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第六十八夜 ドラゴンクエスト2 悪霊の神々

一つ、ゲームの話でもしようか。



プレイステーションでの「ドラゴンクエスト7」の度重なる発売延期を経験した世代には信じられないでしょうが、「ドラゴンクエスト」シリーズの発売スパンは「ドラゴンクエスト3」まではとても短いものでした。これは「ドラゴンクエスト」シリーズが始めから三部作として予定されていた事に起因し、なるべく間を置かず、少しずつ出来る事を増やす事で日本のユーザーにRPGというジャンルを馴染ませようというという計画の元によるものでした。

その目論見は見事に成功し、後にロト三部作と呼ばれる「ドラゴンクエスト3」までの三本はユーザー達にRPGの面白さを伝え、爆発的なRPGブームを引き起こすまでに至ります。RPGはゲーム界の一大ジャンルとなり、多くのユーザーに愛される事となったのです。

今回ご紹介するのはそのロト三部作の次男坊。シリーズ最難と謳われる事もある「ドラゴンクエスト2 悪霊の神々」です。


本作は前作発売の僅か八ヶ月後、旧エニックス、現スクウェアエニックスよりファミコンにて発売されたRPGです。開発期間が短いからと言って侮る事なかれ、本作は前作より十分にパワーアップを果たした内容となっております。

ストーリーは前作において竜王を倒しローラ姫と共に旅立ったロトの子孫の若者は、新天地となる大陸に三つの国を作り上げた。それぞれローレシア、サマルトリア、ムーンブルクと名付けられた三つの姉妹国は若者とローラ姫の間に産まれた子供達によって統治され、友好的な関係が長く続いていた。そして百年の時が過ぎ……。ある日ローレシアを、一人の傷付いた兵士が訪れる。兵士は告げる。邪神を信仰する神官ハーゴンによって、ムーンブルクが攻め滅ぼされた事を。事態を憂慮したローレシア王は一人息子の王子に告げる。同じ勇者ロトの血を引く各国の王子達と協力し、邪悪なる神官ハーゴンを討て、と。こうして新たなる勇者達による、冒険の幕が上がる……というものとなっています。

このあらすじの通り本作は前作と違いパーティー制となっており、主人公である戦士ポジションのローレシアの王子を筆頭に剣も魔法もそこそこ使える魔法戦士ポジションのサマルトリアの王子、力は弱いが強力な魔法を幾つも覚える魔法使いポジションのムーンブルクの王女の計三人で旅をする事になります。こう書くと実にバランスのいいパーティーであるかのように思えるのですが……詳しくは後述。


さてたかが八ヶ月、されど八ヶ月。この短い期間の間にもファミコンは進化し、前作とは比べ物にならない容量を得ました。以下に、前作との変更点をざっくりとお伝えしていきます。

まずグラフィックが格段に進化しました。王子達を始めとした全てのキャラに上下左右全方向のドットパターンが与えられ、フィールドの城や街も大きく立派になりました。

ダンジョンは明かりを使わなくても遠くまで見通せるようになり、一部を暗闇にし暗闇に近付いたところで視点切り替えを行うという方式を取り入れた事で先の見えないダンジョン探索の緊張感も損なわずに済んでいます。またダンジョンの壁の質感なども飛躍的に表現が向上し、よりリアルなものとなっています。

旅の舞台は、大陸だけではありません。本作では船が登場し、遠く海の向こうの島まで旅の足跡を広げられるようになりました。

また離れた場所同士を繋ぐ旅の扉も出現し、探索の場を広げてくれます。マップが広がった分パスワードを聞ける場所も各地に点在するようになったので、中断したい時も安心です。

鍵のついた扉は三種類に分かれ、それぞれ対応する鍵を使わなければ開ける事が出来なくなりました。鍵は後のシリーズのものとは違い上位互換は存在せず、銀の扉は銀の鍵でしか、金の扉は金の鍵でしか開ける事が出来ないので鍵がアイテム欄を圧迫する事態になりがちなのが少々困り者です。

また本作のみの要素として、道具屋で買い物をすると時々福引き券というアイテムが貰えます。これを持って福引き所へ行くと、一枚につき一回福引きという名のスロットが遊べるのです。

福引きで手に入るアイテムは非売品ばかりで、手に入れたくなる事必死。福引き券を貰おうと買い物しすぎてお金がなくなった……なんて事には、くれぐれもなりませんよう。

なお前作と違い薬草は一つで一個のアイテム欄を圧迫するようになった上本作では薬草が一つ24ゴールドと異様に高く、ホイミの回復量が薬草と同じになったのも合わせて利用する機会はホイミが使えるサマルトリアの王子が仲間になるまでといったところでしょう。本作はとかく装備を買うのにお金がかかるので、ホイミと同程度の回復量の薬草にそんなにお金を割いていられませんし。

