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4 微かな喚び声

 ギルドにもいくつか種類があり、商業ギルド、農業ギルド、鍛冶ギルドなどがあるが、一番の大手は冒険者ギルドであり、単にギルドと呼ばれるとこれを指すことが多い。

 冒険者ギルドとは一言で言ってしまえば仕事斡旋所である。

 大きな屋敷の掃除の人手がほしい、荷運びをしてほしいなど簡単な依頼から、隣街まで護衛してほしい、獣が暴れているから退治してほしいなど腕が必要な依頼まで様々だ。

 ギルドから仕事がもらえる代わりに規約で縛られるが、実力さえあれば成り上がることもできる場所であり、夢見る若者の登録が絶えることはない。もっとも、勇みすぎて分不相応な依頼を受けて死ぬ者も一定数居るため、いくつかの階級に分けられて受注制限も掛けられていたりもする。

 また、ギルドは適性検査も行っており、その結果により剣士ソードマン術士ウィザードなどのクラスに分けられる。中には自分の知らなかった特技が見つかったりするので、これのためだけにギルド登録する者も少なからず存在する。

 もちろんセレンディアも術士として(精霊・従魔使いでもあるが、使役がメインではないため)ギルド登録をしている。主に霊力制御の訓練と、生活するお金のために。




 あれからしばらく経ったが他には特に大きな問題が起こることもなく、平穏に過ごしていた。

 依頼終了後で少し疲労を感じていたセレンディアは、ギルド内休憩室の隅の方で果実のジュースを飲みながらぼーっとしている。

 今日のお供はシルフィアーノとグラフである。シルフィアーノは隣の椅子で足をブラブラさせ、グラフは足元に寝そべり、それぞれリラックスしている……ように見えて、主が絡まれないよう警戒をしている。今まで目撃のされたことのない姿形の怪物モンスターが唐突に現れる報告は未だちらほらあがっており、ギルド内が心なしかピリピリしているからだ。本来なら厄介事から避けるためにもさっさと帰宅しているのだが、ある人と待ち合わせをしていたため時間を潰していた。


「やっほー。セレちゃんお待たせー」


 ジュースも飲みきってうつらうつらとしかけていたところ、ようやく待ち人が訪れたようだ。

 目をこすりながら顔を上げると女性が一人、手を振りながら足早に向かってきていた。


「こんにちは、アディーレ姉さん」


 姉さん、などと呼んでいるが血が繋がっているわけではない。セレンディアがギルドに登録したての頃にたまたまパーティを組んでくれた先輩で、それ以来何かと気に掛けてもらっているので、親しみを篭めてそう呼ぶことになった。セレンディアの数多い欠点を知りつつ関わってくれる貴重な人だ。

 アディーレは女性にしては背が高く、くすんだ赤髪を肩の辺りでばっさりと切っているのと、気力に満ちた目も相まって見るからに快活な人だ。剣士らしく、腰に剣を佩いている。

 彼女は固定パーティを組んでおり、フルメンバーであと四人居るのだが今日は一人だけらしい。


「それで、今日はどうしたんです?」


 テーブルの対面に着くのを待ってから、セレンディアは切り出す。たまに臨時パーティ要員として誘ってくれるので、そういう話かと予想はしていた。

 その予想は合っていたのだが……途中に挟まれた言葉にセレンディアは首を傾げた。


「イゲート迷宮って知ってるよね? あそこ今、お化けが出るって噂が出回ってるらしくて。あたし今一人で暇だから、一緒に行ってみない?」

「……お化け……ですか?」


 ギルドの仕事内容には迷宮の探索も含まれる。

 迷宮とは、霊脈が乱れて洞窟や森が怪物の巣窟になったもの、強力な怪物・悪魔が棲家として作り上げたもの、そして試練か悪戯か、神が作ったと言われるものもあり、それらを総称したものだ。

