第八十五夜 Sa・Ga2 秘宝伝説
一つ、ゲームの話でもしようか。
ゲームボーイ初のRPGとなった「魔界塔士Sa・Ga」はスクウェア初のミリオンヒット作となり、「ファイナルファンタジー」シリーズと合わせて『スクウェアと言えばRPG』という意識をユーザーに根付かせる事となりました。事実この後スクウェアは幾つもの人気RPGを製作し、業界内の地位を確固たるものにしていきます。
今回ご紹介するのは、スクウェアの地位がまだ完全に確立される前のお話。ゲームボーイ初期に万を持して世に送り出された、人気作の続編。「Sa・Ga2 秘宝伝説」です。
本作は序文の通りゲームボーイ初期、旧スクウェア、現スクウェアエニックスよりゲームボーイにて発売されたRPGです。独特の世界観や成長システムで好評を博した前作を、更にブラッシュアップしたものとなっています。
ストーリーは77の秘宝と呼ばれる神の遺物が眠り、それを全て集めた者には計り知れない力が宿ると言われている多層世界。その世界のうち一つに住む主人公は、幼い頃行方知れずになった父より秘宝を一つだけ預けられていた。やがて成長した主人公は、信頼出来る友と共に帰らない父の行方を追う旅に出る事を決意する。秘宝を集める、それが父の元へ繋がる唯一の道だと信じて……というものになっています。
漠然と楽園を目指し、パーティーも烏合の衆だった前作と比べ本作は秘宝を集め父を探すというはっきりとした目的があり、仲間も故郷の友達と大分解りやすく、マイルドになりました。その分本作では最初に選んだ仲間は変えられず最後まで固定になるので、くれぐれも変な構成にして後で後悔しないように。
なお主人公達は学校に通う年齢らしく前作より口調が少し幼めになっていますが、一人称俺や男らしい言葉遣いは顕在なので俺っ娘萌えの皆様も安心してプレイ出来ます。そんな事心配するのは筆者ぐらいかもしれませんが。
本作で主人公や仲間として選べる種族は大別して四種類。従来の人間、エスパー、モンスターの他に本作ではメカが加わり、また人間やエスパーの成長方法も若干の変更が加えられています。各種族の特徴は以下の通り。
人間は前作のドーピングによる成長ではなく、エスパーと同じく戦闘でステータスを伸ばす方式になりました。また前作では魔法の類は一切使えませんでしたが、本作では魔法の書を装備させる事で魔法攻撃も可能に。戦闘後どのステータスが伸びるかは、戦闘中に使った武器に左右されます。
エスパーは成長の仕方は人間と一緒ですが、戦闘後に敵の強さに応じた特殊能力を覚える事があります。覚えられるのは四つまでで、能力が一杯の時は新しく能力を一つ覚える度に一番下の能力を一つ自動で忘れていきます。但し、必ずこちらにプラスになる能力を覚えるとは限りません。
モンスターは前作同様、敵が確率で落とす肉を食べる事によって自分の種類を変化させていきます。本作では肉食いの法則がより複雑化し、攻略情報を見ながらでないと狙い通りの種類に変化させる事はかなり難しいと思います。ポイントは手当たり次第に肉を食わせない事。
メカは武器を装備すれば力か素早さが、防具を装備すれば防御とHPがそれぞれ上がるという風に装備品によってステータスを上下させる特殊な成長方式になっています。またメカに装備させた武器は使用回数が半分になる代わりに、宿屋で使用回数を回復出来るようになります。但し魔法は、魔法の書を装備しても使えません。
いずれも個性的な種族なので、最初は全て加えて遊んでみるのがいいかも? なお全員モンスターや全員メカという尖った編成でも、一応クリアは可能であるようです。
なお本作では戦闘中に死亡したキャラは戦闘後にHP1で生き返り(その戦闘では絶対に成長出来ないのでペナルティがない訳ではない)、全滅してもあるボスを倒すまではその戦闘の最初からやり直す事が出来ます。これを遊びやすくなったと取るか、緊張感がなくなったと取るかはプレイヤー次第。
ストーリーの欄にもある通り、主人公達は秘宝と呼ばれる宝を各地で手に入れていく事となります。中にはアイテムや装備として使うものもありますが、その大半は『マギ』という補助アイテムです。
マギは世界中に複数個散らばっており、力のマギ、炎のマギなど幾つもの種類に分かれています。これらマギを装備する事により、主人公達は能力を底上げする事が出来るのです。
例えば力のマギは力を、素早さのマギは素早さを上げ、炎のマギや氷のマギは魔力を増やして更に炎や氷への耐性まで得る事が出来ます。これらマギは一つの種類を一人が全て装備する形となり、例えば炎のマギを複数人で分け合うといった事は出来ません。
特に種類毎に固定ステータスであるモンスターの能力値をこのマギで上昇させられるのは大きく、パワー自慢の種類のモンスターになっている時に力のマギを付ければ更なるダメージが期待できたり、逆に炎が苦手な種類のモンスターになっている時に炎のマギを付けて弱点を打ち消したりと使い道は様々です。その時その時によって、ベストなマギの使い道を探していきましょう。
冒険をするのは、主人公達だけではありません。本作では様々なNPCが加わり、主人公達の旅を助けてくれます。
実際プレイした人の中では、やはり旅立ったばかりの主人公達に付き添いその圧倒的な攻撃力で敵を屠っていく『せんせい』の印象が強いかと思われます。……用心棒の先生とかじゃありません。れっきとした学校の先生です。
NPC達は装備を与えたり剥いだりする事は出来ますが、戦闘によるステータスの成長はしません。それでも能力的に頼りになる場面は多く、旅の大きな支えとなってくれるでしょう。
なおNPC達を仲間にしている間は、フィールド上で会話も出来ます。話す内容はストーリー進行によって細かく変わるので、まめに話しかけるといいかも?
また地味ではありますが、町のメッセンジャーやイベントの気になる発言を記録しておけるメモ機能も助かる機能の一つ。どこどこに何がある、という情報をいつでも参照出来るので、迷う事なく目的地に辿り着く事が出来ます。
中には期間限定でしか得られないメモもあり、収集意欲も湧かせてくれます。ずらっと並んだメモを前に悦に浸る変態は筆者ぐらいのものでしょうが……。
ただこのメモ、古いメモを消去出来ないのだけは残念要素かも。一応新しい情報が優先的に先に出るようにはなっていますが……。
余談ですが本作はイトケンの愛称で知られる作曲家、伊藤賢治氏が初めて作曲に参加した作品であり、「ファイナルファンタジー」シリーズの作曲でお馴染みの植松伸夫氏との共作という今から考えると大変豪華な作曲陣となっております。バトル曲に定評のある(でも本人曰くバトルは苦手)イトケン節はこの頃から顕在なので、機会があれば聞いて頂けると嬉しいです。でもラスボス曲は植松氏作曲ですよー。
様々な世界を渡るという楽しさはそのままに、前作の粗削りだった部分を洗練させた本作。今なお根強いファンの多い本作は、ゲームボーイ初期の作品にしてゲームボーイで最高のRPGであると今も言われています。
とりあえず、今回はこれにて。