第六十六夜 COCORON
一つ、ゲームの話でもしようか。
皆様は夢見はいい方ですか? 筆者はいい方です。最近は起きたらすぐ忘れますが。
自由に自分の好きな夢を見たい……そんな事を、誰しも一度は思ったんじゃないかと思います。最近では明晰夢といって、ある程度なら自由に夢の内容を調整出来る方法も広まっていたりしますね。
では、自分の好きな自分になれる、そんな夢はどうでしょう。いいですね。何になろうとかまさに夢が広がりますね。
そんな夢を現実にしてくれるゲームが、今回のテーマ「COCORON」です。皆様、想像力を膨らませながらご覧下さい。
本作はファミコン末期、タケルよりファミコンにて発売された横スクロールアクションゲームです。今までご紹介してきたどのソフトより、本作は知名度が低いという自信があります。
ストーリーはある日の夢の中、主人公は魔法使いテイパーと名乗る不思議な生き物と出会う。テイパーは言う、『何でも君の好きな夢を見せてあげる』。主人公はさらわれたお姫様を助ける冒険の夢を望み、テイパーはそれに応える。さあ、楽しい楽しい夢の中の冒険のはじまりはじまり……というものになっています。
本作最大の特徴と言えば、ファミコンのアクションゲームでありながらキャラメイキング機能を有している事です。この頃はまだ自機を自分好みにカスタマイズ出来る機能は一般的ではなく、この広く名前の知られていない会社がいかにそれに反した技術力を持っていたかが窺えます。
パーツは全部でフェイス、ボディ、アームズの三つに分かれており、これらを用意された種類の中から好きに組み合わせる事で自機を作り上げていきます。各パーツの種類にはそれぞれライフや重さ、威力が設定されており、それらとよく相談をしてバランスの良いキャラを作り上げる事が大事です。
フェイスは自機の顔を何にするか決めます。種類は王道の人間の少年からモンスターにロボット、果てはエイリアンなんてものまであります。
このパーツはライフと重さに関わる他、後述するスペシャルアイテムを取った時の効果にも関わってきます。またステータス画面を呼び出した時は、選んだフェイスがアップになって映し出されます。
ボディは自機の胴体を何にするか決めます。種類は鎧や近未来風などの人型のものもあれば戦車や船などの明らかに人間の顔を乗っけちゃいけないものまでやはり様々です。
このパーツもまたライフと重さに関わりますが、それ以上に固有の特殊能力を持つ種類が幾つかあるのが特徴です。例えば羽が生えた種類は一定時間空を飛べ、船の種類は水に浮かぶ事が出来ます。
ちなみにフェイス、ボディ共に何だかどこかで見た事のあるような種類が混じってますがそこは触れずにおきましょう。今より版権が緩い時代だから出来た、お遊びと言ったところですね。
アームズは自機が放つ武器の種類を決めます。他のパーツは一度使用した種類は次のカスタマイズでは使えなくなりますが、このパーツだけは何度使用してもまた選択する事が出来ます。
武器は全て飛び道具で、放った後の軌道が異なる仕組みとなっております。これもやはり重さと、そして威力に関わり、威力の高い武器の方が当然与えるダメージも高くなります。
これらパーツの傾向としてライフが多い、威力が高い種類ほど重く、ライフが少ない、威力が弱いほど軽いというものがあります。勿論全てがこの傾向に当て嵌まる訳ではなく、ライフが低いのに重い、威力が弱いのに重いといった玄人向けの種類も存在します。逆はありませんが。
自機が重くなれば重くなるほど移動が鈍重になり、ジャンプ力も落ちます。即死穴が結構な割合で出てくる本作において、特にジャンプ力の有無はかなりの死活問題だったりします。
一応全てのパーツを最重にしたとしても、ジャンプ力が足りなくて詰むという展開にはならないバランス調整はされていますが……例え作ったとしても、即死穴が出てくるステージには出さないのが賢明でしょう。
また、だからといって軽ければ軽いほどいいのかと言うと軽くし過ぎると今度は移動が早すぎて制御出来なくなってしまいます。軽い種類は総じてライフも低いので、求められるのはやはりバランスとなります。
全てのパーツを決め終え、名前を入力したら最後に試運転をして、ここでOKを出せばキャラメイキング終了となります。自分の作ったキャラの操作感を事前に確認しておけるのは何気にありがたく、これにより難易度が多少緩和されている事は間違いないと思います。
