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灰色ノ魔女  作者: マメ電9
第一章 灰色から虹色世界へ
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第十三話 相棒


怖い・・・そう感じてしまった。


「ルー・・・ク・・・?」


確認するかのように、そっと声を掛ける。


刀を鞘に戻し、1回瞳をとじてから私の顔を見た。


私の強ばっていた頬が緩む。


なぜなら。


いつものルークに戻っていたから・・・。


「シロナ」

呟くように名前を呼び、手を伸ばしてくる。


叩かれる・・・!


そう思った。


だって私はルークとの約束を破ってしまったのだから、怒って当然。


私は叩かれるのを覚悟し目をギュッと閉じた。

しかし、痛みはいくら待ってもこない。


ルークは私の頭の後ろに手を回し、胸元に引き寄せ、私を抱きしめていた。


触れて分かった。


ルークの手が震えていることに。


「また間に合わないかと思った・・・・・・でも生きてる・・・良かった・・・」


・・・何でこの魔物が、人間である私に対しこんなに心配してくれるのかは分からないが・・・。

私を必要としてくれるこの人に、怖い思いをさせてしまった事に、ひどい罪悪感がわいた。


まだ、叩かれた方が痛くなかったような気がする。

そう思うくらい心が痛かった。


ルーク・・・


「・・・ごめんなさい」






2人きりの様な空間にゴホンっと咳払いのメスが入った。


そうだ。この男の事をすっかり忘れていた。


「えっとー。お二人さん?イチャイチャしてるとこ悪いんだけど、命の恩人さんの事忘れてな〜い?ルークちゃん」


慌てて私はルークから離れる。


って待て、今ルークちゃんて・・・??


ルークはシロナから男に視線を変える。

すると親しげに話し出した。


「よぉ、ジェイト。まさかお前が助けてくれたなんてな」

「おぅよ〜。俺は神出鬼没なんだよ。久しぶりだな!相棒!」


相棒??

この2人、どういう関係なんだ??


「それよりルーク、この嬢ちゃんお前ん所のか?どーゆー関係なんだよ」


私に指さす。


それはこっちのセリフなんですけど!!!


「話せば長いんだが、簡潔に言って俺の助手だ」

「へ〜助手ねぇー」


私のことを頭から足先までジロジロ見てくるそいつに、だんだん腹が立ってきた。


でも、その腹立たしさも一気に冷めてしまう発言をしてきた。


「ふ〜んなるほどね。ルーク、お前も物好きだなぁ!人間のガキじゃねぇかよ」


・・・え?

ば、バレた・・・?!


ちゃんとローブは羽織っている。

フードも被ってる。

なのに何で??


汗がツーっと頬を伝った。


「何で?って顔してるな。俺は質屋でも仕事した事あって、その時に見極めるスキルを手に入れたんだ。正体を暴くなんて朝飯前だぜ?」


じーっと見つめてくるジェイト。

目を逸らせば何かされそうな気がしたので、私もじっと睨み返した。


しかし、彼は突然ニコッと笑った。

「なーんてね!んな怖い顔すんなよ、人間だからってとって食ったりなんかしねェって」


思わぬ返しに、私の口は開いたままだ。


「安心しろ、コイツは俺の幼馴染で信用出来るやつだ。あと、俺と同じ人と魔物のハーフだから、人間の事悪くは思ってない」


幼馴染・・・

なるほど、だから相棒なのか。


それを聞いて大きなため息がでた。


とりあえず私は生きてる・・・。

今はそれでいいか。


そして私は倒れているリザードマンに目をやった。

「ルーク、あの魔物死んだのか?」


ルークが一撃を与えてから、一向に起きてくる気配がない。

「いや、峰打ちにした。・・・一体何があった?」


「・・・・・・・・・分からない」


本当に分からない。

何故この魔物が襲ってきたか、何故私を狙ったのか・・・検討もつかない。


疑問ばかりがつのる。


「ルーク、俺アイツを蹴飛ばした時違和感を感じたんだが・・・」


「違和感?」


「あぁ・・・アレ純血の魔物じゃねぇかもしんねェ・・・。アレから魔物の魔力の他に、人間の魔力が微かに感じた」


「人間の魔力?ならハーフかなにかか?」


「・・・いや違うと思うぜ、思うけど・・・ん〜わっかんねぇな!」


するとルークは紙を取り出しそれに何か書き出した。


「とりあえず、ここでゴチャゴチャ考えても仕方ない。魔軍に引き取ってもらうのが一番だろ」


「魔軍ねぇ〜。アイツらまともに見回りとかしねぇクセして、呼んだ時だけ我先にって来るんだよなぁ」


「楽もしたいし、手柄も欲しいしって事なんだろうな」


ダメだ、全然話についていけない。

何?

