第五十三話 炎の使い手
「あはは〜ありゃぁ死んだねー。あの人達」
「そんな呑気に言ってる場合か·····」
隣でにゃはは〜と笑ってるレヴォルに呆れるも、私も実は同じこを思っていた。
ルークは怒らすと本当に怖い。
1度私が単独行動して凶暴魔物に襲われた時、放つオーラが全く別人のようだったから·····。
あの時の目は、今でも忘れられない。
でも、今回の相手は人間。
ルークが人間を殺してるところは見たくない·····。
もしもの事態に備えて、私は短剣に手を掛けた。いつでも抜くことが出来るように。
今の私なら止めることぐらいなら出来る!··········はず。
ジリジリと盗賊とルークの距離は縮まり、盗賊の内1人が雄叫びをあげて飛び込んだ!
盗賊はナイフを振り回しながら突進してくるがルークはそれをヒラリと躱し、鞘に収められたままの刀を腰から抜き取り構える。
よかった。
殺す気は無いようだ。
躱され、バランスを崩していた盗賊
「クソがっ!」
と吐き捨て今度は背後から刺しに来た。
後ろに目でもついているのだろうか?
振り返りもせずに回し蹴りをし、相手の脇腹にクリティカルヒットさせた。
たまらずそこに蹲る盗賊。
まさかの出来事に他の盗賊達はザワついている。
その場から後退りする者さえいた。
「さぁ、次は誰だ」
威圧感がすごい·····。
しかし、その威圧に耐え平然な顔で前に出てくる男がいた。
頭にバンダナを被り、左目に眼帯をした如何にも盗賊!って感じの男。
きっと、アイツがリーダーだ。
そんな雰囲気を漂わせていた。
「魔物のクセにやるじゃねぇか。だが、このまま好き勝手に出来ると思うなよ?」
そう言って胸ポケットから取り出したのは小さな小瓶。
それを男はクイッと喉に流し込む。
一体·····何を·····?
空になった小瓶を地面に投げ捨て手の甲で口を拭う。
その瞬間、男の周囲の空気が変わった。
「?!」
先程までは微弱でしか無かった魔力が、肌で、目で感じ取れるほどの膨大な魔力に膨れ上がったのだ!
「お前·····それは·····っ。今の薬はなんだ!?何処で手に入れた!」
男の魔力が上がったのは、どうやらさっき飲み干した薬のようだが、ルークはそれに心当たりがあったらしく激しく動揺する。
私はなんの事かさっぱりで、兎に角ルークが心配でたまらなかった。
だってこの魔力量·····。
どう考えても危険だ。
「ルーク·····」
冷や汗が頬を伝う。
「へ〜、魔物のクセにコイツを知ってんのか?
出処が知りてぇなら自分で調べるんだなぁ!まっ、生きて帰れたらの話だけどよォ!!」
両腕を前に突き出すと魔法が放たれた。
属性は電気。
バリバリと音を立てながら、ルークに向かって一直線に襲ってくる。
思った通り、威力が半端ない!
ルークは間一髪で避けることが出来たが、先程までいた場所の地面が真っ黒焦げになっている·····。
私も雷魔法は得意だが、あそこまでの威力が出せるかどうか·····。
これがさっきの薬の効力。
魔力増幅剤ってところか?
ルークは水魔法が得意って言ってたから、この勝負はルークに分が悪い。
ここは私が·····私達が行くしかないのか·····。
「ロギ·····いけるか?」
さっきからずーっと怒りの感情を放つロギに問いかける。
正直何で怒らしたのか分かってなかったからお願いするのは怖かったけど、この際仕方ない。
案の定、舌打ちする音がした。
私何か怒らせたか??
《行けるも何も、さっきから俺は腸が煮えくり返ってるっての。あの糞共め·····炭にしてやる》
どうやら怒っている対象は、あの盗賊たちのようだ。
「殺しはダメだからな。よし·····行くぞ」
荷台から飛び降りようと脚に力を込めたが、ルークの声がそれを遮った。
「お前は来るなっ!」
ピタッと動きを止める。
ルークの視線は盗賊リーダーに向けられたまま·····
本当に後ろに目がついてるんじゃないか?
「でも·····!ルーク1人じゃっ!」
「そうだぜ魔物のワンコちゃんよ。お前の相手が俺だけだと思うなよー?」
リーダーが後ろにいる盗賊達に右手を上げ合図する。
それに応え、彼らもまた胸元から小瓶を取り出し口に含む。
リーダー程ではないが、彼等の魔力が膨れ上がり空気がピリピリと走るのが肌で分かった。
薬を希釈して量産している·····?
もしそうなら本当にルーク1人ではキツいはず。
しかも1人じゃない、私達を背後に守ってだ。
レヴォルはこんな状況にもかかわらず笑ってみているだけ·····。
この人本当に何しについてきたんだ?!
「··········」
「おー、どうした?ビビったのか。
今ならまだ許してやるぜ?積荷と娘を置いて去るならなぁ!はははは!」
どうしよう。どうしよう、どうしよう!
そう頭で考えているとロギが溜まりに溜まった何かを爆発させた。
《だあーー!もう!!我慢ならねェ!!!
シロナ!!悪ぃが少し体を貸しやがれ!!俺が消し炭にしてやる!!!》
はっ?!!
ちょっ、ロギ?!何して────
フッと途切れる意識。
視界は突如暗くなる。
抵抗しようとした。
が、もう既に遅かった。
「え?ちょっと!シロナちゃん?!わぁっ!」
ダンっ!
と荷台から勢いよく飛び出し空に舞う。
その衝撃で荷台は左右に激しく揺れる。
「な、何だァ?!」
「!!」
対峙していた盗賊とルークは突然の音に驚き、上空を見上げた。
シロナは上空で魔力を練り手を空に向かって突き出している。
その先には強力雷魔法が出現し始めた。
「(この魔力·····ロギアンか·····)」
「な、何だあの小娘!?魔法使いだったのか!クソっ」
突然の展開に慌てふためき、ルークではなくシロナに標的を変えて精一杯の電気魔法を放った。
「もういい!お前ら全員消えろ!!」
「ロギアン!!」
上空では避けることは不可能。
しかし、ロギはハナからそのつもりはなく真っ向勝負に力でねじふせる気でいた。
「《ギャーギャーやかましぃんだよ糞共!!俺に勝てるとでも思ってんのか低俗がァっっ!!》」
上空に突き上げていた腕を一気に下に振り下ろす。
雷魔法は盗賊が放った電気魔法とぶつかり、落雷したのかと思うほどの爆音を起こしながら競り合う。
「《薬なんか使ったところで、この闇精霊を負かすことが出来るなんて·····思い上がんじゃねぇ!!!!》」
「クッソ。お前、精霊憑きか·····っ!」
競り合いからの、さらに威力が増すロギの魔法。
紛い物の力はあっという間におされ、盗賊の負けは明らかだった。
でもこのままいくと、多分·····盗賊達はタダでは済まない。
精神世界で私が
《ロギ!もういい!もういいから!》
と止めるも、完全に頭に血が上っているロギの耳には全く入っていかなかった。
ああ!
もう·····だめ··········──────
諦めかけたその時。
「そこまでだ!!!」
「「!?」」
一声と共に、真っ赤な炎の渦が2つの雷を割って相殺。
この場にいるもの全員無傷でおさまった。
あれほどの魔法を相殺する力·····
一体誰だ?!
全員が炎が放たれた方角を見る。
すると、その場に立っていたのはギルドの紋章入りのマントを羽織った少女の姿だった。




