手を放し、金属棒が壺ポチャ。
青くてきれいな光がほとばしり、蒸気は勢いを増す。最悪の状況だ。
「やってられるか馬鹿ー!」
そう叫びながら俺は全速力で逃げ出した。こいつら、どんだけ頭悪いんだ。
「はぁーっ、はぁーっ……殺す気かよ……」
俺はスマホを開き、放射線測定アプリを起動。胸ポケットに入れてしばらく放置。
アメリカ製のそいつは放射線の感光をカメラで捉える奴で、直ちに影響があるレベルの放射線なら測定できる。
案の定、離れていてすらろくでもない数値だった。
「神様、我々の秘術はお気に召しませんでしたか?」
逃げた先に大司教っぽいおっさんが現れ、心底不思議そうに聞いてきた。
寿命が何年分縮んだか、俺は気が気でなかったが、こいつは本当に何も知らないらしい。
「先程の秘術は、最高の錬金術師が生んだ奇跡なのですが」
「そいつ、奇跡的な馬鹿だな」
吐き捨てるように言うと、大司教っぽいおっさんは目を丸くした。
もしかしてその錬金術師とやら、肌が青くて遊星爆弾投げるのが三度の飯より好きなんじゃないか?
「とにかくな、あれはもう二度とやるな。いいか、神様命令だぞ!」
「しかしですね、神様……」
「何だよ、文句あるのか?」
「あの秘術…我々は叡智の光と呼んでおるのですが、既に生活に欠かせないものになっておるのでして……」
「は?」
意表を突かれて絶句した。お前は何を言っているのだ?
「いえ、その……叡智の光で生まれる蒸気で、乗り物を動かしているのです。例えば船ですとか、列車ですとか。鉱山で利用してもいます」
「嘘だろ……」
頭痛が痛すぎて、強烈な眩暈がした。何で石炭じゃなくて、核燃料なんだよ!
思わず「目を醒ませ俺の世界が侵略されてるぞ!」と自分の頬を引っ叩く。
当然、目なんて醒めるはずもなく、原子力スチームパンクな異常世界が広がっていた。
誰か、頼むから俺を救いに来てくれ!
初投稿です。よろしくおねがいします。
全6話、毎日19時更新予定です。