第八十六夜 サガ2秘宝伝説 GODDESS OF DESTINY
一つ、ゲームの話でもしようか。
前回ご紹介した「Sa・Ga2 秘宝伝説」。発売されて時が経ち、やがてリメイクを望まれるようになりましたがなかなか実現はしませんでした。
その原因の一つとして、対応ハードの問題があったと思われます。元がゲームボーイソフトであった「Sa・Ga2 秘宝伝説」は据え置きでリメイクするには容量が足りず、かと言って当時任天堂と不仲であったスクウェアに任天堂の携帯機で出すという選択肢も存在しませんでした。
そんなスクウェアに転機が訪れたのは2000年代。スクウェアと任天堂の関係が徐々にですが修復され、再びスクウェアのソフトが任天堂ハードで発売されるようになったのです。
これによりファミコン、スーパーファミコン時代の「ファイナルファンタジー」シリーズが一気にゲームボーイアドバンスに移植され、「Sa・Ga2 秘宝伝説」リメイクの機運も高まってきました。そして更に時は流れ、スクウェアがスクウェアエニックスとなりニンテンドーDSが発売されると遂にリメイクは実現する事となったのです。
今回のテーマはそのリメイク作。「サガ2秘宝伝説 GODDESS OF DESTINY」です。
本作はニンテンドーDS中期、スクウェアエニックスよりニンテンドーDSにて発売されたRPGです。ストーリーや基本システムはリメイク元と変わりありませんが、そこに幾つもの追加要素を盛り込んだ形となっております。
まずモンスター以外の人間、エスパー、メカに数種類のグラフィックパターンが用意され、キャラ作成時に好きな見た目を選ぶ事が出来るようになりました。同じ口調でも見た目によってかなり印象が変わってくるので、是非脳内設定に合った好みのグラフィックをお選び下さい。
またモンスターもリメイク元では容量の都合で大種族毎に固定だったグラフィックが全て個別に用意され、見た目にも華やかになりました。特にリメイク元の時点で可愛かった妖精族は更に個性的にそして愛らしくなり、筆者などは必要のある時以外はずっと妖精族で固定していたぐらいです。
肉食いによる変身も一度変身した組み合わせは図鑑に登録されるようになり、二度目以降は事前に『この肉を食べたらこう変わる』と教えてくれます。これにより肉を食わせた結果前より弱くなった!という失敗が少なくなり、気軽に肉食いを行えるようになったと言えます。
リメイクによって追加された要素は色々ありますが、その中でも大きなものが『連携』です。連携という概念が現れたのはプレイステーションソフト「サガフロンティア」からですが、それとはまた仕組みが異なっています。
連携を行うにはまず『運命の糸』というアイテムを手に入れる必要があります。運命の糸は八種類あり、それぞれ愛情の糸、友情の糸、嫌悪の糸、対立の糸などに分かれています。
運命の糸を持っている状態で攻撃を行うと、確率で連携が発生する事があります。この時攻撃モーションが終わる前に発動を選ぶと連携が発動し、攻撃がより強力になったり全体化したりといった恩恵が得られるのです。
更に連携中に新たな連携が発生すると連携が昇華され、更に攻撃が強力になる場合もあります。連携内容は武器によって変わり、同じ種別の武器だとしても最後まで同じ連携になるとは限らないので色々と試してみるといいかもしれません。
連携が影響するのは、戦闘だけではありません。連携にどの運命の糸を使ったかによって、仲間間の関係が次々に変化していくのです。
例えば愛情の糸を多く使って連携をした者同士は愛情関係で結ばれるようになり、嫌悪の糸を使って連携をした者同士は嫌悪関係で結ばれるようになります。これら関係は直接連携を行った者同士のみ変化するので、狙った相手同士に関係を持たせたい場合は行動順をこちらで弄る必要があります。
そして全体の関係がどう結ばれているかで、パーティーの称号が決定します。称号にはポジティブとネガティブとがあり、関係が愛情や友情で満たされていればポジティブの称号が、嫌悪や対立で満たされていればネガティブの称号が付きます。様々な関係が入り乱れている時は、その組み合わせによってポジティブの称号になるかネガティブの称号になるか決まります。
これら称号は、サブクエストの発生に関わってきます。本作では称号がポジティブまたはネガティブの時それに対応するサブクエストが発生するようになっており、これらを発生させる事により様々なアイテムが手に入るのです。
中にはポジティブネガティブだけでなく、その中で更により愛情に傾いている、より嫌悪に傾いているなどで貰えるアイテムが変わる場合もあり、そうでなくてもどの関係が一番強いかでサブクエスト発生時の会話も変わってくるのでどの関係を重視するかは考える必要があります。なお運命の糸は上にセットしたものほど連携に使われやすくなるので、ある程度関係を自由に操る事は可能です。
