第七十七夜 ソウルブレイダー
一つ、ゲームの話でもしようか。
あなたは、自分の欲望の為に世界を滅ぼせますか? と言われて、咄嗟に『はい』と答えられる人はごく少数だと思います。
だって世界が滅んでしまったら、困る事だらけです。ご飯は食べられない、ふかふかの布団でも寝られない、気楽に遊ぶ事も出来ない……。
しかし『ちょっとだけなら』と積み重ねていった事が、やがて世界を滅ぼすほどの影響を持つ事になった場合はどうでしょう。この辺りは現実の環境問題にも当て嵌まりますね。もっとも筆者はエコロジストではないので、ここで環境問題について議題を提起する気は微塵もないのですが。
今回ご紹介する作品は、その『ちょっとだけなら』の積み重ねで滅びた世界が舞台となります。勿論世界が滅びたのは本編が始まる前の話なので、プレイヤーは世界滅亡に直接関与はしていません。
けれど、先の事を深く考えず己の欲望だけを優先させた結果どうなるのか……。この作品は、その結末を教えてくれると筆者は思うのです。
今回のテーマ、名は「ソウルブレイダー」。それでは本文へと移りましょう。
本作はスーパーファミコン黎明期、旧エニックス、現スクウェアエニックスよりスーパーファミコンにて発売されたアクションRPGです。開発は「アクトレイザー」同様クインテットで、ダメージ音など一部の効果音が流用されているのが特徴です。
ストーリーは天才科学者レオに作らせた機械を使い呼び出した悪魔デストールと、ある国の国王が取引をした事から始まる。国王は生物一つの魂を対価にデストールから金を得、国は潤ったが代償として世界には生物が全くいなくなってしまった。やがて用済みとなった国王もデストールに魂を奪われ、世界はデストールの放った魔物が支配する地となってしまった……。この様子を天空より見守っていた神はある時自分の弟子を呼び、魔物に囚われた生物達の魂を解放し世界を再生させるよう命ずる。その弟子こそが、他ならぬ『あなた』。『あなた』は魔物を倒して囚われの魂達を解放し、世界を救う事が出来るのか……? というものになっています。
「アクトレイザー」同様、本作でもまた初っぱなから世界が滅んでいます。今度は別に神様負けてませんが。
画面は見下ろし型となっており、自機のサイズも「アクトレイザー」と比べると小さい、普通サイズとなっています。と言うか「アクトレイザー」がでかすぎた。
主人公は最初、各地域にある天空のほこらに降臨する事になります。ここは訪れる度にライフが最大まで回復する、安全地帯となっております。
ここからまずは、その地域の拠点となる場所に移動する事になります。とは言っても、最初に訪れた状態では空き地が広がっているだけであるものと言えばダンジョンの入口くらいです。
魔物達を倒し生物達の魂を解放していく毎に、拠点には施設が増えていきます。時にはアイテムが手に入るイベントが発生する事もあり、クリアの為には欠かせない要素となっています。
ダンジョンに入ると、途中にある赤いマークから次々と敵が湧き出てきます。これは魔物の巣であり、この魔物の巣を封印していく事がダンジョンでの主な目的となります。
魔物の巣から湧き出る魔物は、無限ではありません。一定数魔物を吐き出し終わるとその後は魔物が出なくなり、湧き出た魔物を全て倒すとマークが緑色に変わります。
この上に乗ると、その巣の封印成功となります。魔物の巣を封印すると囚われの魂が解放されて拠点に施設が出来たり、塞がっていたダンジョンの道が通れるようになったり、冒険に役立つものが入っている宝箱が現れたりとお得な事ばかりなのでダンジョンにある魔物の巣は全て封印して進みたいところです。
また敵を倒すと経験値が入る他、小さな球体が落ちます。これはジェムと呼ばれるもので、魔法を使うのに必要になる言わばMPです。
自機の周りには常に、白い球体が浮遊しています。これはソウルと言って、主人公の冒険を助けてくれるものです。
手に入れた魔法を装備し魔法ボタンを押すと、装備した魔法がジェムを消費しソウルから発射されます。魔法はジェムがある限り何発でも発射出来ますが、ライフが0になり倒れてしまうとそれまで稼いだジェムは全てなくなってしまうので注意が必要です。
またダンジョンを探索していると、剣や鎧といった装備が手に入る事もあります。これらは単純に攻撃力や防御力を上げてくれるだけではなく、それぞれが様々な特殊効果を持っています。
中には決まった剣でないと倒せない敵や一部ダメージゾーンを無効化してくれる鎧などもあり、下位の剣や鎧だからといってすぐにお役御免になる訳ではないのが面白いところです。状況に合わせて的確に装備を使いこなし、進んでいきましょう。
ダンジョンを進み魂を解放し、それによりまた新たなダンジョンに行けるようになり……それを繰り返していくとやがてボス戦になります。そして見事ボスを倒すとその地域はクリアとなり、次の地域に進めるようになるのです。
とは言え初めて地域を訪れた段階ではどうにもならない魔物の巣も幾つかあり、そういった場所は先の地域で新たに装備を手に入れないといけません。ボスを倒す事が、イコール全ての終わりではないのです。
さてしつこいくらい生物、生物と表記してきましたが何でこんな表記なのかと言うと、本作で救う対象は人間以外の方が圧倒的に多いからです。犬や小鳥、人魚やイルカ、果ては人形やタンス……蘇った彼ら彼女らは皆個性的で、ストーリーに何も絡まないキャラだったとしても話しかけるのが楽しくなってしまいます。
こういう人間以外のキャラが目立つ事で、逆に人間の業の深さが浮き彫りになったり……。クインテット開発の作品には、どれもそんなテーマがあるような気がします。
「ドラゴンクエスト」シリーズ以外のエニックス作品はどうにも地味になりやすい傾向があるらしく、本作もそんな地味なゲームの一つではあります。しかし世界を少しずつ蘇らせていく面白さは、本作ならではのものと筆者は思います。
とりあえず、今回はこれにて。