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第八十二夜 スターオーシャン

一つ、ゲームの話でもしようか。



スーパーファミコン全盛期、当時のスクウェアとエニックスは「ファイナルファンタジー」と「ドラゴンクエスト」を通じてユーザーからライバル扱いをされていました。しかし人気シリーズ作をバンバン排出してきたスクウェアと比べ、エニックスには「ドラゴンクエスト」シリーズ以外これと言ってシリーズと呼べるような作品は持っていませんでした。

敢えて言うなら「不思議のダンジョン」シリーズがありますが、これも第一弾は「ドラゴンクエスト」シリーズのスピンオフです。エニックスにとって「ドラゴンクエスト」シリーズは確かに屋台骨でしたが、大きな売上もまた「ドラゴンクエスト」シリーズ一本に頼らざるを得ない部分が大きかったのです。

しかしプレイステーションなど次世代機が台頭し始めた頃、そんなエニックスに転機が訪れます。後にプレイステーションを中心にエニックスで多くの人気作を作り上げる事となる開発会社、トライエースの設立です。

現在も続くバンダイナムコエンターテインメントの人気シリーズ「テイルズオブ」シリーズ開発から分離したスタッフの作り上げたこの新進気鋭の開発会社の作ったゲームのライセンスをエニックスは手に入れ、次々と世に送り出します。そして発売されたゲームはどれも大ヒットし、トライエースのブランド名を業界、ユーザー共に知らしめたのです。

今回お送りするのは、そんなエニックスとトライエースが手を結んだ最初の作品。アイテムクリエイトという概念をRPGに根付かせた第一人者。「スターオーシャン」です。


本作は序文の通り次世代機が台頭し始めた頃、旧エニックス、現スクウェアエニックスよりスーパーファミコンにて発売されたRPGです。開発のトライエースのスタッフはナムコの「テイルズオブファンタジア」の開発にも関わっていた為、呪文の名前が一緒だったり一部の技のモーションが似通っていたりします。

ストーリーはのクラトスの町で平和に暮らしていた自警団のラティクス、ミリー、ドーンの三人だったがある日近隣のクールの町で人々が石になる伝染性の奇病が流行っている事を知る。優秀な法術師であるミリーの父をもってしてもその奇病は治せず、逆に石になるのを待つばかりとなってしまった父を救う為メトークス山に生えているという万能の薬草を探しに一人で山に向かおうとするミリーに同行する事を決めるラティクスとドーン。途中ドーンもまた奇病に感染してしまった事が明らかとなりますます事態が予断を許さなくなる中、やっと薬草の元へ辿り着いた三人の前に謎の男女が現れる。ロニキスとイリアと名乗る二人はラティクス達の住む惑星ロークを調査しにやってきた地球人であり、姿を見られた事によりやむを得ずラティクス達を自分の宇宙船へと案内する事になる二人。そこでラティクス達は、ロークに蔓延る奇病はローク人の特殊な血液を軍事利用する為惑星ファーゲットの軍によって放たれた細菌兵器によるものであり抗体を持つ生物も三百年前に死んでいるという絶望的な事実を突き付けられる。しかしここでロニキスは決断する。惑星ストリームに存在するタイムゲートを使い、三百年前のロークに飛ぶ事を。ラティクスとミリーも家族を、そしてドーンを救う為同行を志願し、病が進み石となったドーンをロークに残し一行は惑星ストリームへと赴く。果たして一行の行く手に、何が待ち受けているのか……というものになっています。うーん、大分端折ったがそれでも長い。

本作はスーパーファミコンでありながら戦闘がフルボイスになっており、多数の声優陣が起用されています。サウンドテストで曲やボイスをじっくり聞き込む事も出来ますがプレイ中に一度以上聞いた曲、一度以上聞いたボイスしか聞けないようになっておりそこが若干不親切ではあります。


本作を象徴するものと言えば、何と言ってもスキルと特技です。スキルはスキル屋で購入する事が出来、購入したスキルのレベルを敵を倒す事によって得られるスキルポイントを使って上げるとその組み合わせによって特技が開花し様々な事が出来るようになるのです。

例えば『包丁』『レシピ』『目利き』の三つのスキルを得ると『料理』が行えるようになり、野菜や果物などの材料を消費する事で移動中に使える回復アイテムが作れるようになります。各特技のレベルは元となる三つのスキルの平均の数値となり、一つのスキルのレベルばかりガンガン上げても意味がないようになっています。

折角特技を覚えても、特技レベルが低いうちは失敗する事の方が多いです。対応するスキルレベルを上げ特技レベルを伸ばす事で成功の確率も上がり、様々なアイテムを生み出したり冒険の役に立つ効果が得られたりするようになります。

また特技の成功率には特技レベルの他、キャラの持つ『タレント』が関わってきます。タレントとはキャラの持つ才能の意で、例えば『味覚』のタレントを持つキャラと持たないキャラでは同じ特技レベルでも『料理』の成功率は変わってきます。

タレントには必ずそのキャラが持っているものとプレイ毎にランダムで追加されるものの他に最初は持っていなくても敢えて対応する特技を行わせる事で後から開花するものもあるので、初期タレントが少なかったからといって悲観する事はありません。まあ最初から対応タレントを持ってる人に特技を任すのが一番手っ取り早いのは否定しませんが。

またスキルには戦闘スキルもあり、こちらは単独で効果を発揮し戦闘時に自動で取れる行動を増やしてくれます。しかしどんな時でも敵の背後に回り込む事を優先するようになる『めくり』のようなスキルもあり、他のスキルのようにとにかく全部上げておけばいいという感じではないかも……。


もう一つの見所はやはり、プライベートアクションでしょう。これは街中で仲間達に自由に行動して貰い、会話やそれによる反応を楽しむというシステムになっています。

仲間達は到着した街毎に、様々な行動を取ります。時にはキャラ同士の好感度が上下したり、特別なイベントが起こる事も……?