……ですが、ネガティブな称号で起こるサブクエストの方が多いのはどうにも慣れません。そうしないと、ネガティブな称号にする人なんていないからなんでしょうが……。
その肝心の運命の糸。どうやって手に入れるかというと、運命の城にいるモイライという女神から購入するのです。
運命の城には各世界間を繋ぐ天の柱の途中にいる天使スライムの元から一体につき一回だけ行く事が出来、そこで後述のMPを支払って糸を購入する事になります。ストーリーが進むとアイテムを使って糸の力を強化したり関係を一旦リセットする事も出来るようになり、より狙った関係が構築しやすくなります。
最終盤になれば運命の城への出入りも自由になりますが、それまでは自分がパーティーをどんな関係にしたいのかよく考えて糸を購入しましょう。何せ後から失敗したと思っても、やり直しは効かないのですから。
もう一つリメイクによって加えられた大きな要素と言えば、『ミューズ』の存在です。ミューズとは神に近い存在で、八人いる全員が女性です。
彼女達と各地で出会い、仲良くなる事で糸の購入に必要なミューズポイント、即ちMPを貰ったり戦闘中に助けて貰う事が出来るようになったりします。ミューズ達と仲良くなるには各町から行ける『ミューズの園』にいる彼女達に贈り物をしたり、戦闘で各ミューズ達の好む行動を取り評価して貰う必要があります。
基本となるのは戦闘評価の方で、戦闘中に取った行動によって既に知り合っているミューズの誰か一人だけがその戦闘を評価してくれます。戦闘を評価してくれるのはその戦闘を最も高く評価してくれたミューズで、中にはひたすら防御しないと戦闘を評価してくれないミューズもいるので狙ったミューズに評価を貰うのはなかなか大変だったりします。
仲良くなるのが大変な分いざ助けてくれた時の威力は絶大で、大抵の雑魚はミューズの攻撃で一撃死してくれます。とは言ってもいつでも出てきてくれる訳ではないので、過信は禁物ですが。
他にも、『亡者の闘技場』や『魂の暗域』の存在も見逃せません。亡者の闘技場ではパワーアップしたボス達が、魂の暗域では本編より強力なモンスターがそれぞれ待ち構え、それらと戦う事になるのです。
『そんな事をして何の得があるんだ?』とお思いでしょうが、ここでの目的は貴重なアイテムやモンスターの落とす肉を手に入れる事にあります。ここで手に入るアイテムは皆非売品ばかりだし、肉もモンスターの最終進化に必要な分が手に入るのはラストダンジョンの中ボスとここだけです。
ハイリスク、ハイリターン。筆者はあまり利用しなかったこの施設ですが、自分のパーティー構成に自信のある方は是非挑んでみるといいでしょう。
また本作ではリメイク元のランダムエンカウントからシンボルエンカウントに変更になっており、更に複数の敵シンボルが近くにいる状態で戦闘を発生させるとチェーンエンカウントとなりその場にいる全ての敵と戦う事になるのです。大ピンチの一方、好きなだけ連携を行ったり普段評価して貰えないミューズにも評価して貰う絶好のチャンスでもあるので狙って起こす際は計画的に行いましょう。
またチェーンエンカウントした時は、本来その辺りのエンカウントパターンにないモンスターが紛れ込む場合もあります。これを狙ってチェーンしてみるのも手かも?
これらと比べると地味ですが、筆者が夢中になったのが発掘です。発掘は『巨人のつるはし』という秘宝を手に入れると出来るようになり、アイテムが埋まっている場所で使うと地中にあるアイテムを掘り出し手に入れる事が出来るという追加要素です。
このアイテム、同じ場所から必ず同じものが発掘されるとは限らず何が掘り出されるかは確率によって決まります。レアなアイテムは当然出にくくアイテムが何になるかは発掘した瞬間に決定される為、目当てのものを発掘する為にリセット&ロードを繰り返したのは筆者だけではないと思います。
また前述のサブクエストで手に入るアイテムも土の下に埋まっている場合があるので、そういう意味でも発掘は必須の作業です。ただ発掘出来るレアアイテムの中には中盤に手に入るのに最後まで使えるようなかなり強力なものもあるので、掘り出して使うか掘り出さず封印しておくかはプレイヤー次第。
余談ですが、リメイク元の父親のグラフィックはかなり露骨にイン○ィ・○ョーンズだったのが本作では鞭はそのままなもののかなり違ったデザインにされています。やはり怒られたのでしょうか。
あと主人公達の口調も男、女、メカの三種類に分かれ女の子が俺っ娘ではなくなってしまいました。残念。
追加要素はこちらで封印出来るものばかりなので、追加要素込みで楽しむか敢えて追加要素を使わず当時の雰囲気で楽しむか選べるところも本作の魅力。リメイクとしては十分に合格点ですので、『リメイクはちょっと……』という方もやってみると新しい発見があるかもしれませんよ。
とりあえず、今回はこれにて。