第九十四夜 聖剣伝説2
一つ、ゲームの話でもしようか。
タイトル画面。ゲームをプレイする上で、必ず一度は目にする事になるであろう画面です。
大抵の人が、チラッと見ただけで何の感慨もなく見送るこの画面。筆者も普段はそんな感じでタイトル画面は早めに終わらせるのですが、稀に、思い出したように見てしまうタイトル画面というのがあります。
それはタイトル画面自体に何らかの仕掛けが施されていたり、オープニングデモの延長線でつい見てしまうものであったり。そんな中、美しすぎて何度でも見たくなるタイトル画面というものが筆者には存在します。
それはパッケージイラストをそのままドット絵に落とし込んだだけのものではありましたが本当に緻密で美しく、透明感のあるBGMも相まって初めて見た時は心が震えたものです。タイトル画面にあんなに目を奪われたのは、後にも先にもこの作品だけだと思います。
今回ご紹介するのは、そんな思い出の作品。前作のシステムをブラッシュアップし、より遊びやすく進化させた後継作。「聖剣伝説2」です。
本作はスーパーファミコン黎明期、旧スクウェア、現スクウェアエニックスよりスーパーファミコンにて発売されたアクションRPGです。前作と違いアイテムや魔法の名前が全て本作独自のものとなっている一方、『マナの樹』など前作にもあったキーワードの一部は本作にも受け継がれています。
ストーリーはかつて人々がマナの力を巡って争い、結果天より遣わされた『神獣』によって一度焼き尽くされた世界。その全てが伝承の中の話となった頃、ポトス村に住むみなしごの少年ランディ(名前変更可)はガキ大将達に強引に連れ出され入ってはいけないとされている滝に宝探しにやって来ていた。しかし途中で滝に掛けられた丸太橋から足を滑らせたランディは、一人滝壺に落ちていってしまう。慌てて村へ帰る道を探すランディだったが、途中で謎の声に導かれ滝壺の岩の上に刺さった剣を引き抜き持っていく事にする。途中現れたモンスターを手に入れた剣で退けながら、何とか村へ帰りついたランディ。しかしそこで自分が手に入れた剣が村を守護していると言われている聖剣である事実が判明し、直後に村に現れたモンスター、キラーマンティスを偶然居合わせた旅の騎士ジェマの助けも借り撃退するも聖剣を引き抜いてしまった責任を問われ、ランディは村を追放される事に。途方に暮れるランディにジェマは、ランディが手にしたのが本当に聖剣ならばその力を蘇らせなければならないと諭す。他に当てもないままジェマの導きに従い旅に出る事になったランディだったが、その行く手には、マナの力を手に入れ世界を手中に収めんとするヴァンドール帝国の影があった……というものになっています。
旅の仲間も個性派揃い。身分の違いから危険な任務に就かされ引き離された恋人ディラックを追いかけ旅に出たお転婆な貴族の娘プリムと、大洪水により故郷の妖精の村から流されてきてしまった上に記憶まで失った、けれどもそんな境遇を微塵も感じさせないしたたかでちゃっかり者の妖精の子ポポイがランディと共に旅をする事になります。
中でもポポイの人気は高く、続編にポポイの名前が付いた防具が存在していたり前作リメイクにポポイがチョイ役で登場していたりします。かくいう筆者もポポイが大好きで、あのエンディングにもうるっときた一人だったり。
なお三人のうち誰を操作するかはいつでも任意で決められ、操作キャラ以外の操作はCPUが担当する事になります。アクションRPGには珍しい二人プレイも可能で、お互いが選んでいるキャラ同士を直接入れ替える事は出来なくなっています。
本作を、そして「聖剣伝説」シリーズ全体を象徴するシステムと言えばやはりこれ。リングコマンドです。
リングコマンドとは丸の形に並べられたメニューアイコンを回転させて項目を選択するもので、これにより文字だけだと雑多になりやすいメニューが視覚的に解りやすくなっています。一つ項目を選ぶとその項目に応じた新しいリングコマンドが素早く開き、アクションのスピード感を損ねない快適な操作性を実感出来ます。……いざ文字で伝えようと思うと、これっぽっちも快適性が伝わらないのがもどかしいですが。
とにかくこのシステムのお陰でアイテムや魔法を使う度にメニューバーで画面が埋め尽くされたりといった煩わしさが一切ない為、スピーディーさが要求されるアクションRPGとは大変相性がいいと言えます。各アイコンも可愛く解りやすく作られているので、見ていて楽しいのもプラスです。
また自分が操作していない仲間のリングコマンドへの切り替えも簡単なので、仲間に魔法を使って欲しい時などは操作キャラを切り替える事なく命令が出来ます。この為うちの操作キャラは、常にランディでした。
本作に登場する武器は全部で十種類。斧や鞭のように移動中に使うものもありますが攻撃専門の武器も多く、前作にあったアクションパズル的要素は大分減っています。
武器を強化するにはまず、ボスを倒したり宝箱を開けたりしてその武器に応じた『武器パワー』を集めます。武器パワーを手に入れたら各町に出没する鍛冶屋のワッツのところへ行き、お金を支払う事でその武器のレベルが上がり、攻撃力が増えたり特殊効果が加わったりといった強化が得られます。
武器の特殊効果は武器レベル毎に固定で、時には攻撃力は上がったけど使い勝手は悪くなった、なんて事も起こります。とは言えまめに武器レベルを上げて攻撃力を強化していかないと後々確実にジリ貧になるので、特殊効果はあくまで副次的なものと割り切った方が楽ではあります。