魔軍???


魔法陣のようなものを描いた紙を、倒れているリザードマンに貼り付けた。


魔力を込め始めたルークは、円を描く動作をし右腕を勢いよく空に指さした。


するとリザードマンの周りに、黄金色の光の膜が現れ、それは円柱になり空高くまで続いている。


「何・・・これ??魔法?」


もーさっきから何何しか言っていないような気がしてきた。


シロナの質問にジェイトが答えた。


「魔物の国の衛兵に知らせたんだ。ここに悪いヤツ捕まえました!みたいな感じでな」

「衛兵?まるで本当の国みたいだな・・・」

「ま、王様は居るような、居ないようなって感じだけどな〜。いや、女王様か?」


「???」


女王様??


もー後でルークにまとめて聞こう。

あ、そうだ一応これも伝えておこうか・・・


「あの、ジェイト」

「ん?(いきなり呼び捨て・・・)」

「1つ伝えておきたい事があって、あの魔物に追われる直前、アイツ私に魔女!って叫んできたんだ」


「・・・魔女?」

「私にも分からない。なにか手掛かりになるだろうか・・・?」


たぶん不安そうな顔をしていたんだと思う。

ジェイトは気を使ってか、またニカッと笑い私の頭をグシャグシャにした。

「おう!なるなる!お兄さんに任せとけ〜!」


割と強めにワシャワシャされたので、ちょっとイラついた。

「や、やめろーーーーーっ!!!!」


パッと離れて今度はルークと話し出した。

「ルーク、俺がここに残って衛兵に細かく状況説明しとくからさ。お前らはもう帰ってろよ」


「いいのか」


「おぉ、また落ち着いたら顔出しに行くわ。それに、俺アイツらと知り合いみたいなもんだし」


「・・・すまない。それじゃ後は頼んだぞ」


私とコハクは、ルークと共に店へ戻ることになった。






ルーク達を見送ったジェイトは、リザードマンの側でしゃがみ込んだ。


「さぁ〜てと、厄介な事にならなけりゃいいがな〜」


大きい独り言を呟いたあと、顔が真剣な表情になる。


・・・魔女か・・・・・・。

おとぎ話の魔女の事か・・・。


元始の魔女。

魔物を創造した魔女。

まさか・・・


考え事をしていたら複数の足音が聞こえてきた。

顔を上げると3人の魔物衛兵が軽めの甲冑を着けてやって来た。


「そこの者!信号魔法を使ったのは貴様か」

先頭に立っている男が偉そうな態度でジェイトに話しかける。


「おーう。待ってたぜ〜」


しかし、後ろにいる二人が焦りの表情を浮かべている。


「ば、馬鹿かお前!誰に向かってそんな口を・・・っ!」

「そうだぞ、お前知らないのか!」


何故二人がそんなに焦っているのか、理由が分からない男はそれを問いただす。

「な、何をそんな焦っている?相手は若造だぞ?」

「バカ!!す、すいません!ご無礼を働きまして!後できつく言っておきますので!」


すかさず謝る後方の二人。

「いいって、気にすんなよ」


訳が分からない男は、コソッと聞く。

「何者なんだ・・・あいつは?」


「あんた本当に知らないのか?!あの方は我ら魔軍騎士団長、スカーレット様の弟君であるぞ!」


「す、スカーレット様の?!?!」



小声でも、その会話はジェイトの耳に入っていた。

落ち着いたのを見計らって次の話題をふる。


「そろそろいーかい?魔軍さん。ちょーっとこのリザードマンの事をお話したいんですけど?」





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