キャラメイキングが終わったら、いよいよステージセレクトです。本作では拠点となる自宅も合わせて六つの行き先からどこに行くかを選ぶ事となり、どこからどこへ向かうかでステージ構成ががらりと変わるようになっています。
例えばB地点からA地点に行く場合とC地点からA地点に行く場合では終着点が同じA地点なのに全く違うステージとなり、出てくる敵も多少変化したりします。このシステムのお陰で本作は見た目よりもステージ数が多く、バラエティ豊かとなっております。
行き先を決めたら、いよいよステージの開始です。ステージ内では道中に浮いていたり敵を倒した後に出てきたりと、様々な場所に卵が点在します。
卵は大体が回転していて、攻撃を当てる事で回転が弱まります。完全に回転が止まったところに更に攻撃を当てると卵が壊れ、中のアイテムが飛び出してきます。
卵の中身はライフが1回復する小ハート、ライフが8回復する大ハート、アームズのパワーゲージを上げる武器マーク、選んだフェイスによって様々な効果を発生させるスペシャルアイテム、1upのニコチャンマークの五つのうちどれかで、中でも小ハートは結構頻繁に出てくるので割と死ににくい作りになっています。ライフがやばい時は倒しやすい敵が出てくる場所に居座って、無限湧きを利用しライフ回復に努めるのも手です。
パワーゲージは5増える毎にアームズがグレードアップし、弾が大きくなって当てやすくなる、攻撃範囲が広がるなどの恩恵が得られます。グレードアップはゲージが20になると打ち止めになり以後は武器マークは出なくなりますが、ステージ途中で死んでしまうとそこまでに増えたパワーゲージはリセットされてしまうので注意が必要です。
スペシャルアイテムは前述の通り選んだフェイスによって取った際の効果が変わります。取った瞬間ライフが全快したり一定時間無敵になるなど解りやすい効果もあれば、一定時間アームズの本来の威力に関わらず攻撃の威力が馬鹿みたいに跳ね上がるなどいぶし銀の効果もありこの面でもフェイスをどれにするか悩まされます。
筆者のお勧めはやはりライフもそこそこあり、スペシャルアイテムで馬鹿力を発揮するモンスターの種類でしょうか。スペシャルアイテムに恵まれれば道中の大概の雑魚は殲滅出来るので、敵が多く出るステージに特に向いています。
また通常の卵の他に、ステージの途中に大きな卵がある時があります。この卵は近付く事で壊れ、中からランダムでアイテムが飛び出します。
但しアイテムではなく敵が代わりに飛び出してくる事もあるので、油断はなさりませんよう。さらに条件を満たすと……?
ステージ最奥に辿り着くと、前口上の後ボス戦になります。ボス戦ではボスのライフも一緒に表示され、自分のライフがなくなる前にボスのライフを削り切れば勝利となります。
各ボスのライフは同一で差がありませんが、中には本格的に戦う前に手下を差し向けてくるボスもおり一筋縄ではいきません。ライフ自体もこちらのライフの三倍程度はあり、いくらライフが可視状態だからといって初見はその圧倒的なライフ差にちょっぴり心が折れそうになります。
ここで重要になってくるのがアームズの威力で、アームズの威力が高いほど一撃で削れるライフ量が多くなります。また本作のボスには無敵時間がない為、連射を当てれば当てただけライフがごりごり減っていきます。
見事ボスに勝利するとステージクリアとなり、テイパーに使える自機の種類を増やして貰えます。以後ボスを倒した行き先ではボス戦が発生しなくなり、代わりに情報が手に入ったりするようになります。
さてそんな知名度の割に十分に遊べる面白いゲームである本作なのですが、最大の欠点が自由にセーブが出来ない事です。いえ、ファミコン時代のアクションゲームでセーブが出来る事自体は凄いのですが、そのタイミングがゲームオーバー時だけなのです。
ライフ回復機会が多く死ににくい本作において、ゲームオーバーになる事はなかなかないと言えます。もっと自由にセーブする事が出来れば、本作の評価ももっと上がったのではないかと思います。
ファミコン末期にひっそりと生まれた、隠れた名作と言える本作。もし運良く見つける事が出来たら、楽しい夢の世界に没頭してみると良いでしょう。テイパーの見せる夢の行く末に想いを馳せながら……。
とりあえず、今回はこれにて。