一方防具は完全に買い替え式で、こちらは単純に後に出てくるもの程性能が上です。誰がどれを装備出来るかは決まっており、きちんと装備可能者の表示もされるのでキャラに合わせた防具を買っていきましょう。
本作での防具の重要性は高く、新しく訪れた町で防具を買わなかっただけで次のダンジョンでのダメージが倍近くに跳ね上がるなんて事もある為時には武器を捨て、防具を優先する事も大事です。当たらなければどうと言う事はない、と言うのは簡単ですが、例え二人プレイをしても一人は確実にCPUが操作を受け持つ事になるので……。
本作の魔法は各地の神殿で計八体の精霊に力を借りる事により習得し、その精霊に対応した魔法を使えるようになります。魔法が使えるのはプリムとポポイの二人で、ランディは魔法が使えない変わりに攻撃力が一番高いという形でバランスを取っています。
プリムとポポイで使える魔法は異なり、プリムは回復・補助魔法、ポポイは攻撃魔法を中心に分担して覚えていきます。但し例外的に光の精霊ウィル・オ・ウィスプの魔法はプリムのみ、闇の精霊シェイドの魔法はポポイのみしか覚える事が出来ません。
またダンジョンにはクリスタルボールという仕掛けがあり、これは対応する魔法をかける事でマップに変化が生じ、道が開けるという仕組みになっています。魔法は必ず対応している種類のものでなければならず、同じ精霊の違う種類の魔法をかけても反応はしないので対応する精霊は解る、けどどの魔法かは解らないから片っ端から……という場面も結構数出てきたりします。
基本的には最も威力の高い種類の魔法が対応している事が多いですがこれも絶対ではないので、使った魔法が正解ではなかった時は運が悪かったと思っておきましょう。幸いMP回復アイテムの回復量も比較的多めですし。最大四つしか持てませんが。
ダメージ表示は敵味方共に数値制で、与えたまたは喰らったダメージ量に合わせて数字の大きさが変わるようになっています。この為ダメージの深さを視覚的にも即座に理解する事が出来、単なる数値以上の働きをしてくれています。
そのダメージ量は、HPと共に常に表示されているゲージがどれだけ溜まっているかによって左右されます。このゲージは一度攻撃を行うと0になり、そこから100%まで戻っていく事になります。
ゲージが不十分な状態でひたすら攻撃を連発しても大したダメージにはならず、逆に攻撃される隙を生んでしまいがちです。ゲージが最大の時に攻撃すればダメージだけでなく敵が怯んだり吹き飛んだりしやすいので、ゲージは100%の時に攻撃、が本作の基本となります。
敵側もただ触れるだけではダメージにならず、攻撃モーションを行っている時に触れて初めてダメージとなります。敵がどんな行動を取ろうとしているかよく観察し、攻撃態勢を取っている時以外に近付いてこちらの最大威力の攻撃を叩き込む。その駆け引きが、戦闘では重要になります。
また武器や魔法を使っているとそれぞれ使った武器や精霊別の経験値が上昇し、これが100まで溜まると武器や精霊の熟練度が上がります。武器の熟練度はその時の武器レベルまでしか上げられませんが、精霊の熟練度は仲間にした時点で最高値まで上げられるようになっています。上げられるならですが。
武器の熟練度は上げると、各武器に対応した必殺技を放つ事が出来ます。必殺技を使うには攻撃後ボタンを押しっぱなしにし、ゲージが100%になった後に現れる必殺技ゲージを溜める必要があります。
必殺技にもレベルがあり、レベルの高い必殺技ほどより長くボタンを長押ししなければなりませんがその分威力は高いものとなります。防御力の高い敵に有効なので普通の敵には通常攻撃、防御力の高い敵には必殺技と使い分けるといいかもしれません。
精霊の熟練度は上げる程に魔法の威力が上がり、演出も派手になっていきます。特に熟練度最高値の時に確率で見れる演出は必見で、これだけの為に熟練度を上げてもいいぐらいです。
但しこちらはMPを使わなければいけない分、そう簡単には上げられません。余程狙って使っていかないと、最高値は難しいかも……。
さてここまではシステムについて触れてきましたが……本エッセイを読んで長い方ならこの書き出しで解る人は解るでしょう。本作、異様にバグが多いのです。しかも進行に支障があるものばかり。
最も有名かつプレイヤーを苦しめてきたのは、『ボスを倒した後画面が切り替わらず進行不能になる』バグでしょう。この現象はボスの撃破時余計な操作をするほど起きやすくなるので、ボスの撃破演出が入ったらコントローラーから手を離し無事に画面が切り替わるのを祈るのは誰もが経験した事なんじゃないかと思います。
また『特定ボスの特定の攻撃を喰らって戦闘不能になった仲間がそのまま消失してしまい、二度と帰って来ない』バグも凶悪です。これを防ぐにはとにかく戦闘不能になるのを防ぐしかないので、ただでさえ緊迫したボス戦が更に緊迫する事になります。
幸いこれらのバグは実機のみで、バーチャルコンソールなどの移植では起こらないので今から遊ぶなら移植版をお勧めします。これだけバグが多いのに何度も遊んでしまうのは、本作がそれだけ面白いからに他ならないのですがそれでも……ねえ。
数多くの致命的なバグが評判を落としてはいますが冒険心溢れるストーリーや意欲的なシステムなど、プレイヤーを引き込む魅力には事欠かない本作。あの幻想的なタイトル画面から始まる冒険の物語を、是非皆様にも体験して頂きたいものです。
とりあえず、今回はこれにて。