第八十三夜 スクウェアのトム・ソーヤ
一つ、ゲームの話でもしようか。
さて前回までは、スクウェアエニックスのエニックス側についてご紹介してきました。ですが今回からはスクウェアエニックスのスクウェア側。すなわちスクウェアのファミコン時代のマイナーRPGから黄金期の名作RPGまで持っている範囲で続々ご紹介させて頂きます。
スーパーファミコン全盛の頃にはRPGと言えばスクウェアかエニックスというくらいの知名度を誇ったスクウェアですが、初代「ファイナルファンタジー」がヒットしたばかりの頃はまだまだ知名度も低く、マイナーな会社に過ぎませんでした。「ファイナルファンタジー」シリーズ、ゲームボーイの「Sa・Ga」シリーズと徐々にヒット作には恵まれ始めたものの、これで満足していては会社は存続出来ないと新規タイトルの開発にも常に積極的に取り組んできました。
今回ご紹介させて頂くのは、スクウェアのそんな試行錯誤のうちの一つ。スクウェアには珍しい版権ゲー……となるのでしょうか?
その名は「スクウェアのトム・ソーヤ」。さあ、大冒険の始まり始まり……。
本作はファミコン全盛期、旧スクウェア、現スクウェアエニックスよりファミコンにて発売されたRPGです。キャラクターデザインはオリジナルのもので、黒人のジムなんかは今だったら絶対出せない見た目をしています。
ストーリーは悪戯好きの少年トムはある日、遥か遠いサウスエンドの風景を夢に見る。目が覚めて、これはきっと予知夢に違いないと考えたトムは早速悪戯仲間達を引き連れサウスエンドにあるという海賊の残したお宝探しに出発する事にしたのだった。はたしてトムは、見事お宝を見つけ出す事が出来るのだろうか……? というものになっています。
ちなみに何故タイトルに『スクウェアの』と付いているかというと、当時ファミコンに「トム・ソーヤの冒険」というゲームが既にありそれとの差別化なんだとか。何事も早いもの勝ちって事ですね。
本作にはレベルという概念がなく、キャラは戦いを重ねた回数だけ強くなっていきます。しかし常に強さが変動する訳ではなく、ステータスが上昇するのは回復行動を取った時なので序盤のうちはこまめに回復をしてトム達を鍛えておくといいでしょう。本作は戦闘バランスがきつめなので、早いうちに強くしておくに越した事はありません。
また魔法や特技と言った概念も当然ながらなく、トム達が戦闘中に取れる行動は直接攻撃か運が良ければ一撃で敵を倒せる必殺技、それから各キャラ固有のコマンドだけです。気を付けなければいけないのは本作での『逃げる』はトムのみが持つコマンドであるという点で、逃げるを選べば必ず逃走は成功するもののもしその前にトムがやられてしまうと逃げる事が不可能になってしまうのです。なので、トムのHPには特に常に気を付けましょう。
なお本作のHPやダメージはゲーム全体でも珍しい小数点まで存在するものとなっており、ダメージが1.2とかで表示されるRPGは正直これぐらいだと思います。……素直に桁を一つ下げればいいのでは、とは思っていても言わない約束。
トムが仲間に誘えるのは全部で三人まで、計四人パーティーとなります。パーティーメンバーを入れ替えたい時は今いる仲間の誰かと一旦別れてから仲間にしたいキャラに話しかける必要があります。
仲間達の強さにそれほど差はありませんが(強いて言えばハック以外は後半仲間に出来るようになるキャラの方が能力値が高めなくらい)、彼ら彼女らはそれぞれ初期アイテムを所持しています。本作での仲間の意義はこちらの方が強く、それぞれの仲間の持っているアイテムを各地で物々交換したりして物語を進めていく事になります。
アイテムをひっぺがし……もとい使い終えたら、後は組み合わせはご自由に。有利なのは体力全快アイテムを各地で補充可能なエミーですが、彼女がいると起きないイベントもあるのでどのタイミングで仲間に入れるかは考える必要があります。
ちなみに別れた後の仲間は仲間にする前にいた場所に戻ればまた何度でも仲間に出来るので、是非自分だけのパーティーを作り上げて下さい。なお筆者は、原作でのトムの親友ハックを常にパーティーに入れていました。
本作で出てくる敵はボス以外大抵が野生の動物なのですが、戦闘開始時は小さなシルエットが出るだけで出会った敵が何なのかすぐに確認する事が出来ません。これがなかなか厄介なシステムでして、戦っても問題なく勝てる相手なのかそれとも逃げた方がいい強敵なのかの咄嗟の判断が出来なくなっているのです。
確実なのは逃げる事、けれどそればかりでは強くなれないというジレンマ。いつまでも弱い敵のいる場所でステータス上げという訳にはいきませんし……。
それと本作で有名な敵と言えばやはり、『リセットボタンを押してくる敵』です。この敵にリセットボタンを押されたが最後、本当にリセットがかかってセーブデータ選択画面まで戻されてしまうのです。
幸い普通にプレイをしている限りでは、この敵に出会う事はまずありえません。基本的に普通のプレイでは行けない場所に出てくる敵なので、皆様は安心して本作をプレイなさって下さい。本作が手に入るならですが。
さて本作、戦闘バランスがきついのは既にお伝えしましたがゲーム全体の難易度もかなり高いです。基本的に何をしていいか、どこに行ったらいいか解らない事が多く、攻略情報を見ながらでないと快適なプレイは難しいと思います。
なお筆者はミニゲームのかけっこにどうしても勝てず詰みました。同じ連打系ミニゲームの「さんまの名探偵」のやっさんとのボートレースは楽勝で勝てたのに……。
物々交換で進むシナリオや一発逆転要素の必殺技など意欲的なシステムは見え隠れするのですが、全体的な難易度の高さはどうにもならなかったようです。スクウェアのこういった試行錯誤はその後スーパーファミコン、プレイステーションの各時代まで続いていく事になります。
とりあえず、今回はこれにて。