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灰色ノ魔女  作者: マメ電9
第一章 灰色から虹色世界へ
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第十八話 牙と雫

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「こらー!二人共!サボったらダメだってば!お父さんに怒られるよ」


今でも鮮明に覚えている‥‥あの日々‥‥。


幼い頃両親を流行病で亡くした俺と姉は、養護施設で暮らすことになった。

でも、俺達はこっそり抜け出して、いつもルークの家に遊びに行っていた。


親父さんとルークと、そして‥‥妹のシズク。

この兄妹は双子だった。


お袋さんは、俺達の両親の様に流行病で亡くなったそうだ。


俺達4人はほぼ毎日一緒で、たまに親父さんの薬師の仕事を手伝ったりして過ごしていた。

たまにルークとサボったりしてると、いつもシズクに見つかって怒られてたなぁ。


姉貴はシズクを本当の妹の様に可愛がっていて、親友でもあった。


表情豊かで、活発で、たまに素直じゃなくて‥‥俺にとっても可愛い妹のような存在だった。


親は居なくとも、俺はそんな生活がとても大切で、楽しくて‥‥幸せだった‥‥。




でも、ある日突然、その日は来た。



空はどんよりと曇っていて、いつ雨が降ってもおかしくないような、そんな日。


いつもの様に俺達はルークの家に向かっていた。

チャイムを押せば誰かしらでてきてくれるんだが、その日は何故か誰も出てこず‥‥。


いつも勝手に出入りしている俺達は扉の鍵が掛かっていないのを確認して、中で待つことにした。


雨が降りだしてきて、屋根に雨粒が弾いてパラパラと鳴りだす。


それからしばらくすると、玄関の扉が開く音がした。

急いで玄関に向かう。


すると、そこには‥‥


雨に打たれびちょ濡れになったルークの姿があった。


が、俺が驚いたのはそこじゃない。


ルークの服が血で真っ赤に染まっていたんだ。


そして、右手には親父さんの魔具‥‥

牙のネックレスを握りしめていた。


「おいっルーク!なんだよこれ‥‥何があった!?親父さんとシズクはどうした?!」


‥‥ルークは泣きながら、振り絞るように答えた。






「殺された」





って。



親父さんとシズクは、人間の街でしか手に入らない材料を買いに出掛け、ルークは家で留守番をしていたらしい。


でも、いくら待っても帰ってこない事に心配し、様子を見に行ったら‥‥。



お袋さんも、親父さんも、妹も死んで‥‥。


ルークはいきなり一人ぼっちになっちまったんだ‥‥。


それを聞きつけた親父さんの常連客、モノンがルークの面倒を見てくれるようになり、今に至る‥‥。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




私の胸がギューって苦しくなるのが分かった。


だって‥‥ルークの過去は耐え難い悲しいものだったから‥‥。

少し予想はしていたけど‥‥ルークの妹という人は死んでいた。


「はぁ‥‥俺が知ってるのはここ迄だ。ルークに詳細を聞くんだが、人の街で何があったかまでは言いたがらなくてな‥‥まぁ無理もねぇけど」


「‥‥ルークは私とシズクさんを重ねてるのか‥‥?」


「さぁな‥‥けど、確かにシズクと雰囲気が似てるかもしんねぇなぁ。あいつさ不器用な男だから‥‥シロナ、相棒をよろしく頼むぜ」


ジェイトは私に拳を突き出してきたので、私も拳を作ってコツンとグータッチする。


自信は‥‥正直無い。


私なんかがルークを支えるなんて‥‥。

いや‥‥

これからそう出来るようになればいいんだ。


魔法も上手くなって、仕事も覚えて、出来たら武術も出来るようになりたいな。

またあんな魔物に襲われる事もあるかもしれないし‥‥。


そう考えてみると、やる事が山程あるなって思って、思わずクスッと笑ってしまった。

こんな事、数日前の自分が知ったらどういう反応をするだろうか。



ジェイトと笑い合っていると、ルーク達が仕事場から戻ってきた。


「すまん、待たせたな‥‥。ん?何話してたんだ?」


ルークのこと!なんて言えるわけもない。


「なんでもない」


と誤魔化す。


するとモノンが私の前まできてしゃがみ、手を握ってきた。


「な、なに??」

いきなりだったので、ちょっとドキッとする。


「シロナ、ちょっと君の魔力を調べたいのでこのまま魔力を練ってみてくれますか?魔法が使いにくい様でしたので、これで何かわかるかもしれませんし」


「魔力を‥‥?わ、分かった」


先生の言うことに従い、魔力集中を始めた。


すると、何かわかったのか、モノンの目付きが変わった。


「これは‥‥。そういう事ですか‥‥」


「何だよモノじぃ、勿体つけてないで教えろよ〜」


私も‥‥その言い方めっちゃ気になる‥‥。


「ん〜、魔力っというのはですね、本来血液の様に身体を循環しているんですよ。心臓と同じようなコアを中心としてね。しかし、シロナのコアに何やら不完全な封印が掛けられてて、循環がしにくくなってます。」


