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第八十夜 エルナード

一つ、ゲームの話でもしようか。



人生とは競争であり、人間とは常に他の誰かを蹴落としまたは他の誰かに蹴落とされながら生きている生き物です。そこに平等はなく、あるのは勝利の優越感と敗北の屈辱感のみ。

しかしそれは、人間が何かの行動を取る上で必要な起爆剤でもあります。勝者はまた優越感を得たいが為に、敗者は受けた屈辱感を濯ぐ為に、次の行動を起こしていくのです。

私は競争なんか嫌いだ、負けっぱなしで別にいいよ、そう口にする人もいます。けれど例えばお気に入りのお菓子を食べたい、それですら『早い者勝ち』である事に気付いていますか? 供給過多な現代社会においては解りづらいかもしれませんが、日々の買い物一つ一つもまた小さな競争なのです。

まあ、あらすじに反しそうな堅苦しい話はここまでにしましょうか。今回ご紹介する作品は、そんな競争をメインとしたストーリーとなっております。

その作品の名は「エルナード」。ゲームの中で描かれる競争とは、一体どのようなものなのでしょうか。


本作はスーパーファミコン黎明期、旧エニックス、現スクウェアエニックスよりスーパーファミコンにて発売されたRPGです。開発はゲームプラン21。クインテットより数は少ないですが、この会社もこの後エニックスにて何本かソフトを出す事になります。

ストーリーは神の子と呼ばれる賢者シーダには、世界各地から集めた七人の弟子がいた。弟子達がシーダの元で修行するようになり五年の月日が経ったある日、シーダは弟子達を集めてこう言った。『世界中に散らばる七つのアークを全て集める事を、最後の試練とする』。弟子達はある時は手を組み、またある時は対立し争い合いながら我こそがシーダの試練を果たさんと旅をする。その果てに待ち受けるものとは一体……? というものとなっています。


まず始めにプレイヤーは、シーダの七人の弟子のうち誰を主人公にしてゲームをスタートするかを決める事になります。キャラにはそれぞれデフォルトネームがあり、主人公に選んだキャラのみ名前を好きに変更する事が可能になります。

各キャラはステータスや装備出来る品、使える魔法などに違いがあり、またキャラ同士の相性や一部のストーリー進行まで異なってくるので選んだ主人公によってそれぞれ異なる道筋を楽しむ事が出来ます。選べるキャラ達の特徴は以下の通り。


ファイターのカルムは最も平均的な能力の持ち主。直接殴るだけでなく魔法もある程度使えます。相性も全てのキャラと良好と優等生ですが、装備にお金がかかるのが難点。

ドワーフのオルバンは概ねカルムと似たような性能ですが、カルムより攻撃力が高く素早さが低めです。相性は全員と可もなく不可もなく。またオルバン主人公の時のみ、ストーリーは一風変わった道筋を辿っていく事となります。

エルフのエスナは攻撃魔法のエキスパート。回復魔法も多少使えますが、代わりに直接戦闘力は悲惨の一言。常にMP残量には気を付けましょう。カルム以上に、全てのキャラと相性が良いです。

デーモンのレジースはエスナに次ぐ攻撃魔法の使い手で直接殴ってもそこそこいけますが、代わりに回復が使えず防御も紙というピーキーなキャラ。更に相性の悪いキャラが多く、仲間作りには苦労するでしょう。

僧侶のバルスは回復魔法のエキスパート。攻撃魔法も使えるものの、エスナ同様直接戦闘力には期待出来ません。相性はいいキャラとは良く、悪いキャラとはとことん悪い。成長すると本作屈指のバランスブレイカーに。

エイリアンのウィルミーは装備品が極端に少ない代わりに素のステータスが伸びやすい変わった特徴を持っています。魔法は攻撃魔法が少しのみ。レジース同様相性が悪いキャラが多く、仲間作りに難儀するキャラです。

鉄人のラックスは専用の攻撃魔法を持ち、装備品は少ないがやはりウィルミー同様素のステータスがよく伸びます。相性は全員とかなり良好。エスナとラックスは人気者、という設定のようです。


主人公に選ばなかったキャラ達とは各地の街で再会する事になり、仲間になるよう持ちかけられたり戦いを挑まれたり、或いは会話だけで終わる事もあります。ここで気を付けなければならないのは戦いを挑まれたパターンで、承知すると必ず一対一での戦いになる上負けると今持っているアークを全て奪われてしまうのです。

しかも勝ったら勝ったで相手は再戦に燃えるようになり、以後仲間になってくれる事はなくなります。このように百害あって一利なしの戦いなので、イベントでどうしても戦わなければならない時以外はどんなに挑発されようが断っていく方針でいきましょう。

また、無事に他のキャラが仲間になったからといって安心してはいけません。仲間になったキャラはアークを手に入れた際確率で裏切りイベントを起こすようになり、このイベントが起こった場合強制的に仲間だったキャラとのタイマンバトルが勃発してしまうのです。勿論負ければアークは全て奪われるし、以降そのキャラと再会してももう仲間には出来ません。

この裏切りイベントはキャラ同士の相性が悪ければ起きやすいと言われていますが、相性が良くても起きる時は起きるし逆に相性が悪いもの同士が最後まで上手くやっていたという報告もありどうもはっきりしません。どうしてもそのキャラと別れたくなければ、リセットでやり直しまくるしかないのかもしれませんが……。

