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サプライズ

作者: 白鷺 里樹

 世の中には見てはいけないものが存在する。例えば、母親に駄々をこねる子供。倒れている酔っ払いのおじさん。はたまたこの世に存在しない者など、多種多様な形で存在する。

 これもその内の1つだったのだろうか。見なかったことにするべきものだったのだろうか。

 それはスーパーで、僕がたまたま足元に落ちていた髪ゴムが目に留まり、拾い上げたことで知ってしまった。

 次々と買い物をしていた人達が僕の方へと視線が集まる。ぱくぱくと口を動かすが、僕の耳には何も届かない。気味が悪いのでさっさとそのスーパーを後にして自宅へと急いだ。

 「どうしよう…持ってきてしまった」

 一刻も早くあのたくさんの視線を逸らしたくて髪ゴムをその場に戻した時、自分でも訳の分からない威圧を感じる。おかげで自宅に持ち込む始末である。はぁ、と僕はやり場のないため息をついた。

 「何これ…3?!」

 シャワーを浴びながら額に写るものを見て、思わず僕は仰け反った。視線といい、額の数字といい、この髪ゴムは一体何なんだ…。

 「へぇ…この髪ゴムが、例の奇妙な奴?案外見た目は普通なんだな」

 とりあえず、長い付き合いの友人にこの一連の出来事を話すことにしてみた。その友人は僕の話を疑うでも否定するでもなく、ただこの髪ゴムにとても興味を示した。人差し指でくるくると回しながら僕に尋ねた。

 「額の方は今どうなってるんだ?」

 友人の方からは見えないらしい。僕にしか見えないのだろうか。

 「ほら、こういうホラーって数字が減っていって最後にドーンと出てくるだろ?」

 そう言ってにやにや笑いながらわーっとお化けの真似をしてきた。冗談じゃない。そんな恐怖はとうの昔に一生分感じた。

 「2…になってる…。本当に冗談で済まないかもね」

 皮肉混じりで言うと、友人の顔が一瞬にして青ざめ、とても慌てた様子で神社へ厄祓いに行くべきだと勧めた。

 「そうか、忠告ありがと。今度は飯でも奢るよ…僕が生きていられたら、ね」

 引き留めようとする声をよそに僕はさっさと帰宅した。

 「1になってる…か」

 参ったな…どうやら僕は、親切心で拾ったあの髪ゴムのせいで、望んでもいない視線を集めながら、知らない誰かに呪い殺されるようだ。親切心が呪いに繋がるとは迷惑極まりない話だ。

 …最もこれは、呪いがあればの話だけど。視線と数字以外は何も起こっていない。だからそれに慣れてしまえば平気、そう自分に言い聞かせながら布団にもぐった。

 太陽の光がベールのように僕を優しく包む。頬を伝ったしずくがきらきらと反射していた。

 「『お誕生日おめでとう』?」

 てっきりもう何も額には写らないと思っていたが、こんな文字が浮かび上がっていたのだ。

 ピンポーンとインターホンが鳴り響く。ガチャとドアを開けると、そこには僕と同じくらいのチャラそうな男が2人、立っていた。

 「「サプラ〜イズ!!」」

 そう満面の笑みで言った男2人は、僕にきれいなラッピングされた箱を渡してさっそうと去っていく。

 「…………。」

 玄関から吹き込む風がとても冷たく感じた。

 僕の誕生日、じ、ゃ、な、い

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