 共通して言えることは霊力が異常に集まっていることであり、方向感覚に狂いが生じることが多いため迷宮と呼ばれ、また、霊力の濃さゆえ長期間滞在していると体を鍛えていない者は変調をきたす。

 危険も多いのだが、霊力が凝り固まることで生まれる怪物から採れる霊核石は用途が多いためよく売れるし、霊力を豊富に含んだ質の高い薬草が生えていることもある。そして何より、極稀に神の遺産アーティファクトと呼ばれる貴重なアイテムも発見されるため、冒険者たちの良い収入源となっている。質が高いアイテムがあるということは危険も大きい、ハイリスクハイリターンであるが、一攫千金を夢見る冒険者は後を絶たない。

 迷宮は世界各地に存在し、消滅することもあるが発生することもあり、その総数はだいたい横這いだと言われている。その数多い迷宮の中にはアンデッドの棲家となっているものもあり、お化けが出る、というのは珍しい話でもない。のであるが。


「でもイゲート迷宮って、アンデッドが出るなんて情報なかったですよね? 最近出始めた話ですか?」

「えぇ、そうよ。でもアンデッド……ゴーストとは違うみたいなの。白い靄が漂っていて、触れると少しだけとは言え霊力が持って行かれるのだけれども……」


 アディーレに与えられる情報に、セレンディアは口元に手を当てて考え込む。

 白い靄とは実体を持たないゴーストによくある形態である。触れると霊力が持って行かれる、というのもだ。

 では何故、ゴーストとは違うと言われるのか。


「光属性が効かないのと、遭遇した人の感覚では、敵意がない、らしいの」


 アンデッドは例外なく光属性が弱点である(強力なアンデッドは耐性を持っていることもある)。そして、強烈な恨みや妄執を持ったまま死んでしまった人や動物が成ると言われており、やはり例外なく生者への悪意を剥き出しで襲い掛かってくるのだ。

 それら大きな特徴のどちらにも当てはまらないから、違うだろう、とされているらしい。それはそれでますます謎が残ることになる。

 謎と言えばもう一つ。


「……何でボクを誘ってくれるんですか? 大きな害もなさそうなのに、姉さんだけで十分足りるのでは……」


 イゲート迷宮は初心者向けの難易度の低い迷宮であり、アディーレはランク的には中堅の上位といった位置付けである。どんな場所であれ油断大敵とは言え、彼女一人だけでも行ける範囲だ。

 それに、アディーレは若くして力があるのと、明るくサッパリとした性格をしているので人気もある。誰か一緒に行きたいかと問われれば、希望者が多く現れることだろう。

 実はさっきからちらちらと視線が刺さってきているのだ。囁き声もしており、まさか悪口じゃなかろう、被害妄想だろう……と思いたいのが、横に大人しく座っているシルフィアーノの機嫌が段々と降下しているのと、足元に居るグラフの尻尾が忙しなく足を叩いてくるので、気のせいではないらしいのが頭が痛いと言うか、面倒と言うか。

 彼女のことは嫌いではないし、むしろ好きな部類に入り誘ってもらえるのも嬉しいのだが、少し複雑なところである。


「そもそもの話で言えば、あたしが行くレベルでもないと言えばそうなるんだけども」


 周囲の状況とシルフィアーノの機嫌に気付いているのか、アディーレが苦笑しながら。


「そこはほら、あんたの『特技』が役に立つんじゃないかな、って勘がしたから、かな」

「――」


 セレンディアの、目を、見つめて言う。

 彼女はセレンディアの目に霊力が見えることを知っている。それくらいには深さのある付き合いなのだ。彼女の口が堅いのもまた、セレンディアが好評価を持つ一因でもある。

 そんな、信用している人に必要とされてしまえば、仕方がない。


「……わかりました。よろしくお願いします」




 その二日後。馬車に揺られてさらに数時間後。

 特にセレンディアの体調に異変もなく、無事イゲート迷宮へと辿り着いた。

 今回のお供は、前回同様シルフィアーノとグラフである(この前の件でシルフィアーノを置いてくと厄介なことになると文字通り痛感したので毎回連れて行くことにしたのだ。本当にピンチの時以外は本気を出さないで、と何度も釘を刺している)。

