第九十二夜 トレジャーハンターG
一つ、ゲームの話でもしようか。
少年少女の冒険譚が好きです。夢と希望に満ち溢れ、時に困難にぶつかりつつも力を合わせてそれを乗り越えていく、そんな展開が好きです。
筆者が本エッセイと並行する形で現在連載中の小説も、そんな思いで書き始めたものです。もっとも、今は冒険譚と言うより半分戦争もののようになってしまいましたが。後悔はしてないんですけどね。
この、いかにもファンタジーの王道みたいな物語。実はいざ探してみると、そこまで数はなかったりします。
古典ファンタジーで言えば、該当するものは「ナルニア国物語」くらいでしょうか。古典ではありませんが「ハリー・ポッター」は主な舞台が学校なので、冒険譚とはまた少し毛色が違う気がします。
流行りの異世界ものも意外と(中身はという注釈がつくものの)成人主人公が多く、正真正銘の子供が冒険する話は案外少ない気もします。青臭い少年少女が少しずつ成長していくというその流れ自体が、異世界ものを好む層の好みに合致しないのだろうなあと筆者は分析しています。
……このままだとなろう批判にも繋がりかねないので、そろそろ本題に入りましょう。今回ご紹介するのは、まさにそんな少年少女の冒険譚を描いたゲーム。「トレジャーハンターG」です。
本作はセガサターンやプレイステーションが世に送り出された頃、旧スクウェア、現スクウェアエニックスよりスーパーファミコンにて発売されたRPGです。スクウェアのRPGにしては珍しい完全外注製で、開発は後に「BAROQUE」などの癖の強いゲームを多く世に送り出す事となるスティングが担当しています。
ストーリーは人が立ち入る事が禁じられているとある洞窟。悪質なトレジャーハンターがその洞窟へと忍び込み、一つの宝を見つけ出す。しかしトレジャーハンターが宝を手にすると宝から不気味な力が溢れ、外へと飛び出していく。そう、それは千年前に闇の軍勢を率いて世界を手に入れようとした闇王を封じていたものだったのだ――。ところ変わってルーリの町。ここでは故郷でホラ吹き呼ばわりされている父ブラウンと喧嘩して家出してきた少年レッドとレッドに連れられてきた弟ブルーが、祖父シルバーの家で暮らしていた。そんなある日、レッドは奇妙な噂を耳にする。父が以前言っていた『鉄の鳥』を、ルーリの町の近くの洞窟で見たというのだ。父の話は本当だったのか――それを確かめる為にレッドはブルーとシルバーと一緒に、噂の洞窟へと向かう。それが世界を股にかけた、長い冒険の始まりになるとも知らずに……というものになっています。
筆者、本作はきちんと最後までクリアした筈なんですがどうにも部分部分の記憶が抜け落ちており、ウィキペディアや当時の攻略本を読み込み記憶を掘り起こしながら執筆しております。どこかに間違いがあったらすみません。
パーティーメンバーは全部で四人、いや三人と一匹。キャラ達はそれぞれ固有の特技を持ち、戦闘の際にはこれら特技を活かしていく事になります。
主人公レッドは、範囲は狭いが強力な剣技を覚えます。剣技は人から教えて貰う必要があり、レベルアップでは習得出来ません。
レッドの弟ブルーは、ワナを用いて敵を攻撃します。但しこのワナは味方にも効果があるので、考えなしに使うと痛い目を見ます。レッドの剣技同様、ワナも人に教えて貰う必要があります。
謎の少女レインは、回復魔法を中心とした魔法を身に付けていきます。習得は大半がイベントによるもので、時間はかかりますがレッドとブルーと比べると確実に特技を習得していけます。
レインのペットである猿のポンガは猿ながらに強力な攻撃魔法の使い手。範囲も広い上唯一のレベルアップ習得なので、戦闘では頼りになる部分も多いでしょう。