その装備は、メニューのそうびコマンドで任意で行うよう変更になりました。これにより使わなくなった装備を売るという概念が生まれ、宝箱や敵からのドロップアイテムでも多くの装備が手に入るようになりました。

特に後半のローレシアの王子の装備は店以外で手に入る事が多いので、宝箱類は残さず回収しておきましょう。戦闘において一番の要となるローレシアの王子の装備は、強くしておくに越した事はないです。


ここまでだと前作の順当な進化系と言える本作。しかし前作と同じ気持ちでプレイに挑むと、あっという間に打ちのめされる羽目になります。

何故かというと本作、最序盤からチーム戦前提の難易度になってるらしく敵がえれえ強いのです。ローレシアから出た途端スライム三匹にフルボッコにされるのは当たり前、おおなめくじ三匹とエンカウントした日にはHP満タンでも死兆星が見えます。

例え仲間が増えても、苦難はまだまだ終わりません。出現場所に見合わない攻撃力のマンドリルに殴られればそこに辿り着いた時点でのローレシアの王子以外のキャラはまず一撃で終わりますし、集団で現れては炎で全体攻撃してくるドラゴンフライは速攻で対処しないと回復が追い付かなくなります。最悪なのが本作から登場した不思議な踊りの極悪性能で、一発食らえばMPが20台は持っていかれる始末。「ドラゴンクエスト」シリーズ史上最凶の呼び声高いロンダルキアへの洞窟の凶悪さばかりが取り上げられやすい本作ですが、正直全体的に戦闘バランスが狂っているとしか言いようがありません。

仲間の一人、サマルトリアの王子の貧弱さも難易度の高さに拍車をかけます。この王子、魔法に関してはムーンブルクの王女と上手く差別化が出来ていると思うのですが肝心の戦闘能力が殴りは貧弱、防御は紙。

こうなる原因はサマルトリアの王子自体が超大器晩成型のステータスでカンスト間近にならないとまともにステータスが伸びない上に、装備可能な品も魔法使いであるムーンブルクの王女に毛が生えた程度という不遇さによるものです。最強武器が序盤に手に入る鉄の槍と言えば、どれだけ彼が装備に恵まれないかが解って頂けるかと思います。

おまけに、じゃあ魔法で貢献しようと思えば全体攻撃魔法のベギラマが調整ミスで一発の威力がギラと同じという有り様です。彼を仲間にする為にあちこちをたらい回しにされた挙句性能がこれなので、サマルトリアの王子という男は長きに渡り使えないキャラ扱いされてきたのでした。合掌。

一応ここまで世紀末バランスになったのには理由があり、開発期間が短かった為に通しでテストプレイする事が出来なかった事が背景にあるようです。事実、後のリメイクでは戦闘バランスはかなり改善されサマルトリアの王子も装備品が増えるなどテコ入れ対象となりました。

しかしながらこのバランスでこそ本作!というドM……もとい求道者ゲーマーがいるのも事実で、リメイク版より本作を好んでプレイする層も多いようです。筆者には理解出来ませんが。


また「ドラゴンクエスト」シリーズと言えば、攻略情報が不完全な攻略本です。これは総監督の堀井雄二氏の意向で、攻略本に頼らず自分の力や友達との情報交換で謎を解いて欲しいという思いからそうなっているそうです。

かくいう本作でも、クリアに絶対必要なアイテムの在処を明かさないよう情報統制が敷かれています。とは言えネットで攻略情報が盛んに取りざたされるようになった今となっては、それもすっかり形骸化してしまったのですが……。


ちなみに本作で名前を付けられるのは主人公のローレシアの王子だけで、サマルトリアの王子とムーンブルクの王女はローレシアの王子に付けた名前によってどんな名前になるか決まる……のですが、実はサマルトリアの王子かムーンブルクの王女のどちらか一人だけを好きな名前に変えられる裏技があったりします。但し変更後の名前はパスワードに保存されないので、その冒険限りの名前となってしまいますが。


偉大なる兄の遺伝子を受け継ぎ生まれた本作は、開発期間の短さによるバランス調整の不足という欠点を抱えてしまったものの全体的に見れば前作をよりブラッシュアップした正当な続編となりました。そしてこの翌年、まさに名前通り伝説となる次回作が登場する事となるのです。



とりあえず、今回はこれにて。

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