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第六十九夜 ドラゴンクエスト3 そして伝説へ…

一つ、ゲームの話でもしようか。



その昔、ゲームという存在は国レベルの一大ムーブメントでした。日本国民はこぞってこの新しい、刺激的な娯楽にとっぷりと嵌まり、没頭していきました。

あのマリオなども、カレーになったりふりかけになったりアニメになったりとゲーム以外でも大忙しの日々を送っていた事もありました。ゲームの影響力は、それほど大きかったのです。

さてそんな昭和の終わり頃。あるゲームソフトの発売が、全国ニュースとしてメディアに取り上げられました。

人々は会社や学校を休んでまでもゲーム屋に殺到し、折角買ったゲームをカツアゲされて奪われるという事態まで引き起こしました。ゲームという存在が完全に暮らしに定着した今となっては、信じられない話です。

その、社会現象にまでなったソフトの名前は「ドラゴンクエスト3 そして伝説へ…」。そのタイトル通りゲーム界の伝説となったソフトとは、一体どんなものだったのでしょうか。


本作はファミコンが全盛期に差し掛かろうという頃旧エニックス、現スクウェアエニックスよりファミコンにて発売されたRPGです。今なおシリーズの歴史の中でも最高とされるロト三部作の、完結編に当たります。

ストーリーは山奥の地方ネクロゴンドに突如現れた魔王バラモスの魔の手が伸びる世界、かつて世界を支配していた事もある島国アリアハンの勇者オルテガはバラモス打倒の為に産まれたばかりの子と妻をアリアハンに残し旅立つが配下のモンスターとの死闘の末にネクロゴンドの火山の火口へと落ちてしまい、帰らぬ人となってしまった。それから十数年後……。十六歳の誕生日を迎えたオルテガの遺児である『あなた』は父の遺志を継ぎ、魔王バラモスを倒す為仲間を集めて冒険の旅に出る。『あなた』は魔王バラモスを倒し、見事父の無念を晴らす事が出来るのか……?というものになっています。

あらすじに勇者ロトの要素が全くないのに何でロト三部作?とシリーズ未経験の方は思うかもしれません。ネットで攻略情報が広まっている今秘匿する必要はないに等しいのですが、ここでは敢えて詳細は伏せさせて頂きます。ただ前二作とは、意外な形で繋がっているとだけ。

前作では職業戦士状態だった主人公は再び前々作のような万能型に戻り、以後『勇者は万能型』という概念が定着していく事となります。結果的に前作のローレシアの王子だけ主人公として浮く形になってしまいましたが、まあ、気になさらずに。

また女性プレイヤーに配慮してか、本作では主人公の性別が選べるようになりました。とは言ってもそれによってストーリーが変わるなどの変化は全くなく、女性専用装備も身に付ける事は出来ないのですが。


オープニングが終わり、自由に町を歩けるようになったらまずやるべき事は仲間探しです。パーティーメンバーが完全に固定だった前作と違い、本作では主人公の勇者がメンバー固定である以外は自由にメンバーや隊列を決める事が出来るのです。

仲間を加えるには、スタート地点のアリアハンのみに存在するルイーダの酒場に行く必要があります。ここでまず欲しい職業と性別の仲間を登録し、それからその仲間をパーティーに加えるという手順を踏む事で仲間を増やす事が出来るのです。

『そんなのめんどくさい! 俺は今すぐ旅立ちたいんだ!』という方への配慮も完璧で、酒場にはあらかじめ戦士、魔法使い、僧侶と初めて本作をプレイする方でも安心なバランスの良い三人が登録されています。けれども折角キャラメイキングが出来るのです。自分で名前を付け、選んだ仲間ならそれだけ愛着度合いも変わってくるのではないかと思います。

勿論敢えて仲間を加えずに、一人で旅に出る事も可能です。けれどその場合、難易度はとんでもない事になると覚悟しておいて下さい。

以下に仲間に出来る職業を簡単にご紹介していきます。職業の特徴を見ながら、想像を膨らませるのもまた一興かと。


戦士は殆どの武器防具を装備出来、ちからとたいりょくがよく伸びます。その代わりすばやさが伸びず、敵に先手を取られやすいです。

魔法使いは強力な攻撃呪文を幾つも覚えます。かしこさと、意外にもすばやさも上がりやすいですが装備品は少なくちからとたいりょくも最低レベルです。

僧侶は回復呪文のエキスパートです。戦士ほどではありませんがそこそこ重い武器でも装備出来、どのステータスも平均的に伸びる万能型でもあります。

武闘家は特定の武器以外を装備すると逆に攻撃力が下がるという変わった性質を持っていますが、その分ちからとすばやさが爆発的に伸びるピーキーな性能です。道中装備にお金をかける必要がないのもプラスです。

商人は装備品も多くなくどのステータスもあまり伸びませんが、戦闘終了後にお金を通常より多く拾う事が出来ます。その他にも、商人がいなければ発生しないイベントも……。

遊び人は装備品が少ない上、レベルが上がるにつれて勝手な行動ばかり取るようになりまともに戦闘しなくなる問題児です。ステータスの伸びも悪いですが唯一うんのよさだけは異常に上がります。