回復の特技を持つのがレイン一人という事もあり、全員にあらかじめ回復アイテムを持たせておいた方が安全と言えるでしょう。本作では他のRPGと比べアイテムを上手く使いこなせるかが重要と言え、アイテムがキャラ別管理の中、誰に何を持たせるかは深く考えさせられる事になります。
本作の特徴と言えば、樽や草や色んなものを叩いてアイテムを見つけるシステムでしょう。例えるなら、「ドラゴンクエスト」と「ゼルダの伝説」の合いの子とでも言いましょうか。
町中にある樽を叩いて壊すと、一度だけですが様々なアイテムが出る時があります。また草を叩くと時折カエルが飛び出し、アイテムとして手に入れる事が出来ます。
たかがカエルと侮るなかれ。敵がお金を落とさない本作ではカエルは貴重な収入源となっておりまして、普通に買い取って貰う以外にも各地にカエルのみを高値で買い取ってくれる人が点在しているのでそういう人達にカエルを売り付ける事で旅の資金を稼げるようになっているのです。
またとある場所にはこのカエルを取り扱った『カエルカジノ』なるものまであり、持っているカエルを使って三つのミニゲームに挑む事が出来るのです。クリア出来れば賞品が手に入る……のですがこのミニゲームがまた難しいのなんの。筆者はどれ一つとしてクリア出来ませんでした……。
他にも叩くものによって様々な反応があり、『気になるものがあるならまず叩け』が本作の鉄則になります。7から物を壊して調べる方式になった「ドラゴンクエスト」の、一歩先を行った存在だったのかも……まあそんな事はないんですけども。
もう一つの本作の特徴と言えば、一風変わった戦闘システムです。まず戦闘が始まると場所が戦闘用のエリアに切り替わり、その中でシミュレーションRPGのようにキャラを動かし攻撃を行うというシステムになっています。
レッド達一行はアクションポイント(以下ACT)というものをそれぞれ持っており、このACTが尽きるまでの間自由に行動する事が出来ます。一回の行動でどれだけACTが減るかはマスの色によって決まり、基本的に敵の近くほど減りが早くなります。
また戦闘前に表示されるグリッドレベルによっても減少量は変化し、グリッドレベルが高いほどマス毎のACT減少量も増加します。物語の後半ほどグリッドレベルも高くなるので、レベルアップや装備の効果でACTが増えたからといって油断はなさりませんように。
攻撃を行う際も、正面から攻撃するか横や背後から攻撃するかで与えるダメージ量は変わってきます。基本的には正面以外から攻撃した方が大ダメージを与えられますが、敵の側面や背面に回り込むにはそれだけACTを消費しなければいけない訳で……正面から連続攻撃を行うのとどちらがいいかは、各プレイヤーの裁量に任せる事になるでしょう。
とは言え雑魚ならともかくボスはどいつもこいつもかなりでかい為、ボス戦は正面からの殴り合いになりがちですが。本作では味方にアイテムを使うのも直線上に立ってぶん投げなければならないので、分散するのも危険ですし。
なお本作では敵を全滅させる他にも戦闘中の移動以外の全ての行動が経験値に繋がり、経験値が溜まれば戦闘中であろうともレベルアップしHPが全快します。レベルアップまでの経験値は100刻みと決まっており現在の経験値の確認もいつでも出来るので、レベルアップが近い時はHPが減ってもギリギリまで回復しないでおく……などのテクニックも時には重要となります。
本作のストーリーは単純明快、まさに冒険活劇。時には暗いイベントもありますが、基本的には終始明るい感じで物語は進行していきます。
ただ後半の展開が少々駆け足気味なのは、評価が分かれる部分かと。絡むだけ絡んできて最後は放置のキャラもいるし……。
些細な好奇心から始まりを告げる、少年少女の冒険譚。ドラマチックなRPGが多い中、たまにはこんな解りやすいRPGがあってもいいんじゃないでしょうか。……前回ご紹介したアレレベルに起伏が少ないのは問題ですけど。
とりあえず、今回はこれにて。