 シルフィアーノはさておき、グラフは守りに優れているのでセレンディアの守護とフォローに重きを置いてもらい、セレンディア自身は攻撃に参加しやすい状態になる。ちなみに、ジンは攻撃主体、ルカは補助主体で、それぞれ特徴が異なっている。


「さって、入るよー。ま、そんな手強い怪物が出るところでもないし、固くならずに行こう。でも油断はしないでよ?」


 アディーレが先に立ち、迷宮の中へと侵入する。グラフはセレンディアの横、シルフィアーノは殿で主を守る構えである。

 イゲート迷宮は元々洞窟だったものが変化したものだ。当然明かりなどなく、中に入るには松明、ランタンなどを用意するか、術で明かりを作成する必要に迫られる。セレンディアたちもランタンは用意してあるが、霊力が有り余っているので術で明かりを作成した。

 それでも先の見通しは悪く、足元も人の通行で多少は均されているものの十分に荒れており、転ぶ可能性も出てくる。無様な姿は見せられない、とセレンディアは一つ深呼吸をした。




「次! ケイブウルフ三匹来るよ! 詠唱焦らないでね!」

「はい!」


 アディーレは剣士であるものの、彼女ほどの経験があれば探索士レンジャーと同じようなことはできる。もちろん本職には適わないが、この迷宮では十分なレベルだ。

 怪物の存在を察知し、アディーレとグラフで抑えている間にセレンディアの術で仕留める。多くはその繰り返しであった。

 本来なら彼女だけであっという間に倒せるような相手なのだが、セレンディアの訓練も兼ねてくれていた。探索のコツ、パーティ内での連携の取り方、術を使う時の注意点なども色々と叩き込んでくれて、怒られることもあったけれど、非常に勉強になる濃密な時間だった。唯一の難点と言えば、ベテランが居ることによる安心感で緊張が途切れがちになるところだが、それは贅沢というものだろう。そこが怒られた部分だったりするが。


「次は岩ゴブリン四とレッドスパイダー! 気合入れて!」

「グラフはゴブの足元妨害! シロはまだ待機!」


 アディーレはシルフィアーノの強さ(正確にはその片鱗)も知っている。シルフィアーノの参戦がセレンディアの為にならないとも理解しているので、戦っていなくても特に文句を付けることはない。ベッタリ具合も知っているので、じゃあなんで連れて来たんだ、と言うこともない。一応は。


「ウインドブリッド! ダブル!」


 レッドスパイダーはアディーレが抑えてくれるようなのでひとまず任せ、グラフの作った落とし穴に引っ掛かって体勢を崩している岩ゴブリン相手に風の弾丸を放つ。それは狙い違わず岩ゴブリン二匹の頭を打ち抜いた。

 セレンディアは続けて次の詠唱に入る。わざわざ指示を出さずとも主の意図を察したグラフが、穴から這い上がってこようとした残る二匹に対し今度は足場を高く盛り上げることで転ばせる。

 グラフも攻撃系の術は使えるし、その爪や牙で直接敵を倒すことも可能なのであるが、セレンディアの霊力制御の訓練のためにもあえて補助に徹している。感情で暴走しがちなシルフィアーノと違って己の役割は心得ていた。

 なお、そのシルフィアーノは主の応援をしたり、自分も見せ場が欲しいと嘆いたりと忙しい。これでも周辺警戒をしていたりはする。


 キシャアアアアアッ!