パーティーに加わった後はどうにも戦闘における性能でしか語られる事のなくなる仲間達を掘り下げるという意味で、このシステムは大成功だったと思います。このシステムにより、仲間達に対する思い入れが強くなったという人も多いでしょう。


戦闘面では敵味方が入り乱れて全員リアルタイムで動くシステムが光ります。主人公ラティクス以外のキャラは全員AIで動き逐次状況を判断しながら技や呪文を使い、戦闘を行うようになっています。

各キャラが戦闘中に使う技は、事前にメニューで設定しておく事が出来ます。また戦闘スキル『リンクコンボ』を覚えておけば、一つ技を出した直後にまた次の技と続けて技を出す事が出来るようになります。

但し連続で技を出すという事は、それだけMPの消耗も激しくなるという事。MPを気にせず強力な技を繋げるか、MPの消費を抑えたバランスの良い構成にするかはプレイした人次第になるかと思われます。

また各キャラが覚える技はそれぞれレンジ(距離)が決まっており、それぞれショートレンジ、ロングレンジに対応した技を設定しそれを敵との距離によって撃ち分ける事になります。ショートレンジの技をロングレンジに設定したり、逆にロングレンジの技をショートレンジに設定したりは出来ません。

しかしコンボに組み込む場合はその限りではなく、ロングレンジの技を放った直後に一気に距離を詰めショートレンジの技で攻撃……という流れを作る事は可能です。意外な技同士がコンボ相性がいい場合もあるので、是非自分だけのコンボを見つけてみましょう。


本作では固定メンバーとなるラティクス、ミリー、ロニキス、イリアの他に四名まで任意で仲間を加える事が出来ます。仲間達はそれぞれ能力的にも性格的にも個性的で、困難な旅に彩りを添えてくれます。

中には仲間にする方法が裏技レベルの仲間までおり、収集欲を掻き立ててくれます。出来れば仲間に出来る全員を仲間にしたかったものですが、人数の問題が解決しても結局二者択一の仲間がいるので無理ですかね……。


さてここまでは、いい意味での本作での特徴に触れてきました。ですがここからは悪い意味での特徴……『未完成状態での出荷』についてお話させて頂きます。

まず本作のストーリーの大目標は、ストーリー欄でも触れた通り『奇病の抗体を手に入れ、ドーンやミリーの父を始めとする現代のロークの民を救う事』です。しかし物語中盤になると、いきなり魔王を倒す事が目標に変わっているのです。

これは魔王こそがその抗体の持ち主であるからなのですが、それが情報として出てくる場面はそこまでに一度としてありません。なのにキャラ達はその情報を知っている体で話を進めるので、初見では置いてかれる事受け合いです。

他にもある洞窟に案内された際、違う入口に入ろうとした一行を案内人が『そっちの入口はまた後で』と止めるシーンがあります。しかしその洞窟はクリアすれば二度と訪れる必要はなく、何が『また後で』だったのかは永遠に謎のままです。

一番酷いのはクリアには関係ない寄り道要素であるとある洞窟。ここにはいかにも何かありそうな謎のスイッチが点在しているのですが、調べたところで出てくる台詞は『何も仕掛けはないようだ』。恐らく何かの仕掛けを入れるつもりだったのが没になったんでしょうが、ならそのメッセージを入れる前にスイッチを撤去しておけと……。

おまけに一部アイテムや曲、ボイスは『ソフトにデータは入っているのに絶対に手に入らない、聞けない』仕様になっておりコレクター魂にも水を差してくれます。特に絶対聞ける事のない曲とは果たしてどんな曲だったのやら……。

これら『納期に間に合わないから無理矢理出したような仕様』だけでも脱力するのですが、バグの存在も脱力に拍車をかけます。本作には『アイテムが何らかの要因で別のアイテムに化けてしまうバグ』が常備されているらしく、一つの種類のアイテムは一枠しか取れない筈なのに全く同じアイテムが三枠を陣取っているのを見た日には何を言ったらいいか解らなくなりました。

かような仕様、バグの数々が修正されたリメイク版も現在では発売されているので、今からやるならそちらをやる事をお勧めします。本当に当時、本作が最初から完全版で出ていたら傑作間違いなしだったのに……。

また本作の作曲は「テイルズオブ」シリーズやトライエース製品ではすっかりお馴染みの桜庭統氏ですが、筆者の家のテレビがボロすぎたのか本来なら美しいとされる筈の音楽も篭ったように聞こえてしまったのが残念です。いいテレビでないと綺麗に聞けない音源というのも、こだわりは解るけどちょっとどうかなあと思ってしまいます……。


製品として未完成とも取れる様々な仕様の数々は残念要素ですが、スキルと特技によるアイテムクリエイトの幅広さや魅力的な世界観はそれら残念要素を越えてプレイヤーを魅了し、大好評を博しました。こうして「スターオーシャン」シリーズはエニックスを代表する人気シリーズとなっていくのですが……うん。続編で何であんなシリーズ全体をぶち壊しにする設定を付けてしまったのか、筆者には解りかねます……。



とりあえず、今回はこれにて。

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