賢者は酒場で登録する事が出来ず、仲間にするには特定の条件を満たした仲間を転職させるしかありません。魔法使い、僧侶の覚える全ての呪文を覚え直接戦闘能力も僧侶並にはあるまさに器用万能の職業ですが成長が遅いのが欠点です。


以上の職業から三人までを仲間に選び、パーティーに加えたらいよいよ冒険の旅の始まりです。必要最低限の仲間用装備は最初に王様に貰えますので、それらを分け与えるのを忘れずに。


戦闘バランスは前作と比べて簡単すぎず難しすぎない調和の取れたものになり、多少のごり押しも効くようになりました。敵の取る攻撃の多様さは前作以上ですが理不尽さを感じる威力のものは少なく、こちら側にも対処法が沢山用意された事から余程パーティーを玄人向け編成にしたとかレベル上げもそこそこに先に進んだとかでない限り戦闘で詰まる事はあまりない筈です。

代わりに恒例の『攻略情報が不完全な攻略本』は健在なので、時には進化した謎解きに詰まってしまう事もあるかもしれません。今はネット検索すればすぐに攻略サイトが出てくる時代になりましたが、当時謎解きに詰まり周りに友達もいなかったような子供は一体どうしたのだろうとつい余計な心配をしてしまいます。

宝箱を開けたらモンスターだった……というトラップモンスターが配置されたのも本作からです。ピラミッドに置かれたひとくいばこや、地球のへそのミミックに為す術もなくなぶり殺されたプレイヤーは果たして何人いるのでしょうか……。

また本作には、パーティーアタックというシステムが設けられています。これは簡単に言えば、味方をわざと殴って眠りや混乱といったバッドステータスを回復しようというシステムです。

同様に敵に回復呪文をかけるといった一見誰得な行動も取れますが……実はこれが完全に死に行動となっていないのが本作の面白いところです。詳細は差し控えますが。


旅の手段もまた前作から増えました。陸、海と来れば今度は空。本作では後半になると、自由に空を飛ぶ事が出来るのです。

空には敵も出ず、快適な空の旅と洒落込めます。利用出来るのが後半のみなのが難点ですが、最初からどこでも行けてしまってはゲームになりませんので仕方のないところです。

また前作までは最後に訪れたセーブポイントに飛ぶだけだった移動呪文ルーラの性能も向上し、行きたい町を指定して飛べるようになりました。これにより移動にかかる時間が飛躍的に短縮されましたが、一部の町はルーラの対象外なのでご注意を。

本作では昼夜の概念があり、フィールドを歩いているといずれ夜になります。夜には城に入れない(一部例外あり)、宿屋以外の店が閉まってしまうなど不便な事も多いですが夜にしか聞けない情報もあり時には歩いて夜を待つ事も必要になります。ちなみにルーラを使うと強制的に朝になってしまうので、夜を待つなら入りたい町の近くで。

なお前述のルイーダの酒場には、お金やアイテムを預かってくれる預かり所も存在します。アイテムは一旦預けた後引き出すのにアイテム毎に設定された手数料がかかる、お金は手数料を取らない代わりに千ゴールド単位でしか預けられないと少々癖はありますが、夜になっても休まず営業しているなど冒険の強い味方になってくれる事は間違いないでしょう。


さて本作から遂にバッテリーバックアップが導入され、煩わしいパスワードのメモ取りからは解放されました。しかしながらこのバッテリーバックアップが意外と飛びやすくカセットに強い衝撃を与えたが最後、電源を点けたら嫌な音楽と共に『おきのどくですがぼうけんのしょ1はきえてしまいました』……なんてトラウマがある方は全国に数多くいると思います。

特に近年ではバッテリーバックアップの電池切れが深刻化しており、ファミコンの実機で遊ぶ事はなかなか困難な状況になっています。今から本作を遊びたい人は、大人しくバーチャルコンソールに頼るのが良いと思われます。


ここまではシステムに触れてきましたが、本作が神格化されるに至った原因と言えばこれらシステムの完成度ともう一つ、ストーリーの秀逸さでしょう。まだ作中でストーリーを語られる事が多くなかった時代、本作で描かれたストーリーはプレイヤーを大いに驚かせ、また歓喜させたものです。

始めから三部作構想だったからこそ出来た、驚きの仕掛け。ネットで情報がすっかり広まった現在では新鮮味があるとは言い難くなってしまいましたが、リアルタイムでその驚きを経験した世代にとっては本作はまさに伝説と呼ぶに相応しいソフトになったのではないかと思います。


本作の大ヒットは数多くのゲーム会社に影響を与え、ここからRPGブームが本格的に巻き起こる事になります。RPGがゲーム業界の一大ジャンルにまで上り詰める起爆剤となったこの三部作は、今後も名作として人々の間に語り継がれていく事でしょう。



とりあえず、今回はこれにて。

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