 残る岩ゴブリン二匹を撃破すると同時に、耳をつんざくような音が聞こえる。

 不快感に顔をしかめながらもセレンディアが目を向けると、レッドスパイダーの吐き出した糸に武器を絡め取られるアディーレの姿が見えた。

 しかし、彼女の表情に焦燥はなく、むしろ笑みを浮かべているほどであった。


「ナメんじゃないよ!」


 声と共にアディーレの持っていた剣が燃え上がり、一瞬で糸を焼き尽くした。そしてそのまま剣を横薙ぎに振るい、頭部を大きく斬り裂かれ焼かれたレッドスパイダーはたまらず大きく後退する。

 そこにすかさずグラフが腹の下に岩槍を作り出して上空に大きく打ち上げ、セレンディアが氷の槍を飛ばして胴体をぶち抜いた。


「おっと。ナイスコンビネーション」


 一連の流れには彼女の目にも及第点に映ったのか、口笛を吹きつつアディーレは感嘆の言葉を紡ぐのだった。




 少しばかり開けた場所でセレンディアたちは休憩を取ることにした。初心者向け迷宮だけあってケガらしいケガもほとんどせず、アディーレは疲労もほとんどしていないのだが、常に己の体に気を向けざるをえないセレンディアは少しばかり息が乱れてきていたのだ。これでも、彼女からすれば随分と体力、制御力が付いた方である。


「マスター、お水ですわ」

「ん、ありがとう、シロ」


 渡された水を飲み干し、一息吐いた。

 そして、呼吸と共に霊力の流れを静かに整えていく。大丈夫、今のところ異常はない。


「やー、セレちゃんも結構慣れてきたもんだねぇ」


 自分も水を飲みつつ、その様子を眺めていたアディーレがしみじみと言う。


「あはは、それなりに訓練は積んできていますから」


 苦笑を返しながらも脳裏に思い浮かぶのは、初めてアディーレとパーティを組んでもらった三か月ほど前。あの時は大変であった。

 それ以前から訓練は続けていたもののまだまだ霊力の制御が甘く、盛大に術の発動に失敗したり、血を吐いたり、シルフィアーノが暴れたりして迷惑の掛け通し。

 怒られて、呆れられて、ちょっとした事件が起こって。その事件が仲良くなる切っ掛けでもあるのが人生何が幸いするかわからないところである。

 セレンディアのような問題児でも今まで見捨てずに指導をしてくれている尊敬できる先輩であり、褒められて嬉しい気はしているが、掛けた迷惑が巨大すぎてどうしても先に苦笑が漏れてしまうのだった。

 そんな主の胸中を知ってか知らずか、ドヤ顔をする従魔がここに一人。


「ふふん。わたくしのマスターはすごいのですのよ。可愛らしいですのよ」

「後者はどこからでてきたのっ?」


 繋がりのない褒め言葉に即ツッコミ。ある意味で息がピッタリな主従にアディーレは思わず吹き出した。


「いやー、やっぱりあんたたち面白いわー」

「……これは面白いと言うよりは単なるおバカじゃ……」

「マスターひどいですわ!?」

「いやいや、ほんと。これでシルフィアーノちゃんが悪魔だって言われても『えっ』って感じよ」


 くつくつとアディーレは肩が震えるのが抑えられないでいる。


 悪魔とは、奪う者たちだ。

 人を喰らい、精霊を喰らい、世界を喰らう。

 基本的には彼らとて自分たちが生き残るために喰うのだが、中には意味もなく、戯れに、愉悦に浸るために喰う者も存在する。

 彼らはその本能に、欲望に、奪わずにはいられない。


 そんな悪魔が。

 少女の形をして、同じくらいの少女に仕え、ベタベタデレデレしていて。暴走して人に迷惑を掛けることもあるけれど、それは人同士でも起こり得ること。

 これで悪魔だと言われても、信じられない者が居ても仕方がないことだろう。実際に、契約の首輪を隠していないにも関わらず気付かぬ者も少なくはない。

 だがそれでもシルフィアーノは悪魔である。それは、繋がっている、今この時点でもただ契約をしているだけで喰われ続けているセレンディアには覆しようのない絶対の真実であった。