ちなみに敵として出てくる弟子達の強さは、主人公の現在のレベルによって変わります。こちらのレベルが上がれば上がっただけ相手も強くなりタイマンが困難になるので、アークを集めきるまではあまりレベルを上げすぎないよう注意が必要です。


本作で集める事になるアークはただのイベントアイテムではなく、それぞれアイテムとして使う事で効力を発揮します。勿論何度使ってもなくなる事はないので、中盤最後にイベントでアークを全て奪われてしまうまでは移動や戦闘の要となってくれるでしょう。

もしも弟子戦に負け、アークを全て奪われてしまっても代替アイテムが店売りしているのでそれらを買い込み落ち着いて再戦に望みましょう。……まあ、リセットして挑み直した方が遥かに確実かつ早いんですけども。


フィールドやダンジョンに入ると、画面にレーダーのようなものが現れ無数の白い点が映し出されると思います。この白い点は敵シンボルとなっており、中央にある自分を示す大きな点と白い点が接触する事で戦闘開始となります。

ならば避けようと思っても白い点は常にこちらに向かってじわじわと接近してきており、かわす事は非常に難しいです。動き次第ではかわせる可能性もありますが、大抵は避けきれず戦闘に突入します。

またこのレーダー、宝箱やアークにも反応しそれぞれ黄色い点や赤い大丸で表示されます。特にアークの場所が解るのは重要で、一部のアークはこのレーダーがなければ見つけるのは困難となっています。


本作の戦闘はターン制ですが、普通のRPGによくある全員の行動を入力し終わってからターン開始というシステムではなく敵のターンとこちらのターンがそれぞれ独立した形になっています。例えばこちらの攻撃から始まったとしてまずは主人公と仲間のどちらが行動するか選び、選んだ方が即座に行動。その後敵のターンが来れば敵が攻撃してから選ばなかった方の行動選択をしてまた即座に行動しますし、敵のターンが来なければそのまま選ばなかった方の行動選択となります。

言葉にすると難しいですが、要するに『その時行動するキャラだけ行動選択をする』と覚えて頂ければ概ねOKだと思います。普通のターン制と比べると、先に誰が行動するかこちらで決められるのが利点でしょうか。

さて本作での戦闘において、重要な意味を持つのがガードです。ガード……即ち防御とは通常のRPGにおいてダメージを軽減する役目がありますが、本作でのガードはそれに加えて次のターンのダメージが二倍になるという効果があるのです。

それなら二ターン普通に殴ってもダメージは一緒では?とお思いでしょうが、本作の敵から受ける直接攻撃のダメージは総じて高く、一ターン分だけでも食らうダメージを減らせるというのは相当大きかったりするのです。

よってガードしては攻撃、ガードしては攻撃……というのが本作の戦闘の基本戦術となります。もっともそれで攻撃をかわされたら目も当てられませんが。

また本作では弟子戦など、ステータスアップの魔法を敵が持っている場合は必ずそれを使用してステータスを底上げしてきます。故にこちらもステータスアップの魔法やアイテムを揃えておくのが基本となり、これらの使用がないとボス戦は大変厳しいものになると思います。

これは同社発売の「ドラゴンクエスト」シリーズなら、バイキルトがないと戦闘ではお話にならないようなもので……。本作の戦闘バランスが、いかに大味か解って頂けるかと思います。

なお本作では敵のHPもゲージになって見れるようになっており、例えラスボスであろうともそれは変わりません。便利だなと思う反面、何度攻撃してもろくに減らないHPゲージに時に心が折れそうになるのも事実であります……。


他に変わったシステムと言うと、宝石システムがあります。この宝石はいわゆる換金アイテムなのですが、買値と売値が全く同一というRPG全体としても珍しい性質を持っています。

何の為にこうなっているのかと言うと、全滅時の保険とする為です。本作では戦闘で全滅してもゲームオーバーにはなりませんが、代わりに所持金が半分になる「ドラゴンクエスト」シリーズと同じ方式を取っています。

そこで全滅しても所持金が減らないよう、あらかじめ宝石に換金しておこうという訳です。預かり所に属する施設がない故の発想ですね。

ただこの宝石、実際に買って売って……を繰り返すのはかなり手間だったりします。装備が全体的に高く常にお金が不足気味になるのも相まって、そんなに活躍の機会がないのが実際のところです……。


戦闘バランスの大味さなどまだまだ粗削りな部分はありますが、各地に散らばるアークを巡るキャラ達の人間模様など光る部分も多く単なる凡作とは言えない魅力のある本作。個人的にエンディングのオチに脱力したりもしましたが(ギャグという訳ではなく、あまりの救いのなさに)それ以外は面白いと思うのでお見かけしたら皆様、是非遊んでみて下さい。


余談。当時のエニックスは自社ゲームのコミカライズにも熱心でして、本作もその流れに乗って漫画化と相成ったのですが……。

結論、何でコミカライズした。……ゲーム版と根底からストーリーが違うものを、そもそもコミカライズと呼んでいいのでしょうか……?



とりあえず、今回はこれにて。

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