「封印だと?」


ルークが驚いている。

この数日、私の傍にずっと居たのに気づいていなかった様子だ。

それに一瞬で気づいてしまうこの人は、やっぱり凄いのかも‥‥。


いや、まず封印て??


悩ませた顔をしていた私に気づき、モノンは分かりやすく説明してくれた。


「えっとね、ポンプ役をするコアがあるじゃないですか?それに魔力が出入りするパイプが繋がっているのを想像してください。で、そのポンプの弁が封印魔法によって開閉しにくくなってるんですよ。だから上手く魔法が使えないんです。分かります?」


「な、なんとなく‥‥じゃぁ私は一生魔法は使えない‥‥のか?」


そんな、私にそんな魔法が掛けられていたなんて‥‥。

待って、でもそれはいつ?

どこで?誰に?


ん?


ちょっと待って。

この疑問前にもあったぞ‥‥。

いつだっけ??


「まぁ、封印魔法の計算式自体はかなりの高難易度のものですけど、かけた本人が素人のようなので、こらくらいなら僕が解けますよ」


「つまり‥‥魔法が使えるようになる?」


モノンはニコッと笑いながら頷いた。


やった!私もとうとう魔法を!


嬉しさが滲み出ていたのだろう、ルークとジェイトもつられて微笑む。


「よし!ならそのまま目を閉じて‥‥」


少し怖いけど‥‥言われたとおりにしよう。


「ゆっくり‥‥魔力を循環させるイメージを頭に浮かべて」


モノンは髪の毛の束を止めている魔玉に手をかざして魔法を唱えた。


「封じられし全ての万物を解かしたもう‥‥その力、我に示せ。‥‥スカーケルオルズアイト!」


そう唱え終わると、私の胸あたりに強い光が集まって砕け散るように消えていく。

消える瞬間、鎖が切れるような音がした。


封印は‥‥解けたのか‥‥?

何も変わった感じが‥‥ない。


「はい。もう目を開けていいですよ。いきなり全部解くのは難しいので、徐々に封印を解けるようにしました」


「ありがとう‥‥モノン」


「いえいえ」


これでようやく、魔法が自由に使えるように‥‥。


「先生、ありがとうございます」


「いいんですよ!可愛い孫の為ですから。また何かあったら連絡くださいね」


「はい」


ジェイトは立ち上がり、モノンの肩を軽く叩いて玄関の方へ向かおうとする。


「んじゃ、そろそろ帰るわ〜。シロナ、何か困ったことがあったらお兄さんに言うんだぞ〜」


困ったこと‥‥

困ったことではないけど、武術ってルークとジェイトどっちが上手いんだろ?

魔法も教えてもらいたいけど、武術も身につけたいし。


「じゃぁジェイト、武術を教わりたいんだけど、ルークとどっちが強いんだ?」


「えっ?武術?ん〜どっちかって言うと俺だと思うけど、まぁ俺の姉貴が‥‥あぁ〜ダメダメ、何でもない」


姉貴?お姉さん武術得意なのか。


突然武術とか言い出した私に、ルークはキョトンとさせている。

「お前、なんで武術なんか」


まぁ、そりゃそういう反応になるよな。


「また1人の時に襲われる事もあるかもしれないし‥‥コハクもいるから自分の身は自分で守れるようになりたいんだ。‥‥ダメ‥‥か?」


「いや‥‥ダメじゃないけど‥‥」


複雑そうな顔をしている。

今ならなんでそんな顔をするのか、分かる気がした。


「いいじゃないですか!ジェイト教えてあげなさいよ。あと鍛冶屋に務めてたんなら武器も作れるんじゃないですか?」


「おお!そうじゃん俺!ここでこのスキルを使わなくてどーすんだよって話だよな!シロナ、今度俺がお前の武器作ってやるよ。どうだルークいいだろ?」


えっ!

私の武器!

ジェイトが作ってくれるのか‥‥!




‥‥‥‥すごく心配。


しかし、ジェイトの押しに負け、ルークはOKを出してしまった。


まぁ武術を教えて貰えるならいい話だ!


心をワクワクさせていると、玄関のチャイムが鳴り響いた。

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