 とは言え、そのような関係であることに、セレンディアは不満を持ったことなど一度たりともないのだが。


「まぁ……他の悪魔は見たことないですけど、ボクもシロは変わり者だと思います」

「どういう意味ですのっ? でも言わせてもらうなら、マスターだって十分変わり者だと思いますわよ!」


 悪魔と契約する人間はそう多くない。精霊と同様に相性の問題もあるのだが、大体が精霊よりも大食いなため必要な霊力量が跳ね上がり、デメリットも大きい。

 また、悪魔を嫌悪している者は多く、好ましいから契約をするとは限らない。契約の首輪を盾に虐げたり酷使したりと、良好な関係を築いている者は更に減る。

 全く居ないというわけではないが、セレンディアみたいに甘やかしたりするのは他に見たことも聞いたこともないのが実情だ。もっとも、彼女たちの場合は契約の段階からして特殊であるのだが、それを知るのは当人たちばかりであるし、言い触らす気も全くない。


 結局のところ、どちらも変わり者である。

 やいのやいの言い合う主従を生暖かい目で眺めてアディーレが心の中でそう締めくくっていた時、変化は起こった。


 迷宮の奥の方から、ゆるゆると風が流れてくる。いや、洞窟状の迷宮の奥から風が流れてくるわけがない。それは、霊力の乱れであった。

 そのことにいち早く気付いたのはシルフィアーノである。彼女は嫌な臭いに思わず鼻を鳴らした。


「マスター。薄っすらとですけど、悪魔の臭いがしますわ」

「――!」


 シルフィアーノの言葉に、セレンディアも、アディーレも、大人しく置物のように座っていたグラフも飛び跳ねるように立ち上がる。


「臭いの濃さからいって……居ないとは思いますけれども、ご用心ください」

「……わかった」

「まさか噂の悪魔と遭遇する、かも、なんてね……」


 アディーレもここ最近の『悪魔が出る』という噂は聞いていたのだろう。一番最初の情報源がセレンディアたちであることまでは知らないようだが。

 さすがにこの人数と準備ではもしもの時に心許ない。引き返そうと提案しようとしたのだが、そうも行かない事態が続けて発生したようだ。


 ――ぎゃあああああっ!


 奥の方から、くぐもっていて分かり辛いが、確かに人の悲鳴が聞こえた。

 いくら初心者向けとは言え、ここは迷宮なのだ。未熟な冒険者たちが挑めば危機に陥ることもあるだろう。ある意味よくあることなのではあるが、直前にシルフィアーノからもたらされた情報のこともあり、セレンディアたちには嫌な予感しかしなかった。

 それでも、特にアディーレのような上位者の立場からすれば、放置して帰るわけにもいかない。


「あたしは行くよ。あんたたちは――」

「いえ、ボクも一緒に行きます」


 帰りなさい。そう続けようとしたのだが、強い意志の篭った声に遮られた。


「大丈夫です。ボクには、シロが居ますから。もちろんグラフもね」

「えぇ、マスターはしっかりとお守りしますわ」

「オンッ!」


 セレンディアは博愛主義者ではないが、それなりには善人である。自分一人ならともかく、頼もしい仲間が居る現状において、困っている人が居るかもしれないという状況で無視して引き返すという選択肢は採らない。

 それに、理由はそれだけでもない。


(何か、妙な感じがする)


 流れる霊力に何かが混じっているような、そんな感覚。シルフィアーノの言うような臭いはわからないが、常に霊力に気を巡らせている彼女だからこそ感じられる違和に、意識が引っ張られる。

 微かで、曖昧で、言語化ができないようなものだが、セレンディアは己の心に従うことにした。


「……わかった。行くよ!」


 セレンディアの意志が固そうと見たアディーレは説得するのを諦めた。正直な話、シルフィアーノの戦力も非常にありがたい。

 掛け声と共に、彼女たちは奥へと駆けて行くのだった。

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